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トヨタ クルーガー ハイブリッド“G パッケージ”新車試乗記(第361回)

Toyota Kluger Hybrid

(3.3リッター+2モーター・436万8000円)

2005年04月09日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

V8並みのパワー

日米で絶好調の2代目プリウス。それに続くハイブリッド車が2005年3月発売のハリアーハイブリッドとクルーガーハイブリッドだ。環境性能とハイパワーを両立する「ハイブリッド・シナジー・ドライブ」がコンセプトだが、より突っ込んで言えば燃費より動力性能に軸足を置いたハイブリッド車と言える。3.3リッターV6エンジンと高性能モーターで前輪を駆動し、さらにリアモーターで後輪を駆動する電気式4WDシステム「E-Four」で「V8エンジン搭載車並みの動力性能」を達成したのが売り。ここでいうV8搭載車とは、暗にポルシェ・カイエンSのことを指す。

昇圧システムとリダクションギアを開発

ハイパワー化の要素は主に3つ。1つはハイブリッド初のV6エンジン。2つめは288Vのバッテリー電圧を可変電圧システムで650Vまで昇圧し、フロントモーターの高出力化と高回転化(167ps、34.0kgm)を行ったこと。大出力を出すにはモーターを大きくすればいいが、そうすると重量やスペースで問題が多い。このため電圧を上げて高回転化したのだ。そして3つめが、そのモーター出力を大トルクに変換するリダクションギア(減速比:2.478)を設けたこと。システム全体で272ps(車速100km/h時)を発揮しながら、10・15モード燃費は17.8km/Lとベース車の倍近い数値だ。

日本では1万2000台、海外では5万台

国内の月間販売目標はハリアーハイブリッドが500台、クルーガーハイブリッドが500台。合わせて年間1万2000台。本命は北米といった海外市場で、年間5万台を予定する。なお、ハリアーは北米ではレクサスRX、クルーガーはトヨタ・ハイランダー(Highlander)だ。昨年、現行プリウスは海外だけで6万台を売り、今も供給が追いつかない状態。特に北米ではハイブリッドが熱い。

生産は、普通のハリアーとクルーガーを生産するトヨタ自動車九州の宮田工場(福岡県)だが、いずれ中国や北米でもハイブリッド車を生産する予定だ。

価格帯&グレード展開

ハリアーは5人、クルーガーは7人

両車ほぼ同じハイブリッドシステムを積むが、ハリアーは5人乗り、クルーガーは7人乗り。価格はハリアーが409万5000円~462万円、クルーガーハイブリッドが399万円~436万8000円。「レクサスRX」たるハリアーの方が高価で、仕上げもいい。ハリアーにはレザーシートや18インチホイール&スポーツサスを持つ豪華版「プレミアムSパッケージ」も設定される。

パッケージング&スタイル

見た目はほぼ普通のクルーガー

ボディサイズは全長4710mm×全幅1825mm×全高1700mm。普通のクルーガーとの外観の違いはバンパー、ラジエーターグリル、アルミホイールのデザインくらいで、あまり明快ではない。意図的にハイブリッドに見えないようにしたのかと思うほどだ。リアの「E-FOUR」「HYBRID」といったバッジがハイブリッドの証しとなる。

回転計ではなく「パワーメーター」

ハリアーに比べて、室内はカジュアルで簡素。ボタン式始動スイッチもクルーガーには付かない。面白いのはタコメーターの代わりに付いた「パワーメーター」だ。

システム全体(エンジンとモーター)の出力を示すメーターで、回生時のマイナス表示(青色部分)から最大出力の200kW(272ps)までを示す。現行プリウス(82kW〔111ps〕/車速85km以上)のおおよそ2.4倍だ。

バッテリーのしわ寄せはサードシートへ

小型化したニッケル水素バッテリーはセカンドシート座面下に配置。シートのスライドレールを巧みに避ける形状で、5人乗車ならバッテリーの存在を感じさせない。

代わりにサードシートの足元が高く、乗員は体育座りのような姿勢になる。2列目左側にはウォークイン機構が付くが、乗り降りは簡単ではない。3列目は補助シートか荷室の仕切り、くらいに考えた方が良いだろう。

写真はサードシートを起した状態だが、荷室を大きくしたい時は、サードシートを床下に収納し、セカンドシートの背もたれを前に倒す。そうすれば床がほぼフラットな空間が現れる。この辺の使い勝手は普通のクルーガーと大差なく、簡単だ。

基本性能&ドライブフィール

モーターが主役

試乗車はクルーガーの上級グレード“Gパッケージ”。ハリアーと違って始動はボタンではなく、普通にキーを回して行う。スターターやエンジンはウンともスンとも言わないから最初は変な感じだが、「READY」と表示が出れば発進OKだ。ブレーキを離すと、惰性で転がり出すように走り出す。

少し遅れてエンジンがかかり、ドゥルルルというV6サウンドが加わる。アクセルオフや負荷が少ない時は、モーターだけで静かに走る。モーターが主役で、エンジンがアシスト役という感じだ。信号待ちではエンジンが停止し、聞こえるのはエアコンの作動音だけ、という静寂が味わえる。

新幹線みたいな加速

印象的なのはアクセル全開の加速だ。発進時こそ大人しいが、その後はレシプロエンジンとは異質のトルクを発揮して、電車(というよりは新幹線か?)のように平然とスピードを増してゆく。カタログ数値はエンジンが211psと29.4kgm、フロントモーターが167psと34.0kgm、リアモーターが68psと13.3kgmで、システム出力は合計446ps!かと思いきや、実際には272ps(車速100km/h時)に抑えられる。トルクは全部足すと軽く70kgm以上だが、こちらも一概に言えないようで全体の数値は記載なし。新幹線がそうであるように加速感はないが、全開加速中にはゆったりした独特のトルクステアが続き、ミューの低い路面に片輪が乗ると一瞬ホイルスピン。タダモノじゃないことを感じる。

足まわりはソフト

ワインディングも走ったが、サスペンションがソフトな割によく走る。グリップの低いタイヤで限界は低いが、それだけに操る楽しみがある。挙動がゆったり出るので、VDIMがブレーキやモーターで各車輪を一生懸命に制御する様子が分かりやすい。パワーを絞るのと同時に、4輪の駆動力を引き出して積極的にクルマを前に走らせる感じだ。緻密な制御は電気仕掛けならでは、というところ。ハリアーに設定があるスポーツサスペンション付きが試してみたくなった。

高速道路で速度計の目盛りを使い切るのは、パワー的にはごく簡単。4.5リッターV8のカイエンSの最高速(カタログ値)は242km/hだが、スピードの伸び方は引けをとらない。初代プリウスのようにバッテリーが底をついてタダの重いガソリン車になることも、普通に走る限りはありそうにない。ただ、ヤワな足まわりはパワーに負け気味で、直進安定性は心細い。もう少し重厚感が欲しいが、クルマの性格や燃費から言えばこの辺が落としどころか。

踏めば5km/L台、踏まなければ二ケタ

そうやって高速道路や山岳路を400kmほど一気に走ったところ、燃費は8.6km/L。大したことないな、と思うかもしれないが、これだけの性能のSUVだと5km/Lくらいがいつものパターンだ。ちなみに10・15モード燃費は普通のクルーガーで9.0km/L、ハイブリッドでは倍の17.8km/L。カイエンなみの加速を味っている時はガクッと5km/L台に落ちるが、アクセルの踏み込みを抑えれば街中でも10km/L以上は十分に可能。ただし、使用するガソリンはハイオク指定だ。

ここがイイ

最新家電に通じるハイテクな新しさ。ガソリンエンジンのクルマの進化はほとんどデッドエンドに来ているが、ハイブリッド車は出る度に驚くほどの進化を見せつける。21世紀のクルマは電気、という未来を示唆したのは8年前の初代プリウスだが、そこから進化して、とうとうクルマにとって重要な「速い」を実現したハイブリッド車ができてしまった。

トルクの山がなくフラットにトルクがあるので、乗ってる感じは電車みたい。そこまでは現行プリウスにも近いが、アクセルを踏むと大トルクがフィーンと発生してムチャクチャに速い加速に移る。大排気量エンジンでもなく、ターボやスーパーチャージャーでもないこの加速感は今まで感じたことがないもの。強いて言えばかつて乗ったことのある電動レーシングカートに近い。「電気の時代のスポーツカーはこんな感じの速さ」を味わうことができる。

同時に室内は静か。速さと音が一致しないのもこのクルマの未来感だろう。内装材をおごってさらに静かというハリアーハイブリッドは来週以降に試乗予定。

ここがダメ

完全にパワー負けしているシャシー。タイヤも省エネタイプで踏ん張りがきかない。また、いわゆるエンジンブレーキが利きにくいので、そのあたりは慣れが必要。これに関連して上りコーナーではリアのモーターが積極的に動いて挙動を安定させてくれたが、下りではあまり動かない感じだ。このあたりのプログラムは、修正が必要かも。ハリアーハイブリッドでも確認してみたい。

あまりに地味なルックスをふくめ、クルーガーは素のクルマの部分で魅力が薄い。500万円近いお金をかける気になれないのは残念。

総合評価

「ハイブリッド=ハイパフォーマンス」。環境対策だけでなく、クルマ本来の楽しさである「速い」を実現した最初のハイブリッド車だ。その加速感は今までにないもので、スポーツカーの未来を占うもの。時代は変わるのだ、と実感させてくれる。ガソリンエンジン崇拝者も、乗れば納得せざるを得ないだろう。

こうなると後輪駆動のハイブリッド車、いや、ピュアハイブリッドスポーツカーの出現が待ち遠しい。クルーガーは速いと言ってもSUVであり、シャシーが負けているのは明確。以前、慶応大学の六輪電気自動車(試作車)がポルシェ996をぶち抜く番組がNHKで放映されたが、ピュアハイブリッドスポーツカーが出ればいよいよ市販車でそれが実現されるはずだ。

このハイブリッドシステムはポルシェや他のメーカーにも供給されるらしいが、やがてこのハイブリッドシステムを各メーカーが独自にチューンし、独自のシャシー&ボディに載せるようになるだろう。走るハイブリッド百花繚乱時代が待ち遠しい。

試乗車スペック
トヨタ クルーガー ハイブリッド“G パッケージ”
(3.3リッター+2モーター・436万8000円)

●形式:DAA-MHU28W-BRXGK●全長4710mm×全幅1825mm×全高1730mm●ホイールベース:2715mm●車重(車検証記載値):1930kg(F:1110+R:820)●乗車定員:7名 ●エンジン型式:3MZ-FE●3310cc・V型6気筒DOHC・横置●211ps(155kW)/5600rpm、29.4kgm(288Nm)/4400rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/65L●フロントモーター形式:1JM●167ps(123kW)/4500rpm、34.0kgm(333Nm)/0~1500rpm●リアモーター形式:2FM●68ps(50kW)/4610~5120rpm、13.3kgm(130Nm)/0~610rpm●電池形式:ニッケル水素●10・15モード燃費:17.8km/L●駆動方式:電気式4輪駆動●タイヤ:225/60R17(DUNLOPSP SPORT 270)●価格:436万8000円(試乗車:448万8750円※オプション:電導ムーンルーフ+ルーフレール 12万750円)●試乗距離:約500km

公式サイトhttp://toyota.jp/klugerhybrid/index.html

 
 
 
 
 

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