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トヨタ マークX ジオ 350G新車試乗記(第484回)

Toyota Mark X ZiO 350G

(3.5L・6AT・333万円)

ある時は2シーターワゴン
ある時は4シーターサルーン
ある時は6シーターミニバン
変数「X」シーターの答とは?

2007年10月26日

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キャラクター&開発コンセプト

独立4座+2の次世代セダン

2007年9月26日に発売された「マークX ジオ(Mark X ZiO)」は、セダン、ワゴン、ミニバンの融合を目指した新コンセプトの3列シート車。プラットフォームはブレイドのホイールベース拡張&強化版のFFシャシー。パワートレインもブレイドやエスティマといった上級FF車用のものだ。車名とは異なり、FRセダンのマークXとはメカニズム的に何ら関係はない。かつてカムリベースのステーションワゴンを「マークIIクオリス」と呼んだのと同じパターンだ。

特徴は「独立4座シート」+「自由空間」から成る「4+Free(フォー・プラス・フリー)」なるコンセプト。「フリー(自由空間)」の部分が、サードシート、ワゴンのような荷室、セダンのようなトランクといった3通りに変化する。

05年東京モーターショーの「FSC」が原型

マークXジオの源流は2005年東京モーターショーで提案されたコンセプトカー「FSC」(フレキシブル・サルーン・コンセプト)そのもの。好評だった「FSC」を、出来る限り忠実に市販化したモデルと言える。

発売前にどうやって読むかで情報が錯綜した「ZiO」は、1台で様々な空間を持つという意味を込めた「Zone in One」からの造語という。「Z」と「O」が大文字なのに注意。広告コピーは独立4座をイメージした「X-Seater(エックス・シーター)」、「全席を招待席に。」など。

生産は豊田自動織機長草工場(愛知県大府市)で、目標販売台数は月間4000台。取扱いはマークXと同じトヨペット店となる。

価格帯&グレード展開

2.4L+CVTは256万~。3.5L+6ATは333万円

コンセプトは「4+Free」だが、実際には「2×3×2」の7人乗りもある。主力の2.4リッター・CVT車は、7人乗りの「240」(FF:256万円/4WD:277万円)、「240F」(271万円/292万円)、6人乗りの「240G」(286万円/299万円)の3グレード。今回試乗した最上級車の3.5リッター・6AT車「350G」(333万円)は6人乗りのFFのみだ。

パッケージング&スタイル

3列シートを除けば、アヴァンシアに近い

ボディサイズは全長4695×全幅1785×全高1550mm(4WDは+15mm)。ホイールベースは2780mm。サイズをライバル車と比較してみたのが以下の表。エスティマやオデッセイのほか、発売当時「新しいカタチの上級車」を目指したホンダ・アヴァンシア(1999年~販売終了)も加えてある。

  全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) ホイールベース(mm)
トヨタ・ブレイド 4260(-435) 1760(-25) 1515(-35) 2600(-180)
トヨタ・マークXジオ 4695 1785 1550 2780
ホンダ・アヴァンシア 4700(+5) 1790(+5) 1500(-50) 2765(-15)
ホンダ・オデッセイ 4770(+75) 1800(+15) 1550(同) 2830(+50)
トヨタ・エスティマ 4795(+100) 1800(+15) 1730(+180) 2950(+170)

こうしてみるとマークXジオの寸法は、限りなくアヴァンシアに近い。全長はアヴァンシア比で-5mm、全幅も-5mm、全高は+50mm(オデッセイとは同値)、WBは+15mm。全高の違いは5人乗りのアヴァンシアと違って、マークXジオは7人乗りだからだ。

光の演出とおもてなし

「大人の感性に響く上質なデザイン」をうたうインテリア。試乗車の内装カラーは無償オプション(レザー表皮自体は有償)の「プラム」=渋めのワインレッドという、往年のトヨタ上級セダンを思わせる色。80年代の国産セダンにはこの内装色(シート地はたいていモケット)が多かった。標準仕様は無難なグレー色だ。ドアアームレスト/ドアハンドル部分はプレミオ/アリオン風に緩やかにS字を描く。黒の加飾パネル部分は樹脂にヘアライン加工と塗装を施したものだ。

「光りモノ」にも新しい工夫が2つ。新タイプの「クリスタルシャイン・オプティトロンメーター」は、メインの2眼メーターのほか、空調操作ダイアルまでオプティトロン化したもの。それぞれの指針は実際には「針」ではなく、透明の円盤に刻まれたエッジから光が漏れてくるもの(いわゆるエッジライトを応用したもの)。メーターの中心にLEDの光源がある。スタートボタンを押すと速度計と回転計の針が一瞬振り切れたり、空調を操作すると針が一瞬遅れて反応したり、といった演出がある。

もう一つは白色LEDライトを使った天井の大型イルミネーション。ここが唯一セダンの「マークX」と共通性のある部分と言っていい。前後席の足もとにもLEDが仕込まれるなど、光の「おもてなし」には事欠かない。

「招待席」はあくまで前の4座

贅沢な4人乗りを目指したクルマゆえ、後席キャプテンシートの座り心地はいい。3人掛けベンチシート仕様もあるが、やはりシートの理想を追求すれば独立シートか、と思わせる。座面をダブルフォールディング式で跳ね上げると、クッションのたっぷりとした厚みがよく分かる。

サードシートは身長165cm以上だと頭がルーフにつかえてしまうのが難点。フットルームも大人には厳しい。一方、乗降性はそう悪くなく、閉塞感も(頭がつかえる割には)少なく、「350G」にはリアクーラーも備わる。駅までの送り迎え程度なら大丈夫だろう。

「ミニバン」「ワゴン」間の行き来は簡単

「ミニバン」「ワゴン」「セダン」の3通りに変体する荷室は、市販モデル中おそらくもっとも凝ったものの一つ。「ミニバン」状態から「ワゴン」への変身は簡単。レバーを引けばバネ仕掛けのワンタッチで座面が引っ込み、あとは背もたれを前に倒すだけ。ボルボXC90のサードシートにバネ仕掛けを加えたような仕組みだ。

セカンドシートの折り畳みは最近のトヨタ車では珍しく、一般的にも少なくなってきたダブルフォールディング式。ヘッドレストを外す必要はなく、これの操作も簡単だ。多少の透き間は残るが、フラットで広い空間が出来上がる。

「セダン」への行き来は少々手間

面倒なのが「セダン」モードへの変身で、床下に収まるトノボード一式を取り出し、荷室に設置するのだが、このトノボードがまず実測6.6kgと重い。女性一人では難しいかも。あとは好みでロール式のカバーを前と後ろに引き出し、キャビンと荷室を「仕切る」のだが、大変な作業の割に得られるのは「セダン風の見た目」だけ、という感じがしてしまう。

積み木細工のような床下設計

床下にはサードシートや大型トノカバーの収納スペースがあるわけで、「ひょっとするとこれもヴァンガードみたいにスペアタイヤレス?」と思ったが、いやありました、一番底にテンパータイヤが。床下にはこの他、マフラー(スペアタイヤを避けて左右に振り分けてある)、燃料タンク、サブフレーム付きダブルウイッシュボーンサスなどがあり、まるで積み木細工のような緻密な設計になっている。

基本性能&ドライブフィール

350Gの瞬発力は抜群。トラクションは不足気味

試乗したのはトヨタの新たな名機、おなじみ3.5リッターV6「2GR-FE」(280ps、35.1kgm)+6ATを積む「350G」。これだけパワーがあれば車重1670kg(試乗車)など何のその。ほとんどマークXやクラウンの3リッター車に匹敵する速さで、下手なスポーツカーなど置いてけぼりのダッシュ力を誇る。5ATのヴァンガード350Sと違って、1速→2速シフトアップ時の息継ぎもない。

一方、FFの2駆ということもあり、ステアリングを少し切ったまま1速でアクセル全開にすると、225/45R18タイヤが容易にホイールスピンし、TRC(トラクションコントロール)が介入する。ウエット路面だったりタイヤが減ってきたりした時は、当然その傾向が強まるはず。車重が250kgくらい重く、重心が大幅に高いエスティマより気楽にパワーは引き出せるが、それゆえFRのゼロクラウン系シャシーとの差を感じてしまう。

2.4リッターで十分か

快適性に関しては、路面の状態によってザラザラとしたロードノイズや振動が目立つ傾向がある。これだけの性能に相応の足回りとタイヤなのである程度は仕方ないが、大切な人を乗せていると路面を選んでしまう。このあたりは2.4リッター車が履く215/60R16サイズがいいかもしれない。段差を乗り越えた時などに後部からカタカタと音がするのも気になった。

ワインディングではミニバンとセダンの中間を行くような低重心のおかげで割とスポーティに走れるが、路面によってはコーナーの侵入から旋回、脱出までS-VSC(全車標準装備)が介入。今のVSCは昔のようにいきなりストットルを絞るようなことはないが、パワーの過剰感は否めないところ。高速道路でもさすがに280psは持てましてしまう。日本の路上ではノーズが軽くてパワーも適度な2.4リッター車の方がスムーズに走れそうだ。

今回は一般道と高速道路で140kmほど試乗。純粋な試乗区間の車載燃費計は7.6km/Lを示した。撮影を含むトータルではプレミアムガソリンを20.6L消費して7km/Lを割った。10・15モード燃費は10.2km/L。

ここがイイ

そのコンセプトは素晴らしい。こういう「新しいクルマ」へのチャレンジには拍手を送りたい。走りはスポーティセダン未満、居住性はミニバン未満だが、総合成績でいくと高得点になり得る。かつてモーターデイズでイヤーカーとしたアヴァンシアにも近いのだが、サードシートをつけて何とかより新しくしよう、より販売台数を伸ばそうとしているあたり、むしろアヴァンシアへの「リスペクトもの」と考えるべきだろう。

まるで革のような素材感のインパネの樹脂は、柔らかな触感など、今後の他車への転用を考えるとかなり画期的な素材といえそう。エアコンの調整ダイヤルは浮き上がったような照明が新鮮。動かすとちょっと遅れて針が動くといった演出も、これまでどんなクルマでも見たことのないもの。天井や足もとの間接照明を含め、インテリアにトヨタ独自の演出があることは評価したい。

パワーステアリングのアシスト量制御まで行なうS-VSCが、2.4リッター車も含めて全車に標準装備されていること。190度広角前部カメラやプリクラッシュセーフティ&レーダークルーズなど、トヨタのハイテクが一通りオプション搭載できるのもいい。DMC付のG-BOOK mX Proにも対応しているから、レクサス同様の高級車向けサービスを享受できる。かなり未来っぽい高級車になっているのは間違いない。

ここがダメ

インパネに木目を使わず2トーンでまとめるという手法は他と違っていいのだが、センターメーターではなく、デザイン的に未来感には乏しいのは残念。まるで革のようなインパネ素材の質感は素晴らしいものの、ここまで革に似ているとかえって本当の革が欲しくなってしまう。本革シートもいわゆる一流の高級シートと比べると、特に縫い目の部分などに甘さが出てしまう。この革の使い方はレクサスを含め、トヨタ車の弱いところだ。

3.5リッターV6のパワーはこのクルマに明らかに過剰。久々にホイールスピンしてスタートしてしまったほど運転が大ざっぱになり、結果として快適な4座セダンというコンセプトまでスポイルしている。乗り心地が堅いというか、ちょっとしなやかさに欠けるのも高級セダンらしくない。そんな堅めの足の割に、ワインディングも平凡な印象。100㎞/hあたりから風切り音がやや気になるが、その騒音レベルが最高速度近くになってもあまり変わらないというのはほめるべきか。それでも、もう少し全体的に静かな方がいいと思われる。

また凝ったサードシートの構造か、トノカバーのせいか、走行中にボディ後部からカタカタと音が出やすく、路面の荒れたところではボディ剛性が足りないかのように感じてしまう。ここは損をしているところだ。

やっぱりフロントの「X」バッジは変。普通のトヨタマークでも何の問題もないのでは。同時にグリルまわりに色気が感じられない。高級車である以上、ここにアイデンティティを見いだしたいところだが、トヨタ車はこのあたりの作りがどうにも弱い。このスタイリングだったらグリルサイズを小さくするか、あるいはもっと大きくしてデザインと一体化するという手法でカッコいい顔つきを作り出して欲しかった。

肝心の後席(2列目)の座面が低い。頭上スペース確保のためだと思うが、座ると小柄な人ではちょっと埋もれた感じになる。後席は見晴らしがいい方が乗っていて楽しいはず。また後席重視といいながらエンターテイメントが不足している。ヘッドレストモニターや簡易テーブルといったあたりはぜひ欲しいものだ。前席シートバックの素材や縫製など目に入る部分が何となく安っぽく、後席に座った時のリッチ感が不足気味。3列目の充実より2列目こそより充実させるべきだろう。

総合評価

本来なら贅沢な4座サルーン

ミニバンを卒業した世代に向け、新しいカテゴリーの3列シート付高級車を目指したのがジオということになっている。コンセプトカーの時から3列シートはあり、マーケティング的にもその通りだと思うのだが、本当はそれではまずいのではないだろうか。ジオのようなクルマは本来、3列シートなどない真のモノスペース4人乗り乗用車としてイメージされるべきクルマだと思う。ワゴンでもなく、ミニバンでもなく、もちろん単なるセダンでもない。大人のための新しい高級4シーター(Xシーター)だ。サードシートのない贅沢な4座サルーンだったとしたら、このクルマ、その潔さがものすごく新鮮に映る。ただそれに近いコンセプトはかつてホンダ・アヴァンシアがトライして敗れ去っているだけに、目新しくサードシートをつけることになったという事情は分かるが。

とはいえサードシートそのものは、折りたたんでおけばまあ気にならないから、ひとまず許そう。ところがこのサードシートを実用化するがために、コンセプトモデル「FSC」と比べてDピラーまわりのデザインが変わってしまったのは残念だ。「FSC」ではリアクォーターガラスが切れあがっていたのに、ジオではサードシートの視界を確保するためなのか、逆に切れ下がってしまった。これでデザイン全体のシャープさが無くなり、間延びしたサイドグラフィックになってしまったのが惜しい。他の部分はかなり忠実に2年前のコンセプトカーのイメージを再現してあるのだが、ここで未来感までが薄くなってしまった。サードシートはしょせん緊急用にすぎないのだから、視界などどうでもいいと思うのだが、サードシートにエアコン吹き出し口までつけるトヨタの律儀さが裏目に出たといえそうだ。

子供世代のクルマ離れが進む

ジオが大人4人「だけ」が楽しむ新しい高級車、なんてコンセプトなら、グッときた熟年は多いはず。やっとミニバンを卒業したのだから、もう4人乗れれば十分なのだ。時々多人数が乗らなくてはならないときは、子供のクルマに分乗すればいい。最近の子供世代はクルマを持っていないから一応サードシートを用意した、なんてことを考えてるから、余計に子供世代がクルマを持たなくなってしまう。人間、不便だと思うことから欲求が生まれてくる。親父が6人乗りを持っていたら、ますます子供世代のクルマ離れが進んでしまうのではないだろうか。

総合点も高く、凄く革新的なクルマなのに、今ひとつ絶賛できないのは、人気のあったコンセプトカーによく似たデザインのボディに、手近にある最もパワフルなエンジンを載せ、そこそこ高級なインテリアとし、新しいものではなく今あるハイテクを載せ、中の上の走行感を持つクルマに手堅くまとめられたからかもしれない。こんなに先鋭的なクルマなのに、どこといって突出している感じがないのだ。こんなに特殊なクルマなのにエンスーな気持ちをかき立てられない。そこがどうにも惜しいと思う。

試乗車スペック
トヨタ マークX ジオ 350G
(3.5L・6AT・333万円)

●初年度登録:2007年9月●形式:DBA-GGA10-AWTQK ●全長4695mm×全幅1785mm×全高1550mm ●ホイールベース:2780mm ●最小回転半径:5.7m ●車重(車検証記載値):1670kg( 1020+650 )※標準仕様:1660kg ●乗車定員:6名●エンジン型式:2GR-FE ● 3456cc・V型6気筒・DOHC・4バルブ・横置 ● 280ps(206kW)/ 6200rpm、35.1kgm (344Nm)/ 4700rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/60L ●10・15モード燃費:10.2km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前ストラット/後ダブルウイッシュボーン ●タイヤ:225/45R18( Dunlop SP Sport 2050 Veuro )●試乗車価格:434万5380円( 含むオプション:HDDナビゲーションシステム< スーパーライブサウンドシステム、NAVI AI-Shift等含む> 42万6300円、プリクラッシュセーフティシステム+レーダークルーズコントロール 30万300円、本革シート 17万3250円、クリアランスソナー&バックソナー+インテリジェントパーキングアシスト(駐車空間検出機能付) 6万6150円、G-BOOK mX Pro専用DCM 4万9350円 )●試乗距離:140km ●試乗日:2007年10月

トヨタ>マークX ジオhttp://toyota.jp/markxzio/index.html

 
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