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ルノー ルーテシア 1.6 eLe新車試乗記(第412回)

Renault Lutecia 1.6 eLe

(1.6L・4AT・219万8000円)

欧州COTYの常連ルノーに
6回目の受賞をもたらした
「クリオIII」ことルーテシア、
その実力を日本の道で検証!

2006年04月22日

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キャラクター&開発コンセプト

欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞


こちらは2005年東京モーターショーに出展された「ルノースポールコンセプト」

初代クリオ(日本名ルーテシア)は、ルノー5(サンク)を継いで1990年に登場。1998年のクリオIIを経て、今回の3代目は欧州では2005年、日本では2006年3月に発売された。初代に続いて欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、評価・人気ともに高いコンパクトカーだ。

新型の特長を要約すれば、スタイリッシュなデザイン、室内の広さや快適性、ユーロNCAPで最高の5つ星を得た衝突安全性といったところ。ボディサイズは一回り大きく、幅は3ナンバーサイズとなった。車台にはモディス(日本未導入)に続いて、日産マーチ、ノート、ティーダ、シルフィ等と同じ「Bプラットフォーム」を使用する。

CAR OF THE YEAR 2006(英語)

価格帯&グレード展開

189万8000円~。3ドアやマニュアルもある

現時点での日本向けは、1.6リッターモデルのみ。グレードは標準車、そしてアルミホイールやオートエアコン等が付いた「ele(エル)」(10万円高)の2種類がある。さらに5MTと4AT(10万円高)、3ドアと5ドア(10万円高)が選択可能だ。価格は189万8000円(3ドア・5MT)から、219万8000円(5ドア・4AT ★今回の試乗車)まで。2006年3月のジュネーブショーでは、ホットバージョンのRS(ルノースポール)が正式に発表されている。

パッケージング&スタイル

1世代前のCセグメント並み

先代より一回り以上大きなボディサイズは全長3990×全幅1720×全高1485mm。全長は4メートルを切ったものの、全幅は3ナンバーサイズに。いわゆるBセグメント(VWポロクラス)を抜け出して、一昔前のCセグメント(VWゴルフ、プジョー306)並みのサイズだ。

日産マーチとBプラットフォームを共有するが、ホイールベースは2575mmもある。ゆえに、むしろノートやティーダ(2600mm)に近いと言った方が良い。特に全長3990mmはノートと全く同じだ。スタイル自体にはプジョー206の影響が強く感じられる。

黒基調で質感の上がったインテリア

ボディカラーは13色あるが、内装は黒基調の1種類のみ。ソフトパッドのダッシュボード、つや消しの樹脂パーツ、随所にあるメタル調塗装など、質感は先代より大幅に高まった。Aピラーはずいぶん寝ているが、ボディサイズに余裕があるせいだろう、圧迫感は全くない。シートはルノー車にしては固めだが、それでも印象としてはドイツ車よりは明らかに柔らかく、国産車よりも腰があるといえる。

ステアリング上のボタンはオーディオ用ではなく、200km/hまでセット可能なクルーズコントロールとスピードリミッターの設定用(AT車のみ)。ルノー車で定番の「サテライトスイッチ」がステアリング右側にあり、これでオーディオをブラインド操作する。

小さなボディで5つ星

3点式シートベルトと独立した大型ヘッドレストを3人分備える後席。天井中央にはゴツイ梁(はり)が左右に走る。取扱い説明書にチャイルドシートの適合性や取り付け方法が詳しく明記するなど安全性への配慮は欧州車らしい。ヘッドルームの余裕や足先が前席下に入る点など、上級車のメガーヌに迫る広さだ。

VWゴルフほど奥行きはないが、十分な容量(288L)の荷室。後席の折り畳みはオーソドクスなダブル・フォールディングだが、操作に力は要らない。荷室床やリアゲート下側にも、やはりいかにも頑丈そうな構造体を残すなど、剛性や衝突安全性を優先した作りが目立つ。

基本性能&ドライブフィール

パワートレインの印象はおおむね従来通り

試乗車は「eLe」の5ドア・4AT車だが、1.6リッターエンジン(112ps、15.4kg-m)は全車共通。オートマチックも従来品の改良型のようだ。減速時にシフトダウンを積極的に行なう変速スケジュールは依然として独特だが、まあしばらくすれば慣れてしまえるもの。今どきの欧州車らしく、エンジンパワーはあまり感じられないが、実際には十分に速い。上まで回すとウィーンというノイズが高まるが、低中回転トルクで十分に走るので、特に気にはならない。一度マニュアルで乗ってみたものだ。

街中では小回りがよく効き(最小回転半径5.1メートル)、しかも左右ドアの見切りが低いなど視界も良くて運転しやすい。回す時は軽いのに変な反力はある電動パワステだけは違和感があるが、実用面で支障のある部分はない。オンボードコンピューターの表示では街乗りはリッター8kmくらいだった。

ゆったり重厚な乗り味

100km/h巡航時の回転数は2800回転くらい。AT車に標準装備のクルーズコントロールを使って淡々と走れば、13km/L前後の燃費で走ってくれる。静粛性や乗り心地は上級車並みで、ゆったり重厚な乗り味がルノーらしい。荒れた路面でもショックを一切伝えてこないところはドイツ車と明らかに違う点だ。130km/h巡航だと10km/Lあたりまで落ち込むが、安定性も快適性も余裕たっぷり。150km/hでもまったく問題ない。

レバーではなくステアリングのボタンで操作するクルーズコントロールは少し慣れが必要だが、生意気にも200km/hまで設定可能。任意の速度にリミッターを設定することもできる。UK仕様(4AT)の最高速は186km/hとある。

ここがイイ

ボディ剛性は向上しているが、ゆったりした乗り味にはいつものフランス車らしさが残っている。室内の広さ(特に後席)も不満無くなり、当然だがシートの掛け心地もいい。内装の質感も全く不満ないところまで良くなっているのは、フランス車らしからぬ? ところだ。衝突安全性能、多くのエアバッグ、後席のアンチサブマリン形状、前席の抜けないヘッドレストなど安全性は高い。

最上級の「eLe」では、ステアリングを切るとコーナリングランプが点灯して進行方向や歩行者を照らしてくれる。目新しい装備ではないが、このクラスのコンパクトカーでは珍しい。交差点で止まった状態でも作動するから、ある意味AFSよりありがたい。

1年間走行距離無制限の保証と、故障の際の応急処置や車輌の移動を行うサービス「ルノー認定中古車アシスタンス」を付与する認定中古車制度「ルノー・アプルーブドカー」が4月1日付で始まったことで、中古車相場の維持をメーカーが少し気にかけ始めたこと。下取り価格の下落が激しいフランス車にとって、少しは力になるはずだ。

ここがダメ

いかにも電動っぽいフィーリングのパワステ。最近の電動パワステは油圧並みに自然なものが当たり前になってきただけに、この部分だけ妙に気になる。先代の方が自然に感じられたほどだ。また、キー一体型のキーレスが日本の電波法の関係だろう、使えなくなっており、別体のリモコンになってしまう。ルノー車では仕方ないことらしいが、せっかくの新車がこれではちょっと残念だ。

ステアリングやコラム周りのスイッチ類(サテライトスイッチ)の使い方はとても一度には理解できなかった。クルーズコントロールもついていたが、結局説明書なしでは使いこなせなかったし。またカーナビはディスプレイをどう置くかで相当悩みそう。オプションとしてはセンターエアコン吹き出し口の上に取り付けられるが、その奥のインフォメーション・ディスプレイはかなり見にくそうだ。カップホルダーには500㎜Lのペットボトルは立たない。ドアポケットには入るが、倒れてしまう。ちょっと困った。

総合評価

プレスリリースによると、ルノー・ジャポン株式会社(ルノー100%出資子会社)は2006年4月1日付で、日産の100%出資子会社である日産トレーディングに移管された。これに伴い、ルノー・ジャポンの代表取締役には日産でマーケティング本部宣伝部部長を務めた徳山公信が就任している。つまり日産がいよいよ本気でルノーを販売する、ということのようだ。

その第一弾がルーテシアになるわけで、当然、欧州イヤーカーとしての出来の良さをウリに、販売を強化してくるはず。日産の販売店は全国津々浦々にあり、サービス拠点だって心配ない。現在は本州では富山県、和歌山県、九州では鹿児島など5県に販売店がない状況(本州でもサテライト店というサービス中心の店舗しかない県もある)だが、これも解消は難しくないだろう。輸入車が正規ディーラー数を増やす作業には大変なエネルギーを要するが、その点で日産ディーラーならまず問題はないはず。

しかし、欧州販売台数ナンバーワン(1998~2004年の乗用・小型商用の合計)というルノーも、日本ではいかにも知名度がない。ほんの10数年前には正規インポーターすら無くなってしまい、ヤナセが国策? で輸入を始めたほど(欧州車を輸入をしないと、日本車を欧州で売りにくいという状況を改善するため)。日産系となって一部日産ディーラーで売られ始めてから数年の動きを見ても、販売的には低調。昨年はカングーが比較的好調だったものの、トヨタとホンダを除くランキングでルノーは3,485台で12位。3,928台で11位のポルシェより下で、車両代金がポルシェの半額以下ゆえ、総売り上げ的にもかなり厳しいのは想像できる。それでもシトロエン(16位)やヒュンダイ(17位)よりは上位だが。ちなみにプジョーは10,446台で7位。プジョーは昨年かなり厳しかったが、それでもこの台数。つまりディーラーを増やし宣伝をしていけば、フランス車でも1万台くらいは売れる、というふうには見えるわけだ。

同じプラットフォームとされるティーダは昨年度(昨年4月~今年3月)で84,280台を売っている。1車種でルノーの20倍以上。ディーラーとしても小型車は数を売らないと商売にならないわけで、日産ディーラーが急にルノーを売る気になるかどうかは、はなはだ難問だろう。某県で話を聞いたときには「ルノーのような趣味車はディーラーよりも、マニアックなサテライト店の方がよく売る」と言われたし、現実にデイズのある愛知県では、日産系ではない会社が正規ディーラーとしてたくさんルノー車を売っている。まだまだマニアックなクルマである以上、売る側の熱意と、そしてクルマに対する知識が販売に結びつくと言っていいだろう。

そんな中での新型ルーテシアの投入は、なかなか微妙なものがある。もちろん先代ルーテシアと比べると広さも安全性も、何よりスタイリングもずいぶん良くなった。反面、フランス車特有の癖のある乗り味やメガーヌのような個性的なルックスはない。結果として、ターゲットとする女性でも乗りやすいクルマになったと思う。それゆえ日産系ディーラーでも売りやすいはず、と考えるか、前述のようにマニアックさが無くなって売りにくいと考えるかだ。

つまりルーテシアは今後の宣伝活動が重要なクルマだと言うこと。それは日産もわかっているから、宣伝部長を社長として送り込んだと思う。F1で有名なルノーが欧州イヤーカーを取ったコンパクトカーを日産ディーラーを通して売る、という事実を、いかに消費者にアピールするか。ルーテシアは日本でも売れるだけの実力は持っているから、その宣伝さえうまく行けばそれなりの台数は売れるはずだ。

ただ、それと予算が見合うか。ティーダの1/20以下の台数しかない売れないクルマで、大量の広告により需要を喚起するという手法は難しい。メガーヌの時にけっこうな量のTVCMが流されたが、ほとんど記憶には残っていないはず。よほどのことをしないと広告効果は出ない。徳山社長の手腕が期待されるところだ。あるいはゴーン社長が「売るぞ」と根性を決めれば、やり方はいくらでもあるはず。そして車両を日本向きに改良することもさらに進むだろう。例えばペットボトルがちゃんと入るカップホルダーなどは、欧州でも絶対必要な装備だと思う。

日産ディーラーも経営的には苦しい会社もあるようで、一部はいわゆるベンチャーキャピタル系の会社へ経営が移っている。そんな中でルノーを売るとすれば、投資対効果は? さらに日産車との差別化はどうするか。売れたとしても数万台だし販売の士気は上がるのか。価格だってそれなりに日産車より高い。使い勝手の部分では改良の必要性もある。さてどうする?

とはいえ、F1でもルノーは今や最強だし、社長は知名度が圧倒的に高いカルロス・ゴーンだ。販売力も宣伝費も工面できないわけではないから、売ろうと思えば売れるはず、などと考えは巡って、結局まとまらない。根本的に考えれば、ルノーを日本で売る意味があるのか、日産車をもっと売った方が経営的には正解ではないのか、とすら思えてくる。となるとルーテシアの明日はゴーン社長しだい。そのゴーン社長にとっても日産を立て直したことより、ルーテシアを1万台売ることの方が難題かもしれない。「社長、ご決断を!」

試乗車スペック
ルノー・ルーテシア 1.6 eLe
(1.6L・4AT・219万8000円)

●形式:ABA-RK4M●全長3990mm×全幅1720mm×全高1485mm●ホイールベース:2575mm●車重(車検証記載値):1190kg(F:770+420)●乗車定員:5名●エンジン型式:K4M●1598cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・横置●112ps(82kW)/6000rpm、15.4kg-m (151Nm)/4250rpm●カム駆動:タイミングベルト●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/55L●10・15モード燃費:11.6km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:185/60R15(Continental ContiPremiumContact2 )●試乗車価格:212万1100円(含むオプション:フロアカーペット 2万3100円 )●試乗距離:約200km ●試乗日:2006年4月

公式サイトhttp://www.renault.jp/lutecia/

 
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