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マセラティ クアトロポルテ オートマチック新車試乗記(第460回)

Maserati Quattroporte Automatic

(4.2L・V8・6AT・1414万円)

フェラーリエンジンを積んだ
イタリアンGTセダン、
クアトロポルテに待望の6ATモデルが登場!

2007年04月21日

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キャラクター&開発コンセプト

4年目で追加されたトルコン6AT

2003年9月にフランクフルトショーでデビューしたクアトロポルテ(イタリア語で「4ドア」の意)は、伊マセラティのGTサルーン。欧州では2004年春に発売。日本では同年2月に発表され、6月からデリバリーが始まった。ピニンファリーナによる優雅なスタイリングの下には、フェラーリ製の4.2リッターV8を搭載。当初は6速セミAT「デュオセレクト(DuoSelect)」のみでスタートした。

今回採り上げるのは、2007年1月のデトロイトショーで発表され、2月28日に日本で発売された「クアトロポルテ オートマチック」、すなわちZF製トルコン6ATを搭載した待望の「フルオートマチック」モデルだ。

クアトロポルテの歴史


マセラティ グラントゥーリズモ
(photo:コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッド)

1914年創業のマセラティ社は、戦前から戦後の50年代まではレーシングカー作りで名声を獲得し、その後は豪華GTカーに注力するイタリアの名門。初代クアトロポルテ(1963-71)は、同社の最高級4ドアセダンとして生まれたのもので、スタイリングはフルアが担当した。

続いてシトロエン傘下で開発された2代目(1975-77)は、ベルトーネ(に在籍時のガンディーニ)がデザイン(ただし試作に終わった)。デトマゾ傘下の3代目(1978-90)はイタルデザイン(ジウジアーロ)、フィアット傘下の4代目(1996-2002)はガンディーニ、そしてフェラーリ傘下の5代目(2003-)はピニンファリーナと、イタリアン・カロッツェリアの大御所が持ち回りで?デザインを担当している。なおマセラティは現在、再びフィアット傘下に戻っている。

なお、2007年2月のジュネーブショーで発表されたマセラティの新型2ドアクーペ「グラントゥーリズモ(GranTurismo)」は、このクアトロポルテがベース。デザインはやはりピニンファリーナで、エンジンは4.2リッターV8(405ps)、変速機はトルコン6ATとなる予定。

価格帯&グレード展開

1414万円からで、変速機は2通り

全3グレードは以下の通り。いずれのグレードでも、6速セミATの「デュオセレクト」かトルコン6速ATの「オートマチック」がチョイスできる。

・「クアトロポルテ(標準車)」(1414万円) ★今回の試乗車
・「クアトロポルテ・エグゼクティブGT」(1582万円)
・「クアトロポルテ・スポーツGT」(1540万円)

「エグゼクティブGT」は高級感をさらに高めたモデルで、19インチホイール、工芸品のようなインテリア、リアシートの快適装備などを備える。一方の「スポーツGT」は、20インチホイール、ドリルドブレーキローター、変速スピード35%アップの変速機、専用セッティングの電子制御サスペンション、カーボンインテリア等を備えたスポーティ仕様だ。もちろん、内装色や素材は豊富なオプションから自由に選べる。

パッケージング&スタイル

ピニンファリーナによるイタリアンクラシコ

外寸は全長5060×全幅1895×全高1440mm。大きいと言えば大きいが、SクラスやジャガーXJ、レクサスLSなどと同等で、実際の印象はむしろ繊細にすら見える。このクラスのセダンは標準ホイールベース版とロングホイールベース版の2つを用意することが多いが、クアトロポルテの場合は、ホイールベースをその中間あたり(3065mm)に設定して1種類で済ませている。

ピニンファリーナのスタイリングは、クラシカルでモダン、エレガントでスポーティと、よくあるカタログの文句を地で行くもの。個性的なフロント部分は、歴代クアトロポルテの中で一番マセラティ濃度が高かった初代をリスペクトしたものだ。

木と革でできた豪奢なインテリア

クアトロポルテの魅力を知るなら、外観より室内を見るべき。画像で伝わらないのが残念だが、「4枚のドア」の内側には、それはそれは豪奢で濃密な世界が広がっている。先代クアトロポルテやビトゥルボのキザでヤクザでエロチックな内装に比べると、あっさりし過ぎに見えるが、工芸品的な魅力をこの価格帯(1500万円前後)で味わえるというのは、ある意味リーズナブルかも。マセラティ定番(と思われている)アーモンド型のアナログ時計、重厚なローズウッド張りのセンターコンソール、ポルトローナ・フラウ社製レザーなどが見どころ。

 

ちなみにこの内装だけでオプション装備が140万円分も追加されているが、アルパイン製ナビゲーションシステムやBoseのサウンドシステムは標準装備だ。なお試乗車は左ハンドルだが、右ハンドルも選べる。

さすが大統領専用車

ホイールベースが3メートル超もあるので、リアシートは十分に広い。いわゆるロングモデルのような圧倒的な広さはないが、座面の高さやシートバックの角度も適切で、大柄なデイズスタッフからも太鼓判が出た。乗降性もこの手のセダンとしては優れている。さすがイタリア大統領の公用車だ。

なお、天井のアシストグリップは磁石で止まっている片方が外れて、吊り革のように下がり、優雅に体を支えることができる。これは昔の馬車を思わせるもので、いかにも貴族の乗り物らしい部分。

犠牲になったのはトランク

トランスアクスル配置の6速セミAT用ギアボックスやガソリンタンクの配置の関係か、荷室は決して広くない。容量自体は450リッターだが、奥行きがなく、トランクスルーもなし。スペアタイヤはないので(パンク修理キット搭載)、床下に小さな収納ボックスはある。

基本性能&ドライブフィール

トルコン用に出力特性を変更


トルコン6ATの「オートマチック」の場合、ヘッドカバーの結晶塗装はブルーになる

パーキングブレーキこそ電動(スイッチ式)だが、エンジン始動はキーをひねって行なうタイプ。「クーーーー」というフェラーリ風の(というか、本当にフェラーリ製)スターター音の後に、「フォン!」と歯切れのいい音がささやくように響く。思わずもう1回やり直したくなる、魅力的なスタート前の儀式だ。

セミATと違うのは変速機だけと思いきや、実はエンジンのチューニングも駆動系レイアウトも、トルコンATの「オートマチック」専用になる。フロントミッドに搭載される4.2リッターV8エンジンはフェラーリ製だが、セミATモデルは400ps/7250rpm、45.0kgm/4750rpmで、トルコンモデルは400ps/7000rpm、47.0kgm/4250rpm。低回転を強化しているのが特徴だ。

ほのかに味わうフェラーリ製V8


こちらはセミAT用のエンジン。結晶塗装は赤になる
(photo:コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッド)

出力特性と変速機のマッチングは良好。車重が2050kgもあるので(サンルーフ付)、車重1500kg未満のV8フェラーリのような速さはないが、吹け上がりの俊敏さと迫力は400psならでは。レクサスLSのV8のような滑らか一辺倒ではなく、中回転から高回転にかけて音が変化し、「フェラーリ様のエンジンがどこか遠いところで回っている」感覚がほのかに味わえる。

なお、このチェーン駆動・4バルブの4244cc・V8ユニットを最初に搭載したのはマセラティ・スパイダー(2001年)、そしてマセラティ・クーペで、その発展版の4308cc(490ps)バージョンを本家フェラーリのF430(2005年-)が積んだのはその後。ちなみに先代360モデナ(1999-2005年)のエンジンはまったくの別物で、3.6リッター(400ps)のベルト駆動・5バルブだ。

パドルシフトが欲しい

6ATの変速は滑らかで、ギアのつながりもまずまず。変速は特に速くなく、むしろ7速AT(メルセデス・ベンツ)や8速AT(レクサス)、あるいはDSG(フォルクスワーゲン)が登場している今、特に秀でたものは感じさせないが、不満もない。スポーツモードに切り替えると、エンジンブレーキが絶妙に効くようになり、これがなかなか気持ちいい。もちろんレスポンスも鋭くなる。

一つ物足りなかったのは、パドルシフトがなかったこと。これは「スポーツGT」グレードに標準装備されるほか、オプションで選択可能だ。セミATなら全車に標準装備される。クアトロポルテのスポーティなキャラクターを考えると、ぜひ欲しいところだ。

非トランスアクスル化に伴い、エンジンの搭載位置まで変更

エンジン同様、イタリアンなのがハンドリングだ。限界が驚くほど高いわけでも、シャープなわけでもないが、ステアリングを切り込めばフロントがスッとイン側に入るところは、車重2トン超のセダンらしからぬもの。ロールの発生具合もナチュラルというか、クラシカルというか。サスペンションは前後ダブルウイッシュボーン。古典的なFR車のハンドリングが好きな人には馴染めるはず。ただ、ドイツ車的なガチッとしたハンドリングが好きな人には理解しにくいかもしれない。

こうしたクアトロポルテのハンドリングを成り立たせているのは、重量配分と重心の低さだ。例えばセミATモデルの前後重量配分はトランスアクスルの採用により47:53と、駆動輪である後輪に適度に荷重がかかるようになっているが、トルコンATの場合はエンジン直後にドッキングする構造なので、わざわざエンジンの搭載位置を後方にずらしてバランスを取っている。前後重量配分は49:51だ。

フェラーリがF430用に使うくらいだから、エンジン自体の重心も低いはず。ドライサンプ潤滑のセミAT用エンジンと違って、トルコンAT用のエンジンは通常のウエットサンプらしいが、それでもエンジンマウント位置はかなり低そうに見える(エンジンルームの見た目と構造からの推測)。

快適性は言うまでもなく○。最高速は270km/h

乗り心地はこのクラスだと良いのが当たり前。スカイフック理論を使った電子制御サスペンションをスポーツモードに設定しても、特に不満はない(ATや電スロのプログラムも変わるので、ダンパーだけの差は体感しにくいが)。

静粛性については、上に書いたようにフェラーリサウンドが轟然とキャビンに侵入してくる…なんてことは無く、とはいえ、これ以上聞こえないのは淋しい、という程度には聞こえるようになっている。装着タイヤがピレリ・Pゼロの前245/40ZR19、後285/35ZR19(オプション)の大径・極太であることを考えると、ロードノイズも十分に静かだ。

100km/h時のエンジン回転数は1900回転ほどとセミATより下げられており、むろん穏やかなもの。ただそこからの加速にドラマチックさは薄く、快適さと相まってクルーザーというか、GTカーらしい快適な走りが200km/hあたりまで続く。トルクで押し出すのでもなく、といってスポーツカー的にエンジンを楽しむというほどでもないが、走っている、走らせているという実感が伴う。またハイスピードコーナーでは心地よい緊張感も楽しめる。最高速度(セミAT比)は270km/h(-5km/h)。0-100km/h加速は5.6秒(+0.4秒)とのこと。

今回は一般道を中心に約190kmを走行。燃費は意外に良く、5.9km/Lを維持した。要因としてはアクセルを踏み込まなくても十分に走るのと、ドライバーに優雅な運転を心がけさせるクルマ自体のキャラクターが大きいかもしれない。

ここがイイ

試乗車はベースで1400万円、オプション込みで1600万円だが、同価格にあるドイツ製高級車を「通勤の足」くらいに思わせる、超越感(超俗感?)があること。ロールスロイスやベントレーに匹敵する存在感を思えば、決して高くないと思う。

フェラーリ製エンジンながら、最新世代のチェーン駆動となっていること。ウォーターポンプなど補器類の心配はあるが、ベルト切れの不安がないのは、このクラスのオーナーにとってもありがたいはず。

何よりトルコン6ATになったこと。アルファもついに6ATとなったし、イタ車ブームが再び訪れるかも…というのはちょっと甘い見方かもしれないが、「普通のATさえあれば…」というモデルが多かっただけに、やりようによってはあり得ない話ではない。

ここがダメ

ボディ剛性はそれほど高そうではないこと。最近はツインターボやスーパーチャージャー、大排気量ターボディーゼル、あるいはレクサスみたいなハイブリッドなどの採用で、過激なトルク競争時代に入っているが、クアトロポルテのシャシーは今のパワーで「ちょうどいい」という感じ。うねりのある路面で大きな入力が入った時などには、シャシーの余力不足を感じることがある。

総合評価

最近あらためて乗る機会のあったメルセデスのSクラスやBMWの7シリーズあたりに比べると、すごく小さなクルマに乗っている感覚だ。手足のように操れるとまでは言わないが、四隅にまで神経が行き渡る感じがあるゆえ、7シリーズよりさらにドライバーズカーなフラッグシップ車となっている。特に、ごく普通のクルマとして乗れる6ATとなったおかげで、よけいな気を遣うこともないから、左ハンドルになれている人であれば走り出してすぐに1600万円のクルマとは思えない一体感を得られる。

あるべき位置にあるアルパイン製ナビ、カップホルダー、特に凝った部分のない操作系(特にSクラスや7シリーズと比べれば)ゆえ、操作を気にせずウッドパネルなどの工芸品的な内装のオシャレさを堪能することができる。かえって難しいのがその内装の要たるシートの操作か。走行中にマッサージされるなど、なかなか味わえることではないと思わず苦笑したほど(停止ボタンがなかなかみつからなかった)。ただインテリアのどこからかギシギシと音がしていたり、グローブボックスの開閉でやはり音が出るなど、新車状態で初期不満があるのは、いまだイタリア車の面目躍如といったところか。助手席側エアバッグがダッシュボードにしっかり溝を切って埋め込まれているのも、最近のクルマで見かけることは少ない(今はシームレスが一般的だ)。

 

走りや内装といったハード面はこれまで書いてきたとおりで、これだけの価格帯のクルマであれば、それぞれにおいてもっといいクルマもあるだろう。しかしなんといってもデザインと存在感こそ、この価格の意義だ。ピニンファリーナ在籍中の日本人デザイナーによるというそのエクステリアデザインは、ラテンの情熱というよりアジア的な奥ゆかしさを感じさせるもので一見かなり「大人しい」(反面、インテリアはいかにもイタリアンなテイストだが)。大人しいが、よく見れば強烈に主張しているという点では、最近あざといデザインが多い幾多のトップエンドモデルの中では唯一の存在だろう。

いわゆる「○金」(マルキン、哀悼:渡辺和博氏)の人々がクルマを買う場合、価格はそう重要な問題ではない。例えば「Sクラスはビジネスライクでしゃれっ気がないし、CLSは珍しくないし、今さら7でもないし、ポルシェやフェラーリはそう欲しくないし、ジャガーならXKかな。そうアストンマーチンもいいな。そういや最近マセラティには普通のATが載ったらしいがどうだろう」などなど、そんなハイソな会話に登場するのがクアトロポルテだ。

 

下取りを考えた資産となるクルマではないし、法人が経費で買うクルマでもない。クアトロポルテは可処分所得のたっぷりある人が、資産ではなく消費財として買うクルマであり、その意味では真の贅沢車だろう。試乗車のオプションはサンルーフ(23万8000円)、アルカンタラルーフライニング(19万1000円)、フロントシートコンフォートパック(35万6000円)など192万8000円に上るオプションが装備されていたが、これらは当然、費用対効果で考えるようなしろものではないわけだ。エンジンがフェラーリ製であったり、内装がオーダーメイドであったりしても、あくまで大人しい大人のクルマ。そしてにじみ出る色気を楽しむクルマ。年収1000万円そこそこのチョイ悪オヤジには手が出せないホントのお金持ちのクルマであることこそ、クアトロポルテの大いなる価値だと思う。

試乗車スペック
マセラティ クアトロポルテ オートマチック
(4.2L・V8・6AT・1414万円)

●形式:GH-MQP ●全長5060mm×全幅1895mm×全高1440mm ●ホイールベース:3065mm●車重(車検証記載値):2050kg(-+-)●乗車定員:5 名●エンジン型式:- ● 4244cc・V型8気筒・DOHC・4バルブ・縦置 ● 400ps(295kW)/7000rpm、47.0 kg-m (460Nm)/ 4250rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/90 L ●10・15モード燃費:-km/L ●駆動方式:後輪駆動(FR) ●タイヤ:前245/40ZR19、後285/35ZR19(Pirelli P Zero Rosso ) ※オプション●試乗車価格:1606万8000円( 含むオプション:ダッシュボードカラー 10万5000円、パワーサンルーフ 23万8000円、フロントパークセンサー 8万7000円、ローズウッド+インレー 5万4000円、シルバーキャリパー 7万7000円、パイピングカラー 4万3000円、アルカンタラルーフライニング 19万1000円、ウッドステアリングホイール+カラードレザー 16万2000円、フロントシート・コンフォートパック 61万5000円、19インチホイール(9本スポーク) 35万6000円 ) ●試乗距離:約190km ●試乗日:2007年4月
●車両協力:渡辺自動車 鶴舞ショールーム

公式サイトhttp://www.cornesmotor.com/

公式サイトhttp://www.qp-at.com/

 
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マセラティ 桜山ショールーム

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