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メルセデス・ベンツ バネオ 1.9 アンビエンテ新車試乗記(第317回)

Mercedes Benz Vaneo 1.9 Ambiente

(1.9L・5AT・336万円)

 

2004年05月15日

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キャラクター&開発コンセプト

Aクラスをサイズアップ+両側スライドドア

バネオはメルセデス・ベンツ初の5人乗りミニバン。メルセデス言うところの「コンパクト マルチ・パーパス・ビークル」だ。欧州では2001年、日本では約2年遅れの2003年10月22日に発売された。

1997年デビューのAクラスをベースに、ホイールベースをぐんと延ばし、天井も思い切り高くして、さらに両側スライドドアを付けた、というのが大まかな内容。それによって、コンパクトなボディサイズと後席の広さ、広い荷室スペースを両立した。分かりやすく言えば、ベンツが作ったルノーカングー、もしくはトヨタファンカーゴだ。海外にある3列シートの7人乗り版なら、トヨタ・シエンタに近いと言ってもいいだろう。

価格帯&グレード展開

1グレード、336万円のみ

グレードは1種類で、1.9リッター「アンビエンテ」(336万円)の右ハンドル、5速ATのみ。電動サンルーフとシートヒーター付き本革シートをセットオプション(34万6500円)で用意する。

あえて言えば、ライバルは今年(2004年)4月に発売されたVWのゴルフ・トゥーラン(1.6リッター:271万9500円、2.0リッター:313万9500円)か。次期ゴルフ(ゴルフ5)べースのミニバンだが、こちらは3列シートの7人乗りで、ドアは普通のヒンジ式。国産車でこの300万円前後だと、エスティマやオデッセイなど、1~2クラス上のミニバンが余裕で買える。

パッケージング&スタイル

クラス破りの数値

ボディサイズは全長4205mm×全幅1740mm×全高1845mm。Aクラスより590mm長く、20mmワイドで、255mmも背が高い。依然コンパクトだが、背の高さはホンダ・ステップワゴン並み。ファンカーゴより100mm以上も高く、ルノーカングーより35mm高い。さらにホイールベースの2900mmは、なんとトヨタアルファードと同じだ。コンパクトながらクラス破りの数値を誇る。

 

一方、大胆なパッケージングの割に、見た目の印象は地味とも言える。Aクラスは今でも路上でシゲシゲと眺めてしまうほど個性的だが、バネオはその特徴だった切れ上がったサイドウインドウや短躯を失ったことで、ミニミニバンが多い日本の路上で目立たなくなってしまった。正面から見れば、間違いなくAクラスなのだが。

ほぼAクラスの運転席まわり

運転席の眺めはまさにAクラスそのものだ。ダッシュボード、ステアリング、スイッチ、メーターなどAクラスとほぼ同じパーツで、つまり高級感はない。質感は現行ヴィッツに負けそうなほどで、300万円以上のクルマには到底思えないというのが正直なところ。足を前に投げ出す「目線の高いスポーツカー」風のポジションはバネオになっても相変わらず。Aクラス同様、パワーウインドウスイッチはセンターコンソールにあり、これも慣れが少し要る。

ワンボックス並みの荷室

スライドドアは重めだが、ファミリーユースからビジネスまで便利だ。もちろん、電動ではない。後席足下が真っ平らなのは、Aクラス譲りだ。

 

荷室のサイドウインドウには、電動で隙間があく「パワーベンチレーションウインドウ」を採用。大型ミニバンのビアノと同様、スライドドアの窓がはめ殺しなったことの、せめてもの罪ほろぼし?か。前席センターコンソールのスイッチで開閉できる。

 

バネオ最大のアピールポイントが、荷室の広さ。真四角の空間は、見るからに使いやすそうだ。リアシートはAクラス同様、2:1の分割で前にタンブルできるほか、工具なしで取り外せる。二重フロアなので床は少し高めだが、完全にフラットで隙間がなく、ワンボックスの荷室のようにも見える。リアサスの張り出しがまったくない点がいい。

 

天井の高さも十分で、特にリア開口部の天地が実測で110cmほどあるのは、自転車のつみ降ろしにたいへん便利だ(ここが1メートルを切ると自転車を斜めにする必要があり、やりづらい)。ただし、奥行きは後席をタンブルさせた状態で130cm弱。

さらに長モノの積載に特化するなら、かさばる後席は取り外したいところだ。その時の最大容量はAクラスの1700リッターより大幅アップの3000リッター。スライドドアは、こうしたカーゴ用途にも便利だ。

基本性能&ドライブフィール

キビキビ走る

エンジンはAクラスの最上級グレード「A190アバンギャルド」と同じ1.9リッターの直列4気筒(125ps、18.4kgm)。トランスミッションも5ATと、駆動系はAクラスと全く同じだ。違うのはA190より270kgも重い1430kgの車重で、パワーウエイトレシオは11.4kg/psと数字上の余裕はない。しかし、実際には5速ATが小刻みに回転をつないでパワーをうまく引き出すから、空荷という条件ならけっこうキビキビ走る。初期のAクラスのようなATのギクシャク感は当然もうない。

メルセデス流に安全重視

サスペンションは固めだが、長いホイールベースと重めの車重で乗り心地は悪くない。国産車のような柔らかさはないが、フラット感はAクラスより優れるところだ。エンジン音やロードノイズも耳障りではなく、ボリュームも国産の小・中型ミニバンと大差ないと感じた。

操縦性はまさにAクラス。ステアリングを切った時の反応など、欧州小型車によくあるスポーティさはない。激しいコーナリングを試みると、すぐにESCのパワー制御やブレーキ制御が入って車速を落としてしまう。Aクラスの転倒問題はもう6年も前の話だが、かなり安定指向に振られたのはバネオも同じ。いずれにしても、重心の高さを感じさせない安定感があり、その点ではメルセデスの安全哲学に沿ったクルマだ。高速走行は法定速度+アルファしか試せなかったが、先を急がなければ長距離も楽にこなせそう。参考までに、欧州の1.9リッター・5AT仕様の最高速(メーカー発表値)は177km/h。

ここがイイ

便利なスライドドア、タンブルと取り外しが選べるリアシート、フラットなフロア(荷室)の組み合わせ。特に、日本車にはない取り外し式シートは、後席不要の使い方をする一部の人には絶対的なメリット。

ここがダメ

昔から評価の低いカセットステレオをいまだに採用。音はやっぱり悪かった。

本国にある3列シート仕様を用意していないこと。取り外せる3列シートのコンパクトカーは他にないのだから、販売的なパワーになり得たのでは。

総合評価

便利な小型車としてはかなり理想的な作りで、ガシガシ使い回すにはかなり便利そうだ。特に、機能美とも言うべきシンプルな内装の道具感がたまらない。しかし、それ以外の部分では特に心をくすぐられるところはない。逆にベンツというブランドや高価格が、ガシガシ使うことをためらわせる。

走りは過不足なくごく普通だし、日本車にあるような痒いところに手が届くユーティリティもないから、RV(レクリエーショナルヴィークル)としてはかなりプリミティブといえるだろう。そして何よりその価格が、ベンツの新車というブランド性に価値を見る人以外には、あまりに高い(もちろん同じベンツのAクラスと比較すればお値打ち感はあるのだが)。

そうしたハードウェアより、ベンツというかダイムラー・クライスラーの姿勢に「迷い」を感じてしまう。フルラインナップメーカーとして生きていくために、スマートやAクラスといった優れた小型車を持ったダイムラー・クライスラーも、RVにはどうにも弱い。ミニバンのビアノもマルチパーパースカーのこのバネオも、基本的にはビジネスバンだ。ことRVに関しては、やはり日本のメーカーが一歩も二歩も先んじている。しかしそこへ切り込んでいかないと、今後フルラインナップメーカーとしては辛いだろう。ダイムラー・クライスラーはそのあたりの結論が出ていないように思う。

三菱から手を引いたことも、これに絡む誤算になるかもしれない。そうしたRVは三菱あたりに作らせるつもりだったはず。Mクラスよりパジェロの方がハードウェアとしては上に思えるし、コルトをベースに次期バネオを作った方が、よりRVらしいものが仕上がる。RVはやはり今後も世界の自動車市場で主流になると思うし、そこをメルセデスのブランド力でどう攻めるかも、今ひとつはっきりしないように感じてならない。そこで今回は最後に、英国CAR誌のひねりの効いた締めを紹介して終わりたい。「車名の通り、5分の3はバン(VAN-EO)」。

試乗車スペック
メルセデス・ベンツ バネオ 1.9 アンビエンテ

●形式:GH-414700●全長4205mm×全幅1740mm×全高1845mm●ホイールベース:2900mm●車重(車検証記載値):1430kg(F:800+R:630)●エンジン型式:1669●1897cc・直列4気筒SOHC・横置●125ps(92kW)/5500rpm●18.4kgm(180Nm)/4000rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/54L●10・15モード燃費:10.6km/L(メーカー参考値)●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:195/50R16(DUNLOP SP SPORT 2000)●乗車定員:5名●価格:336万円(試乗車:336万円 ※オプション:ー)●試乗距離:約100km

公式サイトhttp://www.mercedes-benz.co.jp/showroom/passenger/vaneo/index.html

 
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