三代目となるホンダのフラッグシップ
'85年新登場以来、三代目となる新しいレジェンドに試乗した。トヨタセルシオに迫るビッグサイズのボディを持つ、堂々たるホンダのフラッグシップ、最高級セダンだ。にもかかわらずこのレジェンド、他社があきれるほど価格は低く抑えられている。装備の違いもあるから単純ではないが、同じ位のサイズの他社のクルマと比べれば相対的に100万円近く安い印象だ。例えばセルシオは最廉価版で510万円、レジェンドは今回試乗したNAVI付の最高級版エクスクルーシヴでも432.6万円。廉価版のユーロでは337.6万円からある。
試乗車は革シートではないものの、パワーシートなどフル装備。天童木工の銘入り楠ウッドパネルが高級感を演出している。メーター類は自光式。とはいえ他社と違って真っ暗な中からゆっくり浮かび上がるなどといった過剰な演出はなされず、パッと灯く。このあたりがコスト軽減に役立っているのかも。
初めて採用されたゲート式ATノブをD4へ入れて発進すると、シフトショックも感じないまま、ぐいぐい加速していく。前モデルよりトルクが太った新開発3.5リットルV6は実に静かでスムーズ。新レジェンドは「感研究」というテーマで開発されており、ドライバーの期待(思い)と体感(実際の動き)にずれがない、気持ちのいい走りを実現させているという。実際に走り出すと、そのテーマは十分実現しているようだ。一般道、高速道で不満がでるシチュエーシュンに出会うことは一度もなかった。静かでパワフル、しなやかで快適な大きなボディが軽快に交通をリードしていく。
レジェンドは高級車だが、ホンダの伝統にのっとりドライバーズカーでもある。ゆったりした足まわりのエクスクルーシヴでもワインディングをなかなかの楽しさで駆け抜けられる。FFはアンダーステアであるという法則は当に過去のものとなっているし、気になるトルクステアもトラクションコントロールが見事に消し去っている。走りに関しての不満は普通の腕のドライバーからはまず出ないだろう。
走りの性能に関してはほとんど不満らしいものはないが、ルックスに関してはいささか不満が残る。ホンダ車は昔から、ボディサイズにかかわらず全体に似通ったデザインが多いが、今回もその例にもれず、最高級車らしい「特別さ」が感じられない。威圧感のない控えめなグリルやメッキを多用しないモール類など、そのコンセプトには好感が持てるが、それが逆に地味なクルマ、最高級を感じさせないクルマにしてしまっているのではないだろうか。
大きなボディサイズも現実には実際よりぐっと小さく見えるし、このクラスのクルマを欲しがる人は、もう少し威圧的な、わかりやすいプレステージカーを望んでいるのではないだろうか。むろんその結果がメルセデスやセルシオのフォロワーになってはミもフタもないが。このあたりがホンダにとっての難しい試練といえるだろう。
簡単なことだがとても嬉しかった装備がいくつか有った。まずフロントセンターのアームレストが少し持ち上がって前へ迫り出すこと。女性や小柄な人には有効だ。次に助手席のパワーシートが運転席から動かせるのも、馴れない人を乗せたときに便利。さらにリアシートに座った人のつま先があたるフロントシート下部がカーペット張りになっているのも気が利いている。また国産車で初めて、事故の時役立つファーストエイドキットがトランクに装備されてもいる。
ホンダ党とよばれる人達は団塊の世代に多い。若い頃、軽免許でN360あたりから乗り始めたこの世代も、今や40代の半ば。子供も大きくなったのでいまさらRVでもなく、社会的にも課長、部長となり、そろそろセダンへ回帰してくる年齢である。この世代のホンダ党はアンチトヨタ(反保守)であり、アンチ日産(反ヤンキー)で、若者の心を忘れないスマートな中年だ(と、本人は思っている)。そうした中年ホンダ党にとっては、比較的安価で、ケバくなく、走りを忘れていないこのレジェンドは、ある種、理想的な最高級車だろう。ただこうした層以外にはなかなか理解されにくい高級車がこのレジェンドであるといったらいいすぎだろうか。
公式サイト http://www.honda.co.jp/LEGEND/


