キャラクター&開発コンセプト
新型3気筒エンジン、新世代CVT、アイドリングストップを備えた「エコマーチ」
2010年7月13日、4代目となる新型マーチ(K13型)が発売された。日産の普通車としては最小モデルとなるマーチは、過去3世代・28年間にわたって世界で565万台を販売してきたグローバルカーだ。
8年ぶりとなる新型は、従来モデルをはるかに上回る超グローバルカーを目指し、ハードウエアの全てを一新。車体関係では新開発の「Vプラットフォーム」を採用したのが大きなニュースだが、パワートレインも完全にリニューアル。日本仕様のエンジンは全て日産初の3気筒となる1.2リッターエンジン「HR12DE」となり、変速機にはジュークで先行した副変速機付の新世代エクストロニックCVT(無段変速機)を採用。またFFの主力グレードには、アイドリングストップ機構も搭載。結果、10・15モード燃費は1.2リッタークラスで最高となる26.0km/Lを達成している。
なお、日産と言えばEVの「リーフ」も話題だが、新型マーチは燃費性能を磨いたエンジン進化型エコカーである「ピュア・ドライブ(Pure Drive)」の第1弾に位置づけられている。広告キャッチコピーは、そのままストレートに「エコマーチ」だ。
タイ、インド、メキシコ、中国で生産。日本仕様はタイ製
先代マーチは日本と英国で生産していたが、新型はタイ、インド、メキシコ、中国で生産を行う。まず2010年3月に日産の子会社であるタイ日産自動車会社(NMT : Nissan Motor Thailand)で生産が始まっており、日本で販売されるマーチもタイからの“輸入車”となる。
タイ日産では2010年度に年間9万台のマーチを生産予定で、タイ国内(販売目標は年間2万台)や日本向けだけでなく、アジア(中国やインドネシアを除く)、オセアニア地域へも輸出する予定。現地での部品供給率は約90%だという。
もちろん生産品質のコントロールは重要なポイントであり、タイ工場には最終検査を行う、その名も「念入り」ラインを設置。さらに日本では上陸先の追浜(おっぱま)工場(神奈川県横須賀市、先代マーチを生産)に納車前検査工程を配し、いわゆるPDIを実施している。
また7月にはインド(チェンナイ工場)でも生産を開始し、そこから欧州、中東、アフリカ地域など100ヶ国以上に輸出する予定だ。さらにメキシコと中国での生産も予定されており、最終的には生産拠点4ヶ所、販売地域は世界160ヶ国で行われるという超ビッグプロジェクトになる。なお、欧州仕様などは今まで通り「マイクラ(Micra)」を名乗る。
日本国内の販売目標は、モデルライフ平均で月間4000台(年間4万8000台)。日産によると発売後2週間(7月25日)までの受注は累計1万2147台で、さらに販売現場の話によると8月中旬時点では、グレードによって4ヵ月ほどのバックオーダーになっているという。
価格帯&グレード展開
99万9600円~。看板グレードは「12X」(122万9550円)~
パワーユニットは、新開発の1.2リッター直3(79ps、10.8kgm)と新世代の副変速機付CVTの1種類のみ。駆動方式はFFと電動4WD(後輪をモーターのみで駆動するタイプ、17万5350円高)から選べる。
グレードは最も安い「12S」(99万9600円、FFのみ)、それにアイドリングストップ機構、インテリジェントキー、メッキ加飾などを追加した中間グレードの「12X」(FFで122万9550円)、さらにオートエアコン、オートライト、タコメーター、運転席アームレスト等を備えた上級グレード「12G」(FFで146万8950円、今回の試乗車)。そして株式会社オーテックジャパンが「12X」をベースに架装したカスタムモデル「ボレロ」(FFで146万5800円)がある。オーディオは全車、販売店オプションだ。
看板グレードはアイドリングストップ機能付の「12X」もしくは「12G」となる。発売から2週間までの初期受注では「12X」が69%、「12G」が25%で、この2つで9割以上を占める。
【FF】 10・15モード燃費:24.0km/L(12S)/26.0km/L(12S以外)
■12S 99万9600円
■12X 122万9550円
■12G 146万8950円 ★今回の試乗車
■ボレロ 146万5800円
---------------
【電動4WD(モーターアシスト方式)】 10・15モード燃費:20.0km/L
■12X Four 140万4900円
■12G Four 164万4300円
■ボレロ 4WD 164万1150円
パッケージング&スタイル
従来サイズをほぼキープ
ボディサイズ(先代比)は全長3780mm(+85)×全幅1665mm(+5)×全高1515mm(+10)。ホイールベースは2450mm(+20)。一見、大きくなったように見えるが、実際にはほとんどサイズアップしていない。ただしシャシーの土台はこれまでのBプラットフォームではなく、新開発の「Vプラットフォーム」。Bプラットフォームの直接の後継ではなく、グローバル生産などを見据えた軽量・シンプルな設計が売りのようだ。
グローバルカーらしく?個性は控えめ
可愛らしくもあるが、少々エキセントリックでもあった先代に対して、新型のデザインは最近の日産車にしては珍しく個性を抑えたもの。グリルやヘッドライトのあたりには、少々既視感もある。
横から見たルーフラインは、後方に向かってややキックアップしたスポーティなものだが、サイドウインドウの形状が先代譲りの半円であるため、結果としてあまり目立っていないのが惜しいところ。ただし全長が短い割に、Cd値(空気抵抗係数)を先代の0.33から0.32に向上できたのは、このスポイラー形状が効いているはずだ。ちなみにルーフパネルを真上から見ると、室内のこもり音を抑制するためにパネルの剛性をアップするブーメラン型のビードが入っている。
下縁が垂れ下がったラウンド形状のリアウインドウも先代に似ているが、ショルダーラインから続くリアコンビライトが出っ張っているため、丸みを強調していた先代とは、後ろ姿がまったく違う。何となく、欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した先々代(K11型)風でもある。
インテリア&ラゲッジスペース
先代より視界が良くなった
一部にキューブ等で見覚えのあるパーツを使い、最小コンパクトカーとして納得できる質感になっているインテリア。これといった特徴はないが、デザインも手堅くまとまっている。タイ製ではあるが、同価格帯の“日本製"コンパクトカーと比較して、これといった差は感じられない。
あいにくモーターデイズ試乗記のメイン担当者が先代マーチに試乗したのは、発売時の8年前まで溯ってしまうが、たまたま最近、先代マーチに乗る機会のあったデイズスタッフによると、新型は明らかに運転時の視界が良くなっている、とのこと。実は日産の資料にも「先代に比べてフロントウインドウの上下・左右の見開き角を拡大し、良好な視界を確保」とある。
「12G」には「タイヤアングルインジケーター」を装備
面白いのは最上級グレードの「12G」に装備される「タイヤアングルインジケーター」。シフトレバーをリバースに入れると、速度計内のインフォメーションディスプレイに前輪を向きを表示するものだ。切り返し中にタイヤの向きが分からなくなってしまう初心者向けのものだが、便利だと思う人は意外に多いのでは。
一つ気になったのはステアリングをチルトする時に操作するロックレバーの解除がしにくいこと。レバーを押し下げる時の力の入れ方にコツが要るのだが、最初はどうしても下がらず、思わず取扱説明書で操作方法を確認してしまったほどだ。この点は、また後で触れる。
後席:乗車姿勢は良く、足もとも広い
後席のクッションはやや平板で硬めだが、乗車姿勢はしっかり取れるし、足もとの広さも十分。ただし、頭の斜め上あたりにはサイドウインドウ上部からの圧迫感が若干あり、また室内幅にも余裕がないので、大人の3人掛けは厳しい。3点式シートベルトはいちおう3人分が装備されているが、乗り心地を含めた居住性をトータルで見ると、やや割り切りが感じられる。
後席のヘッドレストは収納式で、乗車する際には上に引き出さないと背中に当たってしまう。それ自体は構わないが、気になったのはそれを「普通に」引き出そうとすると、二昔前のドイツ車並みに重くて、固いこと。実はヘッドレストの後ろ側に指をかけて引き上げるとスッと上がるのだが、女性の場合「私の力じゃ無理」と思って、すぐに諦めてしまうのでは。こういう“仕様"なのか、こうなってしまったのかは不明だが、不親切ではないかと思う。
荷室はごくごくオーソドクス
トランク容量は先代マーチと同等の251リッターだが、形状を工夫して大きな物が入るようになったようだ。作り自体はまったくもってオーソドックスで、機能と言えば背もたれを60:40でパタンと倒して拡大できることくらい。拡大時に床はフラットにならず、背もたれと荷室床の間には左右に太いバーが横切る。このあたりはちょっとルノー車風だ。
床下にも収納スペースは特になく、スペアタイヤと車載工具が収納されているのみ。もちろん、“上げ底" になっていないという意味でも、これで別に問題はない。