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ランチア イプシロン 1.4 16V新車試乗記(第320回)

Lancia Ypsilon 1.4 16V

(1.4リッター・5MT・239万4000円)

2004年06月05日

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キャラクター&開発コンセプト

プントがベースの小さな高級車

ランチア・イプシロンはフィアット・プントをベースに「小さな高級車」として仕立てたモデル。小型でありながら、高級車に遜色ない作りや雰囲気が特長だ。初代(1996年)はフィアット傘下のアウトビアンキ・Y10の後継車として登場。今回のモデルは2003年に登場した2代目 (Y10から数えれば3代目)だ。

1990年代半ばにマツダが輸入権を返上して以来、ランチアの日本への正規輸入は途絶えているが、一方で長年イタリア車の輸入を手がけてきた老舗「ガレーヂ伊太利屋」(東京都)が並行輸入を行なっており、それを全国の販売協力店が取り扱っている。パーツに関しても、フィアット本社パーツ部門(フィアット・リカンビ)との正規契約を結び、安定した供給体制を整えているようだ。

先進技術やラリーで名を馳せる

ランチアは1906年創業のイタリアの老舗メーカー。戦前から戦後にかけてラムダ、アプリリア、アウレリアなど、先進的な技術と美しいスタイルを備えた名車を生み出した。60年代末にフィアット傘下に入った後は、グループ内の上級ブランドとしてフルヴィア、ベータ、テーマ、デルタなどを生産。ラリー活動にも注力し、ストラトス、037ラリー、デルタ・インテグラーレ等、歴史に残る傑作マシンで黄金期を築いた。ランチアというブランドには、高貴さとラリーという、全く異なる2つの顔がある。

価格帯&グレード展開

豪華さの割に安い?

ガレーヂ伊太利屋が日本に輸入する仕様は、1.4リッターの左ハンドル・5速マニュアル車(239万4000円)。すでに5速セミATモデル(249万9000円)も日本に上陸している。ベース車のプント(1.2リッター+CVTで184万8000円、1.8リッター+5MTで208万9500円)より50万円ほど高いが、その装備や仕立てを見れば納得できるところだ。

オプションとして、大型サンルーフ「スカイドーム」(10万5000円)やアルカンタラ(合成スウェードの一種)シート(10万5000円)、ファブリックの「グラマーシート」(10万5000円)、5人乗り仕様(後席3シートベルト+ヘッドレスト追加、2万6250円)、アイボリーペイント(5万2500円)、メタリック/マイカペイント(4万2000円)などを用意する。

パッケージング&スタイル

幅はやや広いがヴィッツ、マーチと大差ない大きさ

サイズは全長3780mm×全幅1720mm×全高1530mm。現行プントと大きく違うのは、60mmもワイドな3ナンバーサイズの幅だ。ホイールベースは逆に70mmも短く、全長も短い。分かりやすいところで言えばトヨタ・ヴィッツと同じような大きさだ。

目立つのは何と言っても、過去のランチアから受け継ぐ大型のメッキグリルだ。グリルレスだった先代プント同様、ここから風を導く必要はないようで、このグリルもダミー。しかし、そう見えないところはさすがと言うべきか。少なくともマイチェン後の現行プントのように、取って付けた感じはしない。後ろ姿は日産マーチにちょっと似ている。広さよりパーソナル感を重視して、後半部分の腰から上を絞り込んでいる。

国産車では得難いインテリア

イプシロンの大きな魅力はそのインテリアだ。センターの3眼メーターはクリーム地にクラシカルな書体をプリントしたアンティーク時計風。周りを繊細なクロームのリングが囲む。よく見るとそれほど凝っているわけではないが、演出効果は抜群。ダッシュボードに張った光沢のある生地のセンスもさすが。国産車ではいくらお金を出しても得られない? 上質感に溢れる。

小型車離れしたシート

シートも素晴らしい。試乗車は自然な風合いとソファのような形状が面白い「グラマーシート」仕様だが、見た目だけでなく座り心地も小型車ばなれしている。着座位置は高いが、収まりはけっこう良くて乗車姿勢も自然だ。

2人掛けと割り切った後ろのシートも、おかげで左右にゆったりしている。前後スライドを一番後ろにしてリクライニングを好みの位置にすれば、空間も十分。その分、荷室はNEW MINIより広く、ヴィッツより狭いが、日常的な買い物には十分だろう。荷室を広げる場合、シートはダブルファンクションで畳む。床に大きな段差が残るが、ヘッドレストを外す必要はない。

基本性能&ドライブフィール

拍子抜けするほど運転しやすい

ランチアは英国への輸出を行っておらず、右ハンドル仕様は存在しない。今回の試乗車も左ハンドルのマニュアル車で、間もなく上陸する2ペダルマニュアル(セミAT)もハンドル位置は左だ。

というと、右ハンドルのオートマしか乗ったことがない人はイヤかもしれないが、マニュアルが何とかOKの人なら、運転した感じは拍子抜けするほど普通。軽い電動パワステ、軽いクラッチ、高い目線による見晴らし、5ナンバー枠一杯の国産スモールカーと実質的に変わらないサイズで運転しやすい。唯一知っておくべき点は、バックに入れる時にレバーのリングを上げてシフトすることのみ。

ソフトで重厚な乗り心地

ほっとする運転感覚は、柔らかな乗り心地も理由の一つ。欧州車は全体に固めが多いが、イプシロンのサスペンションは国産車以上にソフト。柔らかいだけでなく、性能の良いダンパーや各部の取り付け剛性、ハーシュネス(路面からの突き上げ)の遮断が優れてるせいか、動きに安っぽさがない。ホイールベースが短いことを考えると、ちょっと驚きだ。一般的なセダンで言うと、2.0リッタークラスに匹敵するのでは、とさえ思う。

穏やかな快音

上質さのもう一つの理由はエンジンだ。滑らかにまわり、音もうるさくない。遮音材をケチってないせいもあるだろう。1090kgに対して95ps、13.0kgmとパワーに余裕はないが、リミッターが効く6500回転まで気持ちよく回るイタリアンなエンジンだ。穏やかな快音と言ってもいい。

高速ツーリングものんびり楽々

足がソフトなので、山道を飛ばすのは不得意だが、195/55R15の大径・偏平タイヤで、安心感は高い。軽くてスローなパワステとロールはやる気を削ぐし、そもそも基本的に癒し系なので、不満に思うことはないだろう。女性の同乗者には喜ばれるクルマだ。

イタリアの貴族も、気が向けばメルセデス・ベンツやアルファ166の代わりにこのイプシロンで、アウトストラーダ(イタリアの高速道路)を突っ走ることがあるだろう。直進安定性は日本の法定速度+アルファくらいなら十分。ただし重心が高く、車重は軽いので、横風や路面の影響はそれなりに受ける。

100km/h時のエンジン回転数はおおよそ3000回転だが、静粛性は2.0クラスに匹敵するくらい高い。乗り心地はフラットかつソフトなので、ロングツーリングも苦にならないはずだ。

ここがイイ

完全にクラスレスなこと。ボディサイズは小さくとも、前2席に狭さは全くないし、内装には十分な高級感があり、仕上げも上質だ(フィアットやアルファより、チリもきっちり合っているし、バリもない)。乗り心地も上品で、室内はたいへん静か。120㎞/h以上の巡航でもBOSEのオーディオが活きる。それに加えてランチアとかイプシロンといった、日本では聞き慣れないイタリア物のブランド性。むろん、蘊蓄を語れるだけのブランドとしての実力も備える。大人(オヤジか?)の乗れる小さなクルマは本当に少ないが、その筆頭に数えられるクルマだろう。

ここがダメ

電動パワステは軽目と重目がスイッチで切り替えられるが、重い方は無理矢理重くしたような違和感がある。重さが均一に感じられないのだ。クラッチの軽さとバランスをとる意味でも、軽い方だけでいいと思う。最近のクルマとしては致し方ないが、視界をさえぎるAピラーの太さも気にすれば気になるところ。

100㎞/h時はトップギアで3000回転ほど回るが、これをもう少し高めのギアで抑えたい。この回転以下でもトルク感はちゃんとあるし、150㎞/hあたりでも静かで直進性も悪くないから、エンジン回転の高さだけが違和感となってしまう。もう一段、オーバートップギアがあれば、あるいはギア比が高ければ、高速巡航でもこのクラスのクルマとは思えない高級感が味わえるはずだ。

日本で乗るならトルコンATがあれば、もちろん言うことなし(セミオートマでも悪くはない)。だが、右ハンドルはいらないだろう。スペシャリティ感が一気に減少してしまうからだ。

総合評価


クラシカルなムードを持たせた小さな高級車は、皆がやりたがるところだが、皆が失敗する分野でもある。イプシロンは大きさ以外、高級車並み、というか並みの高級車以上のクルマになっているところがいい。しかも日本ではほとんど見かけないゆえ、「ランチアって何? イプシロンて何?」と聞かれたら「イタリア物の高級車」と答えればいい。で、見せても「小さくて変なカタチ」と驚かれはするが、乗せれば「結構広いし内装がオシャレ。乗り心地もいい。静かで、ステレオもいい音」と、けして「高級車」というのがウソではないと思われるはずだ。

街乗りする限り、ヴィッツもイプシロンも同じ便利さ、快適さがあるが、クルマの持つ記号性の部分で正反対だ。ヴィッツもその上級版クラヴィアで同様のアプローチをしたが、量産車とマイナー車の記号性における力の差は歴然。もちろん、この勝負ではマイナー車の勝ち。その分、メンテや経費では苦労することになるのも間違いないが。

クルマ好きとしてみれば、このクルマ、実はたいへん楽しい。足はヤワだし、パワーもない。エンジンはさすがに高回転で心地よいが、常識的な意味で走りを楽しむクルマとは思えない。ところが近年のクルマにないショートホイールベースがもたらすコマネズミのような回転性が、低い速度域で「オッとっと」と言わせる楽しさをもたらしてくれる。まったくヤワなゆえ、かえって楽しいのだ。スコスコ決まるシフトを動かしていると、イプシロンのルーツともいえる、往年のアウトビアンキA112を思い出してしまった。「欲しいメーター」の針がグッと振れたのは確かだ。

試乗車スペック
ランチア イプシロン 1.4 16V
(1.4リッター・5MT・239万4000円)

●形式:-●全長3780mm×全幅1720mm×全高1530mm●ホイールベース:2388mm●車重(車検証記載値):1090kg(F:680+R:410)●乗車定員:4名●エンジン型式:843A1●1368cc・DOHC・4バルブ直列4気筒・横置●95ps(70kW)/5800rpm、13.0kgm (128Nm)/4500rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/-L●10・15モード燃費:-km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:195/55R15(CONTINENTAL Premium Contact)●価格:239万4000円(試乗車:254万1000円 ※オプション:グラマーシート 10万5000円、メタリックペイント 4万2000円)●試乗距離:約200km ●車両協力:渡辺自動車 鶴舞ショールーム

公式サイトhttp://www.garage-italya.co.jp/m_lancia.html

 
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