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新車試乗記 第284回 MG ZT MG ZT

(2.5リッター・5AT・425万円)



日時: 2003年09月13日

 

キャラクター&開発コンセプト

遡ればブリティッシュ・レイランド

複雑な歴史を持つイギリスの自動車メーカー。簡単に言えばミニやMGなどを生んだBMC(オースティン、モーリス、ウーズレー、MG、ライレーなど)とレイランド・グループ(トライアンフ、ローバーなど) の二つが合併して出来たBL(ブリティッシュ・レイランド)一社に集約される。BLはその後、日本でも馴染み深い「ローバーグループ」に名称変更。ホンダと提携してアコードベースのローバー600、UKシビックベースのローバー400などを生産する一方、日本で人気のあったローバー・ミニをBL時代から連綿と作り続けた。

BMW傘下から一転して「一家離散」

94年、ローバーは突如ドイツのBMW傘下に。小型車やFF車を持たないBMWはローバーに多額の資金を投入して新型車の開発をバックアップした。それらの結実が今のBMW・MINIであり、現行レンジローバーだ。

しかし、莫大な投資と累積赤字が負担になったBMWは2000年にMINIを除くすべてのブランドを手放すことを決定。ブランド力のあるランドローバーはフォードに良い条件で売れたが、残ったローバー、MGなどのブランドは、イギリスの投資会社であるフィニックス・グループにわずか10ポンド(2000円弱)で売却された。ただし8億ポンドの負債付きで…。イギリス本国ではこの後も「MGローバー」として経営が続けられたが、このドタバタによって日本でのローバーブランドは消滅する形となった。

MGローバーが日本で復活!

2003年5月14日、TVRなどの正規代理店であるオートトレーディングルフトジャパン株式会社(以下、オートトレーディング)は、イギリスのMGローバーグループと契約、「MGローバー日本」(代表はテレビ出演などで有名な南原竜樹)として、日本で輸入販売を行うことを発表。7月17日に販売を開始した。

オートトレーディングは、TVR、ロータスなど、主にイギリスの小規模スポーツカーメーカーの正規代理店。今回のMGローバーの取扱いで、今や民族系で英国最大となる自動車メーカーの輸入権を獲得することになった。販売店は現在のところ、全国に6店舗(東京、さいたま、名古屋、岐阜、大阪、福岡)。2004年には20店舗まで増やし、1800台/年を目指すという。

ローバー75のMG版

新生MGローバーが98年発表のローバー75をベースに開発したのが、今回のMG ZT。MGの伝統に習い、スポーティな味付けが特徴となる。MGの歴史は古いが、第二次大戦後にアメリカなどで大きな成功を収めたMG-TCや60~70年代のMGミジェット、MGBなどのライトウェイトスポーツカーが有名であり、日本でも人気が高かった。

価格帯&グレード展開

セダンが425万円、ワゴンが443万円

MGローバー日本が日本に導入するのは、ローバーのサルーン「75」(398万円)とそのステーションワゴン「75ツアラー」(425万円)。そしてそれらのMG版である「MG ZT」(425万円)と「MG ZT-T」(443万円)。他にミッドシップのオープン2シーター「MGF」の改良版、「MG TF」(295~325万円)もある。

イギリス本国のZTは、エンジンパワーによって「160」(1.8ターボと2.5・V6)、「180」(2.5・V6)、「190」(2.5・V6)といったグレードがある(数字は馬力を示す)。また、欧州では欠かせないディーゼルターボの「TDI」も存在する。日本仕様は「180」に相当する。

パッケージング&スタイル

メッシュが迫力

前から見るとMG伝統のメッシュグリル、つまり餅焼き網のようなストーンガードが目を引く。フォグランプも計4つ。丸目4灯のヘッドライトと合わせて、計8つの丸いライトが金網の左右に並んで前を睨む。見た目の迫力と金網の面積なら、同じメッシュグリルを持つジャガーのS-TYPE R(406ps)も霞むほど。ほとんどベントレーの超高級スポーツサルーン、アルナージT(456ps)並みか。とにかく英国車のスポーツモデルにとって、メッシュグリルは欠かせないアイテムだ。

サイドは225/45ZR18という大径扁平タイヤが引き締める。リアにはイギリス国旗「ユニオン・ジャック」のバッジ。75だと国旗だけだが、MGにはチェッカーフラッグが添えられる。英国好きには嬉しいワンポイントだ。ちなみにイギリスから輸入されているホンダのシビック・タイプRにも、同じようにユニオン・ジャックのバッジが装着される。なぜかドイツ国旗やフランス国旗というのは見た記憶がないが…。

ツボを押さえた硬派ぶり

全長4760mm×全幅1780mm×全高1420mmは、ミドルクラスとしてはやや大柄。ジャガーX-TYPEより10センチほど長い。しかし前後を絞りこんだ丸みの強いスタイルで、見た目はコンパクト。メルセデスのCクラスなどと同等かそれ以下の値段で、よりゆったりした室内を、というのが狙いだ。

実際に居心地が良いのは、75譲りの室内デザインが優れているからだろう。75のウッドパネルやソファ風の革シートに換えて、メタル調パネルやアルカンタラ(合成スウェード)張りのスポーツシートが装備され、雰囲気は硬派にはなった。しかし基本的なカタチ自体は75と同じレトロなもので、スポーティな演出も古典的なもの。聞けば、MG版の内外装デザインは、マクラーレンF1やロータス・エラン(FF版)などのスポーツカーやレーシングカーのデザインを手掛けたピーター・スティーブンスが監修したという。

魅力的な75ツアラー/ZT-T

日本初上陸となった75ツアラーとそのMG版のZT-Tは、日本では主力となるかもしれない。荷室スペースはセダンの432リッターに対して、通常で400リッター、最大1222リッター。ボディサイズを生かしたフラットな荷室は、広々として使いやすそう。後席の倒し方もシングルファンクション、つまり背もたれをパタンと倒すだけで、ヘッドレストを外す必要もない。

こうした背の低いステーションワゴンでは珍しく、ガラスハッチも装備。ちょっとした荷物の出し入れや、壁までギリギリに付けてしまった時の開閉に便利だ。なかなかこういったそつのないステーションワゴンは少ない。

75/ZTは、豊富なボディカラーを持つ。75には「ウェッジウッドブルー」など英国らしいシックな色が12種類、MG ZTには「ルマン・グリーン」など、スポーティでビビッドなカラーが10種類用意される。今回の試乗車のボディカラーは「Xパワーグレイ」。昔でいうガンメタに近いが、凄みがあって光の加減で表情が変わるのが新鮮だった。

基本性能&ドライブフィール

ほどよい高性能

MG ZTの2.5リッターV6は、基本的には75と同じ。177ps/6500rpm、24.5kgm/4000rpmという数値も変わらない。JATCO製の5速ATのギア比も、カタログで表示される215km/hという最高速も、まったく同じだ(ステーションワゴン系は206km/h)。このあたりはかつて日本に輸入されていた頃と比べても、ほとんど変わっていない。

重量1520kgに177psなので、外観に相応しい?度肝を抜く加速はないが、スポーティに走るには十分。キックダウンのタイミングが少しずれると2000回転以下の加速が1テンポ遅れることがあるが、それを除けばエンジンは上まできれいに回り、特に不満はない。パワーのあるFF車にありがちなトルクステアもほとんど気にならない。

時速100kmの巡航は約2100rpm。乗り心地よく、エンジン音も低く、快適性もまずまず。ここからスポーツモードに切り換えると2800rpmまで回転が上昇。この状態でも十分に快適だ。踏み込めばフーンというV6の音を響かせながら200km/hオーバーまで加速する。

気になったのは、スポーツモードへの切り替えスイッチが、「シフトレバー左側のスイッチを前にスライドさせる」というもので使いにくかったこと。そしてマニュアルシフトがやりにくいこと(ゲートに2-3-4-Dと一直線に並ぶだけ)。ギアがせっかく5段あるので、ここはぜひシーケンシャルモードが欲しい。

悪役顔の効果

18インチの扁平タイヤと10mmローダウンの足まわりによって、操縦性はなかなかシャープ。セダンとしてはかなり固めだが、レガシィの「spec.B」ほどではなく、同乗者から文句が出ることはないと思う。ブレーキも強化されているようだ。直進安定性は高く、「そこそこのパワー」も手伝って安心して飛ばすことが出来る。ただ、高速域のパワステは少し軽過ぎると感じるかもしれない。前を走るクルマが次々に進路を譲ってくれたのは、強面のフロントフェイスの効果か。確かにこの顔がバックミラーに映った時は、そうとうインパクトがありそうだ。

ほかに気になったのは、アイドリング音や補器類の駆動音が少し大きいこと。ハンドルやダッシュボード、アクセルペダルに伝わる微振動も、6気筒エンジンとしてはやや大きめ。このへんは設計の古さを感じるところだ。タイヤのせいかロードノイズもやや気になった。とは言え、全体としては、クルマの雰囲気にあった快適性を十分に備えていると思う。

ここがイイ

かなりの希少性。元々少ないイギリス車で、しかもMGなんてブランドの新車が買えること自体、奇跡的な話。ジャガーのわざとらしいイギリス車風味より、落日の英国風渋さを持つ分、ローバーやMGのイギリスらしさは際だつ。クラシックMINIがなくなってから、庶民が足に使えるイギリス車はジャガーのXタイプくらいしかなかったが、これで選択肢が増えた。品の良いスポーティさ、ほどほどの性能、75譲りの固すぎない乗り心地など、乗ればそんなに不満がないので、個性的なクルマで個性的な人生を送りたい人にはうれしいところだ。

ここがダメ

3年前まで売られていた旧ローバージャパン扱いの75ユーザーは、今どんな気持ちだろうか。MGローバー日本では旧ユーザーまでフォローしていくと表明しているが、外資のダイナミックな動きに翻弄されてきたユーザーは、今後もアフターに一抹の不安を抱えたまま乗り続けなくてはならない。そもそもイギリス本国のMGローバー自体が、いまだ先行き不透明。オートトレーディングの今後には大いに期待しているが、トヨタ車に乗るようにはいかない。それこそが外車乗りの醍醐味ではあるが。

総合評価

ヤナセの看板は青と黄色に決まっていたものだが、このところアウディを扱っているヤナセはアウディのCIに基づいて、黒と白の看板に改まっている。これまでのヤナセならあり得なかったことだが、商社の資本が入って情勢は大きく変わってきたということだ。10年前、いや5年前には想像もできない状況へと輸入車ビジネスは刻々と変化していく。そんな中、業界ではオペルの動向に注目が集まっているという。ドイツ車だって、今後はどうなっていくかわからないのだ。

では一般消費者が安心して乗れる輸入車は何か? というと、これがまったく心許ない。ヤナセ扱いのクルマですらが、今後どうなっていくかわからないのだから。と考えれば、MGローバーに対する不安は一気に氷解していくだろう。つまり、どの輸入車でも大差ない(苦笑)。日本の輸入車シェアが、一定のラインを超えないのは、すべてここに原因があるといっていい。国産車ディーラーの至れり尽くせりのサービスになれてしまった人には、輸入車は怖くて手が出せないものだ。まして、イギリス車なんて!

逆に言えば、趣味でクルマに乗りたい人には、TVRもロータスも、そしてMGも、自分で輸入しなくても乗れるようになったわけで、それは大変うれしい話。TVRなど、昔のインポーターは平気で数年待ちなどという商売をしていたが、今は欲しければすぐ買える。MGだってオートトレーディングが月販150台というビジネスモデルを展開してくれるおかげで、マニアの手に入りやすくなった。

そういう意味で、MG ZTもクルマの出来うんぬんを言うより、乗れることを素直に喜ぶべきタイプのクルマだ。MG ZTより速いクルマも、快適なクルマも、広いクルマも、仕上がりのいいクルマも、ステイタスのあるクルマも、世の中にはすべてある。しかしブリティッシュな雰囲気を楽しみ、MGというブランドを愛でられるクルマは、これしかない。このクルマに乗っていると、どこがどうではなく「ちょっといい感じ」なのだ。評価としてはそれで十分ではないだろうか。

試乗車スペック
MG ZT
(2.5リッター・5AT・425万円)

●形式:RJ25●全長4760mm×全幅1780mm×全高1420mm●ホイールベース:2750mm●車重(車検証記載値):1520kg(F:940+R:580)●エンジン型式:25K●2497cc・DOHC・4バルブ・V型6気筒・横置●177ps(130kW)/6500rpm、24.5kgm (240Nm)/4000rpm●使用燃料:プレミアムガソリン●10・15モード燃費:ーkm/L●駆動方式:前輪駆動●タイヤ:225/45ZR18(ミシュラン製 Pirot Sport)●価格:425万円(試乗車:440万円 ※オプション:リアウイングスポイラー 5万円、メタリックカラー 10万円)

公式サイトhttp://www.mg-rover.jp/

 
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