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ダイハツ ミラ イース G新車試乗記(第645回)

Daihatsu Mira e:S G

(0.66リッター・CVT・112万円)

普通車にも負けず、
ハイブリッド車にも負けず
いつも静かに走っている。
そういうクルマに、
わたしはなりたい。

2011年10月21日

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キャラクター&開発コンセプト

軽でガソリン車トップの低燃費を実現


新型ダイハツ ミライース

2011年9月20日に発売された「ミラ e:S(イース)」は、ダイハツの新型軽乗用車。その名の通りミラ、ミラカスタム、ミラココア、ミラバン(商用車)からなるミラシリーズに新しく加わったモデルだ。

開発コンセプトに“エコ(エコロジー+エコノミー)&スマート”とあるように、最大の売りは国内向けガソリン車(ハイブリッド車を除く)でトップの低燃費を叩き出したこと。徹底的な軽量化、エンジンの低フリクション化、新開発のアイドリングストップ機能など、ダイハツ言うところの「e:S テクノロジー(Energy Saving Technology)」を採用し、ガソリン車トップのJC08モード燃費:30.0km/Lとしたのが自慢だ(10・15モード燃費は32.0km/L)。ダイハツではこの路線に基づく新型モデルを、ハイブリッド車や電気自動車に続くエコカーという意味で「第3のエコカー」と呼んでいる。

市販車は軽枠いっぱい&5ドアの現実路線


2009年の東京モーターショーに出展されたダイハツ e:S

そもそも「e:S」とは、2009年の東京モーターショーで発表された次世代エコカーのコンセプトカー。4人乗りながら3ドアボディとし、全長を軽自動車枠より30センチ短い3100mmとするといった思い切った軽量化を実施。10・15モード燃費30km/Lを達成する軽のスペシャリティモデルというコンセプトだった。開発当初は市販する予定だったが、実際には前年のリーマンショックによる余波で開発中止となっている。

一方、今回の「ミラ e:S」は、10・15モードよりハードルの高いJC08モード燃費で30km/Lを達成しつつ、全長は軽自動車枠いっぱいの3395mmとし、ボディタイプも一般的な5ドアを採用。また低価格も売りである、ダイハツの軽乗用車では最安の79万5000円からとなっている。

販売目標台数は月間7000台。対して発売後2週間の受注台数は約2万5000台となるなど、立ち上がりは絶好調。これは8000台が目標だった現行の2代目タントが1ヶ月で2万4000台を受注した事例を上回る。

テレビCMには贅沢にも俳優ブルース・ウィリスを起用。軽自動車とのミスマッチを狙ったようなキャスティングだが、ウィリスが「ダイモツ ミラウース」と車名を間違えているところも画期的。

関連リンク
■ダイハツ公式HP>プレスリリース>ミライースを発売

価格帯&グレード展開

79万5000円からスタート。売れ筋は99万5000円


フロントバッジは葉っぱをモチーフにしたもの。ダイハツの「D」にも見える

エンジンは全て自然吸気の直3「KF型」で、変速機はCVT。価格は79万5000円からだ。ちなみにミラの乗用タイプで一番安いのは86万円、ミラの商用バンは5MTが72万円で、CVT車が78万5000円。またミライースと入れ替わりで販売終了となったエッセ(2005年12月発売)は77万円からだった。

ただしエントリーグレードは見た目も装備もかなり簡素なので、販売主力はキーレスエントリーが付く99万5000円の「X」になりそう。さらに112万円の最上級グレード「G」なら、シートリフター&チルトステアリング、VSC等が標準装備になる。

なお、愛知県のダイハツディーラーでは、地域限定のワンプライス(値引き後価格)として、通常より5万6000円~6万1000円安い価格を掲げている。それでいけばX(2WD)は93万9000円、G(2WD)は105万9000円。

 

最上級の「G」グレードにのみシートリフターとチルトステアリングが備わる

■D(2WD) 79万5000円

■L(2WD) 89万5000円
※カラードドアミラー、集中ドアロック、ホイールキャップ、CDプレーヤー/AM/FMラジオ付

■X(2WD) 99万5000円/Xf(4WD) 109万5000円
※上記に加えて、電動ドアミラー、リア3面スモークガラス、室内メッキ加飾、キーレスエントリー付

■G(2WD)  112万円/Gf(4WD) 122万円 ※今回の試乗車
※上記に加えて、メッキグリル、革巻ステアリング、シートリフター&チルトステアリング、サイドエアバッグ、VSC、オートエアコン、アルミホイール付

パッケージング&スタイル

サイズもデザインも、ミラっぽい


ボディカラーは全8色。試乗車のカラーは「コットンアイボリー」

東京モーターショーで見たコンセプトカー「e:S」の残像が残っている人(要するにクルマ好き)にとっては、少々ガッカリといったところか。全長を軽自動車枠より300mm短くするという案は見送られ、市販モデル「ミラ e:S」では無難に軽の枠いっぱいの全長3395mm×全幅1475mmとなっている。全高はミラと同等の1500mm。低めの全高(と高めの価格)が販売面では足を引っ張る恰好となったソニカの轍は踏むまい、ということもあるのかも。

 

それでもフロント部は心なしか空力を重視したデザインで、リアバンパーの角もトヨタ車のように「エアロコーナー」になっている。Cd値(空気抵抗係数)は0.31と、ボディ形状に制約のある軽自動車としては優秀。なら、さらにルーフをプリウスのようにスラントさせたら0.30を切ったかも、などとも思うが、その点でもソニカの轍は踏むまい、というところか。

 

全体のデザインイメージは、「無駄を廃したシンプルでクリーンな造形」(プレスリリース)だが、要するにコンセプトカーのような洒落っ気は省かれ、実用本位になっている。ヘッドライト回りにコンセプトカーの面影は若干残っているが、それを除けば現行のミラっぽい。いっそこれが新型ミラでも良かったように思うが、実際にはミラの後継車がイースになるのかも。サブネームが本名になるのは珍しくない。

プラットフォームはミラシリーズで初めて新型ムーヴの新世代を採用。ホイールベースは旧プラットフォームより35mm短い2455mmになる。WB短縮の理由は歩行者保護とエンジンの吸気温度を下げるため、とメーカーでは説明している。

インテリア&ラゲッジスペース

質感はまずまずだが、軽量化&低コストの跡は見える


上級グレードのインパネはベージュとブラックのツートーン。メタル調パネル付のオーディオは廉価グレードを除いて標準装備

運転席に座ってまず好印象なのは、試乗車が最上級グレードということもあるが、ダッシュボードやシフトレバー回りの質感がまずまず高いこと。一方、ドアの樹脂製インナーパネルは薄く、押すとペナペナと凹むほどで、軽量化&低コストを図っているのが分かる。給油リッドのオープナーが運転席と助手席の間にあるのも、やはりそのためだろう。給油リッドはボディの左側にあるので、ここのほうが運転席右下より近く、ワイヤーの長さやリンケージも省けるはずだ。

グリーンがエコ運転の目安。「エコアイドル」中のガソリン節約量も表示


これは通常時。中央のデジタル速度表示は大きくて見やすい

イグニッションをオンにすると、ブラックアウトしていた盤面に自発光式のデジタルメーター(最廉価グレード以外の全車に装備)が浮かんでくる。デジタルメーターが流行ったのは1980年代なので、ちょっと懐かしい感じもするが、数字が大きくて老眼でも見やすいのは間違いない。

デジタル速度計を取り囲むのは、燃費に良い運転をしたり、アイドリングストップをすると照明がブルーからグリーンに変化する「エコドライブアシスト照明」。ホンダのハイブリッド車あたりが先駆けだと思うが、イースのものはそれよりもっと単純。夜間は少し明るすぎる気もしたが(オフにすることも可能)、メーターに視線を移さなくても色の変化が分かるので、これはこれでありか。

 

これはエコアイドル時。左が節約したガソリンの量、右がエコアイドルの時間

またメーター左上の「エコドライブアシストディスプレイ」は、減速エネルギーの回生状態に入ると「CHARGE」と表示。またアイドリングストップ(ダイハツ言うところの「エコアイドル」)時には、ガソリン節約量を1mL単位、つまり0.001リッター単位で積算して表示する。この辺はマツダのi-stopに似ている。エコアイドルについては試乗インプレッションの項でも再び触れる。

チルトステアリング&シートリフターは最上級グレードのみ


最上級グレード(試乗車)は計4エアバッグ。前席サイドエアバッグを標準装備する

フロントシートの座面は若干小ぶりだが、クッションには腰があり、座り心地は悪くない。ただコーナーに元気よく飛び込んだ時には体を支えるものがないので、横Gに対してはオートバイのように体を傾けて対処することになる。

それより気になるのは、チルトステアリング&シートリフターが最上級グレードの「G」にしか装備されないこと。試乗車はその「G」だったので問題はなかったが、下位グレードのシートは小柄な女性に合わせたポジションになるようで、これだと大柄な男性には無理が生じるはず。

 

ヘッドレストがないこと以外、これと言って不満のない後席

後席スペースはまったく問題なく、シートの座り心地も良い。また乗降性についても、身長170センチ程度までは頭を屈めることなくスムーズに乗り降りできる。背もたれ角度も調整は出来ないが、このままでいい感じだ。

それだけに、後席ヘッドレストが全車「レス」となってしまったのは残念。本来なら全車標準にすべきだったと思う。ミライース最大の残念がここかも。

背もたれは左右一体式。スペアタイヤの代わりに修理キット

トランク容量は不明だが、見た感じは軽自動車の平均といったところ。背もたれは全グレードで左右一体式で、後席を畳むときは左右のロックを外し、背もたれを全て前にパタンと倒すことになる。5:5分割式に比べてアレンジの自由度は低く、操作もしにくいが、シンプルなシート構造は軽量化&低コストにも効いているはず。そう思えば納得できるのでは。

 

それで言えば、スペアタイヤを廃して、パンク修理キット(電動コンプレッサー+修理材)となるのは道理。キットは床下の発泡スチロール製ボックスに収まっており、余ったところに小物も収納できるようになっている

基本性能&ドライブフィール

街中ではかったるさなし


JC08モード燃費30.0km/Lのため改良されたKF型エンジン

試乗したのは最上級グレードの「G」(112万円)。エンジンは全車共通で、おなじみ「KF」型のノンターボだが、圧縮比アップ(10.8→11.3)、冷却性能向上、フリクションロスの低減、燃焼効率のアップを図った改良版。デミオの13-スカイアクティブのような完全新設計ではないが、細々見てゆくと燃焼室形状の変更やら、インジェクター噴霧微粒化やら、「i-EGR」と呼ばれる高度な排気ガス循環システムの採用やらと、かなり手が入っている。最高出力はミラの58psから52psへ、最大トルクも6.6kgmから6.1kgm へと1割ほどダウンしているが、それもこれもJC08モード燃費30.0km/Lのためだ。

それでも実際に走り出してみると、トルク感は思いのほかあり、動き出しは力強い。加速時にはダイハツCVT独特のメカニカルノイズが高まるものの、街中ではかったるさなし。これにはミラより実質60kgほど軽いという730kgの軽量ボディも効いているはず。軽で大人1人分の差は大きい。

 

もちろんCVTの制御も燃費のために最適化。燃料噴射の停止時間を増やすべく、停止直前までエンブレを効かせた後、最後にクラッチをフッと切るのは、トヨタのiQやヴィッツなど、最新リッターカークラスのCVT車なら多かれ少なかれやっていることだ。

またミライースのエコ発電制御は、出来る限り減速時の回生だけで補器用バッテリーに充電しようという徹底したもの。バッテリーは通常の鉛タイプだが、電気の出入りが多くても耐えられる専用品になっている。

CVTでは初。停車前アイドリングストップ


もちろんアイドリングストップのオフボタンもある

2、3分ほど走ってエンジンが暖まると、アイドリングストップが作動するようになる。エアコンの設定温度と室温にズレがないなどの条件が揃えば、エアコンオンでもヘッドライトオンでも、停止すれば必ずと言っていいほどエンジンは止まる。

正確に言えばミライースのシステムは、車速が7kmh以下になるとエンジンを止める「停車前アイドリングストップ」と呼ばれるもの(通称「新エコアイドル」)。これと似たものはセミAT車、例えばスマートやフィアット 500では以前からあるが、CVTでは初だ。

 

これは11分44秒エコアイドルして、ガソリンを0.067リッター節約した図

実際のところは一旦停止もしくは徐行してから再加速という時にも、エンジンが止まってしまい、最初はドキッとする。それがイヤなら「エコアイドル」をオフにするのもアリだが、そのうちに慣れてしまうのも確か。なお、渋滞時に多い微低速(10km/h以下)からの停止やバック時およびバック後の前進(同じく10km/h以下)といった状況では、アイドリングストップは働かない。またヘッドライトオンでは、停車してからの作動になる。

アイドリングストップ中は、メーター内にアイドリングストップした時間が積算表示され、同時に節約されたガソリン量が1mL、つまり0.001リッターずつ積算されてゆく。その節約量はメーター表示から類推するに10分で0.05~0.06リッターといったところ。排気量が小さいせいか意外に少ない。

 

(5分43秒アイドリングストップして)ガソリンを33mL=0.033リッター節約した、という表示

ちなみにこの節約ガソリン量の積算メーター、イグニッションをオフにすると自動的にリセットされてしまうのが残念。つまり運転を始める度に、またゼロからのスタートになる。

再始動はマツダのi-stopほど洗練されておらず、キュキュキュキュというスターター音は後続車からでもハッキリ聞こえるほど大きい。すぐに慣れるが、もう少し静かだったらとも思う。

格上のプラットフォーム&軽量ボディで走りもよし

最近のダイハツ軽らしく、シャシーはかなりシッカリしている。新型ムーヴ譲りの格上プラットフォーム、軽量・低重心のアッパーボディ、そして155/65R14サイズの大径タイヤ(ヨコハマのブルーアース)など、並べてみると条件は悪くない。特にタイヤは転がり抵抗を追求して155/65R14という大径になったようだが、おかげでVSC要らずのグリップ感がある。オーバースピードのまま漫然とコーナーに入ってゆくとアンダーステアが出てしまうが、リアが出る(オーバーステアが出る)ことはまずない。

乗り心地自体はちょっと硬め。静粛性に関しては、エンジンとCVTのノイズ、特に低速での「チチチチチ」という音が気になった。ただ、この3軸式のCVTに以前あったヒュ~ンという風のような音はなくなっているし、3気筒特有の振動もほとんど気にならない。ロードノイズも意外に静かだった。

高速巡航もまったく静か。タコメーターがないのでエンジン回転数は不明だが、100km/h巡航でかなり低い回転を保つのは間違いない。おかげで左側の走行車線でよいと割り切ってしまえば、快適に走り続けられる。こうい時にはCd値0.31と730kgの軽量ボディが効いている感じがする。ただし馬力が52psしかない上、CVTの変速プログラムがエコ優先であるせいか、追い越しは苦手。最高速は頑張っても130km/h程度か。

試乗燃費は18.0~27.3km/L


一般道で25km/L台を出したところ。これくらいは割と簡単に出る

今回はトータルで230kmを試乗。参考値ながら試乗燃費は、いつもの一般道と高速道路を走った区間(約90km)が18.0km/L。さらに夜間、空いた一般道を無駄な加速を控えて走った区間(約30km)が1回目は25.3km/Lで、2回目は26.5km/L。さらに日中、通勤時間帯の一般道をやはり無駄な加速を控えて走った区間(約30km)は27.3km/Lだった。いずれもエアコンオンで、特別なテクニックは使っていない。

また高速道路での100km/h巡航では、28~29km/Lといったところ。ただし80~90km/h巡航なら30km/L台に乗りそうだった。そもそも100km/hからの加速は鈍く、ガソリンを余分に食う余地もないのだが。

いずれにしろ燃費を意識しなくても18km/L、意識すれば25~27km/L台というのは驚異的。これまでの試乗経験から言っても、フィットハイブリッドやマツダ デミオ 13-スカイアクティブより確実に燃費がよかった。100km/h以下の速度域なら現行プリウスよりいいかも。

燃料タンク容量はダイハツの軽(主流は36リッター)では少なめの30リッターだが、航続距離は優に400km以上に達するはず。


    車重(kg) 10・15モード燃費(km/L) JC08モード燃費(km/L) モーターデイズ
試乗燃費(km/L)
スズキ MR ワゴン
(X・アイドリングストップ無)
810 25.5 23.0 14.3~20.2
スズキ MR ワゴン
(X・アイドリングストップ付)
820 27.0 24.2 (未計測)
ダイハツ ムーヴ (X) 810 27.0 (未発表) 15.8~22.5
マツダ デミオ 13-スカイアクティブ 1010 30.0 25.0 14.8~20.2
ホンダ フィット ハイブリッド 1130 30.0 26.0 15.3~22.0
ダイハツ ミライース 730 32.0 30.0 18.0~27.3
トヨタ 3代目プリウス 1350 35.5~38.0 30.4~32.6 17.5~25.0
※表内はすべて2011年10月現在の現行モデルで、2WD車

ここがイイ

とにかく燃費。操縦安定性。コンサバなパッケージング。まずまずの質感

驚異的な実用燃費。それに尽きる。これといって飛び道具を使っているわけではないので、この燃費技術が今後のダイハツ軽のスタンダードになってゆくはず。

操縦安定性は意外なほどシッカリしていること。あと、エコタイヤなのにグリップするタイヤ。乗り心地も意外にいい。コツコツはしているが、これも軽量化(低重心化)の恩恵か、乗り心地には影響していない。

パッケージングをコンサバにしたこと。コンセプトカーのままだったら販売的には悲惨な結果が見えていた気がする。軽は規格枠を一杯に使わないと、消費者は損した気分になる商品。いくら燃費がよくても小さかったら売れない。特に日本では。

質感が思ったよりいいこと。最上級グレードだったからかもしれないが、これならいいんじゃないのというレベル。

ここがダメ

後席ヘッドレストの不備。チルト&シートリフターの主力グレードでの不備など

後席が十分に広く、座り心地もいいだけに、後席ヘッドレストがないのは残念。本来なら全車標準とすべき装備が、最上級グレードにさえないのはいただけない。

またチルトステアリング&シートリフターが最上級グレードのみであるのも残念な部分。せめて中間グレードには付けるべき。また最上級グレードには、それと合わせて前席サイドエアバッグやESPも標準装備になる。つまり安全装備に関して、一つ下の「X」(いずれの装備も設定なし)との差が大きすぎる。

停車前に切れるアイドリングストップは、すーっと減速して微速で前車について行こうと思った時などに、意図せずエンジンが止まってしまい、再始動でぎくしゃくする。セルの音が安っぽいのは致し方ないが、これもまた慣れるしかない。

本文でも触れたが、「エコアイドル」によるガソリン節約量の積算数値が、エンジンを切るとリセットされてしまうのは残念。また平均燃費も一区間しか計測出来ず、しかも数年前までのトヨタ車のように給油すると勝手にリセットしてしまうのは余計な機能だと思う。

 

高速道路を走るのが無理というわけではないが、100km/hを守るか、それ以下でおとなしく走ることが強いられる。当然、加速も厳しい。昨今の軽の水準から行くと、かなり辛く感じられることは確か。

小物入れが少ない。これも軽量化のためとは思うが、携帯や高速チケットなどちょっとしたものをヒョイと置く場所が意外になくて、思わず困った。足もとにはドリンクホルダーがあるが、手が届きにくく、おまけに物を取り出すときに底に敷いてあるフェルトが外れたりして使いづらかった。

クルマ好きとしては、やはりコンセプトカー「イース」のスペシャリティカー的な部分が省かれ、普通の軽自動車になってしまったことが、世の中的に仕方ないとはいえ、残念と言わざるを得ない。

総合評価

ソニカのこと


ダイハツ ソニカ (2006~09年)

ダイハツといえば、モーターデイズで大絶賛したソニカを忘れるわけにはいかない。我々が絶賛したクルマが売れないというのは、最近ではどうやら定説化してきているが(苦笑)、それにしてもソニカは3年弱で消えてしまったわけで、近年まれに見る失敗作ということになってしまった。さすがにこれは我々もこたえた。

まあ実質的な被害が我々にあったわけではなく、落胆の度合いはダイハツの開発陣に比するものではないと思うが、あんなにいいものが市場では全く評価されないという事実は、一つの方向へダーッといってしまう国民性を象徴している、なんて思ってしまったりする。ソニカとは対極に位置するタントのようなクルマに大衆性があることはわかるが、それにしても誰も彼もがタントのようなスペースカーを欲しているわけではないだろう。商品を見極めたり、クルマ選びに自分の嗜好を反映させたりするより、皆がいいと言うものを買っておくという、「寄らば大樹の陰」的な感覚がこの販売状況にはあるような気がする。当時、普通の(全高が低めの)軽自動車が欲しいという知人がいて、ソニカを勧めて買ってもらったのだが、今でも十分満足してもらっている。

ミライースを数字で考えてみると・・・

そして昨今、今度は燃費がいいというところへ、皆がダーッと走ってしまっているように思える。そりゃ燃費はいい方がいいに決まっているが、燃費だけがクルマの商品性ではないはずで、もうちょっとトータルでクルマを見ることができないだろうか。

確かに、商品力を訴求するという点では、数字で明確に優位を示せる燃費は、利用しやすいのかもしれない。それは学校のテストで点数を取り合って育ってきた日本人には、特に分かりやすいことなのかもしれない。ドライブフィールなどという曖昧なものより、リッター数kmの違いは一目瞭然で良さが分かる。

さてここで、テストの点がいいからといって、大きくなってから立派な人になれるわけではない、という話から、人の多様性を善とする論調に行くのはあまり面白くない。実際にはテストの点がいい人が、長じていい生活を送っていることは、多くの人が現実に感じているはず。特に官僚なんていう職業には、テストの点がものすごく良くないとなれないわけで、そういう人が立派かどうかはさて置き、一般人よりいい生活が送れることは間違いないようだ。また生涯賃金という数字で考えても、テストで高い数字を獲得した人の方が、やはり絶対的には有利だろう。やっぱり世の中、数字というのは、一面の真理である。

 

そこでミライースを数字で追ってみた。モーターデイズでの試乗燃費は、実用燃費でも最低に近いレベル(燃費の良くない走り方による結果)だと思うが、それで比較してみよう。MRワゴンのXグレード(アイドリングストップなし)と同様に装備が揃ったミライース Gグレードで比較してみると、車両価格差は約9万5900円で、10年乗るとするとイースの方が年間で9590円安いことになる。試乗燃費はそれぞれ14.3km/Lと18km/Lだから、ガソリン代では年間ほぼ2万円(年間走行1万km、リッター140円で計算)の差が出る。合計で年間3万円ほどイースが安い計算だ。これは家計にとって小さくない数字だろう。数字で追えば、これが明確な差。月にすれば2500円だ。どっちのクルマを選ぶかは、このお金をどう考えるかだろう。2500円あればケータイをパケ放題プランにできそうだから、スマホに買い換える気になれるという人もいるかも。たかが2500円、されど2500円である。

ということで、クルマとして面白いかどうか、などということは考えずに、経済性という数字で考えれば、燃費はいい方がいいに決まっている。燃費とか販売価格とか、分かりやすい数字で長所を表現できるミライースは、かつてのソニカと同じパターンにはならないだろう。元々軽自動車は、燃費が良くて安いものだったわけで、コンパクトカーより価格が高く、燃費も大差ない昨今の軽自動車こそ、育ちすぎた異形の存在なのかもしれない。

軽の可能性はソニカ、軽の本質はイース

しかし一方で軽自動車は、単に「軽」というよりも日本が誇れるコンパクトカーとして、感動的なまでに上質になった。そこからさらに軽は未来へ、世界へ向かって進化して欲しいと思う。そういう目で見ると、先祖返り的なミライースは、どうも今ひとつ絶賛しにくいのだ。クルマとしての魅力を感じたソニカ、あまり感じないイース。全く売れなかったソニカ、かなり売れそうなイース。軽の可能性はソニカ、軽の本質はイースということか。

世の中は3.11以降、景気がさらに悪くなり、収入は減り、税金も上がりそうで、いよいよ割高な商品は売れなくなっている。高級品は売れているのだが、それは割高ではなく単に「高い」だけだからだ。コンパクトカー並の軽自動車も、もはや感覚的には割高な商品となってきた。これからはもっと安いクルマが必要というのはよく分かる。むろん環境のためにも、より低燃費であることは必須だろう。そこに分かりやすい経済性、環境性能を打ち出したミライースは、時代にマッチした商品だ。そしてこれから軽自動車はその方向で進んでいくのだろう。「あの素晴らしい軽をもう一度」と歌っても、もう手に入らない時代が来るような気がする。ミライースは時代にマッチしたクルマだが、乗っていると「祭りの後の寂しさ」を感じてしまう。「それはいいことだろう」と口ずさみながら。

 

さて、5年前のソニカ試乗記では、上戸彩のCMではクルマの良さが伝わりにくいと書いた。それもソニカ短命の理由だったような気がするのだが、今回の「ダイモツ・ミラウース」はどうだろう。高価なギャラのブルース・ウィリスを使うより、今こそTNPを連呼するCMでも作って、ブルースのギャラの分だけ余分にTNPを訴えた方が、より大衆の理解を得られるような気がする。どうにもブルースとミライースはミスマッチ。クルマにはソニカの反省が活かされているが、CMには活かされていないような気がするのだが・・・。


試乗車スペック
ダイハツ ミラ イース G
(0.66リッター・CVT・112万円)

●初年度登録:2011年9月●形式:DBA-LA300S ●全長3395mm×全幅1475mm×全高1500mm ●ホイールベース:2455mm ●最小回転半径:4.4m ●車重(車検証記載値):730kg(470+260) ●乗車定員:4名

●エンジン型式:KF ●排気量・エンジン種類:658cc・直列3気筒DOHC・4バルブ・横置 ●ボア×ストローク:63.0×70.4mm ●圧縮比:11.3 ●最高出力:52ps(38kW)/6800rpm ●最大トルク:6.1kgm (60Nm)/5200rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/30L ●10・15モード燃費:32.0km/L ●JC08モード燃費:30.0km/L

●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイル/後 トションビーム+コイル ●タイヤ:155/65R14 (Yokohama BlueEarth) ●試乗車価格:-円 ※オプション:- -円 ●ボディカラー:コットンアイボリー ●試乗距離:約230km ●試乗日:2011年10月 ●車両協力:名古屋ダイハツ株式会社

 
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