Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > リンカーン LS

リンカーン LS新車試乗記(第108回)

Lincoln LS

 

2000年01月28日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

フォード・リンカーンといえば、GM・キャデラックと双璧を成す伝統ある高級車ブランドだ。リンカーンは前衛的姿勢をとるキャデラックとは違い、保守的なクルマ造りを特徴としてきた…これまでは。こうしたイメージから脱却すべく投入されたのがLSだ。

世界戦略車として北米はもちろん、世界18ヶ国で販売される。大フォード傘下となった英国ジャガーのSタイプとプラットフォームを共用していることも話題の一つで、いわゆるSタイプの兄弟車といっても間違いではない。

ちなみにLSとは”ラグジュアリー・スポーツセダン”の意味が込められており、従来のラグジュアリー路線に加えて、スポーツという若々しい性格が与えられている。先々回採り上げたドゥビルがキャデラックオーナー層の若返りを図ったように、LSにもリンカーンオーナー層の若がえりと拡大を狙っている。

駆動方式はFRで、エンジンは3.0リッターV6と4.0リッターV8の2タイプ。ハンドル位置は全て右となる。

価格帯&グレード展開

グレードはV6、V8のエンジンの違いによる2つ。両モデルとも主要安全&快適装備に加えて、サイドエアバッグ、EBD(電子制御制動分配システム)、運転席8WAY/助手席6WAYパワーシート、本革シート、パイオニア製ナビなどが標準装備。さらにV8は電動サンルーフ、6連想CDチェンジャー、ステアリングメモリー機能、ウッドシフトノブが追加装備される。これでV6が430万円、V8が498万円。ジャガーSタイプと比べて、V6で150万円、V8にもなると200万円ほど安く、国産車と十二分に競合できる価格としている。

なお、ボディカラーは全5色で、それに応じて2色のインテリアカラーが用意されている。

ライバルはキャデラック・セビル、メルセデスベンツ・Eクラス、BMW・5シリーズなど。国産車ではセルシオの他、価格を考慮するとクラウンやセドリック/グロリアの乗り換え層もターゲットに入ってくるだろう。

パッケージング&スタイル

リンカーンのバッジを付けたハイソカー

全世界でリンカーンの存在を高めていくために開発されたLSのプラットフォームは、設計当初から左右のハンドルを前提にしたもの。先発のジャガーSタイプでも使われており、今後登場するフォード車にも流用されることが決まっている。

ボディサイズは全長4940mm×全幅1840mm×全高1455mm、ホイールベースは・・mm。ジャガーSタイプとはホイールベースだけが共通で、それ以外は僅かに大きい。メルセデスSクラス並のサイズでも、そこまで大きく見えないのは前後の絞り込みが強いためだろう。

そのデザインはアメ車独特のアクの強さはなく、思いっきりグローバライズされている。欧州車? いやトヨタマークII? 日産ローレル? サイズを考慮すれば三菱ディアマンテか? ストレート基調のボディに丸い屋根。昔でいうハイソカーをデカくしたような印象だ。存在感はあまりなく、街での注目度は高くなかった。バッジがフォードならともかく、それが天下のリンカーンだと思うと、かなり物足りない気がしてしまう。

オーソドックスなデザインのインパネは、標準的なスイッチ配置で、基本的には使いやすい。木目や本革シートで、そこそこの”ラグジュアリー”な雰囲気を作りだしている。これにカロッツェリア製のナビが標準装備として加わる。モニターはなんとか見られる位置だ。

外観も含めて、旧来のリンカーンの豪華さ、ジャガーのような趣味性は薄いものの、それを好まない人もいるわけで、結果的にはこちらの方が幅広い層に受け入れられるという判断はできる。米国人の感性は日本人とはかなり異なっているし。

しかし、全体の質感では、リンカーンというブランドイメージからすれば、今一歩といわざるを得ないのも事実。価格とトレードオフだ。まぁ、これもバッジがフォードだったら、何もいうことはないのだろうが。

FRのため室内床中央にトンネルがある居住性は、平均レベルといったところで、アメ車のイメージからすればタイト。”スポーツ”の意図を感じさせられる部分だ。

後席はお尻の部分が深くめり込むために、確実にSタイプよりも広く感じられる。普通に4人乗るならなんとか不満が出ないといったところ。また、トランクもSタイプよりは広い。

基本性能&ドライブフィール

ドライブレーンは全てジャガーSタイプとの共用品

3.0リッターV6はSタイプと全く同じで、最高馬力、最高トルクは若干低い213PS/6500rpm、28.3kgm/4750rpmでフォード製。一方のV8は、ジャガーの4.0リッターに対して、3.9リッターとなる。これはリンカーンのストロークが1mm短い85mmとされているためで、総排気量は3949ccとなっている。こちらの最高出力、最大トルクも若干低く256PS/6100rpm、36.9kgm/4300rpmとなり、ジャガー製だ。

この2つのエンジンにはフォード製の5速ATがSタイプ同様に組み合わせられる(ファイナルのみは若干変更されている)。この5速ATにはシーケンシャルのマニュアルモードが備わっており、タコメーターを振り切っても勝手にシフトアップしないプログラムとなっている。

足回りは、4輪独立懸架ダブルウィッシュボーン。ジオメトリーこそ若干変更されているものの、これもSタイプ同様。というかジャガーの技術が投入されている。タイヤは225/50R16インチを履くSタイプに対して、LSは搭載エンジンに関係なく215/60R16で、しかもオールシーズンタイヤとなる。なお、V6とV8とではアルミホイールのデザインが異なっており、これが外観上唯一の識別点となる。

まるで欧州車

V6、V8を問わず、第一印象は、欧州車か、もしくは走りを煮詰めた国産車か、といった乗り心地だ。これまでアメ車といえば乗り心地重視の味付けだったのに、LSはまるでドイツ車のような硬めの味付けとなっている。アメ車はオールシーズンタイヤを義務づけられているために、ロードノイズが低速時で目立つことやグリップ感の物足りなさを覚えるかもしれないが、剛性の高いボディのおかげで、それによる不快感はかなり抑えられている。

重めのステアリングは自然だし、ロールもアメ車の基準からすれば抑えられており、想像するよりもはるかにスポーティーな性格に仕立てられている。タイヤを交換すれば、もっと印象は良くなるだろう。FRらしい素直な旋回特性は、ボディサイズを気にせずに「S」なフィーリングで楽しめる。

V6エンジンは実用上何ら不満ないものの、低速トルクが充分でなく、どうしても回し気味となり、高級車らしい力感に欠けるものだ。一方、V8エンジンはトルク感を存分に味わせてくれる。大排気量ながらレブリミットの6500回転あたりまでスムーズに回り、アメ車V8の怠さは全くない。80kgの重量差から生じる鼻先の重さを感じさせないどころか、むしろV6よりも軽快感がある。もちろん、静粛性に関しても高いレベルにあり、V6との価格差は十二分に感じ取れる。リンカーン・ブランドには相応しいのは、このV8といっていいだろう。

残念なのは、両エンジンに組み合わせられる5速ATの変速がトロイこと。特にマニュアルモードで3速→2速に落としたとき、1テンポ、いや2テンポぐらい遅れ、さらに唐突な変速ショックに見舞われる。ワインディングで一番よく使うギアがこれでは、せっかくのマニュアルモードも台無しだ。

高速巡航では直進性はまずまずながら、120km/hあたりをすぎると風切り音がかなり気になった。ライバルの静粛性を考えると、ちょっとマイナスポイントだろう。

ここがイイ

400万円台でリンカーンブランドが手にはいること。特に498万円のV8は破格に安い。輸入車でV8を買おうとすれば、キャデラック・セビルで100万円、ジャガーSタイプで200万円、ベンツEクラスにもなると350万円以上もの上乗せ額を迫られる。その意味でもLSを買うとなれば、V6よりもV8の方をオススメしたい。クオリティ的にも、かつてのようないい加減なつくりではなさそうだ。

ここがダメ

5速ATのマニュアルモード。3速発進ができるし、レブリミットまで回るが、マニュアルモードの応答が悪く、コーナー手前で操作したギアが、コーナーの途中でいきなり落ちるなど、危険すら感じる。V6でもV8でも同様の反応だったので、個体差ではなさそうだ。こうした新しい技術が初めて載った外国車は、やはり熟成までに若干の時間がかかりそうだ。

リアシートに座ってお尻が沈むと小柄な人は足が浮く。欧米人並に足の長い人でないととても落ち着かない。また革シートは全車標準だが、あまり高級感が感じられないのはなぜだろう。

総合評価

まるで欧州車。大雑把、デカイというアメ車のイメージからすると、いい意味で期待が裏切られるクルマだ。内外装のルックスにしたってリンカーンが、世界規模で若い(といっても40代の)オーナー層をターゲットとしていることも分かる。国産高級車からも抵抗なく移行できるはずだ。

と書いてはみたが、内外装のデザイン、走りの質などすべてにおいて、決定的な魅力に欠けている気がする。このクルマ単体でみればそこそこ良くできているのだが、ライバルはそれよりもっと魅力的なクルマ作りに取り組んでいるのだから。米国高級車市場では、一位がメルセデス、二位がレクサス、三位がキャデラックで、四位がリンカーンだという。先回の試乗車のキャデラックドゥビルもそうだが、高級車はみな欧州車的になってきており、それがまた人気が高いようだ。リンカーンとしてもこのままいくとBMWなどにも追い上げを食らいそうなので、その対策として今までと違う路線でいきます、ということだろう。

こうなると従来のリンカーンらしさというものが足りないという気もするが、そのリンカーンらしさというのは今となってはネガティヴなものといえるわけで、LSの方向は間違ってはいない。間違ってはいないが、アメ車の高級車らしさも表現できてない。このジレンマをぶち破るだけの迫力がLSにはないのだ。今までのリンカーンより世界規模で確実に数が出るという意味では革新的なクルマではあるが。

 

公式サイトhttp://www.lincolnvehicles.com/

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

その他輸入車 最新の試乗記10件

最近の試乗記一覧

関連コンテンツ一覧