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スバル レガシィ B4 ブリッツェン 6新車試乗記(第240回)

Subaru Legacy B4 Blitzen 6

(3リッター・4AT)

2002年10月19日

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キャラクター&開発コンセプト

セダンは初代から走りのモデルだった

レオーネに代わって'89年に登場したのが初代レガシィ。当初からセダンとワゴンがあったが、特に「ツーリングワゴン」と銘打ったワゴンは大ブレーク。「ステーションワゴンといえばレガシィ」の評価を確立した。

一方、セダンの最強版たる初代RSは当時のWRCベース車。若き日のコリン・マクレーが大柄な車体を振り回して悪路をカッとんだ。しかし2代目になると小型で戦闘力の高いインプレッサにその地位を奪われ、スポーツイメージは急降下。地味なデザインも手伝って、存在感の薄いモデルになってしまった。

3代目でついにセダンがブレーク

セダンの人気を何とか盛り上げたい(というか台数を売りたい)。そこで登場したのが、'98年発売の3代目レガシィ・セダン、B4だ。専用の名前とワゴン以上の走りのイメージが与えられた。当初はRSK(2.0ターボ)とRS(2.0NA)のみ。やがてワゴンに準じて、2.5NA(RS25)や3.0水平対向6気筒モデル(RS30)などが加わった。

今年(2002年)1~8月の販売実績はワゴンとの合計で平均約4,500台。発売から4年を経たモデルとしては悪くない。過去2モデルでは1:9から2:8と言われたセダンとワゴンの比率は、現行ではイーブンに近いという。これはスゴイことだ。

ブリッツェン初の6気筒モデル

ブリッツェンはドイツのポルシェ・デザイン社が外装デザインをした限定車。2000年にまずB4ベースで登場。2001年にはツーリングワゴンも加わり。各1,000台限定で発売。翌年2月には2002年モデルが合計1,500台限定で販売された。

2002年8月21日に発売されたブリッツェン6は、3.0リッター6気筒を搭載したRS30およびGT30がベース。外装は基本的にブリッツェン2002と同じだ。今回は2002年12月までの期間限定、受注生産となる。いずれもスバルのモータースポーツ部門であるSTi(スバル・テクニカ・インターナショナル株式会社)が架装を行う「STiカスタマイズドカー」。登録には改造申請が必要となる(ユーザーが意識することはないが)。

価格帯&グレード展開

ベース車の約50万円アップ

ブリッツェン6は基本的にモノグレード。B4が322万円。ツーリングワゴンがそれより33万円高い355万円(価格は東京地区)。DVDナビがメーカーオプション(20万円)となる。従来のターボモデルは5速MTも選べたが、6気筒版は全車4速ATとなる。

ベースとなったRS30(275.8万円)/GT30(302.8万円)より、それぞれ46.2万円と52.2万円高いが、マッキントッシュ製オーディオや本革シート、そして専用のエクスエリアを思えば納得できる価格だろう。

いちおう、ライバルは国産車ではアルテッツァ・ジータ、クラウン・アスリート、日産・スカイライン/ステージアあたりだが、アウディA4やBMW・3シリーズといったドイツ系セダンも考えられる。

パッケージング&スタイル

身も心もポルシェ!?

ブリッツェンのハイライトはポルシェ・デザイン社によるエクステリア。同社社長は40年前にポルシェ911をデザインしたフェルディナント・A・ポルシェその人であり、ここに来て、ポルシェ911と同じ水平対向6気筒を積むクルマを同社がデザインしたことは単なる偶然とは思えず、感慨深い。そういう意味ではブリッツェン買うなら6気筒! だろう。

内外装はスペシャルだが、基本はベースのまま

ポルシェ・デザインが開発したパーツはフロント/リアバンパー、フロントグリル、サイドスカート、リアスポイラー、そして17インチアルミ。さらに細々した専用パーツが付く。逆に言うとこれらと内装の違いを除けば、つまり走りの部分だけをとれば、ブリッツェン6はRS30/GT30と基本的に同じだ。

赤以外だとちょっとジミ

B4 ブリッツェン6のサイズは、全長4630mm×全幅1695mm×全高1410mm。ベースのRS30より25mmだけ長いだけ。普通ならオーバーフェンダーを追加して「ハイ、カッチョいいスペシャルモデルの出来上がり」とやるところだが、職人気質のスバルはきっちり5ナンバー幅を守る。これは取り回し云々もあるが、空力面も考えてのこと。そもそもポルシェ・デザインは徹底的に機能にこだわるのがポリシーなのだ。しかし、そういった生真面目さがブリッツェンを含むB4全体の地味さのゆえんでもある。

実際、試乗したクルマが黒(ブラック・マイカ=よく見るとかなりキラキラしている)だったこともあって、一瞬見ただけでは普通のB4と判別困難。試乗中に同じ黒のB4と何度か擦れ違ったが、こちらがブリッツェンであることに相手は気付いただろうか? テーマカラーのプレミアムレッドであれば、おそらく見る方も見られる方もだいぶ印象が違っただろう。ちなみにこの赤は、他のシルバー、ブルー、ブラックに比べて3万円高。発色や耐退色性を考慮したことがうかがえる。

意外に軽くコンパクトなボクサー6

レガシィのパッケージングを語る点で最も重要なのがエンジンレイアウトだ。ランカスターに初搭載された水平対向6気筒「EZ30」は4気筒より20mm長いだけ。じゃないと4気筒対応のエンジンベイには収まらないからだが。ターボと違って補器類が少ないので重量増も少ない。4気筒ターボのRSK(4AT)と6気筒RS30の重量は1490kgと全く同じだ。ただしブリッツェンは豪華装備の分、30kg増しの1,520kgとなる。

後席居住性はやや難があるが、専用シートが救う

ホイールベースはワゴンと同じ2650mm。前席スペースは十分だが、後ろは標準的。屋根が1,410mmとかなり低いので結果的に座面も低く、後ろに乗る人は足を投げ出す格好になる。ギリギリ圧迫感こそないが、ルーフをもっと伸ばさないと夏の日はツライ。

しかし、ブリッツェン6の場合は、明るいベージュの本革シートがこうした欠点を忘れさせてくれる。前席、後席ともファブリック仕様にないハリがあり、座り心地がいい。何より雰囲気がスペシャル。形状もサポートが張り出してスポーティだ。チルト&リフトは電動で、シートヒーターが付く。

ゴルフバッグが4つ収納できるというトランクだが、そう広くは感じられない。トランクスルーはアームレスト部のみ。ヒンジがトランクスペースを侵食するのがややらしくない。

基本性能&ドライブフィール

ウルトラ・スムーズ

試乗したのはB4 ブリッツェン6。メーカーオプションのDVDナビ(20万円)が付いており、計342万円となる。

走り出した瞬間から、素晴らしく滑らかなエンジンにオオッと思わず声が上がる。回してもまったくウルサクない。220ps/6,000rpm、29.5kgm/4,400rpmのパワーは、車重1,520kgを軽々と加速させる。1速で約60km/h、2速で約120kmまで伸びるが、全開加速時もすごくリラックス。低速トルクも十分あるが、4,000回転以上回すと胸をすく加速が得られる。回したくなるエンジンだ。

それにしてもこの滑らかさは独特。締め上げられてフラット感が強まったサスペンションとスムーズなエンジンとの組み合わせが、この絶妙な乗り味の秘密か。刺激や迫力はないが、本当に気持ちいい。

滑らかなのはエンジンだけじゃない

全てが恐ろしく滑らかな分、刺激はイマイチと思いがちなブリッツェン6だが、タイトなワインディングを走り始めると速い!

フロントの低い所に「重く平べったい物」があるという感覚が、V6や直6とは明らかに異質。すごく自然に、スパッと曲がる。パワステが飛ばしても軽いままなのがやや不満だが、ステアリングは正確だ。まさにレールの上を滑り降りるような途切れのない走り。通常では前後45:55のトルク配分の4WDだが、タイトコーナーでは絶妙に配分を変えて、狙った方向にグイグイ曲がる。さすが4WD! と思う瞬間だ。

コーナーをプッシュするとスポーツカー並み(最近の例で言えば新型Z並み)の鋭いキックバックがバシッとステアリングを叩く。そこで初めてハードな足に気付く。それが無ければ、普通の高級セダン同様のソフトなセッティングと勘違いしそうなスムーズな乗り心地だ。

面白いのはブリッツェン6専用装備のVDC(ビークル・ダイナミクス・コントロール)が頻繁かつ大げさに介入すること。これもある意味、安心感に繋がっている。このVDCはOFFにすることもできて、そうすると今度はコーナー前半でアンダー、後半オーバーという4WDらしい挙動となる。いずれにしても安定感は高い。

4WDこそクルマの理想

4速トップの100km/h巡航は2,400回転。もっと静かで、なおかつ乗り心地の良いクルマは他にもあるが、ブリッツェン6は全体に快適性のバランスが高く、個人的にはクラスに関係なく抜群に快適だと思った。マッキントッシュ製オーディオを積極的に楽しみたくなる静かさもある。

高速巡航の安定感も抜群。フルタイム4WDこそがクルマの理想であるというスバルの長年の提案は完全に帰結しているといえる。

燃費はターボと変わらない?

10・15モード燃費はカタログに明記されないが、RS30のカタログ値である10.6km/L(1,520kg以上の場合)とほぼ同じと考えていいだろう。ターボのRSKが11.2km/Lなので、数字上は若干悪い。220馬力とスペック的には穏やかな6気筒だが、アクセルを踏み込みたくなるエンジンゆえ、実燃費はあまりよくはないようだ。むろん4WDゆえの燃費の悪さもあるはずだ。

ここがイイ

レガシィといえばドッカン280馬力ターボで、よく走ることは間違いないが、どうにもジェントルとはいえない。しかしブリッツェン6はさすがにNAだけあって、トルクがフラットで「大人のハイパワー車」に仕上がっている。4気筒もスムーズだがそれなりに振動もあり、滑らかさの面でやはり6気筒が上。4発より6発がスムーズなのは自明の理で、スバルは水平対向しか持たない会社ゆえ、直4に対するV6のように6気筒を作ったのだろう。このジェントルな6気筒の出来はすばらしいと言っていい。重くないから運動性能も高い。

内装は大変質感が高く感じられた。プラスチック類の質感がいいのだ。ステッチの効いたベージュのシートもオシャレさをうまく演出している。マッキントッシュの縦型オーディオもオシャレ系オヤジ殺し的雰囲気がある。これならひとまず他社高級車から乗り換えても不満は出ないはず。

ここがダメ

今時、マニュアルモードのない4速ATというのはいかがなものか。ゲート式シフトもマニュアル操作にはむいておらず、トヨタのゲート式とは大違い。せっかくの出来の良さゆえ、せめて5速ATが欲しいと思うのは自然な感情だろう(ちまたでは6速ATも増えているのだから)。

総合評価

世界でポルシェとスバルだけが自動車用水平対向エンジンを作っており、片やRR、片やFFでスタートしたこの2社は、厳しい競争の中をその独自性で生き延びてきた。ポルシェはスポーツに、スバルは4WDにその活路を見いだし、共にその分野で頂点を極めたと言っていいだろう。熱狂的なユーザーがいる点でも両社に共通項は多い。

さて、ブリッツェンでは、スバルのクルマをポルシェデザインが手がけるということで、別会社であるポルシェ本社が開発にも手を出しているのでは、と言う噂は以前からあった。その真偽はわからないが、ポルシェ自体も他社に技術提供することで生き延びてきた会社ゆえ、けしてないとは言い切れない。まして6気筒であればポルシェの手が入っていたとしても不思議ではない。

そんなスバルの6気筒には、基本的に「ドコドコ」というポルシェような鼓動はない。ひたすらスムーズに回る。とはいえポルシェの6気筒も水冷となった最近はスムーズが基本。共通性は感じられる。ポルシェも4WDには10年以上前から取り組んでおり、最新のカレラ4はスバルのVDC(ビークル・ダイナミクス・コントロール)と同様のシステムを持ち、走りにも共通性がある。というか、4WDに電子制御スタビリティコントロールをプラスした場合、かなり近いものになってしまう。ポルシェはスタビリティコントロールの介入が遅く、スバルはかなり早いと言う差はあるが(共にOFFスイッチがある)。フロントエンジンか、リアエンジンかという違いはあるものの、低重心のフラットな板の上に乗っているような運転感覚にも近いものが感じられる。

ただ、ポルシェの4WDがいまいち人気のない理由は、「おもしろくない」からだ。先週のカルディナでも書いたことだが、このおもしろさがクルマでは重要だ。おもしろさは危うさにもつながっているともいえるが、明らかにポルシェは2WDの方がおもしろいのだ。ブリッツェン6もこのおもしろさという点では、「ビミョー」。元々ジェントルなクルマを目指していることもあり、走りのおもしろさという点ではターボ系に分があるだろう。

ところで、3リッターの水平対向6気筒と言うことでポルシェの20年ほど前のモデル、SCと比較してみた。

  レガシィ B4 ブリッツェン6 ポルシェ 911 SC(1982年)
全長 4630mm 4291mm
全幅 1695mm 1652mm
全高 1410mm 1320mm
ホイールベース 2650mm 2272mm
車両重量 1520kg 1160kg
エンジン 水冷水平対向6気筒DOHC 空冷水平対向6気筒SOHC
総排気量 2999cc 2994cc
最高出力 220PS/6000rpm 204PS/5900rpm
最大トルク 29.5kgm/4400rpm 27.0kgm/4300rpm

400kg近い重量差があり、クルマの性格も違うため、実際には比較する意味もないが、3リッター水平対向6気筒を積むSCは、圧倒的なトルク感が何処までも持続する「おもしろい」クルマだった。そんなプリミティブなおもしろさを現代のクルマに求めることは難しいが、それでも水平対向6気筒という特殊な記号に惹かれる身としては、ブリッツェン 6にも、もう少しおもしろさの味付けが欲しいと思う。

実際の走りにはなんら不満がないだけに、その上で感覚的な「おもしろさ」を演出できれば、クルマ好きの熱狂を必ずや集めるはず。せっかく独自のエンジンを持つのだから、もう一つ突き抜けた、万人を圧倒するクルマの出現を望みたいし、それができそうなのはまさにスバルのようなスタンスの会社だろう。安定・安全のフルタイム4WD+VDCはライバルのカルディナを始め各社が実現してきているのだから、その先にある世界を早く見せてもらいたいものだ。

試乗車スペック
スバル レガシィ B4 ブリッツェン 6
(4AT)

●全長4,630mm×全幅1,695mm×全高1,410mm●ホイールベース:2,650mm●車重:1,520kg●エンジン:2,999cc・DOHC 4バルブ・縦置き●駆動方式:フルタイム4WD●220ps/6,000rpm、29.5kgm/4,400rpm●10・15モード燃費:--km/L●タイヤ:215/45ZR17(BS POTENZA RE040)●価格:322万円(試乗車:342万円 ※オプション:DVDナビシステム 20万円) ●車両協力:名古屋スバル自動車株式会社

公式サイトhttp://www.subaru.co.jp/index.html

 
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