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メルセデス・ベンツ ML320新車試乗記(第55回)

Mercedes-Benz ML320

 

1998年12月28日

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キャラクター&開発コンセプト

メルセデス初の北米生産となるプレミアムSUV

メルセデス(ダイムラークライスラーだがこの名称で統一)はかねてからGクラス(ゲレンデバーゲン)なるフルタイム4WDのヘビーデューティー型クロカンを投入しているが、新Mクラスは同様にフルタイムの高性能4WDを備えながらも、Gクラスよりもずっと日常的なキャラクターに仕上げている。すなわMクラスは同社にとって初のSUVとなるわけだ。5ドアのボディに3.2リッターV6エンジン(北米仕様は4.3リッターV8も用意される)を搭載し、レンジローバー、リンカーン・ナビゲーターなどをライバルとするプレミアムSUVとして位置づけられる。このMクラスは北米アラバマ州で生産されているので、メルセデス車とはいえ原産国はアメリカ。これはフルラインナップ化を目指すメルセデスがSUV人気のアメリカで、強力な価格競争力を獲得するためだ。

価格帯&グレード展開

豪華仕様で550万円

日本仕様Mクラスは、3.2リッターV6エンジンに5速ATを組み合わせたML320のワングレードのみ。もちろんハンドルは右だ。アメリカではオプション扱いとなる4ESPや本革シートなどの快適装備を満載した、いわば最高級豪華仕様にまとめられている(いつもの手法だが)。オプションはサンルーフ、前席シートヒーター、CDチェンジャーぐらいで、これで車両本体価格は550万円。メルセデスにしては実に安い。何せセダンより安いという逆転現象が起きているのだから。アメリカ製のMクラス、スペイン製のVクラスと、生産国とRVを理由に安売り作戦に出るメルセデスはなかなか商売上手。セダンは値を下げないからブランドイメージは保たれるのだ。

パッケージング&スタイル

簡素でスマートなスタイルだが、車重はかなりヘビー

ボディサイズは全長4600mm×全幅1835mm×全高1820mm、ホイールベースは2820mm。ちなみにトヨタ・ハリアーは4575mm×1815mm×1665mmなので、背の高さを除けば、ほぼハリアークラスの大きさといえる。しかしハリアーがウインダムベースのモノコックボディを採用しているのに対し、MクラスはSUVと称しながらも、本格クロカン並に頑丈なラダーフレーム構造を採用している。このため、車重は1970kgとヘビー級。そうとは感じさせないのは、やはり曲線構成からなるシルエットによるものだろう。モダンに仕上げながら華美にならず、カジュアルな雰囲気を持っていながらもメルセデスらしい押しのある存在感を醸し出している。

多用される樹脂パーツにデッカイ収納式ドリンクホルダー、いかにもアメリカくさい内装

最低地上高は240mmも確保されている。フレームゆえの高さもあり、さらにドア開口部の回りにはグリップが付いていないこともあって、乗り降りは決して楽ではない。反面、高いドライビングポジションとなるので見晴らしはいい。

本革内装に、上半分がブラックで、下半分がボディカラーによりベージュかグレーとなるインパネ。センターにはウォールナット・ウッドパネルが奢られ、ドアノブはメッキ。一見、豪華に仕上げられているものの、やはりこのMクラスにも最近のメルセデスおコスト重視の考えをハッキリと見ることができる。ダッシュはかなり樹脂っぽいし、従来、インパネ脇部にあったライトスイッチは大きなドリンクホルダー(太缶・細缶ともにぐらつくが、小型ペットボトルはちょうど良かった)となり、シフトゲートの刻みは左ハンドル用(すなわち右手操作用)のまま、上品さに欠けるスイッチのタッチ感、ボスンッ! ではなくバタンというドアの閉まり音など、Cクラス、Eクラスまではなんとか我慢できた古くからのメルセデス・オーナーだと、もうちょっと納得できないだろう。とはいえ、これで何か不都合があるのか、といわれるとそうでもなかったりするわけで、逆に新鮮なメルセデス車という感じさえしてくる。メルセデスではなくダイムラークライスラーのクルマだと考えれば納得せざるを得ない。

考えられた機構で一応はフルフラットのカーゴスペースも出現する

後席の居住性はホイールベースが2820mmもあるために、ニースペース・ヘッドクリアランスともにたっぷりとしている。だが、3座のため、2人で乗るとちょっと空間が変。中央席にアームレストが備わっておらず、端っこに座った感じとなる。シートアレンジはかなり工夫された機能を備えている。クッション部は2対1の分割で80mmシートスライドが可能。そのまま沈み込ませることができ(ワゴンRなんかと同じ)、段差を埋めるボードがあるので、ほぼフラットなカーゴスペースが出現する。バックレストは3分割式。慣れないとレバー操作が結構難しい。

基本性能&ドライブフィール

2トンの巨体をグイグイと引っ張る図太いトルク、静かな室内

搭載エンジンは218PS/5600rpm、31.6kgm/2700~4800rpmを発生する3.2リッターV6SOHC。吸気側2、排気側1の3バルブ方式を採用する新世代V型で、基本的にはE320に搭載されるものと同じだが、約2トンものボディを持つML320用に、低回転重視に改良が施されている。これに組み合わせられるミッションは5速ATで、ウインター/スポーツモードが備わっていない分、ドライバーの運転特徴に応じて最適なシフト特性を実現する学習機能付きとなっている。 発進から80km/hぐらいまでという日常域での加速は、車重2トン弱というボディをグイグイと引っ張りあげ、全くストレスを感じさせないもの。しかも高回転まで回すことはないので、エンジン振動や騒音は静かな印象だ。パワステはメルセデスらしくやや重め設定となっているが、旋回が大きくなるにつれてダルな印象だ。この辺りはアメ車という感じ。とはいってもフワフワ感はなく、背が高く重心位置が高くても大きく左右に揺れしない、足がしっかりと地に着いているという安心感がある。ゆったりとした重厚感のある乗り心地は快適な柔らかさがあり、クロカン四駆の硬さはない。荒れた路面や段差による振動をしっかりと足回りで吸収してくれ、目に見えないところには金をかけていますといった感じで、誰もが快適だと思うだろう。

2トンという車重に対して200馬力強というパワーでは絶対的な力はないから、強力な中間加速は望めない。走行状況によってはアクセルを奥まで踏み込んでもキックダウンしないときがあるので、その時は少し不満を抱いてしまうだろう。とはいえ高速でも巡航中は150km/h位までの巡航は静かで快適。風切り音も少なく、直進性も十分。ワインディングでも驚く程ロールせず、これまたクロカン四駆とは思えない走りだ。

本格派オーフローダーの資質も備える

駆動方式はフルタイム4WD。ローレンジの切り替えはインパネのボタンで操作するが、デファレンシャルロック機構やビスカスカップリングを備えていない。その代わりABSとASRを連携させて駆動力を確保させる4ESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)なる最先端デバイスを盛り込んだのが、Mクラスの目玉技術だ。これは4輪のブレーキを個別制御して、滑りやすい路面や車輪が浮いたとき各輪が空転するのを止め、グリップしているタイヤで駆動力を伝えようとするものだ。このように外観も内装もカジュアルなSUV路線の優しい印象を与えているのだが、オフロードを走れば、予想外に本格的四駆車の力量を見せつけるだろう(試乗はしていない)。Mクラスはカジュアル路線のSUVではなく、サバイバルスーツを着たSUVなのだ。

ここがイイ

550万円という価格は欲しい人にはやはり安いと言えるのでは。ランクル100の一番高いヤツが515万円、レンジローバーの一番安いヤツが525万円なので、そのあたりで比較するとなかなか上手い値付けといわざるを得ない。500万円以上の価格は普通の人にはピンとこないが、現在の受注を見る限り(待ちは4ヶ月ほど)欲しい人以外にはかなり手ごろな価格に映っているようだ。VクラスやAクラスは価格相応という感じだったが、Mクラスは500万円オーバークラスの高級感は十分維持している。

ここがダメ

シート高が160cm台の日本人にはちょっと辛い。フロントもリアも、いっそもっと高い方がかえって乗り込みやすいだろう。質感に関しては、ダメといったら全てを否定することになってしまう。

総合評価

98年はV、M、Aクラスと投入され、メルセデスもいよいよフルラインブランドとなってきた。これからは古き良き高品質メルセデスを作っていては当然生き残れないわけで、工業製品としてある程度妥協したクルマをブランド力で売る時代に入ったわけだ。Mクラスもその代表車種といえる。

昔のメルセデスは良かったなどと言い出す人もいると思うが、メルセデスにしてみればそういう人が高級新車をバンバン買ってくれるのか、といいたいところだろう。最高級のSクラスユーザーの多くは、もし新Sクラスが旧Sよりコストを追求した作りであったとしても、それを理由に買い替えないということはないと思う。そこまでこだわってSに乗っているのでなく、やはり最高のブランドを求めて乗っているという人が大半だろう。ポルシェほどの趣味性を持たないメルセデスならこの路線は間違いではないと思う。クルマ好きがそのあたりを納得できない気持ちは分からないでもないが、メルセデスが無くならないことが第一と考えて納得するしかないだろう。

 

公式サイトhttp://www.mercedes-benz.co.jp/showroom/passenger/m_class/

 
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