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ダイハツ ムーヴ カスタム RS新車試乗記(第438回)

Daihatsu Move Custom RS

(0.66Lターボ・CVT・155万4000円)

初代登場から11年。
すべてを一新して生まれた
「究極の軽」の実力は?

2006年11月04日

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キャラクター&開発コンセプト

デザイン、シャシー、エンジンの全てを一新

2006年10月5日、ダイハツの軽トールワゴン「ムーヴ」の4代目が発売された。スタイリングは従来のスクエアなものから一転して、流麗なモノフォルムへ変身。エンジンにはエッセで登場した自然吸気3気筒の「KF-VE型」、もしくはソニカの3気筒ターボ「KF-DET型」を採用し、新型4ATやソニカ譲りの新型CVTと組み合わせる。さらにホイールベースが100mm伸びて2490mmになるなどシャシー面でもドラスティクな変化を遂げている。

高級車と肩を並べる先進装備

装備面もレーダークルーズコントロールに加えて、軽初のプリクラッシュ・セーフティ・システムやニーエアバッグを採用するなど、もはや普通車どころか高級車と肩を並べる内容だ。トップグレードの「ムーヴカスタムRS」には16インチタイヤ(165/50R16)も奢られる。販売目標は月間1万2000台だ。

価格帯&グレード展開

NA・5MTからターボ・CVTまで

ラインナップはNA(自然吸気エンジン)の「ムーヴ」(101万8500円~123万9000円)と、NAとターボの「ムーヴカスタム」(116万5500円~155万4000円)の2本立て。トランスミッションは5MT(ムーヴのみ)、主力の4AT、上級グレードのCVTの3種類。4WDは12万750円高だ。

価格(バリュー)で選べば110~120万円台のNA・4AT車、燃費重視なら120~130万円台のNA・CVT車、性能なら140~150万円台以上のターボ車と考えていいだろう。今回の試乗車はCVTとターボの両方を備えた最強の(それゆえ高価な)「カスタムRS」(155万4000円)だ。

パッケージング&スタイル

モノフォルム風へ宗旨変え

全長と全幅はいつもの軽自動車枠(3395mm×1475mm)。全高は試乗したカスタムRSの場合、ローダウンのおかげで15mm低い1615mm。ラインナップ中、唯一の16インチタイヤが精悍だ。モノフォルムのスタイリングは従来のムーヴと異なるイメージで、欧州風に洗練されている。それでも随所に従来ムーヴやダイハツ共通のモチーフが使われているので、見慣れてくると確かにムーヴだ。試乗車のボディカラー「アストラル・ブラック・クリスタルマイカ」は一見ブラックに見えて、光があたると妖しいグリーンに光る凝ったもの。

軽に「限界」の2文字はない

ホイールベースは驚愕の2490mm。三菱「i」は2550mmだが、あちらはエンジンをホイールベース間に積むリア・ミッドシップ車。全長が3400mmに規制される軽のFF車では極限と思える数値だ。もっとも、軽規格改正後の2代目ムーヴのホイールベースは2360mm、先代の3代目ムーヴは2390mm、タント/ソニカは2440mmと着実に成長?し続けているから、限界は無いのかもしれない・・・。

究極のパッケージングを実感

メーター左右にスリットを設けたセンターメーターは微妙に運転席側にオフセットされていて、視認性は良好だ。室内幅は1350mmと軽最大で、規格改正前(全幅1400mm未満)ならまず実現できなかった広さ。軽自動車における究極のパッケージングが実感できる。

キーを携帯したままクルマに接近するだけでロックが解除され、エンジンを始動できる「キーフリーシステム」(上級グレードに標準装備)はなかなか便利。なのにステアリングのチルトや座面の高さ調整をオプション(1万5750円)としたのは、つまらないコストダウンだ。

横開きのバックドアを受け継ぐ

255mm前後スライドするリアシートを最後端にすれば、言うまでもなく後席は広々。足元はフラットだし、シートのサイズもまずまず。トランクを広げたい時は、シートを前に出し、それでも足りなければ背もたれをパタンと前に倒せばOK。きわめてシンプル。歴代ムーヴ共通の横広き式バックドアは、狭い場所でも開け閉めがしやすい。

基本性能&ドライブフィール

段違いの進化

試乗した「ムーヴカスタムRS」は、ソニカと同じ3気筒ターボ「KF-DET」(64ps、10.5kg-m)とCVTを搭載した看板モデル。値段(155万4000円)が値段だけに、ヴィッツ、フィットと比較したくなるが、確かにこのムーヴ、リッターカーが相手ならイイ勝負しそうな実力を持つ。ボディ剛性が高いのは言うに及ばず、もはやターボかどうか確信が持てないほどリニアな加速感には、正直唸らされる。運転感覚の自然さは車高が低いソニカに一歩譲るものの、軽規格のイビツさは克服された、と言いいたくなる完成度だ。

乗り心地は16インチタイヤとローダウンのおかげでドイツ車のように固めだが、しばらく乗っていたら気にならなくなってしまった。コーナーではこの足回りがモノをいい、それなりに重心の高さを見せつつも、驚くほどスムーズでリニアな走りを見せる。要・不要はさておき16インチは見た目だけではないようだ。先代が一般的な速度では問題ないが、飛ばすと軽自動車らしい限界を見せたことを思うと、ポテンシャルの向上は著しい。

CVTの面目躍如

アクセル全開で加速を試みても、発進は穏やか。その後は6000回転余をキープして車速を積み上げてゆくが、それも880kg/64ps=13.75kg/psというパワーウエイトレシオ相応のもの。つまりそんなに速くはないが、トルクはあるので力感は十分だ。

さらにアクセルを緩めて巡航体制に移るとCVTの面目躍如で、0.628×最終減速比4.800(ちなみにターボ4ATは4速トップで0.696×最終減速比5.050)のギア比により、100km/h時:3000回転ほどの平穏な巡航が可能になる。ちなみに80㎞/hだと2000回転ほどしか回らず、こうして低回転を維持すると車載燃費計で12km/Lくらいの数字が簡単に出るが、撮影を含めて130kmほど走った今回は最終的に約10km/Lに落ち着いた。

ここがイイ

軽を感じさせない高速走行性能。360cc時代の軽では120㎞/h巡航でエンジンを焼き付かせた経験があるし、つい最近の3AT軽でも120㎞/h巡航はかなり厳しかったものだが、このクルマではもはや高速道路の流れの中で軽を意識することは全くない。リミッターは138㎞/hあたりで効くが、この性能なら作動速度をもっと引き上げてもいいと思う。制限速度だって小型車同様になったのだから、そろそろ軽用のリミッター自体を撤廃してもいいだろう。

たった4年間でとんでもない進歩を遂げたパワートレイン。一昔前の660cc・4気筒ターボと違って、この3気筒ターボ+CVTは、実用性、燃費、快適性など全ての項目で優れている。高価なのが今のところネックだが、今後はこの性能が軽のスタンダードになってゆくはずだ。

レーダークルーズのみならず、プリクラッシュまで用意したこと。VSCやサイド&カーテンエアバッグなどとセットオプションで36万7500円(ムーヴカスタムRSのみ)という価格は、軽自動車としては非現実的だが、これも今後はどんどんコストダウンされるはず。

7エアバッグ(前面×2、サイド×2、カーテン×2、ニーエアバッグ)などオプションではあるが、普通車に匹敵するレベルの衝突安全対策。普通車(クラウンクラス)を相手にして50km/h対50km/hの前面衝突テストを行なうなど欧州車並みに念が入っている。ダイハツはミラなどの軽自動車を欧州に輸出しているので(エンジンは3気筒ながら1リッターまで拡大されるが)、これもそのあたりの展開を見越してのことか。

接近するだけでピピッと反応よくロック解除、遠ざかる時もピピッと施錠してくれるインテリジェントキー。子供を抱いたまま買い物やら送り迎えに忙しいお母さんにとって必需品になりそうだ。横開きのバックドアも、ちょっとした小物の出し入れにはとても便利。

ここがダメ

前述したとおり、試乗車ではシート高、ステアリング調整ができなかった。このため、これだけ良くできているクルマながら、乗っている間は今ひとつしっくりこなかった。特に小柄な女性の場合、調整機能は絶対に必要だろう。

今回の試乗車ですら標準のオーディオは2スピーカーで、音はかなりしょぼい。多少音楽を聴く人ならすぐにグレードアップしたくなるはず。

ACをオンにすると(コンプレッサーを動かすと)、コンデンサー冷却用の電動ファンが回り始めるが、このファンの車外ノイズがけっこう大きい。他の音が静かなだけに、ちょっと惜しい。

ホイールが大口径なだけに、隙間から見えるブレーキの貧弱さが視覚的には悲しい。特にリアはドラムのためスカスカ。ホイールハウスの隙間は気にならないだけにちょっと残念。

総合評価

ソニカといい、このクルマといい、最近のダイハツ車における完成度の高さは、凄まじいものがある。特にターボ車に限っては、この4年の間に日本で一番進歩したクルマかもしれない。キャリーオーバー型であった新型カローラより志は高い。販売的にもスズキが海外向け小型車生産に追われて国内向けを調整したため(スズキ談)、今年(2006年)はついにダイハツが首位の座を奪取するようだ。トヨタの子会社となって以降、製品の質も量も、ついにくるところまで来たというところか。

日本人は決められた枠の中で高品質なものを作らせたら右に出るものはいない、そんな気質、国民性があると思う。日本車も軽の枠、小型車の枠の中で切磋琢磨されてここまで良くなってきた。特に軽は新規格という少し大きな枠となったことで、著しい進化を遂げることになったわけだ。

最近の軽を見るに、そうした枠をギリギリまで使って最良のものを作るという点でコンプリートな商品になってきたと思う。「パーフェクト」ではなく、ここではあえて「コンプリート」という言葉を使いたい。ソニカやムーヴはまさにその頂点に立つ。正直、もう小型車はいらない、と思うほど、このムーヴは完成している。特に高速巡航に関してはCVTの良さがもろに出ている。東京・名古屋間を高速で移動するとき、今の東名の流れ方なら軽だろうと小型車だろうと、走りに関して大差は出ないし、今回のムーヴなら快適さにも不満がない。それでいて軽と普通車の走行料金差は1400円にもなる。つまり、1400円はユーザーにとって丸儲けになる。このままでは、いずれこの価格差を詰めるべきという論議さえ出てきそうに思える。

このように枠を設けて作られた商品は素晴らしく良いものができあがるのだが、枠がない商品だと日本は急に苦しくなる。確固たる信念でサイズを決めると言うことが不得意だからだろう。軽自動車枠を越えた幅をどのあたりで落ち着かせればいいかは微妙だし、小型車(5ナンバー)枠を越えて自由に作れる大型高級車のサイズについても、確固たる信念が感じられない。また軽よりさらに小さなクルマは各社チャレンジはしてみたものの、うまくいった試しがない。つまりここまでいい軽が作れるならコンプリートな「日本版スマート」だって作れるはずなのだが、それが出てこないのだ。日産による軽開発も噂されているが、外資系ともいえる「デザインの日産」ならそれができるかもしれない。

現状ではスバルがR1シリーズで小さな軽にチャレンジしているが、うまくいっていないのはご承知のとおり。しかしダイハツ同様にスバルもトヨタの傘下に入った以上、今後急ピッチで変わってくるはずだ。その場合、ぜひ今の「軽より小さい軽」の「コンプリート」な商品開発を行ってもらいたいと思う。ダイハツが「軽」でコンプリートなら、スバルは「独自の軽」でコンプリートを目指してもらいたいものだ。

軽自動車が今も日本人の生活と経済を支えているのは間違いないところ。そんな軽がクルマとしてコンプリートになったのは素晴らしいことだ。今後はさらなるハイテク装備の低価格化によって、ぶつからない軽自動車、ぶつかっても安全な軽自動車、高齢者にも優しい軽自動車へ進化していくだろう。ムーヴは様々なハイテク装備をオプション装備可能にして、その第一歩になっているという点でも高く評価したいクルマだ。

試乗車スペック
ダイハツ ムーヴ カスタム RS
(0.66Lターボ・CVT・155万4000円)

●形式:CBA-L175S●全長3395mm×全幅1475mm×全高1615mm●ホイールベース:2490mm●車重(車検証記載値):880kg(F:550+R:330)●乗車定員:4名●エンジン型式:KF-DET型●658cc・直列3気筒・DOHC・4バルブ・ターボ・横置●64ps(47kW)/6000rpm、10.5kg-m (103Nm)/3000rpm●カム駆動:チェーン●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/36L●10・15モード燃費:21.5 km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:165/50R16 (YOKOHAMA ADVAN A10)●試乗車価格:157万5000円(含むオプション:オプションカラー<アストラルクリスタルブラックマイカ> 2万1000円) ●試乗距離:約130km●試乗日:2006年11月 ●車両協力:名古屋ダイハツ株式会社

公式サイト
http://www.daihatsu.co.jp/showroom/lineup/move_custom/index.htm

 
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