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マツダ MPV 23C スポーティパッケージ新車試乗記(第413回)

Mazda MPV 23C Sporty Package

(2.3L・4AT・259.6万円)


2006年04月28日

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キャラクター&開発コンセプト

「スポーツカーの発想」で生まれたミニバン

初代MPVは1988年に北米で先行発売され大ヒット。日本でも1990年から発売された。1999年に2代目へモデルチェンジ。従来のFR・ヒンジ式5ドアから、時流にならってFF・両側スライドドアとなり、2列目が横にスライドする「カラクリシート」など使い勝手に工夫を凝らした。

2006年2月に登場したのが今回の3代目だ。基本的なキャラクターは従来通りだが、「スポーツカーの発想でミニバンを革新した」と主張するあたりが、RX-8やロードスターのあるマツダらしい。具体的にはシャシーを一新して走行性能や操縦性を向上。アテンザ等でおなじみの2.3リッター直4を主力に、同・直噴ガソリンターボ(3月20日発売)を新採用した。

国内の販売目標は月間3000台。基本的には国内専用車として開発されたようで、海外向けは香港で年間250台を「マツダ8」の名で販売する以外、今のところ発表はない(2006年4月現在)。目下、米国の方はMPVと並行して開発されたSUV「CX- 7」に話題が集中している。

価格帯&グレード展開

NAなら238万円~、ターボは280万円。

2.3 リッターNAの(238~259万6000円 ★今回の試乗車)と同ターボ「23T」(280万円)をラインナップ。それぞれで4WD(27~30万円高)が選べる。実際の購入場面ではさらに電動両側スライドドア、カードキー、スーパーリラックスシート等のセットオプションが欲しくなる。オートマチックは4速が基本だが、ターボもしくは4WD車では6速になる。

パッケージング&スタイル

スポーツカーのようにワイド&ロー

全長の4860mm(スポーティパッケージは4870mm)は現行エスティマより長く、アルファードとほぼ同じ。一方、全幅はアルファードの45mm増しとなる1850mmもあり、運転時の「大きいな」という印象を裏付ける。ホイールベースは2950mmと長いが、これはエスティマと同値。今やこのクラスの基準となるサイズだ。

もう一つ比較したいのが日産プレサージュ。MPVの方が全長で+20mm、全幅で+50mm、ホイールベースで+50mm大きいだけで、全高は同じ。そういえばデザインもよく似ているが、MPVの方が低く薄く見えるのはデザイン力か。ワイド&ローは確かに「スポーツカーの発想」だ。

サイドモニターやG-BOOKを採用

視界の広がり方は窓のグラフィックスが似ている日産プレサージュっぽい。ナビの方はトヨタのライン装着品と中身はまったく同じもので、トヨタと提携が決まっているG-BOOKアルファもこのMPVから採用されている。ライン装着のナビ装備車では、フロント、サイド、バックモニターが備わるが、サイドモニターの見え方はトヨタのそれと言うより、日産のものによく似ている。夜間はメーター照明およびLEDの間接照明が青く光る。

マツダ・プレスリリース>MAZDA G-BOOK ALPHAを導入(2005年10月5日

快適至極「スーパーリラックスシート」

インテリアで最大の見所は2列目の「スーパーリラックスシート」(オプション)。オットマンは現行エスティマでもあったが、座面の角度調整ができる点や、安眠枕みたいに首を支える大型ヘッドレストによって「筋力負担の低減や血液循環を促進」(プレスリリース)するという。実際、下手なマッサージチェアよりも快適だ。

ただ、前後スライドの調整幅は現行エスティマの800mmの半分以下となる330mm(これでも、先代の135mmより大幅に増えているが)。なので一番後ろに下げても、フロントシートとオットマンの位置によっては、足がつかえてしまう。現実に困るという状況は少ないはずだが、ミニバン型リムジンを目指したエスティマとはコンセプトの違いが現れている。

もちろん、先代で好評だった2列目左側の左右スライドも踏襲。右側に寄せると3名乗車が可能なのは今回が初めてだが、この点も日産プレサージュと同じだ。従来は7人乗りだったが、これで法的には8名乗車が可能になった

床下収納式ながら快適な3列目

セカンドシートの人に遠慮なく「リラックス」されると、足元が苦しいサードシート。しかし、前の人に気遣ってもらえば大丈夫だ。ウォークスルーできる「谷間」のおかげで見晴らしも良いし、シートの作りや雰囲気も良い。床下収納式とは思えない居住性だ。

トランクの下にトランク

サードシートの操作は、荷室側からストラップを引っ張るワンアクション(オプションで電動もあり)で、先代よりぐっと簡単になった。3列目使用時で357Lと十分な容量の荷室、さらにその床下には巨大な「アンダートランク」(容量109L)が備わる。試乗車にはBOSEのサブウーファーが固定されていた。スペアタイヤはオプションで(代わりにパンク修理キット。スペアタイヤを積むと当然アンダートランクは狭くなる)、薄型ガソリンタンクを採用。マフラーは両側に振り分けてある。

基本性能&ドライブフィール

NAの4ATでも十分

試乗車のグレードは、アテンザ等でおなじみの2.3リッター自然吸気エンジン(163ps、21.4kg-m)を積む販売主力の「23C スポーティパッケージ」。車重は1750kgとそれなりに重いが、「力不足かも」という事前の不安は走り出した瞬間に消し飛ぶ。アクセルを踏めば期待通りのパワーが自然に生まれ、必要十分な加速が得られる。

何よりも、アクセル全開時や高回転まで回した時の静粛性の高さがいい。話題が2.3リッター DISI(Direct Injection Spark Ignition)、すなわち直噴ターボ(245ps、35.7kg-m)に集まるのは仕方ないが、実用的にはほとんどNAで十分だろう。4速ATについても試乗する前は物足りなく感じていたが、実際にはエンジンの特性とギア比が合っていてそう不満を感じない。

マツダ車らしい素直な動き

17インチタイヤ仕様の試乗車は、「人馬一体」とはもちろん言わないまでも、ステアリングを切るとスッとノーズが入る、マツダ車らしい素直な動きが気持ちいい。スポーティな操縦性のミニバンはオデッセイなど他にもあるが、こういったいかにも「気持ちのいい」操縦性はマツダ車ならではだ。リアサスは従来のトーションビームから、新しくアテンザのものから発展させたマルチリンクになっている。

足回りの動きはしなやか、かつダンピングの効いた締まった設定。荒れた路面や段差では多少揺すられるが、ほとんどの状況で滑らかに走るので、運転手はもちろん、後席でも不快ではない。ショックを完全に遮断して後席の「お客さま」をもてなすというより、全員で移動を共有する感じだ。

最高速は伸びないが、快適性は常に保たれる

100km/h 巡航は2500回転。そこから3速全開でもパワーがパワーだけに加速は緩慢だが、エンジン音がまったく耳ざわりではなく、無理をしている感じはない。結果としてトップスピードはあまり伸びないが、快適性は最後まで保たれる。直進安定性も問題なく、ブレーキも安心して踏むことができる。プラスαの動力性能はないが、日本の高速事情ならまずまず不満がないだろう。

ここがイイ

走りの気持ちよさ、高い快適性、ほどよいエンジンがもたらすトータルバランス。黙って座れば、自ずと分かる出来の良さだ。そつのないパッケージング、必要にして十分なユーティリティ。すべて過不足無く、突出せず、そこそこお値打ち感もあり、総合してみればずいぶん高い位置に存在するクルマだ。

ステアリングのスイッチで切り替えられるフロントとサイドのモニターは便利。いわゆるインテリジェントキー(アドバンストキー)はカード型で、所持しやすい。スライドドアもリモコン操作できる。また、テレマティックスの自社開発をあきらめて、トヨタの G-BOOKを採用したことも英断だ。あまり多くの方式が存在することは、テレマティックスの普及を妨げる。G-BOOKがメーカーを超えて使われるようになれば、少しは普及速度が増すだろう。レーダークルーズコントロールもついに設定されている。

タバコを吸う人にはシフト横の特等席にある大きな灰皿はうれしいはず。また運転しない人にはスーパーリラックスシートやスライドドアの窓が全開するのがいいところだ。

ここがダメ

全幅1850mmはやはり大きく感じてしまう。サイドモニターが全車標準なら免罪符として許せるのだが、実際にはナビとオーディオ一式(34万6500円~)を選ぶ必要がある…。そのサイドモニターも時速10㎞ほどで解除されてしまうのが残念。日産車などはもっと速い速度まで映すから、狭い道路でのすれ違い時に威力を発揮したものだが。

試乗車にはBOSEのオーディオ(5.1チャンネル・11スピーカーではなく、8スピーカーのタイプ)が付いていたが、低音を妙に効かせたサウンドはかなり独特。リアのサブウーファーの効果も体感しにくかった。購入前の「試聴」をお勧めする。アンダートランクをウーファーが半分ほどつぶしてしまうのも難。また、カーナビ画面が少し寝ているのが気になる。もう少し垂直方向へ起こした方が見やすいと思うので角度の調整機能が欲しい。

総合評価

乗る前にはそのスペックを見る限りあまり期待が持てなかったMPVだが、乗ってみたらその「Zoom-Zoom」感にびっくり。これだけ大きな、重いクルマが軽快にコーナーをクリアしていくのはちょっとした感動ものだ。一名乗車で走っていることを差し引いて考えなくてはならないが、トルク特性がフラットになったことで力感も常にあり、アップダウンの大きなワインディングでは、非力ゆえのアクセル全開を楽しく味わえる。スタビリティコントロールはターボにしかないようだが、限界域の挙動は落ち着いており、けっこう楽しめた。

コラムのシフトはマニュアルモードにすると少数派のダウン(引く)でシフトアップするタイプなので慣れを要するものの、ワインディングではほぼ2速、3速だからまあ気にならない。ただ、高速巡航ではやっぱり5速があるといいと思う。4WDはNA でも6速だが、これは燃費のためだろう。このエンジンには高回転まで回せる4速の方がスポーティな印象を演出できるということだ。

室内も、けれん味が無くて好感がもてる。インパネはごくシンプルだがその分、好き嫌いは分かれないはず。運転席や座り心地が最高のセカンドシートもいいが、サードシートもけっこうしっかり座れる。アームレストもあるし。ただ3人掛けした場合、センターが2点式シートベルトなのはいただけない。MPVが現役で走っている間に後部座席のシートベルトは間違いなく着用が義務づけられるはず。その意味では先取りして欲しかった部分だ。

床は低めだから乗り込みやすく、ミニバンお約束の折りたたみ式センターテーブルもあるし、もちろん電動スライドドア、パワーバックゲートもちゃんと用意される。通信ナビもつくし、前・横・後ろすべてが見られるモニターもある。値段もこのクラスとしては比較的安め。走りよし、装備良し、価格良しと実用的にはすべてOKだ。

もし何かOKでない部分を挙げるとすれば、あまりにスタンダードなことだろう。今やミニバンも細分化が進んでいる。しかしマツダの場合は、車種構成的にラージクラスのミニバンはMPVだけで勝負しなくてはいけないから、中道を行く作りになっている。パーソナルで未来的なミニバンとしたエスティマ、こりゃスポーツカーかと思ってしまうオデッセイ、日本的高級感勝負のアルファード、パワフルなFR車のエルグランドなど、まあ百花繚乱の中で、そのどれとも対抗する必要がある分、強い個性を打ち出せなかった印象を受ける。もちろん、走りの良さというマツダの DNAをちゃんと個性として持っていることは素晴らしいが、せめてスタイリングだけでももう少し個性的だと話題性が出たのではないかと思い、そこは残念な気がする。

ただ、販売目標は月3000台だから年間4万台弱。ミニバン人口は多いから、それくらいはこうしたけれん味のない外観を積極評価し、走りを気に入ってくれる人がいるはず。そうした人にとっては、ミニバン本来の「ファミリーカー」として不満無く家族のための道具になるはずだ。お父さんの密かな楽しみとして時々スポーティに遊んだりしながら。

クルマが個性的だと紹介原稿は書きやすいもの。ただ、それと売れ行きは大きく違う。日本で一番売れているミニバンはノア&ヴォクシーという、とても地味なクルマだ。マツダとしてはこれらのユーザーの代替え需要も取り込みたいわけで、その意味では正解だろう。エスティマを超えるような斬新なミニバンを作ってしまったら、おそらく多くの人々に見向きもされないはずだ。

新型MPVをもって、マツダ車としての個性「Zoom-Zoom」が全車に行き渡った。社長は日本人になったし、フォード本体が厳しい中でマツダは業績絶好調だ。すべてのラインナップに同じDNAが流れていると言いきれることで、マツダは業界のバイプレーヤーながら地位を確立したと思う。先代MPVの試乗ではフォード製のV6の出来に愕然としたものだが、新型ではもうその心配はない。あとは今後ブランドイメージの向上にどれだけ注力できるか、だろう。

試乗車スペック
マツダ MPV 23C スポーティパッケージ
(2.3L・4AT・259.6万円)

●形式:DBA-LY3P●全長4870mm×全幅1850mm×全高1685mm●ホイールベース:2950mm●車重(車検証記載値):1750kg (F:960+790)●乗車定員:8名●エンジン型式:L3-VE●2260cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・横置●163ps(120kW) /6500rpm、21.4kg-m (210Nm)/4000rpm●カム駆動:タイミングチェーン●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/68L●10・15モード燃費: 12.2km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:215/60R17(TOYO TRANPATH J48)●試乗車価格:318万9250円(含むオプション:マツダG-BOOKアルファ対応HDDナビ+フロント/サイド/バックモニター+BOSEサウンドシステム 40万9500円、電動両側スライドドア+アドバンストキーレスエントリー&スタートシステム 13万6500円、ユーティリティパッケージ 4万7250円 )●試乗距離:210km ●試乗日:2006年4月 ●車両協力:東海マツダ販売株式会社

公式サイト http://www.mazda.co.jp/home.html

 
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