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ダイハツ ムーヴ カスタム RS リミテッド新車試乗記(第246回)

Daihatsu Move Custom RS Limited

(4気筒ターボ・2WD・4AT)

2002年11月30日

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キャラクター&開発コンセプト

3代目ムーヴは、従来通り硬軟2タイプ

2002年10月15日に発売された今回のムーヴ。'95年発売の初代、'98年の新規格施行時の2代目に続く3代目となる。新規格以来4年目でのフルチェンジは他車に先駆けるもの。従来通り、おとなし目の「ムーヴ」とスポーティな「ムーヴ・カスタム」の2タイプで展開。ダイハツによれば前者のコンセプトは「生活革新!エキサイティングミニバン」、後者は「モバイル世代のラジカルボックス」。

今年に入って月平均1万台をコンスタントに売りぬく軽自動車は、スズキ・ワゴンR、三菱eKワゴン、ホンダ・ライフ、そしてモデル末期ながら先代ムーヴの計4台だ。ダイハツから月6000台目標で発売されたMAXも好調だが、やはり大黒柱は(今やミラではなく)ムーヴ。新型は1万4000台/月に目標を設定。ワゴンRにフルチェンジで先手を打ち、土壇場ヒットで先行したeKワゴンを追撃する。

一方、フィット、イスト、マーチ、キューブなど、それぞれ1~2万台/月を売り抜くリッターカーが注目を集める昨今、いまや軽自動車のライバルは他社の軽自動車に加えて、これらの小型車だ。車両価格自体はすでに下克上状態。軽規格改正以後、性能や商品力の点でも差は無くなりつつある。あるのは税金を含めた維持費の差だけといえるほどだ。

室内空間と質感が劇的にアップ。もはや小型車に並ぶ

そんな中でフルチェンジしたムーヴの特徴は従来の1730mmから1920mmと、室内長を一気に19cm!も伸ばし、室内幅も8cm!広げるなど、大幅に進化したパッケージング。当然、操縦安定性や能動・受動安全性能、環境性能のアップも著しい。さらに目立つのは内外装の質感アップだ。軽自動車の中でトップの広さと質感を誇るといってもいい。

価格帯&グレード展開

87.8~146万円までワイドレンジ

ムーヴのグレード展開は標準仕様のL(87.8~94.8万円)、X(106.9万円)、R(124万円)の3段階。11.2万円プラスで4WDとなる。Lグレードにのみ5MTがある他は、すべて4AT。

ムーヴ・カスタムの方は、カスタムL(109.9万円)、カスタムX(117.9~119.7万円)、カスタムR(130万円)、カスタムRS(138万円)、カスタムRSリミテッド(146万円)の4段階。同じく11.2万円プラスで4WDとなる。カスタムXの一部グレードにCVT仕様が、また、カスタムXとカスタムRの4WDに5MT仕様がある。

エンジンはNA1種類、ターボ2種類

仕様は相変わらず豊富。エンジンは3種類。L/カスタムLとX/カスタムXが3気筒NA(58ps)、R/カスタムRが3気筒ターボ(64ps)、カスタムRSが4気筒ターボ(64ps)。バックドアは先代と同じ横開きだが、一部グレードでは1~1.5万円のオプションで跳ね上げ式が選べる。至れり尽せりのラインナップは、スズキ同様、やはり「売れてるクルマ」ゆえ。ただし、組み合わせによってはオプションの選択に無理が生じる場合があるから、カタログと首っ引きで検討する必要はある。

パッケージング&スタイル

極限のパッケージング!

サイズは全長3,395×全幅1,475×全高1,610~1,630mm。先代ムーヴに比べて、少し背が低くなったかなというくらいで、外寸は大きく変わらない。ただしホイールベースは30mm増しの2,390mm。軽規格改定時の軽自動車のホイールベースは各車、最大2,360mm程度で横並びだった(1ボックスタイプを除く)。その辺りが限界と思ったのだが、まだ甘かった。2,390mmはヴィッツ(全長3,640mm)のホイールベース2,370mmを越える数字。いかにムーヴのパッケージングが極限かが分かるところだ。

外寸ほぼ同じで、室内空間だけ劇的アップ

しかも室内空間の増え方は、ホイールベース延長分を大きく上回る。室内長は先代比190mmアップ(一部グレード除く)。実質的な広さを表す、前後の乗員間隔は105mmアップの940mm。そして室内幅は80mmアップの1,300mm。え、どこにまだそんな余裕あったの? という感じだ。頭上空間も変にスカスカしておらず好ましい。

特に1475mmの規制+側突対策でほぼ限界と思えた室内幅が、ほとんど小型車レベルに拡大されたのはスゴイ。実際、横方向はほとんど圧迫感のないレベルに達していて、しかもドアの薄さも感じられない。かつての軽自動車とは、そしてライバル車とはまさに別物。外寸を変えずに空間を確保。これこそまさにパッケージングの王道。ヨーロッパのメーカーのエンジニアやデザイナーが研究用に持ち込まれた日本の軽自動車を見て第一に驚く点がパッケージング、らしいが、彼らにはこのムーヴを見てもう一度驚いてもらわねばならないだろう。

「軽自動車=安っぽい」は過去

エクステリアのデザインはとても洗練された。全体の大まかなシルエット、フロントとリアのライト形状、6ライト(片側3つ)のウインドウなど、基本モチーフは同じだが、クオリティ感は大幅に向上した。ボディサイドにエッジの立ったキャラクターラインが入り、フェンダーもオーバーフェンダー風で大きくハッキリパッチリ。先代の中途半端な感じは払拭され、破綻のないルックスとなった。塗装も高級感があり、外板の質感の高さは完全にクラスレス。軽自動車だからと言って見た目が「安っぽい」という時代は完全に終焉を遂げた。思わず合掌(笑)。

普通のムーヴはファミリーなイメージ、ムーヴ・カスタムがストリート系のちょっと危ない?感じでまとめられるのも先代と同じ。ただし普通のムーヴはそうとうおとなしく、ムーブ・カスタムは丸目4灯ヘッドライトやエアロパーツでそれなりの押し出しはあるものの、先代ほどの「ヤンキー」な感じはなくなっている。その意味では先代ムーヴを支持したユーザーの期待に答えきれるかはやや疑問。

内装の質感はトヨタ車かと見まがうほど

新型ムーヴの内装にはもはやかつての軽自動車というイメージはなく、リッターカークラス(1.5リッターまで含む)と比べるべきもの。各パーツの完璧なチリ合わせ。インパネのそこかしこで星のように瞬くオレンジの透過照明。ダンパーこそないが、ピシッと閉まるフタ付きの小物入れ。横方向に余裕が出来たこともあって、そのクオリティは軽自動車に乗ってることをほとんど、と言うか完璧に忘れさせる。ダッシュボードの樹脂はハードタイプだが、それも爪先でよく確かめないと分からない。ファンシーっぽさはまったくなく、ドイツ車っぽいカチッとした雰囲気だ。

軽自動車がこんなに豪華になってどうする、という意見もよく聞くが、否応なしに品質が向上していくのは日本車の定め。まあ車両価格も小型車をすでに(一部)越えてるが。

ユーティリティも最新レベル

リアシートは先代比100mmアップの250mmロングスライドが可能。荷室をほぼ潰して後席足元を優先したリムジン状態から、逆に後席足元をミニマムにして荷室を優先した状態まで自由自在。

さらにワゴンRやフィットなどでお馴染みの、ワンタッチで後席を床下に折り畳める「ワンモーション荷室フラット機構」も採用。従来の跳ね上げ式より大幅に操作が簡単になった。eKワゴンや日産のマーチ/キューブなど、背もたれをパタンと折り畳むだけのタイプも簡単は簡単だが段差が残る。やはり床がフラットになるこの方法がベターだろう。操作自体もスマートで、収納時の見た目も美しい。

バックドアを含む5つのドアの開口角は90°つまり直角。これは体の不自由な人の乗り降りや荷物の積み下ろしの際にとても助かるはずだ。

ヒカリモノ&小物入れ充実

またルームランプに加え、前席と後席にそれぞれ左右に設けたリーディングランプや、全ての操作スイッチに照明が付けられるなど、「ヒカリモノ」装備も徹底。なにせドリンクホルダーのマークまでオレンジ色に光るのだ。

収納スペースはいたるところにあり、計22個。一つ一つが小さく、フタ付きのものが多いのが人によっては使い勝手を左右するだろうが、見た目はなかなかいい。

基本性能&ドライブフィール

最上級4気筒ターボに試乗

試乗車はムーブ・カスタム・RSリミテッドの2WD(146万円)。ムーヴ・シリーズの最上級モデル。ミッションは4ATのみ。ステアリング上のボタンでマニュアル操作できるステアシフトを標準装備する。

RSおよびRSリミテッドはムーヴで唯一4気筒のターボエンジン(64ps/6,000rpm、10.2kgm/3,600rpm)を搭載。3気筒に比べて低速トルクで不利と言われる4気筒ターボ。実際同じRグレードに搭載される3気筒ターボ(64ps/6,400rpm、10.5kgm/3,200rpm)に比べて、最大トルク数値は低く、発生数値は高い。それでもあえて4気筒を揃えたのは振動の少なさや静粛性の高さ、高回転の滑らかさを備えるからだ。

上まで滑らか。NAみたい

確かにこの4気筒ターボ、レッドゾーンの8,500回転まで滑らかに吹け上がる。最初のうちは、ターボ独特のタイムラグを持つ吹け上がりにかなりの違和感を覚えた。CVTかと思うほど、アクセル開度と速度の一致感がない。ターボが効く域からワンテンポ遅れて急速な加速がついてくる感じなのだ。トルクが薄くパワーで走る感じ。そこでエアコンのスイッチを入れると、少しこの唐突感が弱まった。パワーがエアコンに食われる分、唐突な印象がなくなるようだ。

とはいえアクセルの踏み加減をうまく調節できるようになれば細いトルクもうまくコントロールできるようになる。車重は870kgゆえ、その気になったときの加速に不足はない。ただ上まで回すとノイズがそれなりに高まり、ギンギンに引っ張って走る、ということはしたくなくなる。このあたりはちょっと矛盾した部分だ。

ステアシフトはモード切替ボタンが面倒

RS/RSリミテッドに装備される「ステアシフト」は、ステアリング左右のプラス(上側)/マイナス(下側)ボタンで4速ATをマニュアル操作。ボタンの配置は最新型ポルシェのティプトロニックSと同じで親指だけで操作可能(あちらは5速だが)。好みにもよるが、オートマのマニュアルモードとしては最も操作しやすい方法の一つだろう。問題はセンターコンソールに配置されたモード切替スイッチ。これを押してマニュアルモードにするのだが、場所が場所だけにとっさに押しにくく、ブラインドタッチも難しい。マニュアルモードになったかどうかも、液晶表示の小さな「M」という文字の有無で確認するしかなく、たいへん分かりにくい。仕組み自体は良く出来ているので、ぜひインターフェイスの改善をしてもらいたい。

クラス随一のシャーシ

ベース車から20mmローダウンされ、165/55R15という立派なタイヤのRS/RSリミテッドだが、乗り心地はとても良い。まったく問題ないと言っていい。素晴らしく剛性感の高いシャーシは重厚かつ滑らか。設計が新しいから当たり前と言えば当たり前だが、軽自動車の中で今のところベスト・シャーシだろう。正直言って、一部現行リッターカーも負けるかな、と思えるレベルだ。

とは言え、重心が高くトレッドも狭いので、やっぱりワインディングは苦手。ロールは大きめでそこそこのハイペースは維持できるものの、楽しいと思えるものではない。基本的にアンダーだが、接地感が薄く、サスの底付き感もあり、スポーティに遊べるとはいいがたい。

水を差すのはリミッターのみ

パワー十分。高回転も滑らか。シャーシの出来も良い。遮音性も高いとあって、高速巡航はもちろん得意。4速トップの100km/h巡航は3,500回転ほど。静粛性、乗り心地、操縦安定性ともども「1リッター以下のクラス」として最も優れたレベルで、快適に走行できる。当然、5千回転も回さないうちに140㎞/hの手前あたりでスピードリミッターが作動。こうなるとこのクルマにとって走行車線はちょっとじれったいし、追い越し車線では時に不足が出る。小型車並みのエンジンの余裕があるだけに、リミッターが有名無実化しているような気がする(軽も法定速度は100km/hになっているのだから)。

ここがイイ

フルチェンジの威力はすごい。前述のようにパッケージングから質感、走りまで、「これでホントに軽?」というところまで来てしまっている。それに加え、クラウンにも負けない衝突安全性、6エアバック(カーテンシールドエアバックまである)、VSC(ダイハツではDVS II)、オプションとなるがブラインドコーナーモニター、軽初のレーダークルーズコントロール、メールやwebがみられるマルチインフォメーションDVDナビ、スマートキー、さらには試乗車でも優-低排出ガス仕様で18km/リットルの低燃費(58馬力エンジンでは超-低排出ガス仕様で22km/リットル)など、ありとあらゆる高機能をテンコ盛り。ものすごい商品力アップだ。最強の軽であることは間違いない。

ここがダメ

ステアシフトだが、4速との組み合わせでは実用的な意味は薄い。もともとこの軽自動車に必要かという疑問もあるが、他社のCVT疑似7速あたりだとゲーム感覚で変速遊びができるという意味で「まあ、あってもいいか」と納得できる。しかし4速では各ギアの守備範囲が狭すぎて使う気になれなかった。

また電動パワステが軽すぎる。センター位置でも遊びが大きく曖昧な感覚があって不満が残った。これくらい軽い方が街乗りではいいのかもしれないが、カスタムの性格にはあっていない。

総合評価

いや驚いた。この出来の良さは何、という感じだ。もう軽の枠の中ではこれ以上ないと言うところまで来てしまっている。ボディデザインも破綻なくまとまり、Cピラーの下方が太いのも個性があっていい。先代まではどことなく田舎臭い感じがあったがすっかり都会派に変身している。標準のムーヴはたいへんおとなしいルックスで、ちょっと押しの不足を感じるが、カスタムは過激すぎずオシャレささえある。こちらで統一してしまってもいいんじゃないかと思えるほどだ。シートは先代から続く、さらりとした感触が好ましい網目のメッシュ風の生地だが、静電気予防効果もあるらしい。これも高ポイントだ。

しかし、こうなるとまたまた軽の存在意義が問われるところ。後席などはヴィッツより広いと感じるほどだし、ターボなら走りも上、質感も上かもしれない。それでいて圧倒的な維持費の安さは小型車から見れば反則でしょ、といいたくなるはず。トヨタが怒るのもわかるところだが、ダイハツも考えてみればもはやトヨタ。特にこのムーヴは完全子会社化してからの開発車でもあり、トヨタクォリティと考えればこの高品質感も納得できる。デザインにしても、ずいぶん洗練されたのはそのせいかもしれない。ストーリアがデュエットとなっても違和感がなかったように、フロントのDマークがTマークに変わってもそのまま通じてしまう、ムーヴはそんな軽自動車だ。

表向きは軽自動車制度に怒りながら、子会社ではそれなりのクルマを作ってしまうトヨタは、軽自動車の枠を壊すこともいずれ自らやりたいのだろう。軽と小型車の境がなくなった時、その時は軽の維持費が高くなるのだろうか、それとも小型車の維持費が安くなるのだろうか。今のご時世なら小型車が安くなるのが自然なところ。重量税などとにかくクルマの税金は高すぎるのでは(最たるものはガソリン税だが)という論議は、トヨタの旗振りでもある。期待して見守ろう。

試乗車スペック
ダイハツ ムーヴ カスタム RS リミテッド(4気筒ターボ・2WD・4AT)

●形式:LA-L152S●全長3,395mm×全幅1,475mm×全高1,610mm●ホイールベース:2,390mm●車重:870kg(F:550+R:320)●エンジン形式:JB-DET●659cc・DOHC直列4気筒16V ターボ・横置き●駆動方式:前輪駆動●64ps/6,000rpm、10.2kgm/3,600rpm●10・15モード燃費:18.0km/L●タイヤ:165/55R15(ダンロップ SP-300)●価格:146万円(試乗車:146万円) ●車両協力:名古屋ダイハツ株式会社

公式サイトhttp://www.daihatsu.co.jp/move/index.htm

 
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