キャラクター&開発コンセプト
役者は揃った! ターボモデル追加でワゴンRの牙城を崩せるか?
ライフは、ホンダが作るワゴンRの対抗馬。どちらかといえば女性を意識した作りが特徴で、ライバルが揃ってターボを設定しているのに対して、唯一NAのみの設定だった。走りを求める若い男性ユーザーには今一つ訴求力が弱かったのが現実。とはいえNAのみでも、ここ最近の販売ランキングはムーヴを抜いて2位が定位置となるほどの人気ぶり。昨年12月の販売では常勝ワゴンRとの差はわずか1500台程までに縮めている。
さて、新たにラインナップに加わったダンクは、そんな弱点を補うために投入されたライフ初となるターボモデルだ。ノーマルライフと差別化するために、ターボエンジンの搭載だけでなく、エクステリアも精悍な専用デザインが与えられ、ネーミングも独自に。昨年、高速道路での軽自動車の最高速度が80km/hから100km/hに引き上げられたわけだが、今回ホンダがライフにターボモデルを導入したのは男性層の獲得はもちろんんこと、100km/h巡航での力強さを見越してのことだろう。
価格帯&グレード展開
ノーマルライフの主力グレードに20万円上乗せで購入できる。価格帯は121.5~143.5万円
グレードは装備の違いにより標準仕様「TS」(121.5万円)と上級仕様「TR」(131.5万円)の2タイプが用意される。またどちらも15万円高で4WDが用意される。「TR」の専用標準装備はオートエアコン、アルミホイール、ボディ同色電動格納式ドアミラー、エキパイプフィニッシャー、本革巻き3本スポークステアリング、メタリックセンターパネル、スモークガラスなど。
ライバルはワゴンR・RR(122.3~153.3万円)、ムーヴ・カスタムターボ(126.0~152.5万円)。価格帯で比較するとダンクが数万円安い。そのかわりライバルがみな4速ATなのに対してダンクは3速。ダンクにとっては、そこがちょっと不利な材料となりそうだ。
パッケージング&スタイル
ダンクと呼ぶに相応しい体育会系のノリ、でもストリート系ではない
フロントセクションは全面的に手が加えられ、シンプルでクリーンな印象のノーマルライフから一転。キレ長のヘッドライト、ドカッと大口を開けたバンパー、安定感を強調させるサイドステップなどで、勇ましい雰囲気となった。勇ましいといってもワゴンR・RRのようなギトギトに脂ぎった顔ではなく、スッキリとしたしょうゆ顔(表現がチト古いか)。汗臭くはない。
ターボの搭載によってエンジンルーム内にはインタークーラーが配置されるが、冷却効果を高めるボンネット上のエアスクープはつかない。そのかわり、グリル片側のみ開口部が与えられている。左右非対称のグリルは、かつて人気を博した同社のブルドッグ(シティターボII・古いね)を彷彿とさせる。
リアは左右のテールランプをつなぐ真っ赤なガーニッシュによってワイド感が強調される。お約束のリアスポイラーの装着(TRのみ)はもちろんのこと、バンパーはメッシュの開口部が与えられた専用デザインとなる。この他、横長の専用ドアミラーなど、細部にまでメスが入る。テールのガーニッシュにやや古くささを覚えてしまうが、確かに速そうに見える。ライバルのようにストリート系にふらなかった点は評価してもいいだろう。
内装はホンダ特有のスポーティームードで演出。質感そこそこ
スポーティームードで迫るのは外観だけでない。内装は明るくて開放的な印象のノーマルライフとは対照的に、ブラック&シルバーのコンビが基調となる。メーターの文字盤とステアリング中央のHマークは赤で統一。このあたりのスポーティーな演出はさすがウマイ。基本的なパーツは共通でも、雰囲気は大幅に変えられるという好例だ。ここはいっそのこと、コラムシフト先端をタイプRのようにアルミ削りだしにしても面白かったと思う。
エアコンスイッチがレバー式からダイヤル式に変更されるなど、センターパネルが刷新されたことも見逃せない部分だ。特にオーディオスペースを、従来の1DINから2DINサイズに変更した点は、オーディオに凝る若者にとっては朗報だろう。
シートはサポート性を重視したセミバケット風。ステアリングは本革巻き3本スポーク(TRのみ)に変更されている。座っただけでもノーマルライフとの違いを体感できる。ライフはワゴンRやムーヴに比べて、若干シート位置が低く、乗用車ムードが強いわけだが、ダンクで唯一気になったのが、高めにセッティングされたステアリング位置。10時10分の位置で握ろうとすると不自然になる。それゆえ手は8時20分、すなわちレーシングポジションとなる。反応がクイックなスポーツカーならこれでも一向に構わないが、ミニバンタイプのクルマには不条理なのではないだろうか。コストの制約が厳しい軽自動車に贅沢をいうのはタブーというのは十分承知だが、せめてチルト機構を付けて欲しかった。
基本性能&ドライブフィール
ターボ初の★2つをゲット! パワフルでクリーンなターボエンジン
エンジンは従来の直列3気筒SOHCに、インタークーラーターボを新たに組み合わせたもの。最高出力は規制いっぱいの64PS/6000rpm、最大トルクは9.5kgm/4000rpm。レッドゾーンは7000回転と、回転許容範囲はそれほど広いわけではない。ターボエンジンとして初めて平成12年排出ガス規制値を50%以下でクリアする「優・低排出ガス」適合車としている。
組み合わせられるミッションは3速AT。ギア比は1速2.631 2速1.441 3速0.844と、ノーマルライフの1速2.888 2速1.562 3速0.976よりハイギアード化されたのが主な変更点だ。また、足回りは強化スプリングや大型スタビライザーを装備した専用スポーツサスペンションが与えられている。安全性についてEBD(電子制御制動力分配システム)付きABSが新たに標準装備されるようになった。
見た目に反して走りは上質、フィーリングの良さはさすがホンダ口
エンジンパワーは十分強力。スポーツモデルというにふさわしい加速を披露する。何より美点なのが、ターボだということをあまり感じさせない滑らかで自然なフィーリングだ。レスポンスに優れるというセラミックボールベアリングターボの恩恵からか、ある回転数からドッカンとパワーが上乗せするタイプではなく、低回転からレッドゾーンまでほぼ均等に加速していく。最大トルクと、その発生回転数だけを見てみれば、ダンクは決して有利な立場にいるわけではないのだが、扱いやすさではライバルを大きく引き離す。決して速いだけに完結しておらず、回す楽しさも兼ね備えている。ターボラグを感じさせないターボ。NAみたいなターボ。これまでNAに執着してきたホンダだが、このターボにもホンダDNAが脈々と流れているという印象を強く感じる。
意外だと感じたのは、全体の走りが見た目に反して上質だということ。ドタバタといった固い感じでもなく、ピョコピョコと跳ねる感じもない。足回りの味付けは極めて適切。さらに特筆すべきは静粛性の高さ。3速ATのため、特に高速道でのエンジン音が試乗する前までは心配だったのが、100km/h巡航で5000回転と高めの回転数であるのにも関わらず、平穏さを保っている。そのまま6000回転で120km/h、7000回転で140km/hまで伸びる。さすがに音も高まり、巡航する気にはなれないが、それらの回転域でもエンジンが苦しそうでないのはホンダの真骨頂というべきか。
アクセルワークによるエンジン回転落差もそれほど気にならないし、キックダウンのショックもよく抑えてある。低中速域のでトルクがしっかりでている。高速の燃費性能以外で3速ATであるデメリットはほとんど感じられないと言っていい(でもやっぱり4速ATが欲しい)。ちなみに10・15モード燃費は17.0km/リットル。これはノーマルライフ(Tグレードの場合)のマイナス0.4km/リットルに過ぎない。
ハンドリングは、やや物足りなさを感じる。電動式のパワステも軽すぎる。ステアリングの手応えがあまりないので、不安感が増す。タイヤもノーマルライフと同サイズだけあって、粘りがイマイチ。タイトコーナーの立ち上がりなどで不用意にアクセルを踏むとホイールスピンする場面があった。かといってやみくもにグリップ力を増そうと扁平率を低くすれば、乗り心地が犠牲になる。街乗りの快適性とスポーティーな感覚のバランスはなかなか難しいところだ。
それでもロールも少ないし、回頭性も高いからミニバンタイプの軽自動車としてみれば、相当高いところでバランスがとれている。とはいえまあ、とてもスポーツカーとはいえないし、快適性ならノーマル車でもいい。あくまで、スポーティーな雰囲気を楽しむ軽ミニバンということになる。
ここがイイ
3速なのにそれを感じさせないAT。変速ショックもほとんどなく、また街乗りではターボラグもほとんど感じられないため、力強く快適。ほぼ小型車並の動力性能を持ち、燃費もそこそこ。乗り心地も固すぎない。居住性も幅が狭い以外不満なし。軽自動車としては「上がり」の出来。
ここがダメ
やっぱり欲しい4速AT。これがあれば高速道路で長距離移動もきっと苦にならないだろう。カーナビがつけにくいダッシュ形状も不満。ダッシュの上にモニターを置いてしまうという手はあるが、1DINスロットインタイプでは位置が低めとなる。
総合評価
ホンダらしいNA感覚のターボによって、街乗りでまったく不満ない性能を持った。カローラより売れているノーマルライフの走りは、やはり「モア・パワー」といいたくなるが、ダンクにはそれはない。リアシートの足下が狭いのでフル乗車には向かないが、そんなことはあまり気にする必要はないだろう。二人乗りと割り切れば、ワンタッチで折り畳めるリアシートも備わっており、タウンカーとして文句なし。若者向けの外観はかなり好みが分かれそうだが、ライバル2車のヤンキー臭さを感じさせないのは好感だ。
しかし、これだけの出来になると仕方ないとはいえ、価格は安くない。TRに130万円出すなら同じターボの「スマート」が買える。シティコミューターとして使うならスマートの方がより今を感じさせるし、数年乗ったあとには、良きにつけ悪しきにつけ、様々な「思い出」が残るはず。残念ながらスマートは小型車登録となってしまうが。
トヨタなどは絶対的に維持費が安い軽自動車を敵視しているフシがあるが、これは高い小型車の税制をふまえた話。軽自動車が安すぎるのではなく、小型車が高すぎるのだ。ユニクロの洋服など生活必需品に関しては「デフレ」が進む昨今、地方生活者には必需品の小さい自動車はもっとデフレになってもいい。いや事実、ヴィッツなどは相当デフレ感覚がある。あとは税制を引き下げれば、小さいクルマ(軽を含む)の需要はさらに高まるはず。税金が足りないというなら、廃車処分時に課税する仕組みにすればいい。
ダンクの130万円は軽ゆえ検討できる価格だろう。完成度抜群のダンクの性能で100万円台なら、それならスマートなんかめじゃない競争力を持つのだが。
公式サイト http://www.honda.co.jp/Dunk/2003/index.html



