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メルセデス・ベンツ A180 ブルーエフィシェンシー スポーツ新車試乗記(第689回)

Mercedes-Benz A 180 BlueEFFICIENCY Sports

(1.6L 直4ターボ・7速DCT・335万円)

3代目に進化した
メルセデス最小モデルは
同姓同名の別人だった!

  

2013年03月29日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

従来型とは別モノに進化


「コンセプト Aクラス」(2011年)。東京モーターショーにて

メルセデス・ベンツの最小かつエントリーモデルであるAクラスは、1997年にデビュー。今回の新型(W176型)は3代目にあたり、2012年のジュネーブモーターショーで発表、欧州では同年秋に、日本では2013年1月17日に発売された。

初代Aクラス(W168型)や2代目Aクラス(W169型)は、二重フロアを備えたサンドイッチコンセプトが大きな特徴だったが、3代目は昨年デビューした2代目Bクラスと基本設計を共有する新型FFプラットフォームを採用。クーペのようなスタイリングの「新世代スポーツコンパクト」に生まれ変わり、アウディA3やBMW 1シリーズなどと同じアッパーCセグメントの本流に加わっている。

新規顧客層にはアニメで訴求

 

「NEXT A-Class」キャンペーンのメインイメージ
(photo:メルセデス・ベンツ日本)

新型Aクラスがターゲットとするのは、今までメルセデス・ベンツを縁遠く感じていた“新規顧客層”。広告戦略では世界的にインターネットが大々的に活用され、日本では事前告知として近未来の東京を舞台にした6分間のショートアニメーション「NEXT A-Class」を制作。映画館やテレビCMで放映されたほか、動画配信も行われて話題となった。アニメ制作は「攻殻機動隊」、「機動警察パトレイバー」などのプロダクション I.G (http://www.production-ig.co.jp/)が手がけている。

■過去の新車試乗記 【Aクラス&Bクラス関連】
メルセデス・ベンツ B180 ブルーエフィシェンシー (2012年7月更新)
メルセデス・ベンツ B170 (2006年5月更新)
メルセデス・ベンツ A170 (2005年3月更新)
メルセデス・ベンツ バネオ (2004年5月更新)
メルセデス・ベンツ Aクラス (1998年10月更新)

 

価格帯&グレード展開

284万円からスタート。主力は1.6ターボ


こちらは先行販売された限定車「Aクラス EDITON NEXT」
(photo:メルセデス・ベンツ日本)

今回日本に導入されたのは1595cc 直4ガソリンターボ(122ps、20.4kgm)の「A180 ブルーエフィシェンシー」と、中間グレードでAMGデザインの外装、AMGホイール、18インチタイヤ、スポーツサスペンション(15mmダウン)などを装備した「A180 ブルーエフィシェンシー スポーツ(Sports)」、そして1991cc 直4ガソリンターボ(210ps、35.7kgm)を搭載する「A250 シュポルト(SPORT)」の3グレード。

日本仕様は全車右ハンドルで、変速機は「7G-DCT」こと7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)のみ。海外には各種ディーゼル車の他に、6MTもある。

また欧州では今春、AMGが開発した2リッター直4ガソリンターボ(最高出力360ps、最大トルク450Nm)を搭載し、4WDとしたモンスター「A 45 AMG」も発売される予定。


■A180 BlueEFFICIENCY 284万円
■A180 BlueEFFICIENCY Sports   335万円 ※今回の試乗車
■A250 SPORT     420万円

衝突警告システム「CPA」は全車標準


“Mercedes-Benz”のロゴが輝くイルミネーテッドステップカバーも全車標準

全車標準となる装備は、30km/h以上で(30km/h以下ではない)レーダーセンサーで先行車との車間距離を監視し、警告を行うCPA(衝突警告システム)、走行時のドライバーの疲労や眠気を検知して注意を促す「アテンションアシスト」、ECOスタートストップ機能(アイドリングストップ機能)、7インチTFT液晶ディスプレイ(バックモニター付)、7エアバッグなど。

逆に全車オプションになるのは、HDDナビ、地デジ、ITSスポット対応DSRC車載器等をセットにしたCOMANDシステムナビゲーションフルセット(17万6400円)。そして斜め後方の死角を監視するブラインドスポットアシスト、全車速追従走行を行うディストロニック・プラス、衝突に備えてシートベルトの巻き上げ等を行うPRE-SAFEをセットにしたセーフティパッケージ(17万円)など。

 

パッケージング&スタイル

全長は400mm以上長く、全高は160mm低くなった


フロントデザインは現行のSL、CL、CLS、SLKに通じるもの

ボディサイズは先代の2代目Aクラスに較べて、全長は400mm以上、ホイールベースは130mmも長くなり、全高は一気に160mmも低くなった。同じ車名のまま、ここまで劇的にボディサイズが変わるのは珍しい。主なライバル車と較べても、今やAクラスが最も低い部類で、兄弟車の現行Bクラスと較べると、全高は100mmほど低くなる。

 

ボディカラーは全9色。写真はコスモスブラック

この低さで手に入れたのが、いかにもスポーツコンパクトらしいワイド&ローのスタイリング。デザイナーはSLS AMGと同じ(マーク・フェザーストーン)だという。いずれにしろ室内空間はBクラスに任せて、Aクラスでは思い切りカッコ良さを追求した感じ。ファミリーカーっぽさはほとんどない。

 

アルミニウム製ボンネットは、歩行者の衝突を感知するとポップアップして衝撃を和らげる

リアコンビランプにはLEDが多用される

リアオーバーハングの短さに注目。Cd値は0.27(A180の場合)
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
メルセデス・ベンツ Aクラス
(2005-2012)
3850-3885 1765 1585-1595 2570 5.3
VW ゴルフ 7
(2013- ※欧州仕様)
4255 1799 1452 2637
メルセデス・ベンツ Aクラス
(2013-)
4290-4355 1780 1420-1435 2700 5.1
レクサス CT200h(2011-) 4320 1765 1460 2600 5.2
BMW 1シリーズ(2011-) 4335 1765 1440 2690 5.1
アルファロメオ ジュリエッタ(2012-) 4350 1800 1460 2635 5.5
ボルボ V40(2013-) 4370 1785(1800) 1440 2645 5.2-5.7
 

インテリア&ラゲッジスペース

デザインはBクラス風で、空間はクーペ風


写真はレザーARTICOダッシュボード(レッドステッチ入)装着車

インパネ自体は現行Bクラスの雰囲気をおおむね踏襲したもので、スイッチ類、空調吹き出し口(ジェット機のエンジンがモチーフ)、タブレットPCみたいな7インチ液晶ディスプレイなど、共通パーツも多い。ただし空間構成は全く異なり、全高がBクラスより10センチ低い分、着座位置、視点、天井は、拳一つ分から2つ分ほど低くなる。また前後左右のウインドウ天地も狭く、囲まれ感はクーペに近い。

操作系はすべて新世代に


Cクラスなど一部を除いて、メルセデス全車に行き渡りつつあるダイレクトセレクト

操作系はBクラス同様、新世代に刷新された。電子制御シフトレバーの「ダイレクトセレクト」、ナビ関係を一つのコントローラーで遠隔操作できる「コマンドシステム」、電動パーキングブレーキが採用されている。いずれも、慣れると便利。液晶パネルをタッチ操作できないのは残念だが、コマンドシステムでほぼ直感的に操作できる。

 

ポルシェのようなヘッドレスト一体型スポーツシートは全車共通。写真はオプションの電動フルレザー

モニターは全車標準だが、ナビシステム自体は販売店オプション

パーキングブレーキは電動。走行中にレバーを押し続けて緊急制動もできる
 

荷室容量は通常時341~拡大時1157リッター。後席背もたれは、倒しても少し斜めになる

ランフラットタイヤ(MOExtended)は全車標準。スペアやパンク修理キットはない

後席はヒップポイントが低く、背もたれがわずかに立ち気味。囲まれ感もやや強い
 

基本性能&ドライブフィール

あ、この瞬間がメルセデス


「BlueDIRECT」と称する最新のスプレーガイデッド式直噴システムやピエゾインジェクターを採用する1.6リッターターボエンジン

試乗したのは、1.6ターボのB180 ブルーエフィシェンシー。正確に言えば、そのSports(スポーツ)で(A250のSPORT=シュポルトに非ず)、15mmダウンのスポーツサスペンションが装備される。車両本体価格は335万円だが、試乗車はほぼフルオプションで400万円を超える。

Bクラスと較べて視点がかなり低く、おまけに最低地上高は市販車で異例の95mmという少なさ。225/40R18タイヤのサイドウォールも超薄なので最初は気を使うが、少なくともパワートレインの印象は、Bクラス(B180)とほぼ同じ。最高出力122ps、最大トルク20.4kgm(200Nm)といった諸元は現行B180と同じで、車重もAクラスの方が10~20kg程度軽いだけ。

 

2011年の東京モーターショーで展示された1.6ターボ(M270型)と7速DCT

パワーウエイトレシオは1440kg/122ps=11.8kg/psと大人しく、実際のところ加速も数値から予想される通り。今やこのクラスの欧州車で定番の直噴エンジンとDCTという組み合わせだが、予備知識がなければエンジンは自然吸気の1.8リッター、変速機はトルコンATかCVTかなぁ、などと間違えそう。ブンブン走るライバル車(1シリーズやV40あたり)とは、かなり印象が異なる。

それでも発進する時の、もっさり、いや穏やかなレスポンスは、いかにもメルセデス・ベンツ。つまりパワーがないというより、意図的に作られたものだと分かる。

ワインディングではミズスマシの如し


タイヤは全車ランフラット(MOExtended)。試乗車はコンチのスポーツコンタクト5

そんな温厚な性格ゆえ、流れにのって普通に走るのは得意。また信号待ちでは、ほぼ確実にアイドリングストップし、無駄な燃料消費を防ぐ。始動時のショックやノイズも気にならないレベル。

また、ワインディングでの安定感もパーフェクト。FRの1シリーズのような自由自在感こそないが、ダイレクト感のある電動ステアリングを切り込めば、ミズスマシのように軽々と旋回する。タイヤはコンチネンタルのスポーツコンタクト5 SSR(ランフラット)で、この貼りつくようなグリップ性能も大きい。完全にエンジンよりシャシーが速いタイプ。

 

サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアは新型のマルチリンク

ただ、舗装の凸凹したところや段差では、スポーツカーのようにお腹にグイグイくる。ボディの剛性感はめっぽう高く、内装が震えるようなショックは一切ないが、体調が悪い時はちょっと辛いかも。乗り心地が硬めなのは、クッションの硬いシートや超偏平ランフラットタイヤのせいもありそうだが、最低地上高も含めて、このスポーツサスペンション仕様は思い切ったセッティングになっている。

100km/h巡航時のエンジン回転数は約1800回転。この回転域だと少々非力だが、それゆえに燃費は良さそう。ハイスピード域の直進安定性、フラット感、安心感は文句なしで、Cクラスに遜色ないかも。静粛性についてはクラス相応に、ロードノイズや風切り音が速度に比例して高まるように感じられた。

全車標準の「CPA」で衝突警告


メーター上部の表示が、CPAが作動中であることを示す

全車標準のCPA(レーダー型衝突警告システム)は、約30km/h以上で走行中、準ミリ波レーダーで前方を監視し、2.6秒以内に先行車に追突する可能性が生じると、光と音でドライバーに警告するもの。30km/h以上とあるように、低速域ではなく、高い速度域での追突等を防ごうというものだ。

また、CPA作動時にはブレーキ制動力を自動的に補う「アダプティブブレーキアシスト」が作動するが、これは他社で最近増えてきた自動ブレーキではなく、またメルセデスの上級モデルにあるPRE-SAFEブレーキとも違い、ドライバーより先にクルマがブレーキを掛けることはない。なお、このCPAによる警告は試乗中に一度だけ、先行車が急ブレーキを踏んで車間が急に縮まった時に作動した。

また、セットオプション(17万円)に含まれる「ディストロニック・プラス」を使えば、追従走行も可能。全車速対応で、停止から再発進(アクセル操作をきっかけに追従走行を再開)まで行なってくれる。また、それとセットの「ブラインドスポットアシスト」は、走行中に斜め後方の死角を準ミリ波レーダーで監視。試乗中、斜め後ろに迫ってきた原付バイクを捉えた時は、ドアミラー内のインジケーターが赤く光って警告してくれた。

試乗燃費は9.1~12.6km/L。JC08モード燃費は15.9km/L

今回はトータルで約180kmを試乗。参考までに試乗燃費(車載燃費計で計測)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が9.1km/L。一般道を大人しく走った区間(約30km×2回)が12.0km/L(郊外、昼間)、12.6km/L(郊外、夜間)だった。いずれもエコモード(エンジン始動時のデフォルト)による数値。

JC08モード燃費は15.9km/L。実用燃費はおおむね、先々回試乗したV40(試乗燃費9.2~13.8km/L、JC08モード:16.2km/L)と同じくらいかなという印象。

 

ここがイイ

メルセデスらしさ。取り回しの良さ。走りの良さ

FFながら、「まごうことなきメルセデス・ベンツ」の運転感覚。10年以上前のFRメルセデスから乗り換えても、さほどの違和感を感じないだろう。ただし、そういう人の場合、コラムにある電子制御シフトレバーだけは最初驚くはずだが、これら新しい操作系や大画面モニターは、伝統的なメルセデスらしさの中に挿入された新しき芽。従来の「シフトレバー」、足踏みパーキングブレーキ、埋込式のナビモニターなどは、これから急速に過去のものになっていくはず。

最小回転半径がいかにもメルセデスらしく5.1メートルと小さく、小回りが効く。大画面に映されるバックモニター(パーキングアシストリアビューカメラ)は全車標準だし、試乗車にはメルセデスお得意の、LEDインジケーターとアラームで障害物への距離を知らせるパークトロニックが前後についていて、取り回しは容易だった。フロントバンパーの低さだけはちょっと心配だが。

いかにも俊敏という演出はないが、実は結構速いこと。エンジンは数値上たいしたことないが、がっしりしたボディと適切な変速プログラムにより、不足のない走りを楽しませてくれる。ダウンサイジングされながらも、メルセデスらしい重厚感があるし、価格設定もメルセデスでありながらもライバル車に十分対抗できる。(価格設定時の)円高の恩恵かもしれない。安全デバイスも必要十分なだけ用意されている。

ここがダメ

スポーツサス仕様の乗り心地

スポーツサスペンションの「お腹にくる」乗り心地や、最低地上高の少なさ。あと、いわゆるハイバックシートは、試乗車のものがレザーだったせいか、クッションが硬めで、やはり乗り心地に影響している感じがした。もうちょっと普通のシートでいいと思う。後席シートも背もたれが立ち気味で、少し調整できるといい。

安全哲学や設計思想の違いかもしれないが、ボルボのシティ/ヒューマンセーフティやスバルのアイサイトなどのような衝突被害軽減ブレーキ(プリクラッシュブレーキ)を備えていないこと。最近ではVWのup!やダイハツの軽も30km/h以下での自動ブレーキ機能を備えるので、Aクラスにもあると良かった。

総合評価

アニメのAクラスはカッコイイ、のか?

日本では大御所である新型ゴルフの導入を控えて、このクラスの欧州車は大盛り上がりだ。どのクルマも素晴らしい出来を競い合っている。購入者には若年層だけでなく、高齢者のダウンサイザーもいるから、この先も市場は拡大していくだろう。ただ、なんだかんだ言って、400万円のクルマとなるこのクラスの欧州車を買えるのは、それなりに可処分所得のある人だけ。クルマの出来として蚊帳の外に見えるのは日本車だが、200万円以下で売ろうとすれば、差が出てしまうのは致し方ないところか。

さて、今回のカッコイイAクラスに関しては、昨年末からのNEXT A-Class キャンペーンhttp://next-a-class.com/animation/ に触れずにいられない。以下のアニメである。

・NEXT A-Class https://www.youtube.com/watch?v=EQq6Z4IowfY
・メイキング https://www.youtube.com/watch?v=tdsCOEe6MS4
・TV-CF https://www.youtube.com/watch?v=e0InsVhJ6os

 

映画「ブレードランナー」のような近未来都市を暴走(まさに暴走)するAクラスは、カッコイイ。のか? お前の感性がズレてると言われるかもしれないが、このストーリーに出てくる24歳女子、34歳謎の人、29歳フリープログラマーというあまりお金の無さそうな3人の若者(?)に、Aクラスはどうにも似合わないという印象が拭えなかった。念のため、運転免許を持つ東京在住20代、3名のアニメ好きに意見を聞いてみると、アニメの出来は素晴らしいという意見は共通だったが、3人ともお金がないこともあってか、共感とか、クルマが欲しくなるといったことはなかったようだ。アニメの雰囲気としては、いわゆるオタク系より貧乏サブカル系の若者、あるいはリア充系の意識が高い若者に受けそう、などという意見も。トヨタやスバル(富士重工)もアニメは手がけているが、スバルのものなどは実にオタクっぽい(クルマは出てこないし)。それと比べると分かりやすい分、海外(特にアジアか)でのウケはよさそうだ。たぶんそのあたりを意識して作られたのだろう。

ということで、新型Aクラスの若者向け事前プロモーションは、リッチではない日本の若者に、いまいち響いていないように思えるのだが、それでも可処分所得の高い若者も少なからずいるから、そういう人には刺さったかもしれない。ただ、個人的にはどうもあの暴走を実車(アニメだが実際にあるクルマ)がやるっていうのは、今ひとつ素直にいいとは言いづらい……。自分の中のカッコイイというイメージとはズレている、などと思いながら試乗してみると、実際のAクラスは見事にメルセデスしていて、オジサンとしてはちょっと欲しくなったりした。

乗ればいつものメルセデス

軽く走らせてみると、アニメのように走りが鋭い印象はなく、出だしのもっさり感、妙に深いアクセル位置、というあたりで、あ、こりゃいつものメルセデスだなと思ってしまう。キーレスゴーはないので、従来通りのキーをイグニッションに差し、セルを回すという作業が必要だし、シートの調整スイッチも、電動となったパーキングブレーキのレバー位置もまったくメルセデスの伝統通り。セカンド発進かと思うほど力のない出足も伝統だが、踏めばそれなりに速いし、ワインディングではATにお任せでも適切なギアを選び、高回転を維持するので、パドル操作など不要なほど。本文にある通り、ワインディングは見事にスポーティで楽しい。メルセデスは確信的にこうしているはずだから、走りに関しては文句なしとしておきたい。ただ、試乗車の場合、基本的に乗り心地は悪くないが、タイヤのせいか段差を超えた時の突き上げはかなりあるし、レザーシートが妙に硬く感じられるので、この仕様は走り重視の人向けになる。

唯一今までと違うのはシフトレバーで、輸入車に慣れていない人は、コラム右側にある電子制御シフトレバーをウインカーレバーと間違えて誤操作する可能性がある。走行中はバックに入らないから大丈夫だが、それでもNには入るからウインカーを出すときには注意が必要。また、停車時に間違えてバックに入れてもキンコンと警告音が鳴るが、いきなりアクセルを踏んだりすると危ない。そのために出足がもっさりしているのか、などと思うほど。しかしながら、慣れれば指先一つでシフトできるレバーは最高に使いやすい。これがこのクラスにも装着されたことは素晴らしい。

 

エクステリアデザインについては、スリーポインテッドスターが鎮座するフロントグリルや厚みのあるボンネット周辺のデザインが、まるでCLSだな、と思った。まもなく登場する4ドアクーペのCLAでは、このフロントデザインの雰囲気がリアまで連続していて、なかなかに決まっているが、Aクラスの場合は、ちょっと頭でっかちな印象が拭えない。昨今のメルセデスが採用する統一されたグリルは、個性とアイデンティティにはなってはいるものの、あまり上品とはいえないと思うが……。ところでCLAだが、これはCLS同様、カッコ重視の4ドアクーペというか、日本でかつて一世を風靡して絶滅した4ドアハードトップだ。グリルで威嚇する4HTって、いったいいつの時代のコンセプトなのだろう。このあたりは悪しき伝統に回帰しているように思えて、どうにもすっきりしない。

世の中は一足飛びには変わらない

思えば初代Aクラスは、デイズが創業した1997年に登場したこともあって、心情的には結構入れ込んだクルマだった。この頃に初代プリウスも出たし、スマートも出た。センターメーターや居住性重視のパッケージングがユニークだったトヨタのビスタ(アルデオ)もこの頃のクルマだ。斬新なコンセプトのクルマが次々に出てきたこの時期は、21世紀に向けていよいよクルマが変わっていく、そう期待させる時代だった。「新しい乗り物」感が強かったのだ。

それから15年ほどを経って、3代目のAクラスは劇的に変わった。見事なまでに「昔ながらのクルマ」に回帰した感がある。スポーティなFFハッチバック、巨大なスリーポインテッドスターが睨みをきかせるグリル、居住性よりスタイリング重視のパッケージング。初代のコンセプトは消えて、Aクラスは旧来からのクルマ好きにも好まれる、走りのいい小型車として基本性能がしっかり作りこまれた。むろんライバルと同じ土俵で戦うためには重要なことで、その土俵上では横綱クラスの実力を有することになった。それはいいこと、なのだろう。むろんそれが売れるということ、でもあるだろう。そしてそれが世の流れ、ということなのだろう。若い人にとってもその方がいいのだろう。

 

クルマというものは結局、そう斬新なものにはなれなかった。15年を経て、コンセプトとしては古き良き昔に戻ったわけだ。政治・経済・社会、そして文化など、世の流れも古き良き昔に戻っている感が強いから、それでいいのだろう。それでも衝突安全系のハイテク、国産車より進んだIT装備や素晴らしいディスプレイなどは、15年前にはなかったもの。15年前に提案されたものが実現され、ダウンサイジング、アイドリングストップ、DCTによる低燃費、活発な走りと、総合的には圧倒的に良くなっている。世の中は一足飛びには変わらない、新しいAクラスはそんなことを教えてくれている。


試乗車スペック
メルセデス・ベンツ A180 ブルーエフィシェンシー スポーツ
(1.6L 直4ターボ・7速DCT・335万円)

●初年度登録:2013年2月●形式:DBA-176042 ●全長4355mm×全幅1780mm×全高1420mm ●ホイールベース:2700mm ●最小回転半径:5.1m ●車重(車検証記載値):1440kg(910+530) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:270 ●排気量・エンジン種類:1595cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴・ターボ・横置 ●ボア×ストローク:83.0×73.7mm ●圧縮比:10.3 ●最高出力:90kW(122ps)/5000rpm ●最大トルク:200Nm (20.4kgm)/1250-4000rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/50L ●10・15モード燃費:-km/L ●JC08モード燃費:15.9km/L

●駆動方式:FF(前輪駆動) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイル/後 スフェリカル パラボリック スプリング アクスル+コイル ●タイヤ:225/40R18(Continental SportContact5 SSR MOE) ●試乗車価格(概算):415万9400円 ※オプション:セーフティパッケージ(ブラインドスポットアシスト、ディストロニックプラス、PRE-SAFE) 17万円、メタリックペイント 6万3000円、ナイトパッケージ(メモリー付フルパワーシート、18インチAMG 5ツインスポークアルミホイール、プライバシーガラス、ナイトパッケージエクステリア、電動ランバーサポート等) 12万円、AMGエクスクルーシブパッケージ(本革シート、クライメートコントロール、レザーARTICOダッシュボード等) 28万円、COMANDシステムナビゲーションシステムフルセット(HDDナビ、地デジ等) 17万6400円 ●ボディカラー:コスモスブラック ●試乗距離:約180km ●試乗日:2013年3月 ●車両協力:メルセデス・ベンツ名古屋南・名古屋北(株式会社シュテルン名古屋南)

 
 
 
 
 
メルセデス・ベンツ 名古屋南・名古屋北

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