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日産 モコ新車試乗記(第222回)

Nissan Moco






2002年06月01日

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キャラクター&開発コンセプト

いよいよ日産も無視できなくなった不況知らずの軽市場

日産・モコは軽自動車最大手であるスズキから供給されるOEM(Original Equipment Manufacturing)車である。早い話が、昨年(2001年)12月にスズキから発売されたMRワゴンだ。軽自動車のOEMは他に、同じスズキからマツダがある(スズキ・アルト→マツダ・キャロル、ワゴンR→AZワゴンなど)。ただし今回のスズキ→日産のOEMはこれまでにない形で、大きな話題となった。

まず、巨大企業である日産がついに軽自動車マーケットに進出するという点。400万台/年という国内普通車市場とは別に、200万台弱/年という規模のこの巨大市場を、今まではスズキ、ダイハツ、ホンダ、三菱、スバル(そしてマツダ)が押さえてきた。そこに資本力や販売力において圧倒的な日産が参入したことは脅威のはず。逆に日産にとってはシェアを一気に拡大する可能性がある。

また、これまでは全国3000店の日産ディーラーでは得意客の軽自動車ニーズに対して、当然他社の軽自動車を何らかの形で販売するか、他メーカー販売店を紹介するしかなかった。しかしこれからは「NISSAN」バッジをつけたクルマを堂々と売ることが出来る。そのメリットは大きいはずだ。

それは日産だけだった

軽自動車市場はその特殊な規格のため、新規参入の難しい聖域と化している。全長3400mm×全幅1475mm、排気量660cc以下のクルマを作るのは、盆栽作りのような特殊なノウハウが必要だ。しかし維持費などが圧倒的に安い軽自動車の市場規模が、今後小さくなるとは考えにくい。また環境規制などにより、小さなクルマの需要は高まる方向にある。それらに対応するポテンシャル確保という点で、日産が軽自動車セグメントに進出したのは当然だろう。すでにトヨタはダイハツを事実上の傘下におさめており、国内大手メーカーで軽自動車のないメーカーは日産だけだったともいえるのだ。

販売はまずまずの滑り出し

4月10日にデビューした日産・モコはOEMとは言え、専用のフロントデザインが与えられるほかABSを全車標準化するなど、日産のプライドが随所に感じられるクルマになっている。目標台数は4000台/月。日産から発表された4月のモコ販売実績は3961台(20日間で)とまずまずの滑り出し。ちなみに4ヶ月早くデビューしたMRワゴンの販売台数は3月が約11,000台、4月が約6300台である。3月より売れなくなる4月でもモコと合わせると1万台近く売れているわけで、スズキは大喜びだろう。

価格帯&グレード展開

マーチを越えた!? 高めの価格

グレードは計3つ。廉価版「B」(2WDで100.3万円)はオーディオやプライバシーガラスなどを省略。実際の売れ線はそれらを装備する「Q」(同116万円)となる。

ターボエンジンを持つトップグレード「T」も主力。オートエアコン、アルミホイールなどが付く。さらにターボパワーも加わって、価格は「Q」のたった9万円アップ。ただし、お値段は125万円(2WD)~136.2万円(4WD)と、同社の新型マーチ(95.3~132万円)と車両価格は充分にタメを張る。しかし維持費、キャラクターが両者はまったく異なり、この2つが競合することはないと日産は見る。

パッケージング&スタイル

本家より目を引く、未来的なデザイン

基本的に同じクルマゆえ、パッケージングはMRワゴンと変わるところはない。詳しくは過去のMRワゴン試乗記をご覧いただきたい。

簡単にまとめれば、スズキ・ワゴンRより100mm長い室内長などにより、前後に広いキャビンが特徴。後席は前後に105mmスライドし、ダブルフォールディングが可能。立体駐車場の目安となる「1550mm」にこだわらなかった1590mmの全高により、頭上空間も充分。横方向の余裕はないが、パッケージングはほぼ完成の域に達している。

モコのオリジナリティは主にデザインに発揮されている。最も目立つのは「顔」。専用ボンネットおよびバンパー、グリルが与えられ、日産車のアイデンティティであるウイングマークを形作る。ヘッドライトはMRワゴンと共通。あっさりし過ぎた印象のMRワゴンに比べ、モコはディテールに適度な主張があって、トヨタ・エスティマの軽自動車版のような未来的モノフォルムとうまくマッチしている。ある意味、本家MRワゴンを食ってしまったカッコよさだ。

一方で、リアはテールランプをクリアレンズ化し、バッジを変えた程度。ほかに外観でモコ専用となるのはホイールキャップのデザインと外装色に追加されたモコグリーンなどである。

明るい色使いが楽しいインテリア

インテリアは最近の日産車と同じ路線、すなわちベージュ系の明るい色調がメイン。MRワゴンでは地味なグレーもあった樹脂パーツは、明るいベージュのみに。ソフトパッドかと念のため指先で確かめたくらい、質感は上々だ。

また、シートやドア上面に張られるベロア調生地はタンとターコイズ(ブルー)の2色。明るい色合いに加えて、手触りが気持ち良い。アームレストが前後に付き、立派なヘッドレストが4つ付くなど、見た感じはとても居心地良さそう。ただしシート自体は前後共にやや平板でクッションも薄目。後席はもう少し座面長が欲しいが、それはさすがに要求する方がムリというものか。足元の広さもあって「4人乗りの軽でいける距離」なら好評なまま目的地に到着できるだろう。

その他、モコ専用の装備として、MRワゴンのブルーからグリーンに変更された盤面発光式のスピードメーター。デザイン性や見た目だけでなく視認性も高い。

基本性能&ドライブフィール

「HELLO」という挨拶からスタート

ドライブトレーンは基本的にMRワゴンと変わらない。オールアルミ製の660cc直3DOHCのスズキ車おなじみの「K6A」。NA(54馬力/6.4kgm)とターボ(60馬力/8.5kgm)の2タイプ。ミッションは全車コラム式の4速AT。

キーを回してまず気付くのが、液晶式のオド/トリップメーターに「HELLO」の文字が流れること(MRワゴンも同じ)。ちょっと嬉しい。クルマのアイボ化はこんなところから進んでいる。MD/CDデッキもスイッチを入れれば「HELLO」がでるが、こちらはちょっとウザイ、と思うのはなぜ?

ノンターボではやや苦しい走り

エンジン、シャーシーともMRワゴンと基本的に共通。こちらも過去のMRワゴン試乗記を参考にしてほしい。

今回試乗したのはNAモデルの「Q」。MRワゴンと同じく、850kg(2WD・NAモデル)の車重と自然吸気エンジン(54ps)の組み合わせ。よって動力性能については期待せずに走り始めた。が、やはりアンダーパワーは否めない。パワーウエイトレシオは15.7kg/psと、相当ツライ数字。これは例えばマーチの1.0リッター(920kg/68ps)の13.5kg/ps、トヨタ・ヴィッツの1.0リッター(870kg/70ps)の12.4kg/psに比べても、圧倒的に不利。ちなみにeKワゴン(790kg/50ps)の15.8kg/psと、ほぼ一緒である。

ただし、交通の流れに乗ってのんびり走る分には問題ない。吹け上がりは滑らかだし、いったん流れに乗ってしまえば、出来の良い4速ATと優れたシャーシもあって充分に快適だ。問題は加速時にどうしても1速(45km/hまで)ないし2速(90km/h手前まで)にキックダウンし、そのたびにウワァーーーンと盛大にエンジン音が高まること。同じエンジンながら70kg軽量なアルト・ラパン(14.4kg/ps)の場合、もう少し余裕があったのでやや残念。

高速走行はベタ踏みで120km/hチョイオーバーといったところ。もう少し伸びると楽だが、まあ十分。4速でもあり100km/h巡航は快適といってもいいレベル。3速の軽とは比べるまでもない。ただ横風は注意が必要だ。セカンドカーとして乗るのが前提なら満足のいくレベルだろう。

安定感のあるシャーシ。電動パワステは軽すぎる

ワゴンRと比べて、ロールが少ない割に乗り心地は犠牲になっていなかったMRワゴン。今回のモコもその印象に変わりはない。しかしこの辺りは比べる対象や乗る人の期待度で大きく左右される。あえて最近発表された新型マーチやヴィッツと比べると、やはりステアリングを大きく切り込んだ時のグラリ感は強い。またトレッドが狭く、背の高いボディを安定させる必要から、サスペンションがやや固めなのは仕方ないだろう。

一方、MRワゴン同様にフィールがなく軽過ぎる電動パワステには疑問が残る。いくら女性がメインとは言え、これほど軽くする必要はないはずだ。ステアリングの手応えはハンドリングの印象を決める上で重要な要素。軽ければいいというものではない。ただし操縦性は安定したアンダーステアに仕付けられおり、高いシャーシ性能を見せる。

ABSの標準装備化は他社も見習うべきだ

高く評価したいのは全車標準装備となっているブレーキアシスト付きABSだ。フル制動&パニック制動時にもリッターカー(今やABS装備は当たり前)と遜色ない安定性を保って減速・緊急回避することができる。しかもABSがオプションのMRワゴンと比べると、その価格差はわずか2.5万円。初心者が乗ることが多く、また操縦安定性の確保が難しい軽自動車にはとても有効なディバイスのはずだ。ABS標準化はこの点において「普通車メーカー」日産らしい選択だと思う。

ここがイイ

やっぱりスタイルはカッコイイ。ミニエスティマ、軽の中では出色のデザイン、未来っぽい、と絶賛しておこう。

今回はノンターボに乗ったが、MRワゴンと比べ加速、乗り心地がよくなっているように感じた。これは半年でマイナー改良が進んでいるためか、あるいは日産の要望によるものか。MRワゴンではターボをおすすめしたが、モコはノンターボでも十分と思う。

ここがダメ

強いて言えばこのスタイルは一般ウケするものではないのかもしれない。4月の販売ランキングではMRワゴンは新型車ながらeKワゴンの下、4位に甘んじている。上位4車種はプレーンなミニバンルックで、ワゴンRの半分ほどの台数だ。ただしモコが加わることで2位あたりまで浮上してくることになり、数ヶ月でこのカタチが日本一売れているクルマになる可能性も。でもそれって、販売力の差であり、このカタチがウケたというのとはちょっと違うような気もするのだが。

総合評価

「日産ユーザーの22%が別に軽を保有しており、それを日産ブランドにすれば一気にシェア獲得だ」というマーケティングで登場したのがモコということになる。クルマ作りの志を評価したいモーターデイズとしては、こういう安直なクルマは評価できないといいたいところだが、ハードウェアとしてのMRワゴンは高く評価しているので、困ってしまう。MRワゴンがよくて、モコがよくないとは言えない(苦笑)。

では今後の日産の動きはどうなるだろう。モコは月販4000台が目標だが、全国3000店の日産ディーラーに、月にたった1台ほどのノルマをかければすぐに達成できる。販売のポテンシャルはこんなものではないので、売れ行き次第で、次の車種を投入してくるのは間違いない。ちなみに日産ユーザーは650万人ほどおり、22%は143万人。これだけの顧客を持っているわけで、「次は自社開発でしょう」と期待を膨らませないわけにはいかない。

欧州ではAセグメントのミニカー開発が各メーカーで始まっていることだし、スマートという現実もすでにある。小さいクルマを日産(ルノー)が作ることに何も問題はないはずだ。と思ったらすでにあったことを思い出した。EVの「ハイパーミニ」。二人乗りのこのクルマは軽サイズ。スタイルも全然カッコイイし、これにスズキからエンジンを供給してもらえば、一丁上がりだ。

こうなるとトヨタもe-comにダイハツのエンジンを載せて軽市場へ進出してくるはずで、国産二人乗り軽自動車戦争が勃発するかも。これこそ望むところなのだが、はたして…。

公式サイトhttp://www2.nissan.co.jp/MOCO/

 
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