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ホンダ レジェンド新車試乗記(第342回)

Honda Legend

(3.5リッター・5AT・525万円)

2004年11月13日

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キャラクター&開発コンセプト

新技術を盛り込んだ4代目

初代レジェンドは1985年に登場。2.0リッターV6ターボの通称「ウイングターボ」を追加した後、90年に2代目、96年に3代目に進化。そして今回、2004年10月7日に実に8年振りのフルモデルチェンジで登場した4代目は、300psのV6エンジン、四輪駆動力“自在”制御システム「SH-AWD」を採用。走行性能を著しく向上させたほか、多くの先端技術を搭載し、ホンダの最高級セダンにふさわしい内容を盛り込んだ。

四輪駆動力“自在”制御の4WD

目指したのは「New Driving Experience=新次元のドライビング体験」。これまでの前輪駆動をやめ、「SH-AWD(Super Handling All-Wheel-Drive)」と呼ぶ電子制御4WDを採用した。これは、前後輪に駆動力を可変配分(70:30~30:70)すると共に、後輪の左右間も可変(100:0~0:100)することで、4輪を自在に制御するというもの。合わせてV6エンジンは、従来の縦置き「C35A」から、MDXなどに使われる横置き「J35A」に変更してチューニング。ついに280psメーカー自主規制を破る300psを発揮するようになった。

歩行者を見つける新型ナイトビジョン

フラッグシップにふさわしい先端技術も見どころ。特に、温度を感知する遠赤外線カメラと画像処理技術で、歩行者を見つけてドライバーに警告する「インテリジェント・ナイトビジョンシステム」が新しい。

こうした先進性が評価されたのか、2004年度の日本カー・オブ・ザ・イヤーも受賞。目標台数はわずか月500台だから、これで一気に上方修正したいところ。広告キャッチコピーは「意のままに操る、誇り」、販売はホンダクリオ店。年内に「アキュラRL」として発売する北米では3倍以上の年2万台が目標で、来年には欧州にも投入する。

価格帯&グレード展開

モノグレードで「ベース」は525万円

新型レジェンドはモノグレードの525万円で、ここにメーカーオプションを次々足してゆく。ステアリング制御で車線維持を助ける「アドバンスHIパッケージ」(57万7500円)、レーダークルーズコントロールや追突軽減ブレーキだけの「アドバンスパッケージ」(26万2500円)、電動トランクリッドや天童木工製の本木パネルの「エクスクルーシブパッケージ」(21万円)、レザーインテリア(18万9000円)などで、極め付けはインテリジェント・ナイトビジョンシステム(57万7500円)だ。フルオプションだと700万円近い。

パッケージング&スタイル

エモーショナル・インゴット

全長4930mm(-25)×全幅1845mm(+35)×全高1455mm(+20)と先代比で大差はない。ホイールベースが110mmも短い2800mmになったのは、エンジンが横置きになったことが主な理由だ。

変化したのはデザインで、先代の地味な外観から様変わりしてスポーティに変身。デザインコンセプトは「エモーショナル・インゴット」。もう少しダイナミックかつ個性的であっても良かったと思うが、社長、重役が乗る高級車としての「クラス感」を大事にしたという。

「超高外観」を謳う塗装

ボディ下面に樹脂製の空力パーツを採用してCd値は0.29。塗装は熟練した職人が中塗り後に手作業で水研ぎし、さらにクリアを2回に分けて吹く凝ったものだ。

軽量化にも努めており、アルミ製部品はボンネット、フロントフェンダー、トランクリッド、前後サスペンション・アーム(前は鍛造)、前後バンパービーム、前後サブフレーム、前後ブレーキキャリパー、スペアタイヤホイールなどNSX張りに多数。シートフレームとシリンダーヘッドカバーはマグネシウム製、プロペラシャフトはカーボン(CFRP=炭素繊維強化プラスチック)製だ。

飛行機のコックピット

インテリアは未来感と高級感が一体となった独自のもの。オプションの木目パネルは高級家具で有名な天童木工製。素材のカーリーメイプルはマジェスタと同じだが、無垢材のように立体的なのが新しい。タイトな運転席の周辺に無数のボタンを散りばめ、飛行機のコックピットのようだ。

ステアリング上だけでボタンはおよそ16個。AFS、CMS、VSAなどの各種カットスイッチやオーディオ、ナビのスイッチを数に入れると、総数は50を下らない。普段は触る必要のないものばかりだが、使いこなすには機能をよく理解する必要があるだろう。ドライバーに学習を強いるクルマだ。

「SH-4WD」の駆動力配分モニター

メーターはブルーの文字盤をLED間接照明で照らす自発光式で、その下に情報ディスプレイを配置。燃費のほか、SH-AWDの4輪への駆動力配分モニターも呼び出すことができる。 前後だけでなく左右のトルク配分も分かる。

大容量(20GB)のハードディスクを内蔵するHDDインターナビは、8インチワイドモニターを見ながら「プログレッシブコマンダー」と呼ぶコントローラーで操作する。新世代に進化した日産カーウイングスに比べると、操作性、グラフィックスの美しさ・見やすさ、音声認識の点でやや見劣りする。

電動トランクリッドを採用

先代比で室内長+30mm、室内幅+40mm。室内高+20mmと広くなった室内。そうは言ってもホイールベースを短縮したくらいだから、絶対的にはそこそこ。

トランクには電動で開け閉めできるパワートランクリッドを採用。容量は500Lがベンチマークのこのクラスにあって452Lと格別大きくはない。

基本性能&ドライブフィール

300psの加速力

エンジンは従来の縦置き・バンク角90度の「C35A」から、MDXなどに使われる横置き・バンク角60度の「J35A」に変更。圧縮比アップ、吸排気の改良でMDXの265psから35ps上乗せして、ついに280ps自主規制を破る300psを達成。SOHCヘッドながらリッターあたり86psを軽々と発揮する高性能ユニットだ。ホンダとしては300psを強調せず「走行性能の高いこのクルマに、適切なパワーを求めた結果」と淡々と説明する。

確かに、実際のパワー感は有り余るほどではなく「ちょいどいい」感じ。1800kg(試乗車)の車重に加え、4輪駆動になってトラクションが増す一方、伝達ロスが増えたせいもあるだろう。パワー(馬力)は十分、トルクがもう少しあると「凄み」が出るのだが。開発スタッフが「(300psは)狙って出したわけではない。それよりもトルクがもっと欲しい」と漏らしたのは本音だろう。

そうは言っても300ps、36.0kgmだから、アクセルを踏めば車重など、ものともしない。パワーウェイトレシオは先代(7.86kg/ps)に対し、装備満載の試乗車でも約6.0kg/psとスポーツカー並み。特にすごいのは、コーナーでの立ち上がり加速だ。普通ならデフの働きでパワーがすっぽ抜ける(内輪が空転して加速しない)状態でも、レジェンドはまるで直進状態のようにパワーを路面に伝えてフル加速する。

完璧に静かではない

エンジン/ミッションマウントを全て液封化し、さらにエンジンの前後マウントを電子制御としたが、このクラスの水準で言えば、静粛性はそれほど高くはない。エンジンからか駆動系からか、かすかなウォーンというノイズがアイドリング中から走行中まで常に聞こえてくる。オーディオスピーカーから逆位相の音を出してこもり音を打ち消す「アクティブノイズコントロール」も採用しているが、要するにレジェンドにも高級車として打ち消したいノイズが、わずかに生じるからだろう。ただ、ひいき目でメカっぽさと考えれば、十分に許容範囲だ。ロードノイズや外部騒音の遮断は完璧と言える。

電子制御ダンパーなど凝った仕組みのないシンプルな足まわりはソフトで、乗り心地はとてもいい。セルシオよりは固めだが、ゼロクラウンのロイヤルより快適かもしれない。

「駆動力で曲がる」

いつものワインディングも走ってみた。柔らかい足のせいで、突き詰めた走りは難しい。硬派な「タイプS」があれば欲しくなる。ステアリングと一体で回転する新型パドルシフトは使いやすく、自動シフトアップもしないが、今や6速、7速が珍しくない時代に、5速はステップ比が大きく、3速アップ時の回転ドロップがもどかしい。

それなのにずっと走っていても飽きないところが面白い。旋回中のステアリング応答性は十分高く、トラクションは完璧。SH-AWDは、コーナリング中は前輪左右に15%と15%、後輪外側に70%、内側に0%という魔法のようなことが可能なのだ。広告のコピーに「駆動力で曲がるという発想」とあるが、確かにその通り、よく出来たFR以上によく曲がり、加速する。わかりやすく言えば、手漕ぎボートで外側だけ漕いで曲がるのと同じ理屈だ。いずれにしても、前輪駆動で重いV6を縦置きした時代に比べると雲泥の差がある。特性を生かした走りをすればそうとう奥が深く、楽しい。

ヘビーウエットも何のその

この試乗に先立って、鈴鹿サーキットでの試乗会にも参加した。大雨にたたられ、高速全開走行は無理だったが、VSA(車両挙動安定化制御システム)の作動はしっかりチェックできた。ヘビーウエットにも関わらず、VSAの介入はギリギリまで遅く、復帰も素速いから、ドライビングの邪魔には全くならない。雨の日も含めて、そうとう極端な状況でないとVSAの作動には気付かないと思う。雨の日はTC(トラクションコントロール)が効きっぱなしだった以前のレジェンドからすると、まさに夢のようだ。VSAを切ったら? 残念ながら試す時間がなかった。

【インテリジェントナイトビジョン その1】赤外線(熱)感知カメラを2基搭載

後日乗った、一般道での試乗車は12月に生産開始の「インテリジェント・ナイトビジョン」を装備していた。トヨタの「ナイトビュー」は近赤外線を照射して、跳ね返って来た画像をフロントガラスに映し出すものだが、レジェンドはGM(キャデラック)の「ナイトビジョン」(遠赤外線タイプ)を発展させたもの。赤外線(熱)を放射する対象物の位置や動きを検知する遠赤外線カメラ2基をフロントバンパー下に装備し、暗闇でも歩行者などを写し出す。もともとは旧くからある軍事技術の転用だろうが、ホンダのナイトビジョンはカメラをステレオ配置することで距離を測り、さらに画像認識や各種センサーによって歩行者を特定してドライバーに警告を発するといった、民生用のための工夫が施されている。ちなみにこの装置、何らかの軍事的?拘束があるらしく、装着時に故障・破損した場合は必ず返却する、という一筆をとられる。

【インテリジェントナイトビジョン その2】温度感知で歩行者を見つけ出す

システムを起動させると、熱源のあるものなら前走車のマフラーからライトまで、専用ヘッドアップディスプレイに映し出す。そしてある程度スピードが出た状態(時速30kmより上)だと、道路脇や道を横切る歩行者をいち早く見つけ出して、オレンジ色の強調枠やブザーで警告する。人かどうかの判断は形状(頭部およそ20cm、肩部およそ50cm、身長1~2m)による画像認識技術で行うという。

実際に街を走ると、特に真っ暗な裏道を走る時は、犬の散歩をしている人などを見つけて、かなり頻繁に警告して来る。ドライバーが気付くより早いので「え、どこ?」ということも多い。検知角度が狭いせいか、「歩行者」の形をしていないせいか、横から迫ってくる自転車などは検知してくれず、逆に熱源が人の形に近いと警告することもある。夜中の山道で「何か」をとらえて警告を出してくれたときなど、背筋が涼しくなって眠気がいっぺんにひく、といった効果もある。オプション価格の57万7500円は安くはないが、安全に寄与する点も含めて、注文しがいのある装備だ。

その他、ミリ波レーダーで前方を監視し、危険と判断したときは警告、ブレーキを掛ける「追突軽減ブレーキ(CMS)」や、衝突前に自動的にシートベルトを引き込む「E-プリテンショナー」、旋回時にヘッドライトが進行方向を照らすAFS、試乗車にはなかったが電動パワステを制御して行う「LKAS(車線維持支援機能)」など、先端装備には事欠かない。これらはインスパイアなど過去の記事をご参照いただきたい。

どんな速度域でも安定

高速道路ではインターチェンジの大きなカーブを抜けるときにSH-AWDの効果が実感できる。また第2東名でもあるフル3車線の名古屋湾岸線を走ってみたが、こういう道路でこそ、レジェンドは生きる。どんな速度域でもひたすら安定しきっており、直進性はもちろん、コーナーでも、レーンチェンジでもスタビリティは素晴らしい。正直なところ、日本の高速道路では完全に過剰な性能といえるほど。グリルはおとなしく見えるのだが、意外に追い越し車線の先行車はレジェンドによく気が付いてくれた。

前者追従モードは110㎞/hまでしか設定できず、試乗車にはレーンキープアシスト(LKAS)が未装備だったため、せっかくのレーダークルーズコントロールが相変わらず実用的な装備になっていない。とんでもない高速性能を許されながら、実際の高速道路の流れにもついていけない追従装置しか許されないという矛盾。広く安全な第2東名を平均120㎞/h程度で前車を追従走行しながら、リラックスして東京まで走りたい、というささやかな夢はいつ実現されるのだろう。

今回の試乗では約400km走行して72リッターのハイオクガソリンを消費。満タン法で約5.5km/L、ドライブコンピューターは5.9km/Lと表示した。高速走行が半分以上だが、排気量や車重、4WDであることを考えれば、納得できる数字だろう。

ここがイイ

もう十分と思っていたクルマとしての基本、走る、曲がる、止まるに関しても、いよいよ新しい次元に進化しはじめたと言わざるを得ない。走るに関しては実際のスピードというより、国産車で初めてオーバー280馬力の世界へ足を踏み入れた最初のクルマとして長く記憶に残るだろう。それはパワーにこだわる時代の終わりといってもいい。本当に欲しいのはパワーの数値ではなく「意味のある走りの味」なのだから。

曲がるに関してはSH-AWDによってFRのように自然で、4WDのように速いシャシーを実現した。パワーを上げれば四駆となるのは今や当然のことだが、四輪を積極的に「駆動」させて曲がる感覚は独自のもの。ドライバーの腕が上がったような気にさせてくれる。止まるに関しても、プリクラッシュセーフティはドライバーの能力を超えて止めてくれる。これらのハイテクが結集しているという点で、レジェンドは現時点では日本最高峰、いや世界の最高峰ともいえるインテリジェントカーだ。

ここがダメ

最高級車という側面から見ると不満がいろいろと出てくる。まず絶対的な上質感(感性の部分)で他を圧倒するものがない。乗っていてインテリアから最高級車というオーラが感じられないし、エクステリアにも同様、他のクルマを圧倒する力(迫力とか威圧感のようなもの)が不足しているように見える。以前のレジェンドでは小さなグリルをマイナーチェンジで大きく代えるという営業的なテコ入れが行われたことがあった。典型的な高級車作りの手法を取り入れることにホンダは以前から迷いがあったが、今回もその部分の迷いは払拭されていないように思われる。

エンジンもV8が載らなかったことが響く。パワーはもちろん不足ではないが、低回転で最高級車としては明らかにトルク不足。回せばおもしろいのは確かだが、それはフラッグシップのやることではないと思う。小排気量・高回転で勝負するのはホンダの伝統ゆえ、大排気量車作りは課題だ。

今回の試乗車は「アドバンスHIパッケージ」(2005年3月生産開始)以外がすべて付いたフルオプション車。フロアカーペット込みで660万円オーバーと堂々たるものだが、それなのにリアカメラやバックソナー類はすべて未装備(販売店オプション)。リアカメラぐらいは標準装備すべきだろう。

総合評価

最高級車ということでホンダが持てるもの全てをつぎ込んだモデル。前述のように世界最高峰のインテリジェントカーであり、素晴らしいの一言。めでたくCOTY(カー・オブ・ザ・イヤー)も獲得し、自動車業界にとってエポックメイキングなモデルであることは疑いない。ただし、新しい技術が多いだけに、その使い勝手や完成度にはいくつでも注文をつけることができてしまう。これから急速にもっとよくなっていく可能性がいっぱいあるが、それをユーザーが現時点でどこまで容認できるか、がこのクルマの課題だと思う。

また、ホンダの最高級車という役割と、画期的な駆動方法がもたらす走りのクルマという役割、そして最先端のハイテクカーという役割を一台に持たせてしまったことで、ちょっと焦点のぼけた印象を与えることも否めない。V8+FRにオーラのある内外装で高級車とした方が一般にはわかりやすいし、SH-AWDの走りはNSXあたりがバーンとフルチェンジして搭載するとアピール度が高い。ハイテクはエディックスあたりに目一杯詰め込むと、かなりユニークで楽しいクルマになりそうだ。むろん、V8エンジンの問題、売れないスポーツカー問題、高額車にセットで売るしか市販が難しいハイテクといった現実があるわけで、それらを解決する役割としてレジェンドというのはわからないではないが、最高級車のレジェンドに全ての看板を背負わせるのはちょっと酷な感じがしないでもない。

試乗車スペック
ホンダ レジェンド
(3.5リッター・5AT・525万円)

●形式:DBA-KB1●全長4930mm×全幅1845mm×全高1455mm●ホイールベース:2800mm●車重(車検証記載値):1800kg ※オプション装着時(F:ー+R:ー)●乗車定員:5名●エンジン型式:J35A●3471cc・SOHC・4バルブ・V型6気筒・横置●300ps(221kW)/6200rpm、36.0kgm (353Nm)/5000rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/73L●10・15モード燃費:8.2km/L ※オプション装着時●駆動方式:フルタイム4WD●タイヤ:235/50R17(YOKOHAMA DNA db Euro)●価格:525万円(試乗車:659万4000円 ※オプション:アドバンスパッケージ(IHCC、追突軽減ブレーキ+E-プリテンショナー) 26万2500円、エクスクルーシブパッケージ<パワートランクリッド、電動リアサンシェイド、本木目パネルなど> 21万円、インテリジェント・ナイトビジョンシステム 57万7500円、サンルーフ 10万5000円、レザーインテリア 18万9000円)●試乗距離:約400km ●車両協力:本田技研工業株式会社

公式サイトhttp://www.honda.co.jp/

 
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