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新車試乗記 第153回 トヨタ クルーガーV Toyota Kluger V

 

日時: 2000年12月23日

 

キャラクター&開発コンセプト

単なるハリアーの兄弟車じゃない! グ~ンとスポーティーな上級乗用SUV

SUVの魅力はオフロードでの機動性や優れたスペースユーティリティであり、セダンの魅力はオンロードでの快適な走行性能だ。これらの要素を融合させるべく開発されたクルマが新しく登場したクルーガーVだ。ちなみに車名の由来はドイツ語のKLUGER(賢い、の意味)と英語のVICTORY(勝利、の意味)の頭文字を合わせたもの。考えようによっては、かなりエグイ名前だ。

トヨタのラインナップには似たようなクルマとしてハリアーがある。だが、ハリアーがフォーマルでエレガントなイメージを志向しているのに対して、クルーガーVはアクティブでスポーティーなイメージをねらったという。

乗用車ベースのSUVということで、ボディは従来のオフロード四駆のような重いフレームをもたず、軽いモノコック構造を採用する。駆動方式はフルタイム4WDのほか、FFも用意される。搭載されるエンジンは2.4リッターと3リッターの2種類で、ミッションは4ATのみの設定。乗車定員は5名となる。

価格帯&グレード展開

価格帯は230~312万円。高級SUVのハリアーより若いユーザーがターゲット

グレード構成は基本的に1タイプ。それにスポーツテイストの「Sパッケージ」、ラグジュアリーテイストの「Gパッケージ」の2つのパッケージオプションが用意されている。また、それぞれに2.4リッターエンジン、3.0リッターエンジン、FF、4WDの、すべての組み合わせを選ぶことができる。価格は最も安い2.4リッター・FFモデルは230万円。これは同じ内容のハリアーよりも11.5万円安い。ターゲットである若者層に訴求するには十分お買い得な価格設定といえる。装備や質感を考えれば200万円を切ることを売り文句にする日産やマツダの新型車より割安感があるくらいだ。

2.4リッター・FFを基準に3.0リッターは30万円高、4WDは24万円高となる。装備はオーディオこそ全車オプションとなるが、かなり贅沢な内容となっており、実用的には何ら不満はない。26万円高となる「Gパッケージ」では標準グレードに対してアルミホイール、カラードマッドガード、フォグランプ、ディスチャージヘッドライト、ラグジュアリーシート、助手席シートアンダートレイなどが追加装備となる。そしてハリアーには設定されていない20万円高となる「Sパッケージ」では227/60R17インチタイヤ+アルミホイール、スポーツチューンサスペンション、カラードマッドガード、農色プライベートガラス、フォグランプ、ディスチャージヘッドライト、スポーツ・ステアシフトマチックなどが追加装備となる。このクルマには「Sパッケージ」の選択が最も相応しく、お買い得感も高いと言えそうだ。

販売店の違いからも伺える、ハリアーとクルーガーVのテイスト

なお、北米での展開は、ハリアー(現地名RX300)がレクサス店。クルーガーV(同ハイランダー)がトヨタ店となる。これが両モデルの性格を極端に表している。上級クラスの新世代SUVという基本的な位置づけは変わらないが、ハリアーは徹底的な高級指向、クルーガーVはそれに比べて実用性に振ったモデルということだ。日本市場でもその方向性は変わらず、クルーガーVが狙うのは「よりアクティブに」という若者層。ちなみに販売店は従来トヨペット店とビスタ店の併売だったハリアーはトヨペット店の専売に変更され、ビスタ店に新作のクルーガーVが投入された。

パッケージング&スタイル

ハリアーとエスティマの混血種、アクティブをキーワードとした高級SUV

北米市場に的を当てた高級SUV。ホイールベース2715mm。その成り立ちは100mmロングホイールベース化した「ハリアーの兄弟車」と分析できる。しかしそれは半分は正解で半分は間違いのようだ。ドライブレーンやリアサスをはじめとするプラットフォーム後半こそハリアー(ハリアーのベースはウインダム)の流用となるものの、プラットフォーム前半はエスティマがベース。つまりクルーガーVはハリアーとエスティマの混血SUVといわけだ。

新世代プラットフォームを使うメリットは振動、騒音の低減や前輪の切れ角拡大。ハリアーと比べてホイールベースが100mmも長いのにも関わらず、最小回転半径は逆に0.1m小さい5.6を達成できたのは、そのおかげだ。

ルックスはトヨタ版グランドチェロキー。最低地上高はネイキッドと同じ

ボディサイズは全長4685mm×全幅1825mm×全高1720mm。ハリアーよりもそれぞれ+110mm、+10、+55mmとなる。デザインはハリアーのような凝ってなく、ボクシーでシンプルなもの。トヨタ版グランドチェロキーといったイメージだ。トヨタ自身もそう思ったのか、チェロキーの記号性が強い縦バーグリルは、対米仕様(=車名・ハイランダー)になると横バーに変更するという配慮をとっている。

意外なのが空力の良さ。見た目ではハリアーのほうが良さそうだが、実は逆。Cd値はハリアーの0.35に対して、0.34を実現している。最低地上高は低いといわれているハリアーより、さらに5mm低い180mm。ちなみにダイハツ・ネイキッドも180mm。

包み込まれ感を演出するために、あえて大きなセンターコンソールを採用

ターゲットはハリアーの購入層よりも若め、ということだが、クオリティはそれを感じさせない高品位なもの。高級SUVであることを主張している。最近デビューした200万円SUV(日産エクストレイルやマツダ・トリビュート)とは価格差(およそ50万円)を考慮しても、まるで比較にならない。

インパネは、エアコンの中央の吹き出し口を左右に離し、その間にオーディオとエアコンの操作パネルを配置して視認性と操作性を高めるというモチーフはハリアーと同じ。足踏み式パーキングブレーキの採用もハリアーと同じだ。が、デザイン自体はクルーガーV専用であり、マーブル調パネルを運転席側から助手席まで連続させ、ワイド感を強めている。そしてなにより、このクルマのキーワード「スポーティー」を象徴するのが大型センターコンソールだ。当然ウォークスルーはできない。その代わりに下部はトンネル状とし、収納スペースとして使えるようになっている。発想は面白い。が、使い勝手はイマイチ。それにモノによっては、ペダル裏に転がってくる危険性もある。なお、ウォークスルーを熱望するアメリカの仕様では、この大型センターコンソールは付かない。だったらニーズに合わせてワンタッチ脱着可能、というオプションがあっても面白いと思う。

居住空間、荷室空間はハリアーよりクルーガーVのほうが兄貴的立場

居住空間の寸法は長さ2005mm×幅1500mm×高さ1230mm。ハリアーより20mm長く、25mm高い。これを活かして大柄な前後シートやゆとりの足元スペースを実現しておりくつろげる空間になっている。特に後席の広さは文句ナシ。例え前席を最後端にセットしても膝が前席裏に触れることはない。足が長くなりつつある現代の若者にとっても嬉しい限りだ。

後席のシートアレンジは、6:4分割可倒、120mmスライド、リクライニング、そして座面を跳ね上げたりという面倒が一切不要のワンタッチフォールドダウン機構など、基本的にハリアーと同じと思っていいだろう。しかし、荷室の広さはクルーガーVがだんぜん広い。荷室長は1060mmから最大で1180mmを確保する。ハリアーのほうは残念のながら広報アナウンスがなかったので定かなことは言えないが、全長の拡大差110mm-居住空間の拡大差20mmという単純な算出では、90mmクルーガーVが長いということになる。後席を倒せば長さ1950mmを超える広い荷室が確保でき、たいていの荷物はOK。なお、カタログにはその広さをアピールしようと26インチのMTB1台、その隣にスノーボード1枚が積まれている。…ん? 妙な組み合わせ。笑える。

基本性能&ドライブフィール

ハリアーとの違いは足回りにあり

パワートレーンは基本的にハリアー(マイナーチェンジ後モデル)のメカニズムを踏襲する。2.4リッター直4エンジンは、既にエスティマにも投入されているもので、スペックは160馬力/22.5kgm。10・15モード燃費はFFで10.6km/l、4WDで10.0km。3.0リッターV6のスペックは220馬力/31.0kgmで、10・15モード燃費はFFで9.5km/l、4WDで9.0km。どちらのエンジンもクリーン度は(低排出ガス車認定制度)★1つ取得する。

4WDシステムはセンターディファレンシャルにビスカスカップリング式LSDを組み合わせたフルタイム方式(前後駆動配分50:50)。これにV6モデルのみVSCがオプションで用意されている。

足回りは前後ともにハリアーと同じストラット式を採用する。が、FFモデルのリアサスが専用の新設計。さらに興味深いのが、オンロードでの走りに的を絞ったスポーツパッケージに装着されるタイヤだ。標準車では基本的にマッド&スノーの215/70R16インチサイズのタイヤを履くのに対して、スポーツパッケージは225/60R17インチサイズのサマータイヤ。加えて激しいコーナリングでもロールを抑えるリバウンドスプリングも内蔵される。ハリアーと最も差別化が図られたスポーツモデルというわけだ。

ここで不思議と思うのが、指でカチャカチャとシフトチェンジ可能のスポーツ・ステアシフトマチックが、ハリアーに全車標準で、クルーガーVにはスポーツパッケージのみ標準ということ。本来ならスポーティーさを全面に打ち出すクルーガーVのほうに全車標準する、というのが自然な考え方なのではないだろうか。

試乗したのは価格が最も安い2.4リッターのFFモデル、グレードでいえば「クルーガーV」だ。 以前、ハリアーの2.2リッターFFモデルを試乗したとき、非力というのが一番の問題だった。今回のエンジンは20馬力アップの2.4リッターとなるが、それでも試乗する前までは、加速面にいささかの不安があった。しかし、実際走り出してみると、これが予想以上の力強さ。非力さは全くない。郊外の交通の流れをリードすることもたやすい。これなら110kg増となる4WDモデルでも加速に不満を抱くことはなさそうだ。

多少、エンジン音がうるさいようだが、これもスポーティーな演出と割り切れば納得できるもの。回転そのものは4気筒としては非常に滑らかだし、このエンジンが単なる2.2リッターからのボアアップ版ではなく、新設計モノということがはっきりと感じ取れる。

車重も当時のハリアーより40kg(MC後のハリアー比では30kg)軽い車重もポイントだ。しかもフロントノーズが軽く、軽快なハンドリング。パワステも非常に上質なタッチ。ハリアーの上質感溢れた雰囲気はそのままに、足回りだけを引き締めた、という印象だ。かといって乗り心地はゴツゴツしておらず、むしろマイルド。「ハリアーよりスポーティーにしました」ということだが、その差はあまり感じられない。ホイールベースの拡大が少なからず落ち着いた走りに影響しているのだろう。

コーナリングでも回頭性が高く、ロールはほとんど感じられない。何だか、スポーティーセダンのようで、しかも視点が高いから妙な感じだ。オールシーズンタイヤとは思えない粘りもみせるし、挙動は素直。なんだこりゃ、全然SUVじゃないじゃないか、という驚きに満ちた走りだ。

高速巡航は直進性が高く、安定感はメーターを振り切るところまで続くのがスゴイ。室内騒音も許容範囲で、これまたSUVじゃないじゃないか、といいたくなってしまう。

ここがイイ

たいへん安定した、SUVを感じさせないスポーティな走り。最近登場したSUVは皆そういう味付けで、これもその仲間だが、日産より足がスポーティ、足がどっこいのマツダよりエンジンがいいという点で一番イイ(その分高いが)。室内の質感の高さも文句なし。ここは他社の追随を許さないトヨタの独壇場だ。

ここがダメ

斬新かつオリジナリティあふれる最近のトヨタデザインがまるで感じられないエクステリア。コンサバにふったというか、ハリアーと差別化を強めたというか、日本デザイン案の採用というか、ジミです、ホント。こういう保守的なカタチを欲する人が、日米に確実にいることをマーケティングしてのことだと思うので、仕方ないが、かなり残念。

それからせっかくのインパネシフトなのに、巨大なコンソールは必要ないのでは。これも差別化とコンサバ層への配慮とは思うのだが・・・

総合評価

21世紀目前に出した、という点にこのクルマの意味があるように感じられる。オン、オフ問わず快適で、走りもオンオフ問わず軽快。シート高も低くて乗り降りしやすく、荷室は広大で使い勝手良し。サイズも程々で、室内は高級感にあふれ、燃費は10km/リットル伸び(10・15モード・2400)安全性も高い。20世紀の、道具としてのクルマとしてはほぼ究極のモノ、完成型といえる。100年前の人に理想のクルマを考えさせたら、おそらくこういったSUVになるのではないだろうか(当時は道路状況も悪いだろうし)。100年前の人にはセダンはただ快適なもので実用性が無いし、スポーツカーなど金持ちの道楽で論外だろう。つまり道無き道を走れ、快適に生活を支えてくれる走りが良くて毎日使いやすいSUVこそ、20世紀の人類の夢の実現といえる。クルーガーVは20世紀人類の「賢い英知が生んだ勝利の品」だ。

21世紀はこれにさらに対環境、対情報など新たな価値を付加していくのがクルマ業界の使命となる。となると100年後のクルマはクルーガーVにロボットを組み合わせたようなものになるのではないか。この点でロボットを作っているホンダはトヨタより一歩先んじているように思えるが、ソニーがクルマを作り始める可能性だって否定できない。いずれにせよ、21世紀の早い時期に、電機メーカーを巻き込んだ業界再編が行われることは間違いないと思う。トヨタのITS事業には、例えば後続車両が運転手無しで動く自動連結運行バスなどには、東芝がかなり関与していたりするのだから。

 

公式サイトhttp://toyota.jp

 
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