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トヨタ MR-S シーケンシャルMT新車試乗記(第140回)

Toyota MR-S Sequential MT

 

2000年09月22日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

国内初! シーケンシャルトランスミッション新採用

1999年10月にデビューしたMR-Sは、とりあえずMR-2の後継モデルとされるが、趣はだいぶ異なる。2シーター、ミッドシップレイアウトであることには共通項があるものの、エンジンは1.8リッターのNAだけで、ターボの設定は無し。しかもオープンボディとしている。驚くほどに高い限界性能の代償に高度なドライビングテクニックを必要としたMR2とは対照的に、身近なところで楽しめるドライビングプレジャーを提供しよう、というコンセプトだ。低価格化も、資金力の乏しい若者に気に入ってもらうための配慮とされる。

そんなMR-Sが初めて披露されたのは1997年の東京モーターショー。その後、幾度かのモーターショーに出展されたのだが、実はいずれのコンセプトカーも“シーケンシャル5MT”を搭載していた。MR-Sにとってシーケンシャルはアイデンティティともいえるもの。このクラッチ操作を不要とした画期的なミッションが、通常5MTを搭載したMR-Sの市販化から遅れること9ヶ月、やっと国内初としてデビューとなったわけだ。

価格帯&グレード展開

シーケンシャル5MTは7.5万円高。本革内装のVエディションも仲間入り

従来のMR-Sのグレード展開は標準グレード(188.0万円)を基本に、装備を簡略化した「Bエディション」(168.0万円)、アルミホイール、キーレスエントリー、ラジオ連動オートアンテナなどをセット装備した「Sエディション」(198.0万円)の計3グレードのみだったが、今回、新グレード「Vエディション」が追加された。これはロードスターでいうところの「VS」と同じ位置づけとなり、専用の本革内装を持ち、ソフトトップはタンカラーで統一。これまでの趣向とは一線を画す上質な演出が図られる。また、専用ボディカラーとしてタンカラーにマッチするダークグリーンが設定されたほか、光沢アルミホイール、SUSスカッフプレート、メッキリング付きツィーターなどで数々のアイテムが装備される。価格はSエディションの12万円高となる210.0万円。内容を考えれば、お買い得なモデルといえるだろう。

なお、注目のシーケンシャル5MTが搭載されるのは、Bエディションを除く全車。こちらも非常に魅力的なプライスが与えられており、価格は5MT車の7.5万円高だ。

パッケージング&スタイル

SMT搭載によって、従来の5MTから変更された部位は主に、シフトレバー、シフトステアマチックが付いたステアリング、ギアポジション付きのメーター。外観上、5MT車との差別化は全く図られていない。

photo_3.jpg注目はやはりシフトレバーだろう。ピンポン玉を串刺しにしたような金属調のデザインは、フェラーリとオーバーラップするもの。シフトポジションは「R」「N」と、S(シーケンシャル)モード「+」「-」の計4つで、「D」はない。特殊なのは「+」「-」の位置関係で、下側が「+」、上側が「-」と、他のシーケンシャルモードとは逆になっている。これは「引くとシフトアップ」と「押すとシフトダウン」というステアシフトマチックの操作と同じ方向に統一させ、操作ミスを防ぐのが目的だと、容易に想像できる。

ペダル配置は、従来の5MT車のクラッチのみをそのまま外した状態で、アクセルとブレーキの2つ。2ペダルだからAT限定免許でも運転OKだ。

基本性能&ドライブフィール

クラッチ操作不要のMT。指先の操作でシフトチェンジ可能

シーケンシャルトランスミッション(SMT)を簡単に説明すると、クラッチペダルの操作をクルマが勝手にやってくれるというメカニズム。シフトレバーを前後に動かすことで、自動的にクラッチが切れ、ギアチェンジが行われると、再びクラッチがミートされる。この一連の動作をコンピュータ制御によって、スムーズに行うのである。

MTの魅力は、アクセル操作と直結したトラクション性能、そしてドライバーがクルマと一体になって操れるという感覚が味わえることにある。その際、一番難しいと言われるクラッチ操作を不要にしたSMTは、MTの楽しさとATの気軽さを併せ持つスポーツミッションだ。

構造はこうだ。まず、ATではないからトルクコンバーターでなく、通常の5MTとおなじミッションをそのまま使用。これにギアシフト&クラッチアクチュエーターと、それを動かす油圧パワーユニットからなる、ドイツのルーク(LUK)社製のユニットだ。もちろん、自動クラッチだけでなく、エンジンやABSなどと電子統合制御されている。その全体構造は意外にもシンプルで、SMT搭載による重量アップは重量は、わずか10kg(通常ATだと40kgほど増えるとされる)。操作部は専用のシフトレバーだけでなく、トヨタ独自のステアシフトマチックも奢られている。

SMTの基本的な構造は、アルファロメオの「セレスピード」と同じで、シーケンシャルモード付きとしては国内でMR-Sが初となる。だが、歴史を紐解けば、いすゞ・アスカの「NAVI5」('84年)やスバルの軽自動車の電磁クラッチ式などで、何度も試みられた方式ではある。

シフトダウンは完璧、シフトアップに課題アリ

「N」レンジでブレーキペダルを踏んでいるときのみに、エンジンが始動。次にシフトレバーをシーケンシャルモード側に倒して、メーター内のポジション表示「1」を確認すれば、あとはアクセルを踏むだけ。もちろんクリープ現象はなく、どちらかとえば初期のCVTに近い感覚で発進する。エンストするような前兆も全くなく、停止する直前まで任意のポジションに完全固定され、停止するとギアは自動的に「1」になる寸法だ。

シフト操作はとても軽く、MTというよりはスイッチといった感覚で、シフトチェンジとエンジン回転の制御はほぼ完璧といえる。特にブリッピング(空吹かし)までしてくれるシフトダウンの様は、感動的(アルファもそうだったが)。「クラッチを切って、ギアを落とし、エンジン回転をあおりつつ、クラッチをミートさせる」という通常MTの行程(ヒール&トゥ)を、SMTはどんな状況下でも正確にこなす。ステアワークとブレーキングに集中でき、ワインディングを走らせれば、運転の腕が上がった気分になれる。ただ、上下逆のSモード配置は、さすがに戸惑う。ま、これは慣れが、解決してくれるだろう。

問題はシフトアップだ。フル加速、つまりアクセルを踏みっぱなしで、シフトアップ操作すると、シフトアップ時にクルマが大きく深呼吸したようなショックにみまわれる。対策としては通常MTの様に、シフトアップと同時にアクセルを少し戻してやれば、体感的にはだいぶん軽減されるので、この運転方法を覚える必要がある。腕に覚えのあるMT派の人には、やや期待はずれだろう。というか、そもそもMR-Sはフル加速を競うクルマではなく、気軽にファントゥドライブを楽しむためのクルマなのだ。サーキット走行を楽しみたいなら5MTを選べばいい。SMTのほうがMR-S本来姿にふさわしいミッションといえるだろう。

使い勝手に賛否両論あるステアシフトマチックは、確かにステアリングを大きく回したときには、使いづらい。でも、その時はあらかじめ、シフトレバーのほうを操作していれば、問題はないはずだ。そういう意味でも、ステアリングとシフトノブの両方を用意したのは正解だと思う。

あと、気になったところでは自動変速をしてくれる「D」レンジがないこと。同じ構造を持つアルファのセレスピードには「シティモード」と称するDレンジが存在するように、技術的にはMR-Sも可能だ。しかし、ファントゥドライブカーという性格を実現するため開発されたSMTだけに、イージードライブを意識的に省いたあたりにはトヨタの心意気が感じられる。賛成だ。

ここがイイ

5MTもそうだったが、実に日常走行域で楽しいクルマだ。スピードをそう出さなくても走っている気になれるし、軽くコーナーを流しているだけでも、ミッドシップの軽快感が味わえる。オープン状態の開放感はマツダロードスターよりあるし、パワーも程々だからエンジンをフルに回せる。そしてシーケンシャルで未来的なミッション車の走りを気軽に満喫できる。ファントゥドライブがわずか200万円で味わえることは、絶賛に値するだろう。

ここがダメ

盛り上がりに欠けるエンジンとサウンド。深く踏んでもトルクが増えていく感覚もなく、パワー感が平板。これでは、せっかくSMTが絶妙なブリッピングしてくれても、今ひとつ血沸き、肉踊るというところまではいけない。そして誰もが指摘するであろう、フル加速シフトアップ時のショックも、もう少しチューニングする余地はあると思う。

総合評価

photo_2.jpgシーケンシャルMTによって、MR-Sのコンセプトは完成したといえるだろう。すなわち、誰もが気軽に、いつでもどこでもスポーツ心を感じながら楽しく走れるクルマだ。まさに超優等生。二人乗りで実用性が低く、プッシングアンダーステア、アクセルオフオーバーステアといった挙動はそこそこ出るし、高速道路でもFFなどとは比較にならない直進性の悪さがあるものの、そうしたネガな部分をも魅力に変えてしまう優等生であるあたりは、一筋縄ではいかないところだ。

アルファスポーツワゴンのシーケンシャルMTはエンジンが官能的だったが、MR-Sにはそれがない分だけ弱いものの、シーケンシャルの出来はこっちの方がいい。危険な香りがどこかにあるのが20世紀のスポーツカーだとすれば、ミッドシップの挙動があるにもかかわらず、このクルマはスポーツカーとは呼べない。が、21世紀型のスポーツカーというのは、好むと好まざるにかかわらず、こういう「楽しく、快適で、安全」なクルマにならざるを得ないだろう。

 

公式サイトhttp://toyota.jp

 
 
 
 
 

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