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ホンダ MDX新車試乗記(第262回)

Honda MDX

(3.5リッター・485万円)

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2003年03月28日

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キャラクター&開発コンセプト

トラックがダメでも、SUVなら

アメリカで最も新しくホットな市場。それが高級SUVというセグメントだ。ハリアー(レクサスRX)が発掘した鉱脈は、メルセデスのML、BMWのX5、ポルシェ・カイエン、ボルボXC90(日本でも今夏発売)といった多くのフォロアーを生んだ。他にも、日産がインフィニティFX45/35を北米に投入する。

アメリカに深く根付くホンダが、みすみすこの市場を逃すわけにはいかない。もともとライトトラック用の開発・生産ノウハウを持たないホンダは、乗用車販売に専念してきた。が、モノコックで乗用車ライクなものとなれば得意分野。そこでアメリカのホンダが主導となって開発し、2001年に発売されたのがこのMDXだ。シャシーは北米版オデッセイ(日本ではラグレイド)のものを発展させた新型。3.5リッターV6エンジンはラグレイド用の横置きユニットに近いが、大幅に設計変更された新開発だ。

2年遅れて、日本でも発売

アメリカでは大ヒット中のMDXだが、完全にアメリカ向け商品だったゆえ日本での注目度は低かった(並行輸入はそれなりにされたようだが)。にも関わらず、この時期になって日本で発売となったのは、発表の10日前に発売されたトヨタの新型ハリアーを牽制する意味もあったのだろうか。

コンセプトは「あらゆる路面状況での高いコントロール性能と、上質なゆとりと快適性をあわせ持つ『プレミアムSUV』」という。「リアルタイム4WD」とホンダが呼ぶ簡易4WDしか持たなかったホンダにとって、初めて本格的な電子制御トルク可変式4WDを備えたクルマでもある。

MDXはカナダ・オンタリオ州で生産される輸入車。とりあえず2003年モデルは1700台限定となる。485万円という価格、1955mmという全幅もあって、MDXの国内導入は「アメリカではこんなの売れてますけど、良かったら一つどうですか」といった、実験的な意味合いもあるだろう。扱いはホンダ・ベルノ店。

価格帯&グレード展開

北米における最上級グレード

グレードは「エクスクルーシブ」と呼ばれる1種類(485万円)。フルタイム4WD、5速AT仕様となり、ナビや後席用TV・DVDシステム、本革シートなどを標準装備する豪華版。ボディカラーは3色。

アメリカでは3万5700ドル(約430万円 ※1ドル:120円で計算)から始まるMDXだが、ナビやDVDシステムを装備する最上級グレードは4万2000ドル(約500万円)と、国内価格とほぼ同じ。

価格、サイズ、希少性から言って、国内でのライバルは輸入SUVだ。BMWのX5(648万円~)、メルセデスのML320(520万円~)、GMのトレイルブレーザー(369万円~)、そして今夏発売のボルボXC90(おそらく500~600万円台)などだ。

パッケージング&スタイル

国産ブランド最大の1955mm

力強さと、いざという時の俊敏性を持つ動物「サイ」をテーマにしたというデザインは、ちょっと昔のホンダ車っぽく、コンサバで上品なデザイン。これは北米では高級なアキュラ・ブランドで販売されるためだ。リアは典型的なアメリカンSUV風で、日本ではやや平凡に見える。

ボディは全長4790mm×全幅1955mm×全高1820mmと巨大。特に全幅1955mmは、全てが大きいアメリカにおいても、ワイド感を強調できるサイズだ。ランクル100の1940mmを越え、現行レンジローバーと同サイズとなる。

ホイールベースは2700mmと常識的。いちおうSUVということで、ランプブレークアングルに配慮したと言うが、スタイルやボディ剛性なども配慮した結果だろう。

サンタフェ・スタイル?

室内は「サンタフェ・スタイル」をテーマにしたという。サンタフェはアメリカ南西部にあるニューメキシコ州の州都。サンタフェ・スタイルとは、先住民のアドービ(土壁)建築とスペインの植民地様式が混ざり合った、独特の建築様式を言う。で、MDXの内装だが、日本仕様の室内はグレーもしくは黒系のみ。スポーティ感を強調したかったのだろうが、アメリカ仕様にあるブラウンならもう少しサンタフェっぽかったと思う。

室内クオリティはアメリカでは十分かもしれない。しかし新型ハリアーを見た後では、正直言って見劣りする。ダッシュボードはこのクラスに珍しくハード樹脂。その他、実用上はまったく困らないが、細々したところに485万円のクオリティが感じられない。また、なぜか最近のホンダ車はウッド調パネルの使い方が上手くない(妙にプラスティックぽい)。

滑る革シート

ヒップポイントが低く乗降性は悪くないが、ドアからシートまで遠いので慣れが必要。乗る時はまだしも、降りるときはサイドステップ(オプション)が気になる。前席シートは電動。ステアリングは手動チルトのみだが、ポジション自由度はまずまず。シート形状は悪くない。が、革がツルツルしていて、かなりスリッパリー。

2列目は文句なしに広い。幅があって3人乗車も楽勝。ただし、シート形状が平板なのと、ツルツルレザーのせいで何となく収まりが悪い。後席天井にはDVDシアターシステムを標準装備する。ヘッドフォン(パナソニック製専用品)付き。

3列目は畳んで

北米でのMDXの成功は3列目シートの存在があったという。このサイズで3列シートを持つSUVは、発売当時は少数だったからだ。2700mmのホイールベースに7人乗りの空間を持ち込んだのは、パッケージングが得意なホンダならでは。

しかし、その3列目は、まず乗降性が良くない。ヘッドルームと横幅はあるが、足元スペース(2列目は乗降時以外スライドしない)と座面高さが足らず、緊急用の範囲を越えない。シートファンクションもやや面倒だ。7人乗車時に208リッターしかない荷室を広げるため、普段は床下に畳んでおくことになるだろう。

また、細かいところだが、485万円という高額車ゆえ、HIDヘッドライトもぜひ設定して欲しかった。

基本性能&ドライブフィール

案ずるより運転するが易し

一番心配なのは1955mmの全幅だ。5ナンバーのクルマより、26センチもワイドなわけで、同じ感覚で左に寄せればタイヤは完全に路肩に落ち、ドアミラーとフェンダーはガードレールに間違いなくタッチしてしまう。

が、それさえ忘れなければ、取り回しは悪くない。最小回転半径は5.7メートルと小さく、実際それほど困らない。心配のし過ぎで、ギリギリまで寄せられない嫌いはある。しかし、この手の大型車を選ぶ人ならすぐに慣れるだろう。

やっぱりエンジンのホンダ

最大の美点は3.5リッターV6「J35A」ユニットだ。同じ3.5・V6のラグレイド用から、大幅に設計変更された新開発エンジンだ。シングルカムの、いわゆるSOHC・VTECとなる。ちなみに3.5リッターV6と言えば、レジェンドもそうだが、あちらは縦置きで「C35A」。基本設計は10年以上前になる。

キーを回した瞬間、「あれ? エンジンが掛からない」と思ったのは、アイドリング振動とノイズレベルが驚くほど低かったから。ステアリングに伝わる振動はほぼ皆無。トヨタのV8に匹敵するかも、と思わせる。

でもって、260馬力を誇るアメリカ製J35Aは、パワフルで、滑らかに回り、音がいい。2030kgとハリアーより200kg以上も重く、本格四駆のランクル・プラドよりもさらに重いボディを、低速からグイグイと加速する。日産のVQ35DEのような、問答無用のトルク感こそ無いが、高回転域(と言っても6500回転でレッド)のスムーズさと、クォーーーンという快音はホンダならでは。さすが、F1時代からV6造らせたらホンダは世界一? DBW(ドライブ・バイ・ワイヤー)の設定か、空ぶかししても5000回転以上は回らないというのは初めての経験だ(エンジンに負荷がかかるため、ホントはやってはいけません)。

ただ、新型の5速ATを採用したにも関わらず、シフトノブがジグザグゲートでもシーケンシャル付きでもなく、普通のストレートタイプなのはなぜだろう? 2速で120km/hまで伸びるから、せっかちなシフトチェンジは必要ないが。しかも、D3はあるがD4がない。つい「4速ATだったっけ」と考え込んでしまった。それでも、5速があるおかげで高速走行はお手の物。100km/h巡航は約1800回転で難なくこなす。スピードリミッターを効かせるのも造作ない。

重量を忘れる

ハンドリングはシャープ。そこそこのペースなら、滑らかにコーナーをトレースして、2030kgを忘れさせる。フロントはストラット、リアはホイール内に収まるコンパクトなダブルウイッシュボーン。VSA(ヴィークル・スタビリティ・アシスト)をオフにしても、4WDシステムのせいか、ホイールスピンやトルクステアはほとんど出ない。この「VTM-4」は状況に応じて駆動力を100:0~50:50で前後配分する。つまり、MDXは同車のCR-Vなどと違い、スタイルだけの四駆ではない。フルタイム四駆にまったく力を入れてこなかったホンダにとっては画期的なシステムだ。今後、新型モデルにも採用されてゆく可能性が高い。

オールシーズンタイヤが足を引っ張る

工場装着される17インチのミシュラン「クロス・テレイン(Cross Terrain)」は、SUV用としてアメリカでは一般的。オールシーズンとかマッド&スノーとか言われるものだ。特に、クロス・テレインはほとんどスタッドレスのようなパターンのゴツいタイプ。どちらかと言うとオン/オフ性能より、「アグレッシブ」「ラギッド(無骨な)」「トラック・ライク」といった「ワイルド感」を強調するタイヤだ。

アメリカではセダンを含めてオールシーズンタイヤを装着することが多いので、あまりハンディとはならないが、日本ではそうはいかない。特に、舗装路専用のブリヂストン製ポテンザの18インチを履く新型ハリアーと比べると、分が悪い。まず、細かい突き上げがかなり気になる。乗り心地は基本的に良いMDXだから、ちょっともったいない。ハンドリング面で限界が近付くと、不自然なグニャグニャ感が出てくるのも、このタイヤのせいだろう。ハリアーと同じポテンザを履けば、相当良くなるはずだ。

タコ足よ、さらば

このエンジン、北米向けらしく排ガスの浄化にも力が注がれている。驚きは前後に3本づつ生えるはずの排気マニフォールド(タコ足)がヘッドと一体化して消えてしまったこと。、代わりに触媒がシリンダーヘッドにほぼダイレクトに付く。これはもちろん、触媒温度を早めに上げて、浄化効率を上げるためだ。

10・15モードは7.8km/リッター。同じ3.5リッター・4WDで、100kgほど重いエルグランドとまったく同じ数値。ドライブコンピュータが表示した実用燃費は6.2km/リッター。参考までに、今回の試乗での満タン法による燃費は、206km走行して44リッター(当然、ハイオク指定)と、5km/リッターを割った。このクラスとしては特に悪くない数字だが、米国よりガソリン価格の高い(しかも今後は上昇が予測される)日本で乗るには、なかなか厳しい数字だ。

ここがイイ

トラックのイメージはかけらもみせない仕上がり。SUVは米国ではトラックの部類に入り、米国製のものは実際にトラックベースだったりする。が、モノコックのMDXは乗用車ライクなもの。ハンドリングも加速も巨体を感じさせない軽快さで、なるほどアメリカでは理想的な乗用SUVだと思わせる。

ボディサイズを感じさせない車両感覚が得られるのもよい。デカイんだけど日本の狭い路地でもさほど気にならないのは、見切りがいいから。実際のところ、幅が広くても、全長が長くても、せいぜい20㎝、50㎝の差にすぎず、路上を走る上では実はそう大きな問題ではない、と思う(駐車する上では、かなり気になるが)。5ナンバーフルサイズのセダンと比べたらMDXは見切りがいい分、どっこいどっこいの取り回し性だ。

DVDカーナビは音声認識能力がたいへん高かった。特に練習しなくても目的地を音声で言うだけで設定できるのはやはり便利。また後席の天井に着けられたモニターはダブルチューナーゆえ、前後シートで違う番組が見られ、ヘッドフォンも用意されている。家庭では低価格でプライベートテレビがもてる昨今、クルマの中でもこれくらいのテレビ環境があるとやはり便利だ。

ここがダメ

はっきり書いてしまうが、全体の質感と仕上げは、例えばハリアーと比べるとずいぶん低く感じられる。これはメイド・イン・ジャパンとメイド・イン・USAあるいはカナダの差としか言いようがない。トヨタ車でも米国生産車にはそんな印象があるし、初期のメルセデスMクラスにも感じたことだ。

スタイルもかなり凡庸に感じられる。このサイズ、このコンセプトなら存在感というか、オーラがもうちょっとあってもいいと思うのだが、なんだか上品な形で、街中では目立たない。米国ではエグイSUVが多いだけに逆に目立ち、アキュラブランドの上品さゆえ売れている(年間6万台)のだろうが、日本ではちょっと厳しいかも。

見切りがよく、車両感覚がつかみやすいから要らないともいえるが、できればハリアーのようなモニターカメラが欲しいところ。リアはバックモニターがあるが、フロントにもカメラがあるとさらに使いやすいと思う。そしてフロントモニターをつけ、無粋なフロントフェンダーミラーを無くす、という働きかけを所轄の役所にしてもらいたかった(ハリアーは一応してみたようではある)。安全装備だけに誰も表だっては言わないが、フェンダー上のミラーは著しくスタイリングを損ねていると思う。

総合評価

米国での発売以来2年を経て日本へ導入し、しかも年間1700台程度の販売という意味では、ハリアー対策と受け取られても仕方ないところ。というか、RVのホンダとしてはそれくらいの上級移行見込み客はいるはず、ということだろう。実際、走りよし、広さよし、装備よし、しかも一応7人乗りとなれば、ホンダファンの少しお金に余裕ができたお父さん(米国では年収8万ドル層ねらい・日本でも1000万円程度の層でないと購入は難しいだろう)の代替車としては、気になる存在だ。むろん購入してからも大きな不満なく乗れるはずだ。

米国ではミニバンがあまりにファミリーぽいということやトラック文化(20数年前の若者にとって、トラックが憧れのクルマであったことは映画バック・トゥ・ザ・フューチャーあたりを見ればよく分かる)もあって、40代あたりにはSUVが大人気のよう。ポルシェのカイエンに代表されるように、世界の各メーカーはSUVこそが次の主力車種と見ている。その流れの中にアキュラMDXやトヨタ・ハリアーあたりがピタリとはまったわけだが、日本では10年ほど前にブームとなった「四駆」のイメージために、SUVが米国ほどポジティヴにとらえられていない。米国のようにポストミニバンとはなり得ないだろう。

MDXも四駆ブームの頃の感覚では、「夢のクルマ」だ。走りは俊敏、ワインディングすら楽しめ、高速巡航は快適そのもので、静粛性も乗り心地も文句なし。さすがに今回は試さなかったが、4WDシステムの変更により悪路の走破性も悪くはないだろう。ナビを筆頭に快適装備も十分。こんなクルマがあの頃あったら、大ヒットしたに違いない。しかし、今の日本ではあくまで趣味のクルマ(月に150台ほどの販売台数は、対極にあるスズキツインと大差ない)で、好きな人が乗るだけ。MDXに乗っていると、日本市場ではいいクルマを作っても売れない、次に売れるクルマが見極められないという、メーカーの悩みがそこはかとなく伝わってくる。

試乗車スペック
ホンダ MDX(3.5リッター)

●形式:UA-YD1●全長4790mm×全幅1955mm×全高1820mm●ホイールベース:2700mm●車重(車検証記載値):2030kg(F:1170+R:860)●エンジン型式:J35A●3471cc・SOHC・4バルブ・V型6気筒・横置●260ps(191kW)/5800rpm、35.2kgm(345Nm)/3500rpm●10・15モード燃費:7.8km/L●タイヤ:235/65R17(ミシュラン CROSS TERRAIN)●価格:485万円(試乗車:530.7万円 ※オプション:スポーツグリル 5万円、サイドステップボード 8.8万円、ウッドシフトノブ 3.5万円など) ●車両協力:本田技研工業株式会社

公式サイト http://www.honda.co.jp/MDX/2006/index.html

 
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