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三菱 ランサー GSR エボリューションV新車試乗記(第19回)

Mitsubishi Lancer GSR Evolution V



1998年03月20日

 
 
 

カーデータ

●カテゴリー:スタンダードセダンのハイパフォーマンス仕様
●クラス(排気量):1997cc
●キャラクター:もともとランサーは三菱の主力車種となるFFファミリーセダン。豊富なグレード構成となる中、モータースポーツ参戦で培われた高い技術をフィードバックした高性能モデルがランサーGSR/RSエボリューションである。ライバルのスバル・インプレッサWRXと並んで世界最強の4WDスポーツと謳われている。
●コンセプト:WRC参戦を目的に2リットルDOHCターボ、大型リアスポイラー等を採用したエボシリーズは、'92年9月のエボIにはじまり、毎年改良が加えられ、エンジンスペックをはじめ常にポテンシャルアップが図られてきた。現行型となってエボIVが登場、280馬力を達成した。
そして今年1月に登場したのが最新のエボVだ。今回のハイライトはエンジンのトルクアップ、ブレーキ容量アップ、ワイドトレッド化による操縦安定性の大幅な向上。また、オーバーフェンダーの装着で3ナンバーボディとなった。
●注目度:常にクルマ好きの熱い支持を受けてきたランエボの最新型なのだから、男性の「おっ」という視線が集まる。エボIVでもいまだ注目度は高い。
クルマに詳しくない人が見れば、ランサーと言う名前は知っていたとしてもこれがランサーということには気付かないだろう。
●特筆装備:今回の動力性能における改良点を上げてみた。

○2リットルターボエンジン・4G63型は、ツインスクロールターボチャージャーのノズル面積拡大、ピストン軽量化、ラジエター&オイルクーラーの大型化、ラジエタースプレーの新設などにより、最大トルクが2.0kgmアップの38.0kgmとなった。これはR33スカイラインGT-Rを凌ぐ数値である。
○シーケンシャルゲージの剛性向上、シフトノブの小型化によりダイレクト感のあるシフトフィールを実現。
○フロントサスペンションのロアアームの延長、リアサスペンションの取り付け位置変更によってトレッドを大幅に向上。もちろん足まわり剛性の向上も図られ、コーナリング時の操縦安定性をアップ。
○225/45ZR17タイヤを採用。グリップ力が上がり限界性能が高まった。
○ブレンボ製ブレーキがフロント17インチ4ポットキャリパー、リア16インチ2ポットキャリパーに容量アップし、高温時の効きが大幅に向上した。
○三菱自慢のAYC(アクティブヨーコントロールシステム)にフロントヘリカルLSDを組み合わせ最適な4輪トルク配分を実現した

外観上はオーバーフェンダーが装着され全幅が拡大された。エボIVからの変更は多岐にわたり、ボンネット、フェンダー、バンパーなどフロントセクションは全面変更。リアはバンパー、リアスポイラーが変更された。なお、リアスポイラーは角度調整式となっている。
●燃費:10・15モード 9.7Km/リットル
●価格・販売:オーディオ以外の快適&安全装備はすべて標準設定となっていて324万8000円。エボIVよりも25万円アップとなったが、搭載される技術や装備を考えれば納得いく値段だ。100Kgもの軽量化をはかった競技用のRSは259万8000円。
限定6000台でほぼ完売状態のようだが、後に2000台の追加販売の噂もある。ちなみにエボIVは3000台追加、さらに1000台追加で計1万2000台が生産されている。

スタイル

これまでのエボシリーズに一貫して言えることだが、ルックスが怖すぎるのでは。コテコテのエボIVよりは多少なりとも顔つきはスッキリしたものの、今度はオーバーフェンダー装着で存在感、迫力ともに歴代ナンバーワンなのは間違いなし。

パッケージング

ランサーエボリューションの魅力はその高い性能とともに4ドアセダンの高い実用性にもある。前席にはホールド製の高いレカロ製バケットシートが装備され、後席は常に突き上げ感があるものの大人2人が十分にリラックスして乗れる居住性を確保している。トランクルーム広さも十分だ。

内装(質感)

基本的にはエボIVと同じ。つまりインパネはベースのランサー/ミラージュと同じということ。

シート・ステアリング・シフト感触

レカロ製フルバケットシートは新形状となり、モモ製の本革巻きステアリング、小型化された本革巻きシフトノブが採用される。

ショルダー部までホールドするシートは体全体を包み込み、それだけでファミリーセダンと違う緊張感がみなぎり、スポーツマインドを揺さぶる。資料によるとクラッチが若干重くなっているとあったが、実際には全く重いとは感じず、シフトのタッチも軽い。

ラリーカーのベース車というと、かなりハードなイメージを抱いている人も多いと思うが、決して乗り手を選ぶような特別なハードなクルマではない(性能は確かに特別だが)。街乗りにも十分使える。

動力性能(加速・高速巡航)

速い! 文句なしに速い! このセリフを先週のポルシェ911でも書いたが、体感的には全然異なる速さだ。大排気量の280馬力車の豪快な加速ではなく、「スコーン」と言うシャープな感じ。とはいっても38.0kgmという最大トルクをわずか3000回転域で発生するのだから、並の2リットルターボとは比べものにならない厚いトルク感もある。

高回転の伸びもシャープ。7500回転がレブリミットになってしまうが、まるで天井知らずに伸びる感じで、エンジンをガンガン回すのが楽しくなってしまう。ついつい180km/hまでアクセルを踏んでしまうほど。逆に高回転域まで回すことのできない街中走行ではストレスがたまる。

ハンドリング・フットワーク

残念ながら限界域でのコーナリング性能は試せなかったが、その実力はラリーファンなら説明するまでもないだろう。一般的な走行でも気持ちのいいシフトフィールとあいまってハンドリングも重からず軽からずの適度なフィールで満足できる。

乗り心地

ベースのファミリーセダンという視点から見るとかなり硬く不快に感じられるが、ハイパフォーマンスカーという視点から見ればいたって快適。思ったほどに強い突き上げも強くないので、もっとハードな乗り心地にして、ラリーカーのムードを演出してもいいのでは、というのが個人的な意見。もっともエボを購入するお父さん層は、そのあたりのことをしっかりと理解しているはずなので、このくらいの硬さがちょうどいいはず。しかし、奥さんや子供からは結局、不満の声が出てくるだろう。実際、今回の試乗で後部座席に乗った人も、かなり振動が激しくて不快だったとご機嫌ななめだった。スポーツカーとファミリーカーのぎりぎりの妥協点と言う乗り心地だ。

騒音

マフラーからはそれなりの迫力のあるサウンドが響く。しかし、個人的には乗り心地と同じく、もっとやかましいくらいの方がラリーカーらしくていい。でも騒音は人に迷惑をかけるので、このくらいがベストかも。

安全性

デュアルエアバッグ、4ABSがGSRに標準装備となる。

環境対策

資料には特別な記載はされていなかった。

ここがイイ

ファミリーセダンとしての取り回し性や居住性を一応持ちながらも動力性能は超弩級ということ。さらにハードなマシンを希望するなら競技用のRSを買えばいいわけで、日常性を持ったスーパーカーという意味ではほぼ究極の姿か。ボディが大きすぎないことも、スポーツカーぽくていい。このようなハイパフォーマンスなクルマがそもそも必要かという意見もあると思うが、ガソリン車というもののひとつの「夢の姿」としてどんな時代になっても、わずかな台数でかまわないから、生き続けて、開発し続けてほしいものだ。

ここがダメ

「俺のクルマが最強マシンだ」という満足感が1年しか持たないこと。毎年進化し続けているエボだけに、来年にはおそらくエボVI(シックス)が発表されるだろう。本当はこういった正常進化は喜ばしいことなんだが、購入した人はなんだかツライ。またここまで凄味のあるガンダム的なスタイルになると、欲しくてもスタイルに抵抗があってためらう人も多いのでは。

総合評価

ずば抜けたこの性能は、当然、公道では発揮できないので(ブレーキ性能はそれなりに活躍の機会があるが)、有り余った性能はサーキットで楽しむべきだが、その機会も場所も少ないのはちょっと悲しい。そこでつい、公道でも試したくなって、暴力的な運転となっていく可能性のあるわけで、そのあたりのマナー&自制が効く人に購入してもらいたい。

お勧め度(バリューフォーマネー)

このパフォーマンスにして、この価格は激安。ラリーファンや速さを求める人なら満足度はかなり高い。ただ間違っても妙なミエで買わないこと。ランエボVIが発売された途端に満足できなくなってしまうからだ。ライバルのインプレッサWRXも毎年進化しているし、毎年買い替えるはめになる。とはいえ下取り価格は高値維持確実。3年乗っても満足できる下取り値が出るだろう。ちなみに現在のランエボIVの平均下取り価格は230~240万円ほど。

 
 
 
 
 

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