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日産 マーチ 12c新車試乗記(第213回)

Nissan March





2002年03月23日

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キャラクター&開発コンセプト

世界でも評価されている和製ミニ

日産のボトムレンジを担うコンパクトベーシックカーが「マーチ」だ。第2次石油危機のあとの1982年に産声をあげた初代マーチは、高効率スモールカーを求める時代の声にマッチ。すぐにリッターカーの主役となった。'92年に登場した2代目はプラットフォーム、エンジンなど、気合いの全面変更が図られ、さらに英国工場での生産もスタート。日欧でイヤーカーに輝くなど、世界的に高い評価を受けた。

そして10年ぶりにフルモデルチェンジを受けたのが3代目となる新型マーチだ。シーマ、プリメーラ、スカイライン、ステージアにも新生日産の勢いが感じられるが、ゴーン体制に移行してから、ほぼ原点から開発されたのは今回がはじめて。その意味でも注目度は高い。開発コンセプトは「ユーザーフレンドリーを追求した、おしゃれな新世代コンパクトカー」。マーチならではの扱いやすいサイズを踏襲しながら、オリジナリティあるデザイン、「カーウイングス」「インテリジェントキー」といった先進のIT装備が充実しているのが特徴だ。

一新されたプラットフォームは、後にルノーの次期クリオも採用することが決定している。ボディタイプは3ドアと5ドアの2タイプ。エンジンは1リッター、1.2リッター、1.4リッターの3種類。★★★の超-低排出ガス車となる。ミッションは4速ATと5速MTで、これまであったCVTの設定はない。駆動方式は今のこところFFのみだが、ハイブリッド技術を応用した電気式4WDの投入も噂されている。乗車定員は5名だ。

価格帯&グレード展開

価格は95.3~132.0万円。1リッターのヴィッツの価格で1.2リッターのマーチが購入可能

グレードは基本的に1つのエンジンに対して1つのグレードという構成。1リッター車が「10b(95.3~99.8万円)」、1.2リッターが「12c(105.0~109.5万円)」、1.4リッターが「14e(132.0万円)」となる。このうち「10b」「12c」は3ドアと5ドアの選択が可能で、「14e」は5ドア専用となる。装備は「10b」が最も乏しくビジネスユース向けとなるが、それでも最低限の満足は得られる内容だ。

主力グレード「12c」は「10b」に対してフルホイールカーバー、全面UVカットガラス、電動カラードドアミラー、リア間欠ワイパー、リモコンキー、CD付きオーディオ+2スピーカー、運転席シートリフレクターなどが標準装備される。この内容で「10b」から9.7万円のアップ。排気量も200cc増しとなるわけだし、これは絶対お買い得。逆に「10b」の存在理由が見つからないほどだ。

最上級グレードの「14e」はさらにオートライトシステム、カラードドアハンドル、トップシェード付きフロントガラス、電動格納付きドアミラー、チタン調文字盤メーター、本革巻きステアリング、インテリジェントキー、フルオートエアコン、助手席アンダーボックス、6:4分割可倒式リアシート、サイドエアバッグまでが標準装備される。この高級車並の装備で価格は132万円。「12c」からは22.5万円もアップするが、装備内容、排気量の差からいっても充分納得できるプライスだろう。

ただ、コンパクトカーなのにそこまでの装備が必要かという疑問もある。マーチはエンジンに対して装備の選択範囲が小さいのがネックで、1.4リッターでもう少し安いのが欲しい、というわけにはいかないのである。ま、そのうち装備を簡略化したお買い得仕様がでると思われるから、ちょっと待てば問題はないのだが。

ライバルの本命はやはりヴィッツ。ワゴン的な使い方もできるフィットにもぶつけたいところだが、それは次期キューブの役目。価格はヴィッツを強く意識しており、最低価格ではヴィッツ3ドア「B」が81.5万円と、マーチ「10b」95.3万円より13.8万円安いが、ヴィッツ「B」はいわば営業車向けで、エアコンこそ標準だがパワステやパワーウインドウといった快適装備は省かれ、バンパーも無塗装だ。装備内容の近いもので比較すると、マーチ5ドア「10b」とヴィッツ5ドア「F・Dパッケージ(108.5万円)」では、8.7万円もマーチの方がお買い得という計算。またマーチ「12c」が109.5万円だから、ちょうど1リッターのヴィッツの価格で+200cc増しの排気量が手に入るということになる。

パッケージング&スタイル

独自性のあるルックスは絶品

ボディサイズは全長3695mm×全幅1660mm×全高1525mm。旧型比でそれぞれ-25mm、+75mm、+100mm。ホイールベースは+70mmの2430mm。ヴィッツ以上、フィット未満という絶妙なサイズだ。
 デザインはかなり挑戦的だ。一見は先代同様に丸いのだが、シャープな線が随所に入った面構成としたことで、単にカワイイの一言で片付けられない存在感がある。凝った剛板プレスにデザイナーと開発陣のこだわりが伺える。マーチを横にしてしまうと、さすがに王者のヴィッツも魅力薄。

特に目を奪われるのがカエルのような表情の丸目ランプ。このデザインは奇をてらっただけのものではなく、光源を高くすることで前方を明るく広範囲に照らす効果がある。また上部にポジションランプを設けることで車両感覚を掴みやすくしている。機能に裏づけされたデザインというわけだ。またルノー顔を象徴するグリルの網目から覗かせるウインカーの処理も面白い試み。

オーソドックスだが、カラーリングに新しさがあるインテリア

所有欲をわかせるインテリアも新型マーチの魅力。センターメーターでもないし、コラムシフトでもないのだけれど、すごく新しい感じを受ける。インパネやトリム、ステアリングの表皮に採用される新感覚のシボは、ザラッとした手触りが気になるものの、クオリティの高さ、精度の高さははっきり実感できる。

数値的な室内スペースはライバルと比べると飛びぬけて優秀というわけではない。尻下がりのルーフライン、上方絞りが強いセンターピラーなど、条件は決していいとはいえない。それでも広いと感じるのはやはりデザインの勝利というべきか。圧迫感を与えない低めのダッシュボード、明るいカラーリングで開放感を演出している内装色。運転がしやすい、もしくは誰もが違和感なく運転できるといった「マーチらしさ」はしっかり踏襲されている。装備は充実しておりヘッドランプにはベーシックカーとしては初のオートライトシステムが採用されている。また安全性の取り組みも妥協がなく、クラス初のサイドエアバッグが採用されている。まるで小さな高級車だ。

唯一残念に感じたのは運転席のシートリフレクター(調整幅40mm)。欧州車では馴染みのあるラチェット式(レバー式)なので操作はしやすいのだが、ヒップポイントだけに支点が置かれているために、高さを上げてもお尻だけが上がってしまい(前のめり状態になる)、結局、適切な位置は限られてしまうのだ。シート全体が上下できるよう改善して欲しい。

プリメーラを超えるITドライビング? 純正オートPCを日本初搭載

マーチには日本初の総合テレマティックサービス「カーウイングス」が採用されている。CD/MDデッキの上に鎮座する1DINユニットがそれ。総合テレマティックサービスとは、いわゆる車載用パソコンのことで、欧米ではすでに数機種が市販されていて純正装備するクルマも多くなってきている。

携帯電話と接続することで、交通情報、天気予報、ドライブ情報を24時間リアルタイムに入手できる。さらに車両の現在地を友人や家族の携帯電話、パソコンに知らせる機能、携帯電話のハンドフリー機能、GPSによる周辺地図をモニター表示する道案内機能(簡易カーナビ)など、内容は盛り沢山。トラブル発生時に専用オペレーターが24時間体制で対応するロードサービス、情報検索などを行う「コンパスリンク」など有人によるお助け機能も盛り込む。操作スイッチは本体以外に、ステアリングにも設置される。

使い勝手でまず気になったのが、携帯電話の置き場。現状もそれらしいものはついているのだが、今主流の折り畳み式では幅が足りず、スマートに置くことができない。操作ではそれほど複雑な機能ではないので、カン頼りでだいたいの機能は使いこなすことができる。1DINサイズなので画面が小さく、ナビ機能としてはカーナビにはかなわないものの、十分使える大変便利な機能である。ただし使い方を間違えればその限りではない。恋人と移動中、他の人からの甘いメールでも入れば、どうなるか。身に覚えがある人はくれぐれも注意したい。

気になる「カーウイングス」の価格は49000円とリーズナブルだが、サービスを受けるためには年会費3600円の他、2000円の入会金もかかる。さらにコンパスリンクの利用においては1回200円。この負担が、普及の妨げになる障害となりそうだ。なお、マーチにはカーウイングスのほかに、通常型のカーナビ(VICS/FMチューナー内蔵の5.8インチワイド収納型モニター一体型)も11万円ほどでオプション設定されている(カーウイングスとの同時装着はできない)。さて、どっちを選ぶ?

カーウイングスと並んでもう1つ注目したいのが「インテリジェントキー」。キーをポケットなどに入れておけば、ドアハンドルのスイッチを押すだけでロック解除。両手に荷物という状況でも、スマートに乗りこむことができる。さらにエンジンをかけるときはキーを差しこまなくても可能。ここまでの芸当ができるのは日産車では初。車格のヒエラルキーを超えた便利アイテムだ。

こうしたIT装備は高級車から始まって、順次、安いクルマに広がっていくというのが慣例だったが(=普及が遅い)、最も安いマーチに採用したのは、まずは日常ユースでの利便性を多くのユーザーに感じてもらうため。

最後に「あれ? 」と思ったことは、助手席およびバックドアにキーシリンダーがないこと(「14e」と「12c」のみ)。これは「14e」にインテリジェントキーが、「12c」にリモコンキーがそれぞれ標準装備になっていて、キーシリンダーの使用頻度が低くなると予想されたためだ。おかげでピッキングによるイタズラも回避でき、防犯上のメリットもある。

基本性能&ドライブフィール

1.4は欧州向けの排気量? いや、国内でのアドバンテージか

エンジンは、エンジンブロックを含めオールブランニューとなる新開発の直列4気筒「CR」型だ。コスト制約の厳しいベーシックカー用エンジンでありながら、連続可変バルブタイミングコントロールを採用するなど、10年ぶりのフルモデルチェンジにふさわしい力作だ。排気量は下から1.0リッター(68馬力/9.8kgm)、1.2リッター(90馬力/12.3kg)、1.4リッター(98馬力/14.0kgm)の3機種。1.2リッター、1.4リッターは現在の日本では珍しい排気量だが、これは恐らくルノーとの共用化に向け、ヨーロッパ市場に合わせた配慮なのだろう。とはいえ、サニー以来の「トヨタよりちょっと上」をめざしているのかも知れないが。

ミッションは4速ATが主力で、もっとも高回転型の1.2リットルにのみにルノー製の5速MTが用意される。足回りは日産とルノーが共同開発したもの。前ストラット、後ろトーションビームを採用する。標準タイヤサイズは165/70R14.従来型やライバルよりも大径だ。ABS、EBDは全車に標準装備する。

10・15モード燃費はAT車で1.0リッター車が19.2km/l。1.2リッター車が19.0km/l、1.4リッター車が18.4km/l。カタログ上では23km/lを売りにしているフィットに対してかなり見劣りするが、エアコンなどの電装品を使用した日常ユースでの実燃費は「ライバルに負けない」というレベルにまで改善されているらしいから期待したい。

パワーはあるが、必要十分という走行性能

試乗したのは量販グレードの「12c」の5ドア。90馬力/12.3kgmというスペックは排気量200cc減のヴィッツ(70馬力/9.5kg)よりも当然パワフル。排気量100cc増しのフィット(86馬力/12.1kgm)と比べても上回っている。車重は920kg。ヴィッツより40kgほど重いものの、20馬力の差が相殺できるほどの重さではない。いずれにせよ、動力性能を推し量る上での条件はほとんどの項目でマーチが有利だ。

が、実際の力強さは思ったほどではない。確かに身分相応以上の加速をしてくれるのだが、体感的な力強さは明らかにヴィッツの方が上だ。振動や静粛面においてもヴィッツの方が若干だが優れている。一方、コンパクトカーらしくキビキビ走ってくれるのはマーチだ。高回転までパワーの伸びが持続するし、アクセルの踏み量に応じたスピード調節がしやすい。人によってはマーチの方が扱いやすいという意見も出てくるだろう。愛嬌のあるルックスと天秤にかければ、低速域でのトルク感は許容範囲内だと思う。

乗り心地から感じ取れる剛性の高さもマーチの美点だ。ヴィッツがしなやかさを売りにするフランス風味とするなら、マーチはドッシリとしたドイツ風味。14インチというこのクラスでは贅沢なタイヤを履いているため、コーナリングの安定性も申し分ない。クルージング中の乗り心地も、1クラス大きなエンジンにに乗っているような落ち着いた印象。ロードノイズの浸入は、さすがに小さなクルマを意識させるが、直進安定性も高く充分快適なレベルに仕上がっているといえる。高速でもヴィッツより10%増しの150km/h近くでの巡航が可能だ。

最小回転半径は先代よりもホイールベースが伸びたのにも関わらず4.6mから4.4mになり、小回り性能はさらに向上している。ヴィッツは4.3mを誇るが、それは13インチタイヤのタイヤを履いているからであって、14インチサイズを履くクルマと比べれば文句ナシにクラストップ。例えば14インチのフィットは4.7mである。

問題は電動パワステだ。低速時は軽く、速度が上がるに連れて重くなるというルールは守られているのだが、低速時の軽さがハンパではない。手を据えただけで回ってしまうほどに軽すぎるのだ。まるでアーケードゲームのステアリングなみ。あまりにも軽すぎるから、駐車するときはついついステアリングを切りすぎてしまう。速度を上げてちょっとばかり重みが加わるものの、中立付近の曖昧さは残ったまま。それでいてステアリングの動きにクルマの反応が敏感だから、巡航しているとどうしてもクルマが左右にユラユラしてしまう。コーナリング中も重みが不自然で、路面のインフォメーションも伝わりにくい。もともと足は柔らかめでロールしやすいので、小型車でスポーティに遊ぶという楽しみはない。電動パワステのチューニングは比較的簡単だと思うので、至急改善して欲しいところだ。

ここがイイ

よく見ると旧型がモチーフとなっている部分もあるなど、特に突飛なスタイリングではないのだが、一見は実に独自性があるスタイルに映る。ヘッドライトの位置が高いことがその最大の要因だろう。リアにわずかにノッチがあるあたりもうまい。とにかくフロントフェースとリアフェースのデザインによって、どこにもないデザインをこのクラスで作り上げたことは、最近の日産デザイン力の勝利だ。東京ショーの中で見ると特異に映ったが、街中を走らせてみたら、小さいクルマはこれくらいのインパクトが必要だと実感した。カラーバリエーションも個性的でうれしい。

インテリアはオーソドックスだが、パステル調のカラーが可愛らしさを演出している。これも大正解だ。サラッとしたシート生地も心地よかった。

ここがダメ

前述のようにパワーステアリングにはかなり違和感があったが、これは早急に改善されると思われる。またフロントドアの内張の大きな取っ手部分が内装色とコーディネイトされているが、ここが運転中、妙に視界に入り、気になって仕方なかった。ドア内張にはあまり突飛な色は使わない方がいいと思う。

総合評価

独自のスタイリング、不満のないパワー感、十分に広い室内空間など、コンパクトタウンカーとしては不満のないところ。逆にパワフルな走り、コーナリングのしっかり感など、走りの部分を求めると現状では不満がでるだろう。このあたりはやがて出てくるはずのスポーティモデルに期待したいが、現状でももう少し改良されてもいい。

何より評価したいのは身につけているだけでロックを開閉できるインテリジェントキーがこのクラスにも用意されたことだ。このキーのおかげで、壊されやすい鍵穴が運転席一つだけになったし、何より日常的に使うクルマにこそこうした装備が欲しいもの。これまではパワーロック、リモコンロックといったあたりが標準化されることで、クルマは商品価値を高めてきたが、今後はこのキーがあるかどうかが大きな価値基準になっていくだろう。いずれ全てのクルマに標準装備されるだろう装備が、ついに大衆車クラスに登場したわけで、その意義は大きい。

同様にカーウィングスという5万円弱でつく簡易情報通信システムも、大衆車にこそ必要なもの。高度な機能を持つカーナビも、ほとんど使いこなされていないのが現状であり、カーウィングスが表示する道案内ナビ程度で街乗りクルマなら十分だろう。「ここですメール」だとか「音声メール読み上げ機能」もあり、便利だ。ただ、携帯のメールアドレスは使えず、CdmaOneはアダプターがいるなど、まだまだ課題は多そう。ただし、日産にはオペレーターが対応してくれる超アナログサービスのコンパスリンクがあり、これとうまく連動させれば、実用性は飛躍的に上がるはず。サービスはぜひ無料にすべきだろう。

そうしたポテンシャルを秘めた装備なのだが、販売店やユーザーが果たしてどれくらい理解して売ったり買ったりできるかが課題だ。大衆車クラスの今後の価値は、インテリジェント化にあることは間違いないのだから、皆よく勉強して欲しいところ。今後日産はこのカーウィングスを全てのクルマに投入するという。うまく普及すれば、ITS端末としておもしろい展開が期待できそうだ。

公式サイトhttp://www2.nissan.co.jp/MARCH/index.html

 
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