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スズキ アルト ラパン新車試乗記(第208回)

Suzuki Alto Lapin

 

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2002年02月17日

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キャラクター&開発コンセプト

雑貨やアクセサリーのような存在を目指す

スズキ第8番目の軽自動車として加わったセミトールワゴン「アルト・ラパン」は、昨年の東京モーターショーに参考出品されていた「ラパン」の市販バージョンだ。若い女性のライフスタイルの演出を狙って開発されており、新しいセダンタイプの軽自動車を提案する。ベースは昨年末にデビューしたばかりのMRワゴンだ。

特徴は「居心地の良さ」や「テイスト」を重視したというデザイン。ボディタイプは5ドアのみで、パワートレーンは全車オールアルミ製660cc直3エンジン+コラム式4速ATとなる。目標販売台数は5000台だ。

価格帯&グレード展開

3グレード構成だが、主力は「X」

エンジンは1種類で、全て4速ATなので、グレードの差は基本的に装備と細部のデザインの違いだ。安い方から「G」(95万円)、「X」(106.8万円)、「X2」(109.8万円)の3種類となる。

「X」には往年の「ミニライト」そのものと言っていいデザインの13インチ・10本スポーク・アルミホイールが付くほか、MD・CDプレーヤー付きチューナー&6スピーカー、そしてステアリング右側にアナログ・クロックが備わる。またエアコンのルーバーやセンターコンソールの一部、メーターベゼルなどがシルバーでペイントされる。「X2」はルーフがホワイトになる。

ABS(ブレーキアシスト付)は、2.5万円アップ、ナビゲーションシステムは10万円アップ、パールホワイト塗装は2万円アップとなる。ボディカラーは9色から選択可能。またどのグレードにも4WDの設定があり、価格は2駆モデルの12.2万円アップだ。

パッケージング&スタイル

「丸みのある四角」がテーマ

ラパンの一番の魅力はそのデザインだ。丸みがありながらスクエアな箱形エクステリアはどことなくレトロだが、よくある安直さはない。デザイナーは使い込まれたアルマイト製の弁当箱をイメージしたというが、言われてみるとラパンは確かに「弁当箱二段重ね」、という感じである。具体的には「長方形」でディテールを統一したということで、言われてみるとフロントグリル、各ウインドウ、ドアミラーなど、あくまでも丸ではなく長方形になっている。ちなみにフロントグリルにあるスズキの「S」マークには、ちゃっかりウサギ・マークが入っていて芸が細かい。

全体のイメージとしては何かに似てる…と思わないでもない。トップグレードのルーフをホワイトに塗る手法は昔のミニそのもの。スクエアなスタイルはフィアット・パンダっぽい。フロントのライトやリアゲートのリブなどはシトロエン・アミ、フロントまわりは日産 ラシーンにもそっくりだ。1999年に発表されたフォードのコンセプトカー「021C」(ニュービートルをデザインしたジェイ・メイズと産業デザイナーとして有名なマーク・ニューソンが手がけたモデル)にも似ている。フォードのコンセプトカーがスズキから市販化された、と言ったら怒られるだろうか。

全高は1505mm(2WD車)と最近の軽自動車の中では低め。このあたりの寸法も安心感のある見た目につながっている。全長×全幅はもちろん軽自動車枠一杯の3395mm×1475mmだ。ホイールベースはベースとなったMRワゴンと同じ2360mm。

家具や雑貨のある部屋を目指した

インテリアでまず目を引くのが、運転席・助手席前面を一体にしたインパネ。オフホワイトにペイントされ、グラブボックスや丸形のメーターやルーバーが配置されたそのダッシュボードは、ミニなどの'60年代のクルマを思わせる。ただし安易に木目調のパーツを使わず、雰囲気はあくまでもモダンだ。3本スポークのステアリングやその奥にある丸形一眼メーターの質感も高い。

ステアリング右側に付くアナログ・クロックは、雑貨屋に並んでるようなシンプルなデザインで、なかなか見やすい。センターコンソール側に付けて助手席の人に自慢したくなるほどだ。夜になってライトを付けると、盤面発光タイプのスピードメーター共々なかなか美しい。多くの人が購入後、初めてライトスイッチをオンにした時、「あー買って良かった」と思うに違いない。

室内は、前後長、高さとも全く問題のない広さ。逆に天井が妙に高いトールデザインの軽自動車よりも、空間が自然で居心地が良い。eKワゴンでも感じたが、幅が規制される軽自動車で適度と言える高さは、この1500~1550mm程度ではないだろうか。

またシートの座り心地もいい。最初はスポンジが特殊なのではないかと思ったが、これはどうやらラパンのシートに使われているしっとりした肌触りの表皮によるもののようだ。サポートも適度にある。後席(ヒップポイントは前席より70mm高い605mm)の座り心地も前席同様良い。

基本性能&ドライブフィール

脱軽自動車的な、快適な乗り心地

パワーユニットはMRワゴンなどスズキ車でお馴染みのK6A型・自然吸気・直列3気筒DOHC VVTエンジン(54ps/6500rpm、6.4kgm/3500rpm)1種類のみ。オートマチックは全て4速オートマチックのコラム式だ。技術的には特に何ということもないスペックで、高級感があるとは言えない3気筒エンジン独特のセルの回り方もいつも通り。実は外観の質感が高かったため期待も高かったのだが、この時は一瞬がっかりした。

ところが走り始めて、乗り心地がいいのにまず驚いた。軽自動車離れしたしっとり感というとオーバーだが、サスペンションの柔らかさは決してボディの弱さをごまかすためのものではない。うねった路面や段差を越えるときも、グラッと来て冷や汗が出たり、ガツンと来てビックリすることもない。

ワインディングではアンダーステアの安定志向なのだが、それもイヤじゃない感じ。高速道路の直進性も問題ない。長距離をエンジンパワーが許す限りのペースで走ったが、ボーとしていると普通車を運転してるような錯覚に陥った。4ATを搭載することもあってエンジン音も気にならない。「部屋感覚」を目指して静粛性を徹底追及しているというのも納得できる。最高速はメーター読みで130km/hあたり、巡航は120km/hくらいが快適限界速度だ。前述のように安定サイドのシャーシーなどと相まって、とても楽ちんにフラットアウト走行が可能だ。

ここがイイ

軽自動車はここまで良くなってきた、ということが実感できるクルマ。室内は広く、特に室内長は軽最高水準だけに、4人乗りに耐えられる。リアシートバックはリクライニング付きだ。質感は高いし、走りはふんわり快適だし、軽量のためパワーはほどほどでもそう不満のない動力性能だし、4ATだし、何より静粛性が高いし、一枚板風のダッシュボードも悪くないし(センターカーナビ!)、小物入れはやたら多いし。何かもう小型車なんかいらないぞ、と思わず言ってしまった。

ここがダメ

が、今は冬。エアコンのスイッチを入れていなかった。そこでエアコンオン。やっぱり相当パワーを持っていかれる感じ。ここが軽自動車の辛いところ。それから同じ軽のスマートKと比較すると、高速巡航にも不満がある。あちらは130km/h巡航が楽勝。軽自動車も100km/hまでが合法になった以上、交通の流れに乗って走るためにはスマートK並の余裕が欲しい。それがあればホントに小型車はいらないかも。

クルマのそこかしこにある「女の子」チックなデザイン(ダッシュボードの引き出しとか)が男の子にはどう映るかが心配に思えてくる。グッズ感覚を売り物としているものの、このままではちょっと女の子向けすぎる。これがヴィッツとかヨーロッパの小型車みたいにもう少しユニセックスなクルマだったら、あるいは男の子(やオジさん)にも対応できるキットでもあれば、と思わずにはいられない。

総合評価

東京モーターショーではいま一つピンと来なかったのだが、東京オートサロンでは様々なカスタマイズモデルが発表されていて、ずいぶんカッコよく見えた。特に旧いGTカー風のドレスアップ(写真参照)は昭和40年代の軽自動車を彷彿とさせ、オジさんの涙を誘った。実際、走ってみると足回りはかなりスポーティに仕立てられそうなので、アンダーパワーな軽自動車を振り回すという、昔の遊びが再現できそう。イノチェンティミニとかアウトビアンキA112アバルトなど、往年のベビーギャング風にいじり倒したいところだ。

まあ、全体的には、屋根を白く塗るあたりをみてもミニをベースにしたネオクラシックカーに分類されるのだろうが、メッキグリルをつけなかったのは大正解。もしつけたら、いわゆる「真似ッコ」となってしまう。そのあたりの見識は悪くない。そして何より、いよいよセダン・クーペ系は先祖返りを始めたことを実感してしまう。アルトをいかにうまくモダンにデザインしても、もう売れないだろう。それよりこうしたレトロ系のデザインにすれば、セダンだってミニバンに負けないくらい売れるかも。軽に限らず、案外このあたりにセダン復活のカギがあるかもしれない。オートサロンにはマツダがコスモのレプリカを出していたが、これも出れば当たりでしょう。

実際、オートバイはそういうパターンで生き延びてきた。多くの国産アメリカンバイクは成熟商品であるハーレーのレプリカといっていいが、これがオジさんから若者にまで売れている。同じように性能的には成熟商品となったセダン・クーペ系も、早くレプリカを作ったメーカーが勝ちをおさめるはず。クライスラーPTクルーザーを筆頭に、フォードのTバード、ミニなど、海外のメーカーではその動きが加速中だ。その意味では、軽を一通り作りつくしたスズキによるラパンは高く評価できる。スズキは同じプラットフォームで究極の軽ミニバンMRワゴンを作ってもおり、この2台は、今後のクルマの方向性を見事に表していると思う。

 

公式サイトhttp://www.suzuki.co.jp/dom4/lineup/lapin/index.html

 
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