キャラクター&開発コンセプト
10代目でマークXに進化
10代目マークIIとして登場するはずだった新型車は、「マークX(エックス)」の名で2004年11月9日に発売された。まったく新しい名としなかったのは、販売面での「実績」はもちろん、トヨタ側の思い入れもあるようだ。一方、伝統の名を半分捨てたのは、新時代のFRセダンとして新設計したほか、50~60代に移行した顧客層を、30~40代に引き戻すためだ。
MARKは一般的に英語で「印」「目標」「名声」の意。「X」は未知数を意味し、トヨタは「未知なる可能性」という期待を込めたという。ちなみに日本以外でマークIIと言えば、同じ4ドアサルーンのジャガー・マークII(1959年)のことで、ジャガーにはマークX(テン、1961年)も存在した。
走りのためのX-BODY(エックスボディ)
マークXの開発コンセプトは「ダイナミック&スタイリッシュFRセダン」 。運動性能が極めて高いゼロクラウンのシャシーとエンジンを流用、さらにオーバーハングを切り詰め、FRならではの走りを追求したという。広告キャッチフレーズは高い運動性をイメージさせる「X-BODY(エックスボディ)」だ。
生産はトヨタ自動車の元町工場と、関東自動車の岩手工場。販売は主に全国のトヨペット店が行う。トヨタはレクサス店導入を前に、販売店の再編を図っている。その一翼を担うトヨペット店にはマークXを核とした「ミディアム市場のリーダーチャンネル」の役割を期待する。目標販売台数は月5000台。月平均1万4000台で推移する絶好調のゼロクラウンと共に、セダン市場の底上げを狙う。
お隣の4ドアセダン
初代マークIIは1968年に「コロナ・マークII」として登場。当初から豊富なバリエーション、豪華な装備、パーソナルな雰囲気を備えて大ヒット。3代目からはスポーティなチェイサー、4代目から高級感を強めたクレスタという兄弟車を加えつつ、90年前後の最盛期にはマークIIだけで月2万台を売り抜いた。36年間の累計登録台数は480万台。その後はセダンの衰退と共に販売台数を一気に減らしたが、法人用が多いクラウンやカローラより、マークIIこそ一般家庭では身近な存在だったのではないだろうか。
価格帯&グレード展開
主力は300万円前後
最盛期のマークIIは直4、ディーゼル、直6ツインターボ、スーパーチャージャーと多種多様なエンジンを搭載したが、マークXの車種構成はごくシンプル。エンジンはゼロクラウンと同じ2.5リッターと3.0リッターのV6直噴の2種類のみ。価格は「250G “Fパッケージ”」の245万7000円から「300G プレミアム」の384万3000円まで。おおよそ300万円前後のクルマと考えていい。ライバルは日産ティアナ、スカイラインといったところだ。
パッケージング&スタイル
低重心を強調、オーバーハングを切り取る
ボディサイズは先代と大差ない全長4730×全幅1775×全高1435mm。ホイールベースが70mm長いゼロクラウンのシャシーを使った分、リアオーバーハングをバッサリ削っている。かつてのカリーナEDを思わせる、低さを強調したスタイルは先代より25mm低く、クラウンより35mm低い。結果的に運動性能に効くのは確かだが、目的はスタイリングのようだ。アンダーカバーの装着で床下をフラットにし、Cd値は0.28に抑えられている。小径の3連ヘッドランプやそれに連なる横長のグリルがユニークだ。
トランクリッドはBMWルック。リヤバンパー・ディフューザーがカッコいいが、中を見るとフィニッシャーなどが一切ない「素の」マフラーが見えて少しガッカリ。開発スタッフによると、マフラーはバンパーにつながっていないので熱害はないという。バンパー素材も一般的なものだそうだ。
家電のようなセンターコンソール
運転席・助手席シートは座面前端を約60mm、電動で伸ばせる。オプションのレザーシート(19万4250円)はコーティングが分厚く、いま一つ風合いに乏しい。パワーステアリングは電動で、試乗車はこれを使ってプリウスのように駐車時のステアリング操作を自動で行うインテリジェント・パーキング・アシストを装備。普通のガソリン車では初の装備だ。
インテリアで目を引くのは、ナビ周辺のデザインだ。テレビを思わせる家電的デザインで、斬新ではあるが、高級感はない。センターコンソールは日本家屋でいう縁側のような間(ま)を意識して、幅広にしたという。
白色LEDの大型照明
シフトレバー周辺を透過照明で浮き上がらせるなど、光の演出がそこかしこに施される。居間や応接間のように、天井にはシャンデリアならぬ、21個の白色LEDを使った大型照明を設置。光を拡散させる半透明樹脂を使うが、ちょっと蛍光灯っぽい感じがいかにも現代の日本風だ。
低い全高、小さなグリーンハウス(ガラス部分)で後席は狭そうだが、実際には十分に広い。さすがクラウンと同じシャシーだけのことはある。バブル期のマークIIの、あの狭い後席は遠く過去のものだ。リアシートには7段階リクライニング機構が付く。気になるのは、乗り降りの際に頭をCピラーにぶつけやすいことくらいだ。
6:4の分割可倒式リアシートでトランクスルーにしたり、凝ったダブルリンクヒンジを使ったりするなど、狭い荷室をカバーする工夫があるのは評価できる。
バッサリそぎ落としたリアオーバーハングから想像できるように、トランク容量は437リットルとやや少なめ。ゴルフバッグを4人分を収納するというが、パズルのようにうまく入れる必要がある。
基本性能&ドライブフィール
急斜面を滑り落ちるような加速
試乗したのは300Gプレミアム。電子制御で減衰力を調整するAVS付きの"Sパッケージ"ではないが、18インチタイヤやスポーツブレーキをオプションで装備した車両だ。V6・3リッターエンジンはゼロクラウンと同じ256ps、32.0kgmを発揮し、車重はそのゼロクラウンより100kgほど軽い1530kg。となると、これで速くないはずがない。実際、アクセル全開の瞬間から、急斜面を滑り落ちるような加速が始まり、素早い変速の6ATによってその加速の息が途切れることもない。ターボ車のような二次曲線的な加速Gは希薄だが、メーターを見るや「ドキッ」とする速度まで、あっと言う間に到達する。
低速で気になるノイズ。良い乗り心地
最小回転半径5.2メートルで、小回りも抜群によく効く。しかし意外なことに低速での振動・ノイズ対策には詰めの甘さがあった。市街地で多用する低回転で、エンジンあたりからうなり音や微振動が伝わってくる。ゼロクラウンには無かったもので、エンジンのマウント位置をマークXで乗員側に寄せたことが一因かもしれない。どうしても気になるというレベルではなく、すぐに遮音・制振材で改善されそうなものだ。試乗車はシャシーナンバーがひと桁台の超初期ロットだった。
8Jのワイドリムに押し込んだ225/45R18という極薄タイヤだが、乗り心地が悪くないのは嬉しい。荒れた路面では揺すられるが、後席でもまったく不快ではなかった。長距離ドライブでも十分快適に移動できると思う。ゼロクラウンのシャシーはこういった固めのサスペンションと相性が良いようだ。クラウンほど静かではないが、ロードノイズが低いのもいい。
「スゴイ」高速スタビリティ
というように、100km/h以下では今風のよく出来たシャシーで、人によっては特に感想がないかもしれない。しかし、このシャシーの真骨頂は100km/h以上の高速域にある。そのスタビリティはまったくもってスゴイの一言。欧州車の高級セダンも高速域は得意だが、ゼロクラウンシャシーは速度感の薄さとコントロールの正確さを両立したところがまったくもって独特だ。
ゼロクラウンよりオーバーハングが短く、空力でも洗練されているせいか、高速性能は推して知るべし。矢のような直進安定性は路面がドライなら国産ターボ4WDに匹敵すると言っていいが、滑らかな疾走感、しなやかな走りはFR車ならではのもの。普通なら体が硬くなるような高速コーナリングや車線変更も、心拍数が上がらないのでまったく平常心で行える。100km/h巡航は1800回転でこなす。
こうした状況では、225/45R18タイヤと固めのサスペンションが頼もしい。先に書いたように乗り心地がいい上、轍(わだち)にステアリングを取られる現象(ワンダリング)もない。意のままに走る、とは自動車メーカーがよく使うフレーズだが、マークXはまさしくその通りのクルマだ。
ここがイイ
動力性能。0-100㎞/hは7.3秒(トヨタ発表値、2.5リッター車は10.1秒)。スポーツタイプを除けばおそらくトヨタ最速。楽しい。
運動性能。スポーツカー以上のスタビリティとしなやかな足、FRらしさのある素直な回頭性、軽い身のこなし。楽しい。
そのほかに、むやみに大きくならなかったボディサイズと、5.2mとさらに小さくなった最小回転半径、膝下フィット(クッション長)調整のできるシート、最初の停止位置の良し悪しをガイドするようになったインテリジェントパーキングアシスト、ずいぶんよく動いて先を照らすインテリジェントAFS、斬新なインテリアコンセプト、というあたり。
ここがダメ
前述のように、アイドリング時のステアリング振動はかなり気になる。また、おそらくインテリジェントパーキングアシストが影響していると思われる電動ステアリングの違和感。特にまっすぐ停車しているとき、ステアリングに遊びがないと感じられるほど重く、走り出すとぐっと軽くなるあたりはなんだか変。これも初期ロットゆえかもしれないが。
クラウンに比べて約100㎏軽くなった分、約100万円安くなっているが、まさにその分が全体の高級感不足につながっている。特に2.5リッターのスタンダードモデルでは、それが顕著。ナビを付けない仕様では斬新なインパネも魅力半減。
総合評価
マークⅡはハイソカーというイメージが、今後マークXを買って欲しい40代以下の世代には強烈に残っている。走りなどより快適・豪華な和風インテリアのオヤジカーというイメージだ(それゆえ当時は人気が高かったのだが)。実はバブル以降のモデルではそんなイメージを払拭すべく、相当しっかりした走りのクルマへマークⅡは変身していたのだが、RVブームの中、知られることもないまま今に至ってしまった。
しかしここへ来て、セダンは再び盛り上がる気運となりつつある。このトレンドを捕らえ、マークⅡという手垢の付いた名を捨て(それでも「マーク」だけは残してしっかり代替え需要に応えつつ)、欧州車ライクな走りのセダンとして再出発した。それがマークXだ。前述のようにその走りの世界は、目標としたBMWの5シリーズを捕らえた、と言ってもいいだろう。乗る前と乗ってからでは印象が一変した。こんなに走りが「凄くて楽しい」クルマはちょっとない。
エクステリアデザインはかなり強烈な印象で(リアスタイルは5のイメージを感じさせはするものの)、そのデザインだけでちょっと気になる存在にしたのはお見事。中身は事実上ゼロクラウンだが、オヤジ臭さをオーバーハングと共にそぎ落として、オリジナルなブランニューモデルとして確立している。ただ、一点、デザインで違和感が残るのはボンネットの分厚さだ。開発時の絵はここまで厚くないので、どうやら歩行者保護のための潰れしろとなった模様。もう少しボンネットが薄い方がスタイリッシュなのは間違いない。ちょっと惜しいところだ。
インテリアもクラウンとの差別化が強烈。センターモニターの両脇、シフトゲートの透過照明、天井のLED照明などは、おしゃれな飲み屋のカウンター風の味付けで、クルマにはこれまでにないもの。ただ、飲み屋によく通っている人なら、見慣れたライティングでもあり、これは和める。先日、トヨタホームの未来型コンセプト住宅を見学したが、LEDの間接照明が印象的だった。今後は家庭用としてもLED照明がかなり多用されるだろう。マークXのインテリア照明は、クルマのインテリアと家のインテリアに共通性ができた最初の例として記憶されるはずだ。
発表会では自動車誌の若いスタッフが、強い興味で眺め回していた。FRのスポーツセダンを求めているのは、40代以上ではなく、FFやRVで育った20代のクルマ好きたちだ。今、新車ではとても買えない彼らのために、オヤジたちはせっせとこのクルマを買い、数年後の中古車市場へどんどん供給して欲しい。この出来ならそのころには「走りのマークX」として人気が確立している、と思う。
試乗車スペック
トヨタ マークX 300G プレミアム
(3.0リッター・6AT・354万9000円)
●形式:DBA-GRX121-AETUH●全長4730mm×全幅1775mm×全高1435mm●ホイールベース:2850mm●車重(車検証記載値):1540kg (F:840+R:700)●乗車定員:5名●エンジン型式:3GR-FSE●2994cc・DOHC・4バルブ・V型6気筒・縦置●256ps(188kW)/6200rpm、32.0kgm (314Nm)/3600rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/70L●10・15モード燃費:11.8km/L●駆動方式:後輪駆動(FR)●タイヤ:225/45R18(Dunlop SP Sport 2050)●価格:354万9000円(試乗車:444万8850円 ※オプション:225/45R18タイヤ+18×8JJアルミホイール+スポーツブレーキ 8万5050円、レーダークルーズコントロール<ブレーキ制御付> 10万800円、レザーシート 19万4250円、スーパーライブサウンドシステム
公式サイトhttp://toyota.jp/Showroom/All_toyota_lineup/markx/index.html
