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オペル メリーバ新車試乗記(第311回)

Opel Meriva

(1.6リッター・5速セミAT・218万円)

2004年03月26日

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キャラクター&開発コンセプト

オペル流の5人乗り小型ミニバン

欧州では2003年春、日本では2004年3月6日に発売されたオペルのメリーバは、5人乗りのコンパクトミニバン。「フレックス・スペース・コンセプト」による多彩なシートアレンジや乗員の快適性を重視したパッケージング、さらに日本製小型ミニバンとは一線を画すスポーティな走りを特徴とする。日本GMによれば「『スポーツとミニバン』の融合を提案する『スポーツ・フレキシブル・ミニバン』」だ。

ヴィータに代わって

メリーバのベースとなったヴィータは、2004年から日本での販売が休止されたことで、当面はこのメリーバがオペルのボトムレンジを担う。初代ヴィータの時代とは異なり、今はヴィッツ、フィット、イストなど国産コンパクトカーが目白押し。質実さが売りだったヴィータはそれらとの差別化が難しくなっていた。メリーバ投入の意図は、クラスを少し上に移し、なおかつ輸入車が手薄な小型ミニバン分野で先手を打つという戦略にあるようだ。

昨年発売された「スポーツ・リムジン・ワゴン」のシグナムに続き、メリーバは「イノベイティヴ・ヴィークル(革新的なクルマづくり)」コンセプトの第2弾。欧州での評価は高く、加えて直接のライバルがまだ少ないこともあって販売は好調。日本では従来通りヤナセとオペル専売店が販売を行う。

価格帯&グレード展開

218万円のワングレード

日本向けのメリーバは、1.6リッターの「イージートロニック」(セミ5速AT)、右ハンドルの1種類のみで、価格は218万円。VWポロ(5ドアで188万円~)というよりは、ゴルフ(219万円~)に近い価格で、実際の現地価格もそんなところだ。

欧州仕様には1.6リッター(2バルブと4バルブの2種)と1.8リッターのガソリン車に加えて、現地で欠かせない1.7リッターディーゼル(100ps)も用意。5速MT、および一部にイージートロニックの設定がある。

パッケージング&スタイル

3列シート分を2列で使う

ボディサイズは全長4040mm×全幅1695mm×全高1625mm。同じ2列シート・5人乗りであるトヨタのラウムと比べると、全長と全幅はほぼ同じなのに130mmもホイールベースが長い。つまり、かなり胴長。ベースのヴィータよりホイールベースは140mm延長されている。

欧州車では珍しいモノフォルムの外観は、なかなか可愛らしいが、後ろから見るとスズキの小型車スイフト、横から見ると軽自動車のMRワゴンに見えるのは、日本市場独特の感覚か。明るいパステル調メタリックの「ブリーズブルー」が個性的だ。

ベクトラを思わせるデザインと質感のインパネ

インパネのデザインや質感は、ベクトラなど新世代オペル車に準じたもので、ドイツ車らしいカチッとした雰囲気と機能性が特徴だ。収納式ドリンクホルダー二人分がセンターコンソールに付くほか、シフトレバー付近にさらに二人分のドリンクホルダーが付く。後席を合わせれば、ドリンクホルダーは計6つ。MDプレーヤーのスロットが3つあるように見えるのは、上の二つがカードホルダー、下の一つが本物。ステアリングはチルト(上下調節)が可能だ。

シート高はダンパーと体重を利用して上下させるゴルフ3のようなタイプとなる。クッションは一見、平板に見えるが、座り心地はよく、ホールド性もまずまずで、一世代前のオペル車のような無骨さや操作の渋さはかなり解消されている。疲労を防ぐなどシートとしての機能はおろそかにしない、良心的な作りは相変わらず。

多芸多才な後席

メリーバの後席はかなり凝っている。豪華というものではないが、空間や座り心地が本格的なのだ。

オペル言うところの「フレックス・スペース・コンセプト」の後席は、 40:20:40の3分割式。前後に130mmスライドするほか、左右に75mmのスライドも可能。つまり、二人掛けの「リムジンモード」では中央席を収納、左右席を中央に寄せて窓からの圧迫感を解消する。この状態だとシート位置をさらに70mm後ろに下げることも出来るし、リクライニングも2段から3段に増える。一度やってみれば、操作は簡単だ。

さらにリムジンな雰囲気を盛り上げるのが、「トラベルアシスタント」なる大型アームレストだ (残念ながら試乗車には未装着)。容量5リットルの収納スペースと格納式ドリンクホルダー2個を備え、取り外し可能なもので、前席背もたれには後席用の簡易テーブルも付く。「たくさん人が乗れた方がいい」ではなく、乗員の満足感を重視した工夫であり、日本製小型ミニバンとの違いを感じさせる部分だ。

330~2005リットルまで自由自在

荷室は通常で330~560リットル(後席のスライド位置による)。ヴィータでも260リットルあったが、メリーバは状況に応じて容量を変えられるのが特長だ。

後席をすべて倒した時の容量は1410リットル、サイズにして全長1639×全幅1062×全高832mmを誇る。さらに助手席シートの背もたれを前に倒すと最大2005リットルで、最長2400mmの長尺物が積める。旅行、キャンプ、買い物、簡単な引越しなどに、まさにフレキシブルに使えそう。

基本性能&ドライブフィール

使えて楽しいATモード

日本仕様のメリーバは全車セミATの「イージートロニック」。基本的にヴィータの1.2リッターモデル「スポーツ」のミッションと同じもので、MTモード(レバーを前後させるシーケンシャル式)とATモードがある。

ATモードで走った感じだが、気になるのは1速から2速へのシフトチェンジで少し間が空く点。ただし違和感は最初だけで、これはちょっとしたコツで消せるし、慣れるとダイレクトな加速が気持ちいい。初期のスマートやアルファのセレスピードよりずっと自然だ。このクラスのトルコンATで多い4速でなく、段数が5速あるので、変速時のつながりもいい。

ちょっと使いにくいMTモード。坂道発進ではハンドブレーキが必要

一方で、MTモードのレスポンス、変速マナーに不満はないが、問題はシフトレバーが遠く、手が届きにくいこと。なぜか欧州製ミニバンはこのようにシフトレバーが遠くなることが多い。試乗後半はほとんどATモードばかりになってしまった。

なお、電子制御の半クラッチによるクリープは自然だが、なにぶんその力は弱いのでちょっとした坂道でも後ろに下がってしまう。つまり坂道発進はMT車のようにハンドブレーキ、もしくは左足ブレーキを使う必要がある。その点では、普通のATからの転向組は、多少なりとも戸惑うだろう。それを除けば、普通のAT車に遜色ないどころか、上に書いたような優れた部分が大きい。試乗前はこのセミATの採用にやや疑問を感じていたが、乗ってみて「なるほど、これなら」と思った。


(注)※セミATとは?
別名クラッチレスMT、もしくは2ペダルMT、ロボタイズドMTなど。商標としては、アルファロメオの「セレスピード」、スマートの「ソフタッチ」などがあり、フェラーリのF1タイプギアボックス、トヨタMR-Sの6速SMTも同じものとなる。

機構的には、マニュアルのクラッチ操作とシフトチェンジを、電子制御のモーター、もしくは油圧アクチュエーターで行うものだ。例えば、オペルの「イージートロニック」はモーター制御となる。他に、F1等のレーシングカーなどに採用されるものも、基本的な仕組みは同じだ。

長所はクラッチ操作からの解放に加えて、オートマ限定免許でも乗れるところ。普通のトルコン式オートマチックより伝達効率に優れ、燃費やレスポンスにも優れている。メリーバのイージートロニックは、メーカーによると5速MTに較べても約4%燃費が優れるという。仕組みがシンプルなのでコストも安い。

短所は、発進や変速操作(特にシフトアップ)が苦手な点。また通常のATのようなクリープ(アクセルを踏まなくても、クルマがゆっくり動き出す現象)も基本的にはない。メリーバなどのように、電子制御クラッチで擬似的にクリープを作り出す例もある。

セミAT効果で数字以上にパワフル

さて、エンジンはアストラ等でおなじみの1.6リッター「エコテック」エンジン(100ps、15.3kgm)。ボディは1360kgとけっこう重く、パワーウエイトレシオは13.6kg/psと、ヴィッツの1.0リッターにも負ける。

ところが走りっぷリは数字以上。セミATのダイレクトなパワー伝達と中低速トルクのあるエンジンで、街中から高速まで力不足は感じなかった。その証拠に、試乗車を返却した直後にデイズの1.0リッターヴィッツ(4AT)に乗ったら、あまりの遅さとレスポンスの悪さに逆に驚いたほど。よく走るなあ、といつもは感心しているヴィッツなのだが・・・・・・。セミATの良さを認識させられた。

小型ミニバンのベストシャシー

駆動系の話が先行したが、走りで最大の売りはシャシー性能だ。剛性感はバチバチに高く、アストラ譲りのリアサスを得た足まわりは、見た目に似合わずスポーティだった。

試しに走った山道では、国産の小型ミニバンのようにダラダラとコーナーで外側に膨らまない。電動パワステの感覚もそれと気付かないくらい良かった。たまたま峠仕様の某国産スポーツカーと一緒になったが、相手は見慣れない形のミニバンがやけに速いと思っただろう。

見かけによらず、高速走行も得意とする。100km/hは約2500rpmで、エンジン音はほとんど聞こえない。アクセルを踏み込むとMTモードでも一気に3速までキックダウンして、十分な加速を見せる。「小さなベクトラ」のような直進性で、140~150km/h巡航も安定。メーカー発表値の最高速(欧州向けの同仕様)は177km/hだ。

ここがイイ

昨年11月にスウェーデンで「ファミリーカー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したそうだが、確かにこのクルマ、実用車として素晴らしい出来だ。シートアレンジの多彩さは日本車顔負け。ラウムは徹底的なユーティリティー機能で素晴らしいファミリーカーだったが、メリーバもそれに匹敵する。特に室内の広さ、リアシートの左右前後スライドや簡易テーブル、標準装備のマルチ機能トラベルアシスタントなどは実によく考えられている。

それでいて走りがしっかりしているのもいい。例えばラウムはトヨタらしい可もなく不可もない走りだったが、メリーバは走りに関してもそれなりに気を使ってあるのがよく分かる。楽しいとまではいかないが、元気よく走るという感覚は、ユーティリティー優先の退屈なコンパクトファミリーカーでは嫌、という人を引きつけるだろう。

ここがダメ

例えば初期スマートなどと較べれば相当良くなっているものの、セミATは依然として独特のコツと慣れが必要。出来がいい普通のトルコンATがデフォルトになっている日本市場では苦戦しそうだ。試乗中、坂道でブレーキを踏み忘れてドキッとしたように、今まで普通のAT車に乗っていた人は頭の切り替えが必要。シフトショックはトルコンATよりそれなりに大きいから、それを気にしない、という最初のハードルを越えてこのミッションの持つスポーツ性にまで気持ちが至るか、が課題だろう。

後ろから見ると何となく同じGMグループのスズキ車に似てしまったところ。まあ、同じグループであるだけいいが。左ハンドル仕様の名残りか、バタフライ式のワイパーが右隅を拭き残すところも気になった。

総合評価

シグナムはホンダ車、メリーバはスズキ車と、研究対象にしたクルマが結構見えてしまうところもあるが、オペルが掲げるところの「イノベイティヴ・ヴィークル」コンセプトは、改革が一回りしておとなしくなった感じの日本車に較べると、相当に意欲的に映る。こんな斬新なクルマが次々ドイツ車で登場してくると、最近の日本車の保守化が気になってくるのだ。

小さなクルマながらパッケージングの究極を目指したスタイリングはどうしても個性的にはできないものの、目の前にすると背が高いためか意外に存在感がある。内装はオペルクォリティ。上から下までクラスを問わずほぼ同じ質感を維持しているため、小さいクルマを買った場合はメリットの方が大きいだろう。

後席の横スライドといった工夫は今まで見たことのないもので、日本車のお株を奪うもの。シグナム同様、後席の快適性を小型車ながら重視して、大人のフル4シーター乗車を実現している。背もたれのテーブルなどは日本車がすっかり忘れているものだが、ノートパソコンを置くこともできて使い勝手はいい。こうした細かい気配りはGM系列とは思えない「マメさ」。大GMグループの深さと将来性は恐るべし、と再認識させられた。

ただ、出来ればトルコンAT車もぜひ欲しいところ。それがあれば、手頃な値段ゆえかつての「かわいいヴィータ」のように売れるかもしれない。ただ、数値以上のパワー感、走りの良さがこのセミATの恩恵だとすると、なかなか微妙だ。シャシーまわりが素晴らしいだけに、トルコンATでもいいクルマになると思うのだが。

試乗車スペック
オペル メリーバ
(1.6リッター・5速セミAT・218万円)

●形式:TA-X01Z16 ●全長4040mm×全幅1695mm×全高1625mm ●ホイールベース:2630mm ●車重(車検証記載値):1360kg(F:820+R:540) ●エンジン型式:Z16 ●1597cc・直列4気筒DOHC・横置 ●100ps(74kW)/6000rpm、15.3kgm (150Nm)/3600rpm ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/53L ●10・15モード燃費:12.0km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●タイヤ:185/60R15(Pirelli P6000) ●乗車定員:5名 ●価格:218万円(試乗車:218万円 ※オプション:ー) ●試乗距離:約200km

公式サイト http://www.opel.co.jp/lineup/meriva/index.html

 
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