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スバル レガシィ ランカスター 6新車試乗記(第129回)

Subaru Legacy Lancaster 6

 

2000年06月30日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

世界でただ一台となるボクサー6搭載ワゴン“ランカスター6”

レガシィ・ツーリングワゴンシリーズの中でGT系と趣を異にする、SUV色の強いモデルがランカスターだ。ツーリングワゴンのボディを最低地上高200mmまで上げてオフロード色を強め、オーバーフェンダーの追加装着によって3ナンバー化。長距離巡航を得意とするグランドツアラーの性格も兼ね備えており、一言で表せば「渋好みのワゴン」ということになるだろう。

今回追加されたランカスター6は、同社が新開発した3リッター水平対向6気筒エンジンを搭載。従来からの上質な走りの魅力を一段と深め、大人のためのオールラウンダーという新しい個性を提案している。また、ボクサー6搭載車としてランカスターが選ばれた背景は、ランカスター人気が集中している北米市場から、トルク向上につながる排気量アップと多気筒化によるイメージアップという要望があったから、だろう。

駆動方式はレガシィシリーズ全車が4WDで、乗車定員は5名。なお、ランカスター6の追加と同時に、レガシィシリーズ全体もマイナーチェンジが実施されている。

価格帯&グレード展開

ランカスター6は4気筒モデル+25万円で購入可能

レガシィ全体での価格はほぼ据え置きで、一部グレードは数万円アップされたが、それ以上の装備の充実が図られている。

今回試乗したランカスター6は4速ATのみで、価格は296.8万円。従来よりラインナップされているボクサー4のランカスターの25万円アップだ。メーカーオプションで設定されているものは米国の高級オーディオメーカー製のマッキントッシュ・オーディオシステムをはじめ、サイドエアバッグ、タンデムサンルーフ、ナビゲーションシステムぐらいで、標準装備の充実度に不満はない。なお、これまで特別仕様車とされていた「ランカスターSリミテッド」がカタログモデルにラインナップされている。

パッケージング&スタイル

既存ユーザーの気分を損ねない微変更

ボディサイズは従来と同じく、全長4720mm×全幅1745mm×全高1550mm。外観上の違いはごくわずかで、ランカスター全車ではドアミラーの大型化、フロントグリルのチタンカラー化、エンブレムのメタリック化などが実施されている。ランカスター6には、前後に“6”の専用バッジが付く。また、プレミアムホワイト・パール・マイカというボディカラー、5本スポーク状のアルミホイールもランカスター6専用だ。

初代からキープコンセプトできたレガシィシリーズのスタイルを、「熟成」と受けとらえるか「行き詰まり」ととらえるかはユーザー次第だが、ブランドが確立されているだけに、何となくいいなぁと感じさせるものはあるし、飽きもない。車高を持ち上げた一風変わったランカスターの全体像は、他にはなかなかお目にかかれないだけに、ある意味、個性的でもある。この曖昧な良さが、渋好みと言うことになるのだろう。

ブラウン系の2トーンカラー、木目パネルで構成されるオーソドックスなインパネを持つ室内の変更はないが、ランカスター6ではシート&トリム地が専用となっている。ベージュ色のスエード調生地が使われているのだが、しっとりとした感触といい、高級感と開放感のある見た目といい、スバルのセンスも見捨てたものじゃないな、と思わせるものがある。

収納スペースやシートアレンジは多種多芸ながらも、意味不明な無駄な機能がないから、何の迷いもなく使い込める。かつ、どれも便利だと思わせる。デザイン面ではトレンドに乗り遅れているとは思えるが、人間工学に基づいた使い勝手の良さは、さすがにスバルのワゴン造りの歴史を感じさせられる。

この他、安全面では側面衝突、オフセット衝突に対応した強化策が施された他、ISOFIX方式チャイルドシートの固定アンカーが後席左右に2席分設置された。

基本性能&ドライブフィール

3年半ぶりに帰ってきた、水平対向6気筒エンジン

今回、最大のニュースとなったのがランカスター6に搭載された、3リッター水平対向6気筒エンジンだ。

3年半ぶり復活となった今回のボクサー6は、ボア、ストロークの適正化を図った新開発エンジンだ。最高出力は220馬力/6000rpm、最大トルクは29.5kgm/4400rpmと、従来からある2.5リッター水平対向4気筒よりも53馬力、5.5kgmの向上を果たしている。10・15モード燃費も10.4km/lと、サイズのわりに良好であり、将来の排出ガス規制を先取りしたE-LEV(優-低排出ガス車)にも認定されている。

コンパクト化への努力

最大の特徴は徹底したコンパクト化が図られていることだ。既存の水平対向4気筒よりも、エンジン全長はわずか20mm長いだけ。これによって、スムーズなエンジン回転、心地いいエンジン音といったボクサー6の魅力を全く犠牲にすることなく、取り回しの良いレガシィの標準ボディノーズ部へ無理なく納めることができたわけだ。

水平対向のメリットは、低重心、低振動、左右重量の適正化が挙げられるのだが、左右でパーツが分かれるため部品点数が多くなり重量がかさむ。しかも今回は6気筒なのだから、サイズ的には4気筒とほぼ同じでも、重量はエンジン単体で40kgも重い。

クオリティを感じさせる滑らかなエンジンフィーリング

水平対向と6気筒という、どちらも低振動の特性が組合わさったために、ほとんど身震いすることなくアイドリングを始める。音も無音に近いほど静か。アクセルを踏めば、滑らかと言う謳い文句通りに発進し、約1.6トンという比較的重いボディを軽々と走らせることができる。GT系のような刺激的な要素はないが、レッドゾーン付近までしっかり加速の伸びが感じらる。トルク変動も少なく、非常に質感の高い走りが味わえる。

レガシィに限らず、水平対向エンジンといったら、バタバタとした独特のエンジン音が良くも悪くも特徴なのだが、それが全くなく、とにかく静かになった。結果、エンジンサウンドを楽しむのができなくなった点は少々寂しいところ。まあ、高級ワゴンという位置づけと考えればこれも納得させられる。

最近良くできた6気筒といえばアルテッツァのAS2000が挙げられ、その滑らかさはよくBMWに匹敵すると言われているが、それならランカスター6はBMW以上といっても過言ではない。

もっとも、これらのことはエンジンに的を絞った評価である。ハンドリングに関しては、ちょっと締まりに欠ける感がある。アメリカ人好みともいえるパワステの軽さへの不満は一歩譲ったとしても、過敏に反応するので、全体的にふらついた走りなってしまう。

足回りに関しては、柔らかく乗り心地を重視した味付けで、オールシーズンタイヤを履いているために、グリップ力は低い。しかもノーズ部が重い。常識的な範囲で使えば、高級感のある走りは十分味わえるかもしれないが、スポーツフィーリングは期待しない方がいいだろう。高速巡航は大変快適だが、四駆らしいビシッとした直進安定感はあまり感じられなかった。

ここがイイ

6気筒化によって上質なフィーリングが得られたこと。また、エンジンのラインナップが増えたことで、スバルの車種体系も容易に広げることができた。ボクサー6をB4に載せれば、和製BMWの一丁上がり! それを望む。

ここがダメ

水平対向6気筒というとどうしてもポルシェ911を想像するが、全く違うフィーリングにはややがっかり。トルク感溢れるバタバタ・ドコドコ(音)感はなく、V6的な滑らかさに終始している。

総合評価

レガシィシリーズに高級感というテコ入れが必要となったスバルが、V6の代わりにフラット6を載せたというのがランカスター6の本質だろう。従ってフラットシックスという先入観を持って乗ると失望する。逆にそんな先入観を持たずに乗れば、V6よりも滑らかですばらしい、という賞賛になるはず。4気筒より6気筒が上級と思っている人がいる以上、上級車種を持たないスバルは、レガシィの上級車種に位置づけたランカスターに6気筒を載せるしかない、ということでできたクルマだ。

走りもランカスターというグレードが示すとおり、穏やかなものだ。おもしろさではGT系やB4。走りを好む人にはランカスター6は向かない。280馬力のワゴンというものが必要なのかは、議論の余地があるが、スバル(富士重)というメーカーが、新車種を投入せず、レガシィというブランドを必死にキープしながら、ラインナップを拡張させている姿勢は、このご時世では大正解だろう。カルトカー・アルシオーネSVXのフルチェンジ版を出したりすれば、屋台骨にひびが入りかねないのだから。

レガシィはワゴンでは絶対のブランド力を持っており、それはどのメーカーも打破できていない。乗ってみると何ということもないクルマなのだが、ライバル車と比較すると、確かにほんの少し上の感じがするのだ。6気筒はそのほんの少し上感覚をさらに強調して、ブランドイメージの維持に貢献するだろう。とはいえ、クルマ好きとしてはフラット6搭載スポーツカーの登場が望まれるところ。それが登場できる「好況」は、今後の日本にやってくるのだろうか。

●車両協力:名古屋スバル自動車株式会社

公式サイトhttp://www.subaru.co.jp/legacy/

 
 
 
 
 

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