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三菱 ランサー エボリューション VII新車試乗記(第163回)

Mitsubishi Lancer Evolution Ⅶ



2001年03月10日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

セディアベースの7代目、新技術投入で戦闘力アップ

世界選手権(WRC)用としての責を担い、なによりもラリーで勝つための性能を第一として生まれたランサーのスペシャルバージョン「エボリューション」、通称「ランエボ」。レースカーのベースとなるクルマゆえ、常に性能面のアップグレードが必要なのはこの種のモデルの宿命。'92年に登場した最初のモデルからは、数えて7代目となった。

ベースは昨年刷新された新プラットフォームのランサー・セディア。しかし、車名に「セディア」という文字がないことからも分かるとおり、セディアの派生モデルというより、独立したスポーツブランドと考えたほうがいい。搭載されるパワートレーンは基本的に従来のものを熟成させたもので280馬力エンジン+5MTのみ。これにACD(アクティブ・センター・デフ)やAYC(アクティブヨー・コントロール)という電子デバイスを組み合わせることによって、走りは統合制御される。なお、乗車定員は一応5名となっている。

価格帯&グレード展開

STiよりちょうど20万円安い価格差は、ルックスやポテンシャルに匹敵する強力な武器

エボVIIは従来までとは違い、特に台数限定ではない。グレードは、ロードユース主体の「GSR」と、競技車両ベースの「RS」の2グレード。GSRとRSの装備の違いは、簡単に言うと「GSRのほうが快適装備が多く、RSのほうがよりコンペティティブな装備を備えている」ということだ。その内容の差は、外装、内装、エンジン、足回りなど多岐にわたる。というか実質的にはGSRのモノグレード車といってもいいだろう。RSにはエアコンもないのだから。

驚くべきは、手間をかけて完成されたこのスーパースポーツがなんと300万円を切るプライスで手に入ること。一足先に登場した宿敵インプレッサSTiが319.8万円なのに対し、エボVII「GSR」は299.8万円(「RS」は251.8万円」)。エボVIと比べても、25万円の大幅値下げだ。もちろん全ての性能は進化した上での価格。不祥事続きだった三菱としては、せめてものお詫びのしるしというわけか?

なお、この超バーゲンプライスに刺激されてか、STiに急きょ16.5万円値下げのS仕様(303.3万円)が追加された。

パッケージング&スタイル

サイズは大きくなっても軽量化には最大限の配慮

ボディサイズは全長4455mm×全幅1770mm×全高1450mm。ホイールベース2625mm。セディア比で全高-25mm、全幅+75mm、全高+20mm。ホイールベースは+25mm。比較対照をランエボVIに替えると、全幅以外全て大きく、ホイールベースに至っては115mmも拡大されている。宿敵、新型STiと比べても、エボVIIは明らかにデカイ。それだけに剛性アップ、新技術の投入を図りながら、重量増をいかに抑えるかに力が注がれたようだ。軽量化の内容はボンネットフードとフロントフェンダーパネルのアルミ化など、その他イロイロ。結果としてエボVIの約1.5倍のねじり剛性を確保しながら、40kgの増加にとどめているのは立派だ。ちなみに同じ世代交代を果たした新型STiは約150kgの重量増。

これなら年配層のWRCファンにもウケそう、控えめになったエクステリアデザイン

ボディパネルはフロントドア、ルーフパネル、トランクリッドを除いて全て専用。フロントフードやフェンダーはアルミ製。後付風のオーバーフェンダーとしていたリア回りは、今回から緩やかに盛り上がったブリスター処理に。そのためリアドア、リアランプもエボ専用。加えて一枚翼化されたリアウイングはスノボ並のデカさ。ベースのセディアからは劇的な変身を遂げている。しかし、エボシリーズとしてみると、凄味が逆にトーンダウンしているのも確か。よく言えば機能に裏打ちされた、大人びたデザインを身につけたという印象。というか、そもそもVIが過剰であり、それ以上に凄味を持たせるのが限界だったのだろう。ここは心機一転、スッキリして、今後、VIII、IXに進化する度に凄味を持たせていくという狙いなのだろうか。

一流ブランドで統一された清楚で快適な「男の仕事場」

室内はセディアを基本に、黒一色で統一し、アルミ素材や大型5眼メーター、MOMO製ステアリング、新素材のレカロ製バケットシートが採用される。その手法は従来と同じ。しかし、スパルタンというよりも、清楚で高品質という印象が強い。中でも要所要所に使われるエボVII専用の素材は注目すべきところ。インパネの中央横一直線を貫く艶消しグレーパネルは、シルクのプロテインを配合した新素材。シートのサイドサポート部も同様で、こちらは湿気や静電気の発生をおさえるのだという。装備は軽量化の痕跡は一切なく、その環境の快適さは素のセディアよりも充実しているかも。それでいて価格はVIよりも安いのであれば、これは大バーゲンと受け止めるべきだろう。

基本性能&ドライブフィール

ホイールベースの延長で高い安定性を向上、同時に電子デバイスによって旋回能力も向上

エンジンはギャランVR-4以来伝統の2リッター直4ターボの「4G63型」。ターボチャージャーの改良や冷却系の強化、部品の軽量化などにより、280ps/6500rpmの最大出力と、クラス最高値の39.0kgm/3500rpmの最大トルクを得ている。なお、トランスミッションは6速化されず、従来の5MTが熟成された。

4WDシステムの中枢ともえるセンターデフには、従来のビスカスカップリングに代えて、電子制御油圧多板クラッチを使ったACD(アクティブ・センター・デフ)を採用。状況に応じた前後輪の最適制御(フリーから直結状態)を実現し、ターマック(舗装路)、グラベル(未舗装路)、スノーの3モードの切り替え機能も付加された。これと三菱自慢のAYC(アクティブ・ヨー・コントロール:後輪の左右駆動力を、状況に応じて電子制御でコントロールするシステム)と組み合わせることで、4輪を制御し、コーナリング性能とトラクション性能を飛躍的に向上させたという。

サスペンションは、従来と同じ前ストラット、後マルチリンク。もちろんホイールベースやトレッドの拡大に従い、剛性アップやチューニングの最適化が行われている。また、235/45ZR17にサイズアップしたタイヤを装着することで、高速走行性能や、コーナリング時の初期応答性から限界にいたるまでの旋回性能の向上を図っているという。ブレーキはフロントにブレンボ製17インチ、リアに16インチのベンチレーテッドディスクを採用。スポーツABS、冷却用エアガイドなども設定している。

ランエボVII VS インプレッサSTi

スペック上でのライバル両車の比較をしてみたいと思う。まずエンジン。 エボVIIの直4ターボとSTiのフラット4ターボと形式は大きく異なるが、最高出力はともに280馬力。発生回転数も6500rpmと6400rpmと大差ない。最大トルクでは39.0kgm/3500rpmに対してSTiは「38.0kgm/4000rpm。エボVIIが首位を奪回している。パワーウェイトレシオはエボVIIが5.00kg/ps、STiが5.11kg/ps。トルクウェトレシオは35.9kg/kgm、37.6kg/kgm。と、あくまで数値上ではエボVIIが勝っている。

シャシーのディメンションで比べれば、ホイールベースはエボVIIが2625mm、STiが2525mm。トレッドはエボが前後1515mm、STiが前1490/後1480mmと、STiのほうがやや小ぶりだ。最小回転半径もエボVIIの5.9mに対し、STiは5.4mと小回り性能に優れている。

10・15モード燃費はエボVIIが9.6km/リッター、STiが10.4km/リッターと、意外にも重量の重いSTiがリードする。しかも燃料タンク容量はエボVIIが48リットルに対し、STiが60リットルだから、STiのほうが論理的には長距離巡航できることになる。

何はなくともまず走りのスペック的に上まわるというのが後出しのエボVIIの命題。それは達成されている。

掛け値無しのパワー。これであなたもトミーマキネン?!

大人しくなった見た目とは裏腹に、走りは相変わらず攻撃的だ。エンジンは鬼のように強力で、280馬力、39.0kgmというスペックに掛け値無し。低速域からあふれんばかりのトルクが絞り出されており、どこからアクセルを踏んでも即座に強烈なパワーが得られる。ターボラグもさほど気にならない。このワイドトルクを味わってしまうと、今回6速MTの搭載が見送られたというのもうなずける。

そのシフトフィーリングは特別感銘を受ける程のものはない。もうしこしカチッとしたフィーリングが欲しいところだ。レカロのシートは小ぶりで、ホールド感抜群。窮屈なのは当然のこととして納得するしかないだろう。ステアリングはセンターに小さくエアバッグがまとめられ、スポーク部分が金属むきだしのスパルタンなもの。しかしエアバッグは本当に小さくなった。これなら文句はない。

クラッチは特別重くなく、エンジン音も特別うるさくはない。しかし、乗り心地に関しては市販車とは思えないほど硬い。スリップ止めの縞模様の舗装を通過しただけで、尖った突き上げがお尻を直撃する。この辺りはさすがに「特別なクルマ」ということを再認識させられる。

また、ホイールベースの延長で安定感が増したと言うが、その実感はない。操舵がトリッキーすぎて(ロック・ツー・ロック2回転だが、センターの遊びが少なくステアリングをわずかに切ると即ボディの動きに反映する)、真っ直ぐ走ってくれないような緊張感がある。実際直進性はないに等しく、直進路でも常にステアリングを意識していなくてはならない。

しかしこれは、自分がどれだけステアし、どれだけ加減速を行ったかが、直接身体へ伝わってくるということであり、クルマとの一体感が確認できる部分だ。自分でコントロールするという基本が、このクルマではシビアに求められる。

一般道のコーナーでは新機能のACDの効きまでは、正直よく分からなかったが、基本的には4WDを感じさせず、軽快に向きを変える。とにかくフットワークがすごく軽い。FFの引っ張られながら曲がる安定感とも、FRの典型的な挙動とも、RRのアクセルワークのシビアさとも違う、4輪に適正にパワーが伝わっている感覚は、独自のコーナリングフィーリングだ。基本的には安定しているのだが、パワーの加え方ひとつで挙動が分かりやすく変化するし、横にスライドするような感覚で曲がっていく。この後輪が流れるような感覚が、走りの面白さに結びついている。

ここがイイ

ほとんどラリーカーそのものというその走りは、究極の公道レーサー。インプレッサに比べると、スパルタンさでは完全にこちらが上。もちろん乗る楽しさでも上だ。この性能で300万円未満の価格は大バーゲンだろう。自分でここまでチューンしたら、とてもこんな価格ではできまい。乗り心地も確かに固いが、路面がよければ無茶苦茶に不快というほどでもない。チューニングした足にありがちな、低速でのヒョコヒョコした上下動はないから、街乗りでも使えないことはない。

ここがダメ

内装は仕方ないとはいえ、もう少し演出が欲しいところ。歴代で最もおとなしく、まるでセディアのままなのはちょっと興ざめだ。

総合評価

エボVIIを誰でも速く走れる「最強マシン」と結論づけるのは簡単だ。爆発的な加速力、強烈な乗り心地、軽快なフットワーク。そしてAYC+ACDで走っている限り4WDとしての弱点も感じられない。コーナーではいい意味で接地感に乏しく、ステアリングでも、パワーのオンオフでも簡単に向きを変える。ウデがあれば4輪ドリフトに持ち込むこともそう難しくないだろう。そういったタイヤが接地しなくなる領域でもそのコントロール性が高いというのがこのクルマの真価だ。

とはいえこれを公道で試すのは相当無理がある。運転者にはかなりのスキルが求められるが、広報資料のアナウンスから読みとれることは、「ドライバーはあーだ、こーだと考えることなく、クルマ側が“トミーマキネンの走り”に導いてくれる」ということ。しかし運転の下手な人にはこれはかなり危険だと思う。エボVIIは乗る人を選ぶクルマだ。

欲しい人にはこれで300万円なら絶対にお買い得だし、逆にいえばいらない人には何の意味もないクルマだが、三菱の苦境をいくぶんでも救うのは間違いなく、イメージアップ効果は大きいだろう。しかしもし危険なクルマキャンペーンでも起きれば、三菱の息の根は止まってしまう。結構両刃の剣のようにも思えるのだが。

公式サイト http://www.mitsubishi-motors.co.jp/

 
 
 
 
 

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