Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > レクサス GS450h “バージョン L”

レクサス GS450h “バージョン L”新車試乗記(第411回)

Lexus GS450h “version L”

(3.5L+モーター・770万円)


2006年04月15日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

4.5L並みの動力性能、2L並みの燃費

レクサスが国内で開業してから半年余り。2006年3月16日に発売されたのが、同ブランド初のハイブリッドセダン「GS450h」だ。従来のGSに新開発のFR専用ハイブリッドシステムを搭載し、2リッター並みの燃費性能(10・15モード:14.2km/L)と4.5リッター並みのパワーを両立する。ゆえに車名は「450h」となり、GS430やRX400h(ハリアーハイブリッド)よりわずかに上位であることを示している。

世界初のFRハイブリッド

最も注目すべき点は、既存のFRシャシーを大きく改変することなく、ハイブリッドシステムを従来の縦置パワートレインと同じ位置に収めた点だ。これによって将来的には、他の後輪駆動車への応用が期待できる。また、高速域でもモーターのパワーを効率良く取り出せる2段変速式のリダクションギアも新しい。

生産はトヨタ自動車・田原工場(愛知県田原市)。海外では4月から北米で発売し、欧州、オセアニアと続く。2006年度の販売目標は世界全体で5000~6000台、日本国内ではその1/3にあたる年間1800台(月間150台)だ。

価格帯&グレード展開

標準車で680万円、「バージョンL」で770万円

実質2グレードで、標準モデルがGS430の50万円高となる680万円。レザーシートやドライバーモニター付プリクラッシュ・セーフティ・システム付きの「バージョンL」が、さらに90万円高の770万円。レザーかファブリックかは好みだが、実際の販売では“バージョンL”が多いだろう。価格帯はメルセデスならE350、BMWなら530iに匹敵する。

パッケージング&スタイル

ハイブリッド専用の意匠はごくわずか

ボディサイズは従来のGSとまったく同じ。ハイブリッドかどうかの識別点は、メッキアクセント入りの専用アルミホイール、サイドシルの小さな「HYBRID」バッジ、そしてトランクリッドの「GS450h」バッジと極めて少ない。

 

しかし試乗車の注目度はGSハイリッド専用色「プレミアムライトブルー」のおかげですこぶる高かった。この色、ランボルギーニやTVRといった個性派スーパースポーツでもいけそうな派手な色だが、GS450hにはよく似合っている。色が普通だったら周りの反応はもう少しクールだったかもしれない。

従来のGSとほぼ同じインテリア

試乗車はレザー仕様の「バージョンL」。インテリアの意匠は従来のGSと大差なく、違いはメーター周辺、そしてハイブリッドの作動状況を示す「エネルギー・モニター」くらいだ。もちろん輸入車のような非日常的(非日本的)なムードはなく、そこでまず好みが分かれそう。サンルーフ付だと室内高が5センチ下がるが、シート座面もよく下がるので身長180cm以上のスタッフからも不満はなかった。

ちなみにGSハイブリッドのエアコンは専用の電動インバーター式を採用。よってアイドリングストップ中でもコンプレッサーが動き、冷房・除湿が効く。

「パワーメーター」と「ドライバーモニターカメラ」

レブカウンターはハリアー/クルーガーにもあった「ハイブリッド・システム・インジケーター」に置き換えられる。「CHARGE(エネルギー回生)」、「ECO(低燃費走行)」、「POWER」と色分けされているが、実際にエコランする時は速度計下の燃費計を見た方がやりやすい。一方、北米仕様は0kW から250kW(340ps)まで数字を刻むパワーメーターが標準だ。メーター本来の機能を考えると、北米式の方が良いのではないだろうか。

 

メーター手前の赤いドットはドライバーのよそ見を検知する「ドライバーモニターカメラ」。赤外線カメラと専用コンピューターの画像認識技術で人の顔の向きを判断し、PCS(プリ・クラッシュ・セーフティシステム)に対して警報ブザー、さらに警報ブレーキの早期介入を促す。作動イメージ図を見る限り、カメラ付でもプリクラッシュブレーキ(0.6G程度の緊急制動)の介入タイミングは変わらないようだ。開発者によれば、同システムは従来同様、最終的に(間に合いさえすれば)停止するまで自動ブレーキを踏むという。

リアシートの背後にバッテリーパックを搭載

後席はノーマルのGSとほとんど同じだが、背もたれ後方にはニッケル水素電池が搭載される。その分、トランクは従来のGS(容量430リッター)に比べて奥行きがなく、大型スーツケースなら1個、フルセットのゴルフバッグなら2セットが限界か、と思われるほど小さい。容量は不明で、そもそもカタログにはトランクに関する記述や写真さえない。

基本性能&ドライブフィール

エンジン+モーターで後輪を駆動

パワートレインのおさらいをすると、エンジンは3.5リッター直噴V6「2GR-FSE」(296ps、37.5kg-m)。その後ろに発電機、動力分割機構、モーター(200ps、28.0kg-m)、2段変速式リダクションギア、ドライブシャフトと続く。エンジン単独、モーター単独、あるいはエンジンとモーターの両方で走行可能なシリーズ・パラレル式ハイブリッドという点は新旧プリウスと同じだ。

「READY」の表示を確認して無音でスタート、惰性で坂を下るように、わずかなロードノイズだけで加速する。GSハイブリッドで面白いのは、まるで低いギアにホールドして走っているような、独特のトラクション感が常にあること。この感覚は今までのハイブリッド車にはなかったもので、アクセルペダルとモーターが直結しているようなリニアな感じがある。

デッドスムーズで猛烈な加速

エンジン始動のタイミングは早く、プリウスの方がむしろモーターだけで走らせやすいと思うほどだ(GSにはEVモードもない)。しかし、エンジンが6気筒だから振動もノイズも小さく、プリウスのように「全開加速では普通のガソリンCVT車的」にならないのは長所だ。いや、それどころかアクセルを踏み込めば踏み込むほど、デッドスムーズで猛烈な加速が始まる。

ハリアー/クルーガーハイブリッドの加速も強烈だったが、FFシャシーをベースに電気4WDとした成り立ちは隠しようもなく、結果として全開加速時は電子制御をたずな代わりに、身をよじるクルマをなだめながら走らせる、という感じがあった。

一方、GSにそんな危うさはまったく無い。よく出来たFR車らしく、路面にパワーを無駄なく伝え、ホイールスピンも何もなく、発進直後は大人しい。と、思う間もなく、途中から疾風怒涛の加速を開始する。0-100km/h加速はメーカー発表値で5.6秒だが、凄まじいのが100km/hオーバーからの加速だ。おそらくリダクションギアが100km/h前後で低速側(減速比3.900)から高速側(1.900)に入るせいだろう、走行抵抗が皆無のように、一気に加速してゆく。この加速感はスーパーチャージャーみたいというか、ターボみたいというか、強力なモーターが過給機並みに加勢してくれる感じなのだが、個人的には15年前に乗ったR32スカイラインGT-R(もちろんノーマル車両)のハイテク感あふれる速さを思い出した。もちろん、日本仕様の速度リミッターは180km/h超で作動。北米仕様でも210km/hらしい。欧州仕様では250km/hを目指すという噂だ・・・・。

本の道路は狭すぎる

普通の山道では GS450hのパワーを生かすのはほとんど不可能だ。パワーメーターの針が上がる暇もなく、次のコーナーが迫ってくるし、マニュアルモードにしてもアクセルオフでパワーメーターの針がストンと下がってしまい、やる気がそがれてしまう。そもそも、GS350の250kg増し、430の150~200kg増しのボディが何としても重い。やはり高速道路、と言うより、大陸の広々とした道で真価を発揮するクルマだ。

「無駄な加速はしない」が鉄則

その他、よそ見を検知する「ドライバーモニター」に関しては、よそ見をするフリだけでなく、前方に障害物がないと作動しないはずだからか、結果としては警告ブザーさえ鳴らなかった。また、道路の段差を記憶してショックアブソーバーの減衰力を制御するという「NAVI・AI-AVS」もよく分からずじまい。それくらい上手に衝撃を吸収してくれた、ということだろうか。

参考までに、今回の燃費(車載メーター読み)はエコラン一切無しのアクセルを遠慮なく踏んだ街乗りで6km/L弱。これが渋滞路などで動きが渋くなると6.1、6.2…とだんだん良くなってくるのが面白い。高速道路ではそこそこ元気に走ったつもりだが、10.1㎞/Lを記録。トータル800㎞ほどの試乗では8.4㎞/hとなった。プレミアムガソリン仕様だが、圧倒的な性能を考えれば、まあ不満がないというところか。エコな走りを心がければ2リッター車並みの燃費は可能だと思うが、それには「無駄な加速はしない」のが鉄則。しかしクルマは無駄な加速をしたくなる仕様。そこが悩ましい。

ここがイイ

何と言っても世界初・世界唯一のエンジン縦置きFRハイブリッド・システム。特に「ハイブリッド・トランスミッション」と呼ばれる通常のミッションケースのサイズに納めたシステムは、モーターの小型化を2段変速リダクション機構でフォローするなど、実に工夫を凝らしたもの。パワーコントロールユニット(可変電圧システム)も従来比1/3の12Vバッテリーサイズまで小型化したゆえ、従来のFR車を即ハイブリッド車に変えられる。これらの工夫が素晴らしい。しかも、それゆえ量産化できそうだ。トヨタのシリーズ・パラレルハイブリッドを批判する欧州メーカーが必ず口にするのは「コストが高い」だが、実際の理由は別にあるのでは(特許とか)。

静かで良い乗り心地。ハイブリッド車であると同時にレクサスの現行旗艦モデルでもあり、圧倒的に速くて、ものすごく快適という高級車の用件をきちんと満たしている。さらに現在あるすべてのハイテクを満載。ドライバーモニター付きプリクラッシュ・セーフティシステム、NAVI・AI-AVS、レーンキーピングアシスト、レーダークルーズコントロール、インテリジェントAFS、もちろんG-Linkまでフル装備(試乗車)。これからの季節はシートクーラーも快適。

これらを総合的に見るともはや敵なし。ハイテク日本の象徴とも言うべきクルマがついに登場した。

ここがダメ

このクラスのクルマとしてはトランクサイズは厳しい。すべて気に入ったが、トランクの小ささゆえ購入を躊躇するという人は多そうだ。また肝心のハイテクの中でもレーダークルーズはやはり設定できる速度が低すぎて実用的ではない。180㎞/hを悠々と出せるクルマを作りながら、一方でクルーズコントロールは115㎞/h程度しか設定できないという矛盾の根拠は何か。法定速度を考えたら115㎞/hだって変な設定だ。

トヨタの直噴V6に共通の特徴だが、アイドリング時のエンジン音がかなりノイジー。エンジンが掛かると車外ではいきなり「2リッター車並み」の音を発する。アイドリングストップが前提ゆえの割り切りとは思うが、もう少し車外騒音は抑えたいところだ。また、あくまで感覚的なものだが、ボディの前と後ろに重いものを積んだ、やじろべいみたいな重量配分はミッドシップの正反対で、運動性能への影響はそれなりにあるはずだ。

総合評価

ロハスな生活が流行らしい。で、ロハスなクルマはやはりハイブリッドでしょう、となるようだ。しかしハイブリッド車はそんなに環境にいいのかといえば、実際はガソリン車よりましという程度だろう。そもそも、自家用車なんてない方が世のため、という考え方は間違いではなく、電車やバスの方がさらにロハスとも言える。しかし電車やバスを使って生活できる都会の人だけがロハスな暮らしができ、生活がロハスな? 地方在住者こそクルマが必要だという現実はとても皮肉。一部の都会をのぞいた日本では(そして世界中の多くの地域では)クルマが必需品であり、それゆえ(都会に本社がない)トヨタはハイブリッド開発を急いだということか。

となればGS450hは無駄なクルマだ。プリウスがコンパクトなサイズできちんと4人乗れるセダンである以上、環境のためのクルマとして大量生産、低価格戦略で売りまくれば、世の中のクルマの半分以上はハイブリッドになり、環境に大いに寄与することも可能だろう。GS450hのような無駄にでかくて、無駄に速くて、無駄に威張っているクルマは、当初のハイブリッドの趣旨にひどく反している。一方で、レクサスの旗艦としてのハイブリッドは実に効果的だ。これまでレクサスに興味を持たなかった高級車オーナーたちが、続々とGS450hを目当てにレクサスディーラーを訪問し、試乗している。売れるかどうかは別として、これからの高級車のあり方を考えさせるという点で、そのインパクトは強烈だ。まあ、大型高級車自体ロハスなものではないから、いくらハイブリッドとはいえ、そういった文脈でGS450hを語るのは無理がある。このクルマはロハスなクルマではなく、パワフルさをハイブリッドで達成したクルマ。ハイブリッドの使い方が違うのだ(もちろん結果として燃費はましだが)。

06年4月15日付の中日新聞(東京新聞)によれば、トヨタは08年に価格を抑えた第3世代のハイブリッド車を発売するという。次期プリウス(3代目)が口火となり、それをスポーツカーからトラックにまで拡大させて、低価格路線に転じるようだ。第3世代ハイブリッド車とガソリン車との価格差は25万円程度と、現行の半分。これこそハイブリッド本来の姿だろう。その意味で、GS450hはレクサスブランドのイメージアップに使われている広告塔にすぎない。高級車の差別化のための手段だ。

もう少し新聞の内容をまとめてみる。第3世代ハイブリッドの技術的なキーは、リチウムイオン電池の搭載だ。これにはおそらくパナソニックが協力するはず。ニッケル水素より小型軽量のリチウムイオン電池の進化は著しく、これでトランクルームの狭さや重量増加はかなり解消されるはずだ。それが載ればGS450hの弱点、つまりトランクサイズの問題も解決されるだろう。さらにトヨタはハイブリッド専用ミニバン、そしてハイブリッドスポーツカーを出すという。さらに欧州向け中型ハイブリッドセダン、北米向けハイブリッドピックアップトラックなどをそれぞれの地域で生産し、昨年末から始まった中国生産を含めて、2010年には世界販売1000万台とするらしい。

そんな中でも注目はハイブリッドスポーツカーだ。走りが楽しいハイブリッドスポーツ車の出現を、多くの人が望んでいる。もちろんデイズも望んでいる。正直なところ、ほのかにではあるがGS450hに期待していたのはそれだ。しかし実際のところ、GS450hはスポーツセダンではなく、グランドツーリングカーだ。これは車格や価格からいって、まあ当然と言わざるを得ないが。ただし、走りのパワーアップにハイブリッドが効き、その走りにこれまでのクルマにない独自の味があるのも確かだ。ハイブリッドは環境だけではなく、クルマ本来の持ち味である走りにも効く、ということをGS450hは実証している。それこそが GS450hの存在意義だろう。

となれば期待したいのはISハイブリッドだ。取材してもどうもはっきりした情報がつかめないが、一応ISハイブリッドは出ないとされている。GS用ハイブリッドシステム(ミッション部)がサイズ的に載せられないのかもしれないが、何とか工夫して、 IS450hの登場を強く希望したい。ハイブリッドスポーツカーの投入は09年以降とされるが、きっとそれはクーペタイプだろう。それまで待てないし、何より多くの人が欲しいのはバイブリッドスポーツセダンのはずだ。

GS450hはこれまでのどんなクルマとも走り味が違う。慣性で転がっていく感覚がなく、常に路面に張り付いたような独特の接地感、ギアを一段落として走っているかのように常に保たれるトルク感、プリウスなどと同様の引き戻されるような独特のブレーキング感覚、ワープするように一気に速度を増す加速感など、すでにハイブリッド独自の乗り味というものができあがっている。好むか好まざるかは、ぜひ試乗して確かめて欲しい。ハイブリッドの速さとは、ガソリン車のそれとこれほど違うということを体感するために。ロハスなハイブリッドではなく、クルマ好きのためのハイブリッド、その世界への第一歩がGS450hによって踏み出されている。

試乗車スペック
レクサス GS450h “バージョン L”
(3.5L+モーター・770万円)

●形式:DAA-GWS191-BEXQH(L)●全長4830mm×全幅1820mm×全高1425mm●ホイールベース:2850mm●車重(車検証記載値):1910kg(F:980+930)●乗車定員:5名●エンジン型式:2GR-FSE●3456cc・V型6気筒・DOHC・4バルブ・直噴・縦置●296ps(218kW)/6400rpm、37.5kg-m (368Nm)/4800rpm●カム駆動:タイミングチェーン●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/65L●10・15モード燃費: 14.2km/L●駆動方式:後輪駆動(FR)●タイヤ:245/40R18(-)●試乗車価格:821万9750円(含むオプション:リアスポイラー 3万1500円、ムーンルーフ 9万4500円、クリアランスソナー 5万2500円、「マークレビンソン」プレミアム・サラウンド・サウンド・システム 34万1250円 )●試乗距離:約700km ●試乗日:2006年4月

公式サイト http://lexus.jp/models/gs/

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 
 

最近の試乗記一覧