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マセラティ ギブリ S新車試乗記(第728回)

Maserati Ghibli S

(3.0L V6ターボ・8速AT・967万円)

どれだけ走れば高性能セダンなのか?
どれだけ豪華なら高級セダンなのか?
その答えは熱風の中にあった!

2014年05月09日

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キャラクター&開発コンセプト

3代目は4ドアスポーツセダンに


新型マセラティ ギブリ

2013年4月の上海モーターショーでデビュー、日本では2013年12月にデリバリーが始まったマセラティ「ギブリ」は、同社の旗艦セダンである現行の6代目クアトロポルテ(2013年~)より一回り軽量コンパクトな高級4ドアスポーツセダン。

初代ギブリ(1966~73年)や2代目ギブリ(1992~97年)は、2ドアの高級FRスポーツだったが、16年ぶりに復活した今回の3代目はそれらと異なり、「マセラティ史上初」と謳われる4ドアミドルクラスセダンに変身している。

 

現行の(6代目)マセラティ クアトロポルテ(2013年~)

新型の特徴は、クアトロポルテより一回り小さなボディサイズによる取り回しの良さ、マセラティユーザーの裾野を拡げる1000万円前後の戦略的な価格、現行クアトロポルテに続くAWD(4輪駆動)の設定など。日本仕様にはクアトロポルテで先行採用された新世代3リッターV6直噴ツインターボエンジンと8速ATを搭載。最高速は「S」のFRモデルで285km/hに達する。

 

マセラティ レヴァンテ

なお、マセラティの年間世界販売台数は2012年には6307台、2013年には1万5400台だったが、同社は2015年までに5万台体制とする計画。それに向けて投入された新世代モデルの第1弾が現行クアトロポルテで、第2弾が新型ギブリ。第3弾はスポーツラグジュアリーSUVの「レヴァンテ」となる予定。

なお、国内での販売実績は2012年が311台で、2013年が491台。2014年は1000台を目指している。

新型ギブリおよび新型クアトロポルテのエンジンはフェラーリのマラネロ工場製だが、最終組立は、伝統のモデナ工場に続いて、2013年1月にトリノ近郊のグルリアスコで稼働開始した「アッヴォカート・ジョヴァンニ・アニェッリ」工場で行われている。

「ギブリ」の歴史をおさらい


初代マセラティ ギブリ(1966~73年)。生産台数は約1300台で、その1割は写真のスパイダーが占める

ギブリ(Ghibli)とはイタリア語で、アフリカ北部でサハラ砂漠から吹く熱風のこと。第二次大戦中のイタリア軍用機には同名のモデルがあり、そこから「スタジオ・ジブリ」が命名されたのは有名な話。なお、地中海を越えてイタリアに吹き付ける時にはシロッコという名前に変わる。

1966年にデビューした初代ギブリは、4.7もしくは4.9リッターのV8エンジンをフロントに搭載したFRスポーツクーペ/スパイダー。当時のマセラティにとっては最も豪華で高性能なスポーツモデルだった。デザインはカロッツェリア・ギア在籍時のジョルジェット・ジウジアーロ。1973年に生産終了し、後継は同じくFRのカムジンや、当時流行のミッドシップレイアウトを採用したボーラなどが担った。

 

2代目マセラティ ギブリ(1992~97年)

1992年に19年ぶりに復活した2代目ギブリ、通称ギブリIIは、1980年代のマセラティを代表するビトゥルボ系の最終完成形とも言えるモデル。ボディタイプは2ドアクーペのみで、迫力あるスタイリングはマルチェロ・ガンディーニがデザインしたシャマル(1989~96年)のイメージを引き継いでいた。エンジンはビトゥルボから発展したV6ツインターボ。1997年に生産終了し、その跡は同じくV6ターボの「3200GT」が継いでいる。

 

価格帯&グレード展開

834万円からスタート。Sが967万円、AWDが1039万円


車両協力:マセラティ 桜山

欧州にはマセラティ初のディーゼル車(3リッターV6で、275psと61.2kgm)もあるが、日本に導入されるのはガソリン車のみ。手始めに、3リッターV6ガソリン・ツインターボエンジン(410ps、56.1kgm)を搭載した「ギブリ S」と、それに電子制御多板クラッチ式のAWDシステムを組み合わせた「ギブリ S Q4」の2モデルが導入された。価格(消費税8%込み)はそれぞれ967万円と1039万円。

 

AWDシステムは、8ATの後方に電子制御多板クラッチを置いたもので、通常は0:100のFR状態だが、状況に応じて(いわゆるオンデマンドで)最大50:50まで駆動配分を行う

また、5月9日には、同じ3リッターV6ツインターボながら、330psと51.0kgmにデチューンした「ギブリ」も追加。こちらはFRのみで834万円。

なお、ハンドル位置は、当初は左のみだったが、5月以降は「S Q4」を除いて右も選択可能になった。

ちなみに、クアトロポルテ(SおよびS Q4)は、同じエンジンのギブリ Sより約300万円高く、3.8リッターV8ツインターボのGT Sは、さらに約500万円高くなる。

■ギブリ       834万円
■ギブリ S     967万円 ※今回の試乗車
■ギブリ S Q4  1039万円

■クアトロポルテ S      1265万円
■クアトロポルテ S Q4    1363万円
■クアトロポルテ GT S    1769万円

 

パッケージング&スタイル

いわばクアトロポルテのWBショート版

今でこそ4ドアクーペ的なスタイリングは珍しくないが、それを昔からクアトロポルテでやっていたのがマセラティ。長くうねるようなボンネットとフロントフェンダーに始まり、伝統のトライデント(三叉の銛)マークが備わるCピラー、そして引き締まったリアエンドまで続く流れるようなデザインは、イタリアンデザインの真骨頂。ドイツ車的なメカっぽい冷たさがなく、動物的な柔らかいラインで構成されている。ただ、ある程度見慣れないと、クアトロポルテと一瞬で見分けるのは難しい。

 

ボディサイズについても、全長はクアトロポルテより300mmも短かく、ホイールベースは170mmも短いが、新型ギブリがコンパクトかと言えば、さにあらず。全長はほとんど5メートルで、全幅はクアトロポルテとほぼ同じ1.95メートル。つまりギブリは、言ってみればクアトロポルテのショートホイールベース版とも言える。全長だけで言えば、クラウンマジェスタやフーガ ハイブリッドと同じくらいだ。

 

ボディはクワトロポルテと共通のスチールモノコックで、ドアやボンネットはアルミ製

リアエンドの造形から、空力にも気を使っていることが分かる。Cd値(空気抵抗係数)は0.31

こちらはクアトロポルテ。ギブリとは、ホイールベースの長さや各部のデザインが異なるのが分かる
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
日産 フーガ ハイブリッド(2010~) 4945 1845 1500~1510 2900 5.6
トヨタ クラウン マジェスタ(2013~) 4970 1800 1460 2925 5.6
マセラティ ギブリ(2013~) 4970 1945 1485 3000
日産 シーマ(2012~) 5120 1845 1510 3050 5.8
レクサス LS600h(2012~) 5090~5210 1875 1465~1475 2970~3090 5.7~5.9
BMW 7シリーズ(2009~) 5070~5230 1900 1475~1490 3070~3210 5.5~6.1
メルセデス・ベンツ Sクラス(2013~) 5120~5295 1900~1915 1495~1500 3035~3165 5.5~5.8
マセラティ クアトロポルテ(2013~) 5270 1950 1470 3170 5.9
 

インテリア&ラゲッジスペース

イタリアンデザインと最新インターフェイスを融合


クアトロポルテよりコックピット感を強めたというインパネ。写真の内装色はクオイオ(Cuoio)と呼ばれるブラウン

イタリア製高級車御用達のポルトローナ・フラウ社製レザー内装で仕立てられたインテリア。この豪華な内装だけで、車両価格1000万円は仕方あるまいと思わせる。ダッシュセンターに上品に据えられたアナログ時計の盤面やメーター、情報ディスプレイまでをマセラティ・ブルーで統一。天井やピラーは手触りのいいアルカンターラ張りになっている。試乗車のウッドパネルは「ラディカ」と呼ばれる艶消しタイプだが、オプションで艶ありのウッドやカーボンタイプも選べる。

 

マセラティと言えば、伝統のマセラティクロック

一方では、最新トヨタ車にも負けない大型8.4インチのタッチパネルとナビ(パナソニック製)を装備(さすがにフリックやピンチイン/ピンチアウトは出来ないが)。新世代の電子制御シフトセレクター(少し慣れが要る)や電動パーキングブレーキも当然のように採用されている。また、スマホを入れるのにピッタリなセンターコンソールの小物入れには、親切にオーディオ入力端子やUSBを備える。日本車顔負けの気配り上手。

なお、ギブリは、欧州の衝突安全テストであるユーロNCAPで最高評価の5つ星を獲得したほか、独自の評価基準で知られる米国のIIHS(道路安全保険協会)では衝突安全で最高ランクの「トップセーフティピック」に選ばれている。

IIHS-HLDA>評価>2014 マセラティ ギブリ

 

パドルシフトは固定式。ステアリング裏側にもスイッチ(オーディオの音量、選局など)があり、慣れると使いやすい

ステアリングコラムは電動。少なくとも左ハンドル仕様なら、ドライビングポジションはばっちり決まる

後席はけっこうタイト。前席下につま先は入るが、足は組めないかも。サンルーフ付だと天井も低め
 

オーディオ&ナビはスマホライクな操作こそ出来ないが、パナソニック製だけに使いやすい

トランク容量はクラス相応の500リッター。後席背もたれは60:40の分割可倒式

床下にはスペースセーバー式のスペアタイヤ(175/55R18)を搭載
 

基本性能&ドライブフィール

サウンド控えめで、オトナな雰囲気

試乗したのは「ギブリ S」のFRモデル。輸入車でも最近少なくなった左ハンドルにちょっと戸惑いつつ、ポルトローナ製レザーシートに体をそっと乗せ、スタートボタンを左手で押すと、ズワンとエンジンが掛かる。とはいえ、先日のジャガー Fタイプよりもエンジン音は控えめ。

あいにく試乗初日は雨。最初はスーパースポーツ並みの横幅(狭い裏道ではフロント左右のセンサーがピーピー鳴る)に気圧される。が、走り始めると意外に乗りやすく、すぐに馴染んでくる。エンジンやステアリングの反応が穏やかで、運転する方を緊張させない。走行中のエンジンサウンドも基本的には控えめで、オトナな雰囲気。ちゃんとチョイワル(半死語?)仕様になっている。

 

アイドリングストップ機能は未装備。なので赤信号で止っても、エンジンはウウウとかすかに唸っている。このあたりはちょっと古典的だが、純エンジン車ゆえの安心感はある。

乗り心地は後席だと揺すられるが、ドライバー目線で言えば適度にスポーティで、いい感じ。サスペンションは前がダブルウィッシュボーン、後ろがマルチリンク。電子制御可変ダンパーを装備し(試乗車はオプションのアクティブ・スカイフックサスペンション付)、スポーツ設定もあるが、ほとんどの場合はノーマルのままで十分だ。

0-100㎞/h加速は5.0秒、最高速は285km/h


パドルシフトは固定式で、ステアリングを回しながらでも見失わない。回転合わせも完璧に行う

エンジンはマセラティ・パワートレインが開発し、フェラーリのマラネロ工場で生産されるバンク角60度の3.0リッターV6ツインターボ。1980年代のビトゥルボ(Biturbo=ツインターボ)や、V6ツインターボという点は1990年代のギブリ II と同じだが、中身はもちろん最新鋭。最新の直噴システム、2基のパラレルターボ、4本連続位相可変カムシャフトなどを採用し、410ps/5500rpm、550Nm/1650rpmを発揮する。ちなみに、「S」の0-100㎞/h加速と最高速(発表値)は、それぞれ5.0秒と285km/hで、AWDの「S Q4」では4.8秒と284km/h。330psのスタンダードモデルでも5.6秒と263km/hを誇る。

実際、アクセル全開時のパワー感はスペック通りで、1980kg(試乗車)のボディを羽根が生えたように加速させる。さらにスポーツモードでは、エンジンやミッションの制御マップが変わるほか、「マセラティ サウンド タンク」のバイパスバルブが開き、エンジン音も獰猛に変化。V8のような甲高いソプラノではなく、男性的なテノールサウンドになる。また、レッドゾーン手前の自動シフトアップ時に出る、ボボボッとこもった独特の音も迫力。

 

電子制御タイプのシフトレバーは、操作方法が微妙に独特。少し慣れを要する

感心したのは、クワトロポルテに続いて採用されたZF製の8速AT「AT8-HP70型」の完成度。今やこのクラスでは標準になった感もある8速ATだが、ギブリのものも変速が滑らかで、エンジンとのマッチングもいい。ギア比は下の方がクロスしていて、上の方がかなりハイギアード。つまり、街乗りや山道ではこまめなシフトで最適な回転域をキープし、高速巡航時には低い回転で燃費を稼ぐ。少なくともこのクラスに8速ATはマストと思わせる完成度。

人間の感覚に合ったハンドリング


試乗車のタイヤは、Sに標準の18インチ(前235/50R18、後275/45R18)。銘柄はイタ車らしくピレリ Pゼロ。ブレーキキャリパーは前後ともブレンボ製

新型ギブリの真価は、ワインディングでよく分かる。やや繊細な感じがした先代クアトロポルテに比べて、ボディの剛性感は飛躍的に高まり、まったくもってガシッとしたものになったが、FRらしいナチュラルなハンドリングはそのまま。電動パワステに妙なクイック感はなく、ドライバーの思った通りに反応する。ギブリに、速度感応式の可変ギアレシオ機構といったものはない。

トランスアクスル(エンジンとミッションの搭載位置を離したもので、フロントエンジン車の場合はリアにギアボックスを搭載する)ではないが、前後重量配分(車検証数値)は52:48(1030+950)と良好。後席に人が乗ったら、ちょうど50:50になりそう。加えて、ロッキングファクターが加速時35%、減速時45%という設定のLSDも標準装備するおかげで、いかにもFR車らしくコントロールできる。今回の試乗はヘビーウエットで、アクセルを踏み過ぎると550Nmのトルクに耐えかねてリアが滑り始めるが、特に怖さはなく、すぐにESPが挙動を止めてくれる。マセラティの開発ドライバーが、このクルマを振り回しながらテストしている様子が目に浮かぶ。人間の感覚や主導権を重視したハンドリングが、いかにもイタリア車らしい。

 

100km/h巡航時のエンジン回転数は、8速トップでたった約1350回転。おかげで、どうかすると100km/hでもトップに入らず、そこでスポーツモードを選ぶと5速まで落ちる。そんなわけで、日本の法定速度下では少々使い切れない感はあるが、欧州や北米なら、この高速型のギアリングは燃費や静粛性にかなり効くはず。

なお、他メーカー車でも普及し始めているオートマチックハイビームは、街中ではなかなかハイビームになってくれない面があり、それはギブリでも同じだが、ライトレバーを引くと簡単にシステムをオフにできるので、そんなに困らなかった。郊外では適切にハイ・ローを切り替えてくれて便利だ。

試乗燃費は6.4~7.8km/L。6km/L台はほぼ確実

今回はトータルで約250kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)で6.4km/L。また、一般道を大人しく走った区間(約30kmを4回)が6.6km/L、7.0km/L、7.6km/L、7.8km/Lだった。撮影のための移動を含めた総平均は6.2km/L。総じて実用燃費はあまり上下しないタイプで、ラフに乗らない限り6km/L台という感じ。

SとS Q4のJC08モード燃費は未発表だが、追加されたスタンダードの「ギブリ」では7.6km/Lと発表された。

指定燃料は当然プレミアムで、タンク容量はクアトロポルテと同じ80リッター。

 

ここがイイ

ハンドリング、能ある鷹は爪を隠す的な雰囲気。ハードの完成度

今どき珍しいほど素晴らしくナチュラルなハンドリング。FR好きなら絶対に気に入ると思う。また、普段はジェントルで、排気音も控えめだが、踏めばズバッと加速するターボエンジン。能ある鷹は爪を隠す的なクルマ。4ドアセダンの高級セダンらしく、普段使いから高級ホテルまで、どこにでも乗っていける。大人しく走れば、燃費もパワーと車重の割にいい。

シャシーにしても、エンジンにしても、8速ATにしても、ハードウエアの完成度が高い。不思議なくらい最初から完成度が高く、とにかく生煮え感がない。

ここがダメ

ミドルとはいえ大きい。先進安全装備の不備など

クアトロポルテより全長は短く、その分小回りは効くはずだが、やはり大きい。特に横幅は走るだけならそんなに気にならないが、駐車する時にはそれなりに場所を選ぶ。また、フロントのナンバー位置が低くて、段差や傾斜で擦りやすいのには気を使った。

電子制御シフトレバーの操作感がやや独特で、例えばDからPにシフトする場合などは、「ロック解除ボタンを押してから」動かさないと、実際にはロックが解除されずRに入ってしまうので、注意が必要。また、ウインカーレバーがパドルシフトより向こうにあり、指が届きにくいのも気になった。

エアコンをオートモードにしておくと冷え過ぎたり、暑くなったりと、温度設定が微妙に難しい。マニュアルモードの方が使いやすいかも。

後席は決して広くないので、後席を頻繁に使うなら、クアトロポルテの方が良い。

クルマとしてはドイツ車にも負けないが、高級車にとって今後の課題である先進安全装備や、ナビを中心としたITS系装備については、やはりまだまだ。衝突回避系のシステムくらいはさすがに欲しくなる。

総合評価

想定外の楽しさ

マセラティと言えば、最近は「フェラーリのエンジン」を載せたセダンというイメージがあるが、新型ギブリのエンジンもフェラーリのマラネロ工場で生産されている。とはいえ、やはりV6ターボだから、そこに例のフェラーリサウンドはない。おおかた1000万円もするクルマなので、特別な何かを期待してしまうのは致し方ないところか。

走らせても、これが案外普通の高級車で、乗り手をビビらせるほどのオーラはない。こと一般道では特に気持ちが高ぶることはなく、ちょっと見かけることのない、人と違うクルマに乗っているという満足感こそあっても、1000万円なら、もっと別の手もあるかな、なんて一瞬思ってしまったくらいだ。高速走行に不満はないものの、日本の高速道路での速度域くらいでは胸が踊ることはない。

ところが、これをいったんワインディングに持ちこみ、スポーツモードにすると、その巨体に見合わない素晴らしいスポーツ走行を楽しませてくれる。いわゆるサーキットで速いタイプではなく、ワインディングを優雅かつ軽快に、いや、優雅ではなく、心躍る気分にさせてくれるタイプ。クラウンマジェスタより全幅が145mmも広いことなんて微塵も感じさせない軽快感や一体感はどうだ。それまではマセラティのセダンなのだから、そのブランド力でどんな用途にも使える高級車なんだな、くらいに考えていたのだが、スポーツ走行がこんなに楽しいのは想定外。もちろん、このクラスを買うようなお金持ちの場合、優雅な高級セダンと、純粋なスポーツモデルの両方を所有して乗り分けるのが普通なのかもしれない。しかしまあ1000万くらいがクルマ用の予算かな、という人なら、このクルマ一台でどんなシーンでも不満なく乗れるのでは。

 

いや、本来こういう4ドアスポーツセダンは、様々なシーンでマルチに楽しめるべきものだろう。スタイリングを愛で、ブランドを誇り、走りを楽しむ。無論、乗っている間、常に目に入るインテリアの上質感には誰も不満を言うまい。このスタイリングも古臭く言えば4ドアハードトップ。「あの頃」のちょいバブルな雰囲気もあったりして、それが今、案外「ナウい」のでは。

とか何とか書いていたら、5月9日になって「Eセグメント戦略価格モデル」として834万円のスタンダードモデルも登場した。これくらいの価格だったら、ポルシェ ケイマンあたりを買うよりイイかも、なんて思えてくる。実用性にしても、豪華さにしても、上なのだから。

で、肝心の仮想敵であるEクラスや5シリーズ、さらにはA6、それとレクサスGSあたりを思えば、色っぽさでは完全に上。昨年2013年には国内で491台を売り、今年2014年には倍増の1000台を目指すというマセラティ ジャパンにとっては、なるほど、これは確かに戦略的なモデルだ。販売店の体制も大攻勢をかけているようで、今年は金沢とか浜松といった地方都市にも進出し、日本国内に6店が新規オープンするという(計22拠点になる)。マセラティ全体では2015年に年間生産5万台達成が目標らしい。となれば、米国や中国を含めた世界市場では4WDモデルこそが重要だろうし、日本でも金沢など多くのエリアが4WDを求める降雪地帯だ。

高速道路にもプレミアムなパスを

先日、新東名を走っていたら、また新たなオービスが設置されていた。覆面パトカーも多いようで、この素晴らしい道を、設計速度以下の100km/hに制限して取り締まりを強めている。一部のトンネルなど、わざわざ2車線に狭めているし。ギブリ Sの285km/hなどという最高速は、もはや日本では実質的な意味を持たない(これはまあ、他のクルマでも誇っているものではあるけれど)。すでに国産メーカーなどは最高速を抑えて、ひたすら燃費と安全を追求する方向に開発が向かっている。一方、ギブリは日本の道では意味が無いほど素晴らしい走行性能を持つが、ハイオクガソリンがリッター170円オーバー時代に実燃費は総平均で6.2km/Lだ。それを悪しく言うつもりはない。マセラティを買えて、燃費を気にせず乗れる人は(アベノミクス的に言えば、これは消費を活性化させる「いい人」なのでは?)、それなりにお金を使って(税金もたくさん払って)、世に貢献しているわけで、であれば新東名の制限速度を高く設定してくれるとか、何かメリットを与えてもいいと思う。

 

炎上しそうな話を書くと、政治的には今後さらに二極化を進めようとしているわけで、ならば税金を沢山収めている人にはそれなりのメリットを与えることで、もっと日本は国際社会で優位に立てるのではないだろうか。遊園地の中には、お金を出せば待ち時間が短くて済むパスを用意するところもあるわけで、それを高速道路にも適用したらどうだろう。それでこそ輸入高級車がもっと売れ、日本でもそれに負けない高級な高性能車が作られ、そして日本経済が世界に対抗できるようになっていくのでは。そういったことも、そろそろ考えるべき時だろう。今期も最高益を出したトヨタあたりが、法人税減税と合わせて高速道路にもプレミアムなパスを、などと言い出してくれないものかと夢想する。新東名など、もともとはトヨタが平均150km/hで走れるクルマを開発して売るために建築計画促進に力を尽くしたという噂もあるくらいなのだから。亡くなった豊田英二さんに生前お会いした時、雑談の中でだが、「新東名ができたら東京と豊田(トヨタ本社間で約300km)はうちのクルマなら2時間だわな」と言っていた。いまの状況を英二さんも草葉の陰で嘆いているに違いない。

 

試乗車スペック
マセラティ ギブリ S
(3.0L V6ターボ・8速AT・967万円)

●初年度登録:2013年12月 ●形式:ABA-MG30A ●全長4970mm×全幅1945mm×全高1485mm ●ホイールベース:3000mm ●最小回転半径:-m ●車重(車検証記載値):1980kg(1030+950) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:M156B ●排気量・エンジン種類:2979cc・V型6気筒DOHC・4バルブ・直噴・ツインターボ・縦置 ●ボア×ストローク:86.5×84.5mm ●圧縮比:9.7 ●最高出力:302kW(410ps)/5500rpm ●最大トルク:550Nm (56.1kgm)/1750-5000rpm ●カムシャフト駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/80L ●JC08モード燃費:-km/L

●駆動方式:FR(後輪駆動) ●サスペンション形式:前 ダブルウイッシュボーン+コイルスプリング/後 5リンク+コイルスプリング ●タイヤ:前 235/50R18、後 275/45R18(Pirelli P-Zero)

●試乗車価格(概算):約1080万円 ※オプション:コンフォートパッケージ(リアシートヒーター、リアサンシェイド、プレミアムサウンド、スカイフックサスペンション)、フル・プレミアムレザー、パワーサンルーフ、マイカ・ペイント、アクティブ・シフティング・ギアシフト・パドル、ヒーテッド・ウインドシールド・ウォッシャー、ベロアカーペット ●ボディカラー:Nero Ribelle(マイカ) ●試乗距離:約250km

●試乗日:2014年4月 ●車両協力:マセラティ 桜山 (株式会社渡辺自動車)

 
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マセラティ 桜山ショールーム

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