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大宇 マティス新車試乗記(第115回)

 

 

2000年03月17日

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キャラクター&開発コンセプト

韓国発。世界戦略の無国籍コンパクトカー

マティスは韓国の自動車メーカーの「大宇(デイウ)」の製品だが、グローバルエンジニアリングというコンセプトのもとに生み出された世界戦略コンパクトカーだ。基本設計はイギリスのワデイング研究所、エンジンはドイツのミュンヘン研究所、そしてデザインは世界の巨匠であるジウジアーロが担当。このイタルデザインによるルックスが最大のウリとなる。

欧州では98年の秋にデビューしており、すでに当初の目標を上回る25万台を販売。多くの国のマスコミで絶賛と数々の賞を受賞しており、発売して1年でトップブランドの座を築きあげているという。

なお、日本では99年11月から販売が開始されており、その際に、大宇自動車が100%出資した輸入販売会社(株)マティス(福岡市)が設立された。現在約50ほどの販売拠点(正規ディーラー)と、200事業所以上のサービス網を持つ。販売店よりサービス店が強いという体制作りは、インターネット直販を視野に入れたもの。ホームページでも直接購入でき、ほぼ各都道府県にあるサービス店でメンテナンスが受けられる。なかなか進んだ展開だが、販売的にはまだまだ苦戦しているようだ。やはり実車が見られないのが辛いところ。

ボディは5ドアのみ。エンジンは800ccで、ATとMTが用意される。乗車定員は5名で、全車、右ハンドルとなる。

価格帯&グレード展開

さすが韓国製 なんと79.5万円! しかも保証付き。日本で買える輸入車で最も安い

グレードは5MTの「M-I」「M-II」、3ATの「A-I」「A-II」「A-III」の、計5タイプ。運転席エアバッグ、パワステ、前席パワーウインドウ、エアコン、リアスポイラー、フォグランプ、リアワイパーなどグレードに関係なく標準装備としながらも、お値段、何と79.5万円(M-I)より。最上級グレードの「A-III」でも114.0万円。マーチの最も安い廉価版は94.7万円、ロゴでも83.0万円なのだから、この安さは驚きだ。しかもしっかり右ハンドル化(イギリスにも輸出されているのだから日本専用というわけではないのだけれども)されており、3年間または走行距離6万kmのメーカー保証が付くのも嬉しいところ。

ライバルは軽や国産リッターカー、輸入車ではフォード・Ka、ルノー・トゥインゴ、フィアット・プントなどが挙げられるだろう。

パッケージング&スタイル

軽自動車とほぼ同じサイズだが、ジウジアーロデザインが光る!

全長3495mm×全幅1495mm×全高1485mm、ホイールベース2340mmのサイズは、軽自動車枠よりも全長が100mmオーバー、全幅が15mmオーバーしているだけの、コンパクトなもの。この限られた枠の中で成立させたトヨタ・スパシオのようなワンモーションフォルムは、デザイン界の巨匠ジウジアーロが手掛けている。デザイン時期を逆算すれば、同じジウジアーロが手掛けたダイハツ・ムーヴと近い頃と思われるが、何となくムーヴより気合い入っているように感じられるのは私だけ? どこから眺めても破綻しておらず、とにかく秀逸なデザインだ。気になる外板パネルの繋ぎ目も国産車と遜色のない仕上がりで、パッと見た限りでは韓国車というイメージは全くない。

後席の足元の余裕は軽自動車以上、開口部が狭いのが難

室内の広さは長さ1800mm×幅1265mm×高さ1220mmと、軽サイズからの拡大分がそのまま活かされている。絶対的に横幅はないことをふまえて話を進めれば、前席はもちろんのこと、後席でもヘッドレストが備わらないことを除けば文句なし。特に後席の膝元空間の余裕は軽自動車より広いことは明らかであり、一応3名が座れることになっている。残念なのはBピラーがかなり後ろ寄りになっていることで、後席の開口部が狭くなってしまっていること。この他、右ハンドル化によると思われる中央よりのペダルレイアウトも、気になるといえば気になるところ。

荷室はバネとダンパーを別軸に配置したリアサスの採用によって、予想以上の広さを確保していし、「A-III」のリアシートは6:4分割可倒できるダブルフォールディング式を採用しているので、荷室はフラットでかなり大きなものが収納できる。これなら日常用途で困ることあまりないはずだ。

コリアンパワー炸裂! 日本車もたまげる、充実した装備群

インパネは丸型のエアコン吹き出し口、シルバーの木目パネルがちょっと洒落ているだけで、全体には平凡なデザインだ。チリは合っており、質感はまずまず。装備も国産のコンパクトカーにつくものは全て標準化されており、カップホルダーも付いている(ただし1名分だけ)。不満といえば、メーター内にシフトインジケーターがないことぐらい。最上級グレードになれば、ネズミの鳴き声のような音でロックしたことを知らせるキーレスエントリーをはじめ、アルミホイール、CDチェンジャー、ルーフレール、サンルーフなど過剰ともいえる装備が加わる。これで114.0万円は、安い! 

最も好感持てたのがシートの出来。小柄ながら張りのあるものでドイツ車のような印象を与えてくれる。高めのセットで乗りこみやすくアイポイントも高い。一方で、ドアパネルはペナペナという感じ。側面衝突は大丈夫か? とりあえず、ヨーロッパの40%オフセット衝突試験はクリアしているので、前面衝突は大丈夫そうだ。

基本性能&ドライブフィール

軽自動車にちょっとだけトルクをプラス、エンジンの仕上がりはやや雑

M-TECと呼ばれる800cc直列3気筒SOHCエンジン(2バルブ)は、ドイツのミュンヘン技術研究所で開発されたもの。最高出力は52PS/6200rpm、最大トルクは7.3kgm/3500rpmと、軽自動車のNA車程度のパワーで、トルクは排気量の分だけ若干強め。ボディも810kgと軽自動車と同じぐらい。だから走りは軽自動車にプラス140cc分の余裕を加えた程度と思っていいだろう。とはいっても加速においては高回転を使わないでも充分なトルクは得られるのも事実で、あわただしい走りではない。1人で乗っている分にはチョイ乗りクルマはこれで十分という感じがした。

一昔前の欧州車テイスト

足回りはFF車として典型的なもので、前がマクファーソンストラット、後ろがアイソレーディングトレーリンクと呼ばれる変形セミトレを採用。タイヤサイズは「A-III」が175R/60R13で、他は155/65R13を採用する。

乗り心地はリアがドタバタするものの、街乗りとするにはやや重めのパワステと、太いストラットタワーバーの効果が相まって、欧州車的な味わいを持たせている。硬めのしっかりした乗り心地は日本の軽とはひと味違うしっかり感がある。コーナリングでもよく粘ってくれるし、パワーがないだけに完全に足回りが勝っている。ただ乗っていて楽しくはないのが残念。これで楽しいということがないのだが。ブレーキフィーリングの甘さはちょっと指摘しておきたいところ。

エンジン音のやかましさは、このクラスゆえまあ仕方ない。ATが3速しかないというのはやはり辛いところで、特に高速巡航ともなると残念ながらちょっと悲しい。といっても100km/hくらいならもう一速欲しいな、と思いながらも十分走れる。問題はそれ以上の速度域で、150km/h近くまで伸びるが、とても巡航には耐えられない。カタログにギア比が記載されていないので分からないが、恐らくMTならぐんとギア比が低いはずだから、その速度域でも十分に走れるだろう。安定性はぜんぜん悪くないのだから。

フォローしておくが、3AT自体はシフトショックも気にならず、シフトプログラムも良好。軽よりトルクがあるので唐突なシフトをしないから、街中では大変快適だ。高速走行を多用しない限り不満は出ないだろう。価格を考えれば十分認めてもいい。

ここがイイ

デザインは素晴らしいと思う。ミニバン型でもなくセダン型でもないワンモーションルックは、これから日本の小型車にも採り入れられていくはずだ。東京モーターショーのコンセプト軽はこんな感じだった。ジウジアーロもムーヴではダイハツの意向(打倒ワゴンR)がかなり入ったのであんなカタチとしてしまったが、このマティスでは思いのままデザインしたのだろう。フロントに入った柔らかな曲線などは、往年の名車フィアット500あたりをかなり意識したものだと思う。幅が狭く背が高いのにドッシリ感を失っていないデザインセンスはさすがとしかいいようがない。

品質面でも意外にいい感じ。溶接などをじっくり見るとアラも見えないわけではないが、クラスがクラスだけにこれで十分。

ここがダメ

エンジン音のうるささとATが3速ということ。そして宣伝・広報活動の不足。マティスは九州に本社があり、関東では埼玉県深谷市が拠点。東京でなくちゃダメとはいわないが、九州にいて東京並のことをするにはもっとガンバってもらいたい。いいクルマなんだから。デイズは名古屋にあるからそのあたりは痛いほど分かる。豊橋(名古屋から60kmほど)に本社を置いたVWも、いつの間にか広報は東京へ行ってしまった。インターネットに限らず、いろんなメディアに露出してもらいたいところだ。

総合評価

隠れた実力車。良い意味で期待を裏切られたクルマであり、韓国車に対する認識を一変させるほど中身の濃い仕上がりとなっている。何も知らなければ、欧州車と勘違いしても無理はないだろうし、実際に欧州で通用しているのもうなずける。小さいクルマ好きにはたまらない。スマートもいいが、マティスは十分ライバルになれる。

日本には立派な軽自動車があり、維持費を考えても日本市場でマティスは不利な立場にあるが、だからといって購入意欲が湧かないかといえば、そうでもない。+140ccの差による走りの余裕は大きいし、秀逸なデザインだけでも買いに値する。希少性という点でも個性派の人にはオススメできる一台だ。フィアット・パンダ(これもジウジアーロ作)のように名車の殿堂入りとなるかも?

 

公式サイトhttp://www.matiz.co.jp/

 
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