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ローバー ミニ新車試乗記(第131回)

Rover Mini

 

2000年07月14日

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キャラクター&開発コンセプト

遂に41年の歴史に終止符。残り2000台を切る!

1959年にオースチン・セブンとモーリス・ミニマイナーの2つのブランドでデビューして以来、41年もの長きに渡って基本の姿を変えずに生産され続けた、奇跡のコンパクトカー、ミニ。FF駆動方式に、世界で初めてエンジンを横置きにするという構造は以後の大衆車造りに決定的な影響を与え、今日のFF車全盛の礎を築きあげた。FF小型車の歴史を変えた偉大なクルマとして、自動車史に名を残す名車ということに異論はない。

しかし、この長寿グルマも、現代の自動車に要求される安全基準に合致せず、残念ながら生産に終止符が打たれることになった。

今年5月、ミニを生産する英国ローバーの親会社であるBMWが、ミニとランドローバー(こちらはフォードへ売却)の2ブランドを手中に残して、ローバーを英国の資本家グループにたった1700円で売却したというニュースが話題となったが、実はこのとき、現行ミニを生産する工場も売却項目に入っていたため、(BMWによる)ミニは早々に生産うち切りとなってしまった。これによって日本市場への輸入計画が当初の予定から変更となり、在庫数2000台(7月13日現在で1763台)をもって国内販売は終了となる。なお、BMWからは次期ミニのコンセプトモデルがすでに発表されており、ここ1,2年のうちに発売される予定だ。

現行ミニに搭載されるエンジンは1.3リッターで、全グレードに4ATと4MTが用意されている。乗車定員は4名だ。

価格帯&グレード展開

昔よりは安くなったとはいえども、実用面を考えるとちょっと高い

現在、購入可能な車種は「メイフィア」(MT178.9万円/AT188.9万円)と「クーパー」(MT198.9万円/208.9万円)に加えて、それぞれをベースとした「40thアニバーサリー」仕様の限定車が30~40万円アップで用意される。昔を思えば高くはないが、それでもちょっと買おうかと言うには高い。150万円未満だとかなり売れ方が違うだろう。

「メイフィア」は今でこそ、ベーシックグレードとなっているが、もともとは上級グレードとして生まれたモデルだけに、十分高級な内装が与えられている。

一方、「クーパー」の方は、'60年代あらゆるモータースポーツシーンを席巻したミニ・クーパーの名を現代に甦らせたモデル。ホワイトルーフ、ボンネットのホワイトストライプ、8本スポークのアルミホイール、月桂樹をあしらった専用エンブレムなど、スポーティーなムードを高めている。

内装はメイフィアのクロス地に対して本革が採用されている他、随所にウォールナッド・ウッドパネルなど、高級感の演出が図られている。ただ、エンジンやサスペンションなどの走り系機関は、メイフィアと同じだ。結局は両車の差は、装備の違いだけとなっており、クーパーには特にスポーツ性はない。

「40thアニバーサリー」は、ボンネット・パッジ、ポリッシュド・アロイ・フェイシアパネル、ワイド・ホイールスパッツ、13インチ超扁平スポーツタイアなど、専用本革インテリアなどが奢られる。

パッケージング&スタイル

単に可愛いだけではない、奥深いデザイン&パッケージング

全長3075mm×全幅1440mm×全高1330mm、ホイールベース2035mmのボディサイズは、現行軽自動車規格より小さいもの。プリテミィブなスタイルを持つボディは、なんせ設計が40年も前だから、ビスが丸見えだったり、ボディのサーフェイス化が図られていなかったりと、さすがに設計の古さは隠せない。でも、そのクラシカルで凝った造りが、逆に貫禄に満ちあふれた重厚感を醸し出す要素となっており、ミニならでは味となっている。見れば見るほど可愛く、味がある。しかも小さくても貧乏くさくない。

前後オーバーハングのない小気味よいボディ、典型的な台形が安定感を生む全体のフォルム、2ボックスながらフェンダーのふくらみが柔らかく、低い車高が凛々しい。ミニほど誰もを引き付け、老若男女問わず乗ってサマになってしまうクルマも少ない。古いクルマだけが持つ「魔法の魅力」をミニは持つ。現代のクルマが、いくらミニの外観をマネしたところで、この魔法だけはマネできない。

今となっては贅沢なクルマに。英国伝統の高級感を演出して魅力を増した現在のミニ

かつては広さを絶賛された室内の広さだが、スペック上は、軽自動車よりわずかに狭い。まあ、外観からすれば確かに想像以上に広い。とはいえ大人2名がなんとか座れる後席へのアクセスは、前席が前方に大きく倒れるのでスムーズに行えるが、逆に降りるときは、レバーに手が届かないので、非常に苦労させられる。後席は現代の水準ではやはり緊急用と割り切った方が良い。

また、ミニはステアリングが外側に向かって生えており、かつトラックのように水平に取り付けられている。さらにペダルはタイヤハウスの影響で、センター寄りに配置されている。これは限られたスペースの中で最大限の室内の広さを実現するために犠牲になった部分だ。その結果、ドライブポジションはまっすぐ座ることができず、かなり不自然な姿勢を強いられる。現代の水準では話にならないポジションだ。

インテリアの演出は、ただのクラシックファッションに終わらず、本物の英国流高級感を醸し出すのに成功している。クーパーの場合インパネは全面、ウォールナット製ウッド張り(試乗車は特別仕様車だったためポリッシュド・アロイ・フェイシアパネル)。シートは本革。ホワイトパネルの3連メーターの文字までが、雰囲気満点に仕上がっている。ミニはクラスレスのベーシックカーであったはずで、もともと庶民の足クルマだが、現在の新車ではそこまでやる必要があるのかというほどの豪華さ。まあ、今となってはこの豪華さこそがミニの魅力となってはいるが。

安全性への意識が高まるにつれて、ミニもそれなりに対応している。エアバッグは運転席側だけではあるが標準装備されており、薄っぺらなドアにはサイドインパクトビームも内蔵されている。快適装備の点でも、クーラー(エアコンではない)だって、ラジオだって、ワイパーだってある(当たり前だが)。無いものといえばパワーウインドウぐらいで、一応は皆揃っているのだ。また、かさ張るものを入れるとウインドウレギュレーターが回せなくなるものの、小物入れとしてドアポケットも付いている。これらの装備は、なんとなく強引に取りつけた感もあるが、一生懸命、クルマの進化についていこう、という涙ぐましい努力の跡が伺える。

基本性能&ドライブフィール

基本的なメカの構造は昔のまま。パワー的には軽自動車レベル

デビュー当初、34馬力の848ccで始まったエンジンも、現在は全車1271cc直列4気筒OHV+インジェクションに統一されている。最高出力、最大トルクは5MTが、62PS/5700rpm、9.6kgm/3900rpm。4ATが53PS/5000rpm、9.3kgm/2600rpm。

ラバーコーン式の足回りもミニの画期的なエンジニアリングの一つだ。スプリングの代わりに、ソフトボールぐらいの半球状の弾性ゴム(ラバー)と円錐状(コーン)の金具を組み合わせたもので、これがスプリングの代わりとなっている。また、居住スペースを稼ぐために、横置きにしたエンジンの下にデフとミッションを一体化したという構造もミニ独特のものだ。なお、タイヤサイズは基本的に12インチで、40thアニバーサリーには13インチが採用される。

可愛い外観と裏腹に走りは硬派。でもそれなりに進化している乗り心地

街中を走らせてみると、思ったほど乗り心地は悪くない。確かに現代のクルマと比較すれば、ピョコピョコ飛び跳ねる感覚はあるし、アイドリング時はステアリングに強い振動が伝わり、決して快適とは言い難いが、新車のミニは思ったより快適なクルマになっていた。実際に走っている限り、それほど我慢を強いられるものではなく、これで十分とさえ思えてくるほどだ。しかし気になるのがブレーキのフィーリングだ。現代の水準では効きが非常に甘く感じられ、ペダルも重い。重いと言えばノンパワーのステアリング。女の子ではすえ切りは無理。もっとも走り出してしまえば問題はないし、これがクルマというものの基本といえばそれまでなのだが。まぁ、これも1時間も運転すれば、何とも思わなくなる。要は慣れの問題だ。

高速道路では、法定速度までなら、十二分な走りが期待できる。それ以上に、クルマの流れをリードすることができないこともないが、ロードノイズやエンジン音がたいそううるさく、そこまでスピードを出す気にはならないし、疲労感も大きくなる。長距離ドライブをこなすのは、かなり根性入った人でないと辛い。

ミニの走りが最も冴えるのが、ワインディングだ。絶対的なスピードとコーナリング性能は現代のスポーツカーよりも遙かに劣るとはいえ、クルマを操るという感覚は、それら以上。いや、クルマを操るというより、遊園地の遊具に乗っているよう。

ロールとは無縁のサスペンションと、重心の低さ、超ショートホイールベースによって生み出されるハンドリングは非常にクイックでシャープ。乗用車というよりもカートに近い感覚だ。また、FF車特有のタックイン(コーナリング中、アクセルを抜くと、車両が前輪を軸にして内側に巻き込む現象)も強いから、シビアなアクセル操作も要求される。昔から「それを積極的に利用してよりハイペースなドライビングを味わうのがミニ使い」と言われるが、まあそうした伝説の走りが現実のものとなるのは、確かに楽しいものだ。ローパワーで楽しいクルマというのはもはや現代のクルマには存在しない。そこがいいところだろう。

少し前、ATにも乗る機会があったが、軽快さがあまりなく、かなり性格が違った。ミニ本来の性能を引き出し、走りを楽しみたいのならMTに尽きるだろう。でも、あまり調子に乗ると、最低地上高が95mm(フェラーリより低い! )しかないので、車両下部、特にミッションを当てることになる。

ここがイイ

全部。自動車史に名を残す名車が今だに新車で手にはいること。生産中止になることでさらに希少価値も高まる。ただ、どこかでノックダウン生産をすることも十分考えられるので、新車そのものはまた手にはいるかもしれない。

ここがダメ

全部。ハード面全般はそうとうきつい。特に効きが甘すぎるブレーキ、ペラペラなボディは、やはり死と隣り合わせの性能。事故ったときのことを考えると、確かに怖くなる。カワイイというだけの理由で買うのだったら、ミラ・ジーノにした方がいいかも。

総合評価

ベーシックカーであり、ちょうど必要最低限の性能しか持たなかったゆえに40年も作られたクルマ。これが性能のいいクルマやアッパークラスのクルマだったら、商品としてすぐに陳腐化し、モデルチェンジを繰り返さなくてはならなかったはず。

例えば4人がギリギリ乗れるサイズは40年かけて軽自動車が追いついたわけで、軽は小さすぎたゆえモデルチェンジせざるをえなかったわけだ。ミニは40年前からこのサイズだったのが幸いした。

また例えば現代の高速道路でも何とか走れる動力性能があったので、これも大きくいじらなくてすんでいる。ベーシックカーとして過不足ない基本性能を持っていたからここまで生き延びてしまったわけだ。

そして当然、長く生き延びたものは伝説となる。伝説が伝説を生んでさらに生き延びる。こういう幸せな20世紀のクルマがミニだったわけだ。

しかし、安全性を含めクルマに対する新たな要求が高まる21世紀においては、もはや新車のミニの生き延びる余地はない。ニュービートルがビートル風のゴルフのパイクカーであるように、BMWからミニ風のパイクカーが登場するのだろう。ここにいたってクラシックミニはクルマというよりはオモチャとなった。クルマとしての実用性など最初から諦めていれば、十分満足できる「大人のおもちゃ」であるのは確か。気持ちいいです。

いずれにせよ、ミニは今世紀に名を残す名車には変わりない。生きてるうちに、一度は乗ってみることをオススメする。できれば新車に。モデファイされている中古車では本来のミニの姿はわかりにくくなる。最近はラバーコーンではなくコイルスプリングを装着することも可能なようだから。

 

 

 
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