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VW ルポ新車試乗記(第190回)

Volkswagen Lupo

 

 

2001年09月29日

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キャラクター&開発コンセプト

「VWのエントリーモデル」、遅ればせながら日本上陸

ポロよりもさらにコンパクトな、通称Aセグメントを担うのがルポだ。ヨーロッパでの発売は、日本への導入開始より3年も前の1998年。サイズこそ小さいが、性能、走り、クオリティなど、どの面でも妥協のない造り込みがなされており、いかにもドイツ車然とした、合理的で密度の高い仕上がりが特徴だ。

欧州では1.2リッターディーゼルターボを搭載する「TDI」が注目の的。これは市販車としては世界初となる3リッターカー(3リッターの燃料で100km走行できるクルマ・33.3km/L)を実現して話題となった。日本仕様には、残念ながらその目玉モデルはなく、1.4リッター+4ATのみ。駆動方式はFF。ボディは3ドアで、乗車定員は5名だ。

価格帯&グレード展開

主力は159.9万円で、ポロとの実質的な価格差は15万円

ラインナップは149.9万円のモノグレード。これに装備を充実させた「コンフォートパッケージ」が10万円高で用意される。ルポのターゲット層は、親と同居する20~30代の独身女性で、150万円を切る価格が目安となったようだ。ただし標準仕様はパワーウィンドウ、集中ドアロック、オーディオ、スピーカーが省略されており、実質的にはそれらを備えたコンフォートパッケージが主力となる。これでも同装備のドイツ本国仕様より、日本仕様のほうが割安らしいが、同クラスの国産車と比較してしまうと割高な印象は否めない。

パッケージング&スタイル

密度の濃いキュートなボディ

ポロとの競争を避けるためか、ボディは3ドアのみの設定。そのサイズは全長3525mm×全幅1640mm×全高1475mm。全長は兄貴分にあたるポロより約200mm短く、国産車と較べてもマーチやヴィッツよりさらに短い。輸入車のなかでもかなり小さい部類に入り、国産のリッターカークラスはもとより、軽自動車も比較対象になってくるだろう。とはいえドアが大きいので、後席へのアクセスが便利な反面、駐車スペースが狭いドアの開け閉めに苦戦する場合もある。

デザインはエントリーモデルらしく特に飾ったところはない。コンパクトカー作りの文法通りに、なるべく四隅を広くとったスクエアなデザインが与えられている。とはいえヘッドライトは大小の丸型で、小型車らしい親しみやすさを演出している。それでいて全体としてはVWらしく骨太な印象。国産車にありがちな、「目だけ強調して、あとはペラペラ」といったところがまるでないのはいい。街中ではけっこう存在感がある。ボディカラーにはソリッドの赤、青、黄色が用意され、売れ筋でもあるシルバーはない。

ポロやゴルフ譲りの高い品質感


2眼タイプの独立したクラスターを持つメーターを配したインパネは、ルポの登場後にモデルチェンジされたポロにも流用されたデザイン&基本骨格を持つもの。造形だけではなく、質感もポロ、ゴルフ譲りの高品質なものだ。表皮は粒の揃ったシボで、メーターを囲むリングはメタリック調。シフトノブの基部にはクロームメッキが奢られている。サイズやクラスの割りにちょっとやりすぎの感もあるが、高級感の演出に一役買っていることは確かだ。シートも硬めで、これまた非常にドイツ車らしい。

鉄板剥き出しの重厚なドア

内装は黒の他に緑と青。鉄板剥き出しのドアに上手くコーディネイトされており、非常に洒落ッ気がある。ドイツ車然とした堅牢な造りは、そのドアに触れるだけで直感できる。冗談かと思うぐらい重く、締める時の音もバシッと重厚感に溢れたものだ。

だが、内装地に薄っすら描かれた無数のネズミとネコは、個人的に好きになれない。お子様を喜ばせようという意図? なんなとくダイハツのキティ・バージョンに近いものを感じてしまう。

前席優先のレイアウト、際立つ安全装備

安全に対する取り組みは、さすがドイツ車だけあって妥協はない。デュアルエアバッグに加え、このクラスでは珍しいサイドエアバッグも標準装備する。後席には立派なヘッドレストが3つく(真ん中に穴が開いているので、後方視界の妨げにはなりにくい)。その他、EBD付のABS。ESBS(旋回中のブレーキング時に4輪の回転速度差を検出して車両を安定させるメカ)も装備。ボディはユーロNCAPのクラッシュテストでクラス最高の4つ星を獲得している。こうしたところは国産コンパクトカーも見習いたいところだ。

 

ボディが小さいこともあって、後席は相応に狭い。着座姿勢は食卓の椅子に座っている感じになり、背後にはリアウインドウが迫るので、かなり圧迫感がある。荷室も奥行きが30cm程度と小さい。このあたりは正直、日本の軽自動車のほうが上だ。まあ、ひとり、ふたりがパーソナルに使う分には、その狭さもマイナスにはならないだろう。

基本性能&ドライブフィール

リッター14kmの燃費性能は、国産コンパクトにやや遅れをとる

エンジンは現行ポロにも搭載されているオールアルミ製1.4リッター直4ユニットをベースにしたもの。EGR(排気ガス再循環装置)や電子制御スロットルバルブなどの新採用によって、最高出力は75ps/5000rpm、最大トルクは12.8kg-m/3800rpmを発生する。ミッションは4速ATのみで、10・15モード燃費は14.0km/L。ポロの1.4リッター車が12.8km/Lだから、その向上ぶりは目を見張るものがある。しかし、やはりフィット(23km/L)を筆頭とする国産ライバルと比較してしまうと、見劣りするのも確か。特にハイオク指定というのがツライ。

サスペンションも基本的にポロと同じだ。前はマクファーソン・ストラット、後ろはトーションビーム・トレーリングアームとなる。ホイールベースこそルポは2320mmとポロより90mmも短いが、前後トレッドは1370/1385mmと、ポロとほぼ等しいサイズを確保している。また、日本の交通事情にマッチさせるべく前後のブレーキ径を拡大しており(ポロの1.4リッター車やゴルフの1.6リッター車と同じサイズ)、そのためタイヤ&ホイールも内径を1サイズアップした185/55R14が組み合わせられる。

直進安定性は、国産のラージクラスも真っ青

車重は1000kgと比較的重いが、実際に走り出してみるとトルクの立ち上がりが早く、加速は意外にも活発だ。もう少し高回転まで引っ張れると瞬発力もアップすると思うが、欧州のコンパクトカーらしくATレバーをMTのようにシフトチェンジすれば不満はかなり解決する。騒音に関しても、エンジン音自体が低いので耳障りなところがない。

ステアリングフィールはズッシリしており、ロック・トゥ・ロックは3回転とクイック。乗り心地は硬めだが、強い上下動を足回りだけで巧みに吸収するので、不快感はない。ボディ剛性の高さが際立っており、車格がひと回りも、ふた回りも大きなクルマに乗っている感じだ。高速コーナーでは背が高いためにロールは許すものの、トレッド幅が広いこともあって挙動の乱れはほとんどない。ただ、スポーティとか、楽しいという印象はなく、オンザレールに終始する感じだ。

特に優れているのが、高速での直進安定性だ。同クラスの国産車とはまるで比較にならないくらいにいい。小排気量ゆえ中間加速こそ鈍いものの、一旦スピードにのってしまえば、ポロやゴルフと寸分隙のないバシッとした走りを披露する。4速がハイギアードであるため、100km/h巡航時のエンジン回転数は2700回転と低め。まさに小さなロングツアラーといった感じだ。もちろん150km/h巡航も問題なくこなす。

逆に小回りはあまり得意ではなく、最小回転半径は国産の同クラスが4.3~4.5mぐらいになのに対してルポは4.7mにとどまっている。またATのシフトインジケーターがメーター内にないのは、国産車から乗り換えた人にとって不便を感じる部分だ。

ここがイイ

ボディ剛性が異様に高いので、ドイツ車特有の硬質感をたっぷり味わえる。これは日本製コンパクトカーではまったく得られないもの。「ガイシャ」に乗っているという満足感がある。またATは、どうしちゃったの、というくらい良くなっている。スロットル・バイ・ワイヤとなっているせいなのか、シフトプログラミングは文句なし。ポロでは気になった変速ショックやアイドル振動はなく、60km/h前後で3速、4速を行き来するギクシャク感がない。ATそのものは日本のJATCO製だ。

ここがダメ

大きな欠点はほとんどなし。小型車としてのハード面は文句なし。強いていえば、本来はこんな豪華なクルマではないことか。日本市場で不満を言われないよう徹底的に良くしたため、元の姿とは違うクルマになっているような気がする。以下総合評価に。

総合評価

ヴィッツより85mm短いだけあって、さらに一回り小さいクルマと実感する。ところがここまで小さい意味は、実際にはほとんどない。使えばヴィッツサイズでも十分に取りまわしはいい。逆に、ルポではリアが狭い分、日常性がぐっと低くなる。たまには荷物を載せたり、人を乗せたりすることもあるだろうから、その点ではヴィッツやフィットの方がタウンカーとして優れていると言えるだろう。日本の軽自動車は維持費が安いから意味もあるが、日本においてルポの小ささに大きなメリットはない。つまりルポは3リッターカーであることが本質であり、日本向けの1.4リッター豪華仕様は、太った狼(ルポは狼を表すラテン語)になってしまっている。

しかし日本市場の特殊性を考えれば、マーケティング的には大正解だ。OLが貯金で買う「がんばっている自分へのプレゼント」としてはジャストフィットだろう。本国発表以来、3年を経ているだけに、トラブルも少ないはずだし、何より、MDデッキを初めとする装備品の充実さは買ってよかったと思えるはず。ヴィッツより数が少なく、なんたって「ガイシャ」だから、イバリもきく。ドイツ車らしい硬質感も、クルマとしての完成度の高さも、さすが最新のVW車らしい。

パーソナルカーとしては大きくなりすぎたゴルフ、ちょっと古くなってしまったポロといったVWのラインナップで、ルポの商品価値は高い。また、男性が乗っても「ガイシャ」の威力があって、けして貧相にみられない。ヴィータはどうにも男性に似合わないが、これは年寄りが乗ってもけっこう似合う。だからインポーターには、ビジネスにならないことを承知の上で、3リッタールポを日本に入れて心意気を示して欲しいと思う。今のご時世なら意外に売れるような気もする。

 

公式サイトhttp://www.volkswagen.co.jp/

 
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