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新車試乗記 第148回 トヨタ マークII Toyota Mark II

 

日時: 2000年11月18日

 

キャラクター&開発コンセプト

一時代を築き上げたハイソカーが、21世紀に向けドライバーズカーとして復権を目指す

1968年にコロナ・マークIIとしてデビュー以来、時代の流れにあわせて常に日本の高級パーソナルセダンの在り方を提唱してきた、中流家庭の定番グルマ、マークII。80年代は「ハイソカーブームの火付け役」として活躍し、最盛期にはチェイサー、クレスタの兄弟車あわせて月販台数4万台に達するなど、一時代を築いた。しかし、その人気ぶりも90年代に入ると6代目を頂点に、RVブームとセダン不況、そしてプログレやアルテッツァといった自社のFR友軍によって逆に外堀が埋められ、すっかり脇役に…。

9代目となる今回の世代交代では、チェイサーとクレスタとの兄弟関係を解消し、「セダンの歓び」を再びユーザーに問うべく単独でフルモデルチェンジを敢行。エンジン、サスペンションなど主要コンポーネンツを一新し、「新しい高級ドライバーズセダンの創造」を目指した。

搭載されるエンジンは2.5リッターが主流となり、2.0リッターも用意される。先代に設定されていた3.0リッターは消滅した。駆動方式はFRで、2.5リッターモデルのみ4WDも選択できる。ギアボックスは4AT/5AT/5MTの3種類。乗車定員は5名となる。

価格帯&グレード展開

「ツアラー」消滅で全車「グランデ」系に統一。価格は235~336万円

グレード展開も少し見直され、先々代から設定されたスポーティーグレード「ツアラー」系が姿を消した。これによって全グレードが「グランデ」名を挙げることになり、イメージの統一が図られる。

具体的には量販グレードとなる「グランデ」(2リッター、2.5リッター)、ラグジュアリーグレードの「グランデG」(2.5リッター)、イメージリーダーの「グランデG-tb」(2.5リッターターボ)。そしてツアラー系の後継を担う「グランデiR-S」(2.5リッター)と「グランデiR-V」(2.5リッターターボ)という全5グレード展開となる。

「2.0グランデ」(235万円)と「2.5グランデ」(273万円)の装備はほぼ同じだから価格差38万円は、エンジンの差と思っていい。「2.5グランデG」(306万円)の装備で「2.5グランデ」から追加になるのは、ディスチャージヘッドランプ、本革ステアリング&木目調付きシフトノブ、天井ビルトインエアピュリファイヤー、調整付きリアヘッドレスト、アルミホイール、タイヤサイズ(15→16インチ)など。33万円高という価格に十分納得できる内容だ。さらに280馬力が欲しいとあれば、27万円高で「2.5グランデG-tb」(333万円)が狙える。

スポーティーグレードとなる「2.5グランデiR-S」(295万円)と「2.5グランデiR-V」(ATが336万円、MTが333万円)の違いは、走りに関わるメカニカルな部分で、装備はほぼ同じだ。「2.5グランデ」から追加されるのはスモークタイプのディスチャージヘッドランプ、CDチェンジャー付きMDオーディオ、本革ステアリング&シフトノブ&パーキングブレーキレバー、車名入りスカッフプレート、リアスポイラー、アルミホイール、タイヤサイズ(15→17インチ)など。また、グリルやシート地も専用となる。同じ280馬力エンジンを搭載するG-tbとiR-Vであるが、装備の充実面でいえばG-tbのほうが満足度は高いだろう。

なお、7インチモニターのDVDナビは全車オプションで価格は29万円。その際、「グランデG」「グランデiR-S」にはナビ協調シフト制御機能「NAVI-AI-SHIFT」が標準装備される。

パッケージング&スタイル

チェイサーがない分、スポーティさが強調されたエクステリアで若返りを図る

ボディサイズは全長4735mm×全幅1760mm×全高1460mm、ホイールベース2780mm。FRベースとなる主要コンポーネンツはクラウン系のもの。「走り歓び」をドライバーに実感させるため、エンジンを車両中央に寄せて、燃料タンクをリアシート下にマウント。前後重量配分を理想値に近づけることで、優れた運動性能の実現が狙われている。

さらに広報資料によれば「インテリアボリュームを活かした新しい時代への変革を感じさせるデザインに挑戦した」とある。背が60mm高くなっている割には、不安定な背高ノッポに見えないデザインの妙。しかし、最近のトヨタ作としてはかなり保守的な印象は否めない。マークIIという以上このあたりが限界か。強いて言えば、マークIIというよりチェイサーっぽい? 特に外板パネルを配したリアランプあたり。いや、新たに窓枠が設けられているのは、クレスタからの流れだったりもする。「三位一体」ということか。いずれにせよパーソナル、スポーティー、そして万人ウケ、というマークIIらしいデザインといえる。

どこかで見たようなインパネ。カローラ以上、クラウン未満の絶妙なクオリティの高さ

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インテリアは、グレードによって違う2つの演出が図られる。iRシリーズはブラックに統一され、赤味がかった木目調パネルが、いかにもといったスポーティーさを醸し出す。一方、iRを除くグランデ系は、ライトブラウンが基調で、木目調パネルはキャラメル色。ラグジュアリーな雰囲気をグンと高めている。またパーキングブレーキが一般的なサイド式を採用するiRシリーズに対して、足踏み式を採用しているのも大きな違いだ。 室内空間の寸法は長さ1960mm×幅1480mm×高さ1190mm。エンジンを中央寄りにしたことで、室内長こそ30mm短くなったものの、後席の足下空間は30mm拡大している。また、室内高が25mm拡大したことで頭上空間の余裕が生まれ、かつヒップポイントも高くなっているので、実際に感じる開放感は明らかに先代を上回る。後席の窓が全開できる点も見逃せない。また、トランク容量は高さ方向の余裕が増えたことにより、82リッター拡大の475リッターを確保する。もうクラウンは要らない、という出来映え。というか、これまでのマークIIには、ボディの大きさの割に室内が狭いという印象があったが、今回のモデルではついに水準レベルを超えたという感じだ。

ナビを最上部中央に配置したインパネは、ツートーンの塗り分けが明確になっている。塗り分け部分には、横一直線に貫く木目調パネルが配置され、どことなくSクラスに似ているが、これは偶然だろう。

重厚感のある質感の高さは隅々までに行き届いており、スイッチの感触に至るまで高級車といえるもの。あれほど感心させられたカローラよりもしっかり上をいくレベル。それでいてクラウンよりは確かにちょっと下のレベル。このあたりの棲み分けも、トヨタは上手い。

セルシオも見送った最新のナビ協調シフト制御など、最先端技術を満載

目新しい装備は主に3つ。1つ目は天井にビルトインした空気清浄機。活性炭ペーパーに加え、LEDを用いた光触媒で脱臭するという仕組みで、コンパクトかつ低騒音化によって天井取り付けが実現できたもの。天井への配置は世界初なのだとか。2つ目は、後席中央のトランクスルー部分にスライドドアと、トランク奥に小箱を設けたこと。後席からトランクの荷物が容易に取り出せる便利な装備だ。そして3つ目がDVDナビの道路情報とアクセル操作と連動して自動的にシフト制御を行うシステム「NAVI・AI-SHIFT」だ。これとほぼ同じものがプログレにもあるが、マークIIはさらに進化させてある。例えば道路の勾配も認識できること、シフトダウンが5速→4速→3速(プログレは4速→3速だけ)まで行えるようになったことだ。5速ATの採用が決め手となった。実際の使い勝手は後述の「基本性能・ドライブフィール」を参考にして欲しい。

基本性能&ドライブフィール

直噴を感じさせないD4、暴れないシングルターボ

エンジンは4種類で、全てVVT-iを採用した直6ガソリンだ。排気量は2.5リッターと2リッターの2タイプ。2.5リッターは、シリーズ最高峰の 1.ターボ仕様(280馬力/38.5kgm)、4WDのみに設定される②NA仕様(200馬力/26.5kgm)。主力エンジンとなる 2. 直噴D-4(200馬力/26.5kgm)は、パワースペックこそ先代と大差はないが燃費は約2km/l改善となる12.5km/lを実現し、「良-低排出ガス」認定を取得。そして 3. 2リッター(160馬力/20.4kgm)である。

組み合わせられるギアボックスは4速ATが中心で、 3. を搭載するグランデG、グランデiR-Sには5速AT。また、 1. を搭載するグランデiR-Vのみに5速MTが併設される。ちなみにシフトゲートは全車ゲート式。なお、サスペンションは前後、新設計の4輪ダブルウィッシュボーン式を採用する。

高級感とスポーティさが見事に融合。オヤジグルマにはもったいない

試乗したのは直噴2.5リッターを搭載する「グランデG」。このグランデGには、トヨタ最先端の電子制御サスペンション「H∽ TEMS」が採用されている。これは路面や車速、舵角に応じて、最適な減衰力を自動的に制御するというもので、一種のアクティブサスペンションと思っていいだろう。スペックは先代に比べて最高出力が同じで、最大トルクが0.5kgm下がってはいるが、その発生回転数が2000回転も低くなっているので、実際の力強さは先代以上と思っていい。これまで直噴といえば一般的に実用域での力強さに欠けるものが多かったが、このエンジンは全くそれを意識させない。期待に応じられる加速をみせてくれる。全域で心地よい滑らかさがあって、かつ静か。しかも回せばそれなりに官能的ともいえるサウンドで味付けられている。

レッドゾーンの6000回転付近になると、さすがに回転の打ち止め感が若干感じられるものの、高回転を多用するクルマじゃないから、それもさして問題なし。低回転では自然なトルク感が好ましい。5速となったATのシフトショックもほとんど気にならないレベル。CVTなどいらないというトヨタの自信が感じられる(そういいつつもCVTも作っているのがすごいところだが)。エンジン、ミッションに限って言えば大人のスポーツセダンとなりうる出来映えと言っていい。また、巡航中はつねに希薄燃焼状態であることを示すエコランプが点灯しているので、今回は測定していないが燃費も期待出来そう。10・15モード燃費は12.4km/lとなっている。

フットワークはラグジュアリーなグレードということで、乗り心地を重視したもの。もちろん、iRグレードに比べて足回りは柔らかくしてあるが、昔のハイソカーイメージのような接地感が怪しくなるようなフワフワしたものではない。どちらかというとスポーツセダンに近い固さで、軽快な回頭性、しっかりとした4輪の接地感、パワステにはまだ若干曖昧な軽さが残るものの、乗り心地自体はドイツ製高級車に通じる重厚感あるものに仕上げられている。また、VSCは非常に穏やかに効き、違和感を感じさせないまま、挙動の乱れを立てなおしてくれる。

注目のNAVI・AI-SHIFTだが、これもほとんど意識させない味付けになっており、特に5速4速の変則はメーター内のインジケータを気にしていない限り無意識ですむ。ただ道の曲がり方を読んでシフトするというより、勾配の読みが優先する感じだ。下りのときはかなりうまくシフトダウンしてくれるのがわかったが、逆に加速に移るときはアクセルを踏むから、どこまでが制御によるものかはよくわからなかった。FRでも180km/hでハンドルを離せる直進性を持っており、日本の高速道路ではオーバースペックなほど。風切り音が低く、高速走行時にも静かな室内なのが印象的だった。

気になったのはコンフォートに振ってあるはずなのに、低速走行時(だいたい40km/h以下)に、段差による硬いゴツゴツ感がお尻に伝わってくること。それ以上のスピードで走っているときはスパッスパッと越えてくれるので気にならないのだが、低速時だと不快とまではいかないまでも、結構固い乗り心地だな、と感じてしまう。意図的なものだろうか。

ここがイイ

おそらく誰も否定しないであろうエクステリアデザインは○。カローラの大胆な変身と比べればたいしたことはないのだが、保守的なマークIIという規定概念を十分打ち破っている。セルシオやカローラではどうにも馴染めなかったリアドアの後部のラインも、微妙なRがつき、さほど違和感がなくなった。

インテリアデザインも○だ。高級感とスポーティ感を併せ持ち、さらにはディスプレイを最上部に持ってきた造形が21世紀型らしいところを見せる。Sクラス似ているがナビは明らかに見やすく、使いやすい。もちろん質感の高さはいうまでもなく、新車を手に入れた人の満足感は想像にかたくない。

トランクの奥の大型ユーティリティボックスは、トランクスルーで中のものが取り出せ、トランク内の小物が整理でき便利。あるからといって大きなウリにならないこうした小細工をチマチマと積み重ねてきたことが、今の日本車の痒いところに手が届く完成度を生んだのではないだろうか。

ここがダメ

天井の空気清浄器だが、室内が静かなだけにファンの音がかなり気になる。これはエアコンもそうで、室内の静粛性をうたうものの、ファンの音だけは気にしない、という暗黙の了解があるみたいだ。無音の電気自動車の時代になっても、相変わらずファンの音だけはしているのだろうか。

総合評価

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平均年齢55歳のオーナーに乗せるのはちょっともったいないくらいのスポーティーさのある走りだ。直6というエンジンや車格を考えると、BMW5やメルセデスのEクラスが仮想敵に入っていると思われるが、ブランドや価格といったインフォメーションを省いて欧米人に乗らせれば、その評価は十分伯仲するはず。日本ではマークIIという名前ゆえ先入観をもって乗られる可能性があるが、できるだけ心をまっさらにして乗ってみると、このクルマのできの良さがわかると思う。

スタイリングも背が高めでオーバーハングも短くなり「アルテッツァ」が入った感じ。先代が先々代より保守的であったことを思えば、かなりの冒険といってもいいだろう。RVの必要性がなくなり、セダン回帰が始まった40代後半の世代にはグッとくるはず。

日本にまだ163万台以上あるというマークⅡだから、その代替需要は巨大だ。黙って保守的なクルマを作れば、黙って数が出るはずだが(モデル末期の先代でもそこらのセダンより売れていた)、マークIIですらを変えていこうというトヨタの姿勢は評価できる。価格からいってもセダンのベストバイだろう。ただ、今後シェアを伸ばしまくったトヨタの鼻がどんどん高くなっていくことも考えられるので、このマークIIを打ち負かせる「スゲー、セダン」をどこかが作れないものだろうか。

 

公式サイトhttp://toyota.jp

 
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