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スバル レガシィ ツーリングワゴン新車試乗記(第31回)

Subaru Legacy Touring Wagon

 

1998年07月03日

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キャラクター&開発コンセプト

「レガシィを極める」 キープコンセプトながらもすべてを一新

初代、2代目とクリーンヒットを飛ばしてきたレガシィが、遂に第3世代へと突入した。今回のFMCでセダンは含まれておらず(半年ほど遅れてラインアップに加わる予定)、ニューモデルはセダンからワゴンを作るのではなく、ワゴン専用モデルとして開発された。

開発テーマは「レガシィを極める」。すなわちキープコンセプト。レガシィに参考車なし、目指すライバル車は世界にいないという認識のもと開発がスタートし、レガシィ独自の世界観と道具としての一級品の味を徹底追及。これまでレガシィが築き上げてきた走りの実力や5ナンバーサイズのパッケージングなどを熟成させ、世界トップレベルのグランドツーリングカーを目指す。

価格帯&グレード展開

280馬力モデルからリーンバーンモデルまでワイドなバリエーション

従来設定されていた1.8リットルモデルやFFモデルは廃止され、全車、2.0リットルもしくは2.5リットルモデルの4WD専用車種となった。バンを排除してブランドイメージを高めたレガシィだが、今回はさらに車格と個性の明確化が図られている。

2.0リットルツインターボ(ATは260馬力、MT車は280馬力)にビルシュタイン製ダンパーを搭載したGT-Bを筆頭に、2.5リットルモデル、2.0リットルモデル、さらにリーンバーン仕様の2.0リットルモデルとワイドなバリエーションとなっている。また価格帯は190万円~296.3万円となる。

なお、試乗したのは279.3万円のGT-VDC(AT)。

パッケージング&スタイル

Cd値(空気抵抗係数)0.31という空力ボディ

全体のフォルムは従来のイメージを踏襲している。特に取り回しの良い5ナンバーサイズにこだわったというのは、小型化の進む現在、説得力があるのものだ。人によってはマイナーチェンジかと思ってしまうほど先代そっくりのスタイルは、全体的なボリュームアップにも関わらず、量感に溢れるものとしている。キープコンセプトということでの保守的なデザインも悪くはないが、正直、少々飽きてきたというのが本音。新しいユーザーを開拓できるかには疑問も残る。

シャシーから新環状力骨構造と呼ばれるボディまですべてが新設計となって、2代目からの流用パーツは皆無ということだ。Cd値を小さくするための低いルーフレール、優れた後方視界を確保するためのV字ラウンドさせたリアウインドウなど、機能の進化を求めたデザインワークが光る。

ホイールベースは20mm延長されて2650mmとなり、限られた5ナンバー枠の中で最大限のキャビンを図っている。リアサスペンションをスバル初のマルチリンク式としたことにも注目したい。ラゲッジの張り出しが小さくできることで、積載能力がグンと向上した。マルチリンクは横方向からの力に強く、走りの性能にも大きく寄与している。

基本性能&ドライブフィール

低中速域のトルクを向上。それでも日常的に使うにはややギクシャク感が残る

レガシィの個性を形成している要素のひとつ、水平対抗4気筒エンジンは、ヘッド回りを中心に一新され「BOXER PHASE II(ボクサーフェイズII)」と名付けられた。GT-VDCは従来と同じツインターボが与えられているが、斜流タービンと呼ばれる新しいタービンが採用されている。結果、排ガス流速がスムーズになり、常用域から全開加速への移るときのタイムラグが約40%短縮されているという。ピークパワーは260PS/rpmと変わらず、トルクも0.5kgmアップしただけの35.0kgmとしているが、スペックに表れない低中速域でのトルクの厚みが増している。パワー、トルクともにさすが260馬力という力強さを感じさせる加速だが、それでも高回転タイプのエンジンに違いはなく、本格的なパワーの盛り上がり方は3500回転を超えたあたりからとなる。パワーが爆発するこのあたりからレッドゾーンまでをキープしていれば、最も美味しい走りが楽しめるが、免許取り消しが心配となってしまう。

しかし低回転からの加速ではターボによるワンテンポ遅れる癖が残っているのも事実だ。このため市街地で乗り回す時の低回転域でも不満のないトルクを確保しているのにも関わらず、アクセルを踏み込んだ時にラグがあり、少しギクシャクした乗り味になってしまうのは惜しい。個人的にはフラットなトルク特性を持つ2.5リットルモデルに魅力を感じる。

挙動安定制御システムVDCを搭載! グランドツアラーとしてさらに磨きがかかった

GT-VDCにはビルシュタイン製ダンパーこそ奢られていないものの、路面段差などが上手く吸収され、硬さやヤワな揺れを感じさせないしなやかな乗り心地が好印象。抜群のバランスを持つレガシィだけにハンドリングも素直な反応で、コーナーリング時の加速でもアンダーをだすことなく、四駆を感じさせない正確なトレースラインを描いてくれる。

仮に唐突な路面変化で挙動を乱すようなことがあっても、タイヤが滑り出すと車両姿勢を戻そうとするVDCが働き、事なきを得る。VDCはトヨタのVSCと同様、四輪別々に駆動力あるいはブレーキを制御することで、アンダーやオーバーステアを修正する装備。理論上、VDCがあればスピンしないことになる。コーナーの水たまりなど路面状況の急変や、障害物を避ける急ハンドル操作等では非常に有効で安全な装備だが、通常のコーナリングでは相当な領域までVDCは効かない。VDCが効くのはサーキット走行などのハードコーナリング。その意味ではGT-BにVDCが搭載されていないことは、走る、曲がる、止まるといったドライビングを楽しむグレードだけに、選択としてはまちがっていないと思うが、この大パワーを持つ以上、安全のため有った方が絶対にいい。ON-0FFスイッチを付けるべきだろう。

世界最高速270km/hという記録を達成! 公道では真の実力を発揮できないのが残念

このレガシィが本当に素晴らしいと思いはじめたのは、超高速域や高速コーナーでの安定感をみせられたとき。100km/hからでも一度アクセルを踏み込めばモリモリと加速し、180km/hオーバーの速度リミッターまで難なく届いてしまう。そこからでも「まだまだ加速しますよ」という余裕を持っているのだ。この超高速域でもふらつかない安心感はフルタイム四駆ゆえ。270km/hオーバーという世界最高速を記録したというのもうなずけてしまう。2代目と同じパワーでありながら、この記録を叩き出せたのは、Cd値(空気抵抗係数)が2代目の0.34から0.31に大幅に減少できたことが大きな理由だろう。

150km/hという超高速巡航は気持ちよく走れるが、肝心の100~120km/h域で、駆動系から? 妙な微振動が発生し、尻の下に響いた。試乗車だけの問題であればいいのだが。

ATはゲート付きシフトレバーだが、D-N間はロックがなく、3-2間は横の動きが加わるため、あまりマニュアル的に操作できないのは残念。

ここがイイ

キープコンセプトのフルチェンジには、販売的には手堅くいきたいという富士重工の慎重姿勢が表れているが、結果的にはモデルチェンジ成功のキモである「いいクルマは変にいじらない」を実践。身のあるフルチェンジとなった。性能的には、アマチュアドライバーが運転するクルマとしての究極に近いスペックを手に入れており、これが乗りこなせれば、当分他のクルマは要らないと思えるはず。確かにワゴンとしての最高峰を極めたといえるだろう。

ここがダメ

長くこのままで作り続けられるはずのレガシィなので、数年後に古臭い印象が出てこないかが心配。インパネの造形などもかなり変わったが、それでもナビゲーションの位置や操作性は旧態依然としており、これに象徴されるように、新しい提案はほとんど何も感じない。富士重工という企業サイズからすれば、屋台骨のレガシィで冒険することはできないのだろうが、何か、クルマ社会の将来に対する提案が欲しかった。それともキープコンセプトこそがその提案か?

総合評価

260馬力ものパワーを不等&可変トルク配分電子制御4WDで制御して路面に伝え、VDCで挙動を押さえ込むというのは、今の日本車の目指す究極の姿。グランドツーリングという言葉にふさわしい見事な仕上がりは確かに評価できるが、あまりにもハイパフォーマンスゆえ、にその卓越した実力の最も美味しいところは、日本の道路事情では味わえないというのが悲しい。このクルマを乗りこなすにはそれなりに自制心がいりそうだ。VDCはABS同様、これからすべてのクルマに装着を望みたい。

●車両協力:名古屋スバル自動車株式会社

公式サイトhttp://www.subaru.co.jp/legacy/

 
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