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スズキ MRワゴン新車試乗記(第202回)

Suzuki MR Wagon

 

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2001年12月23日

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キャラクター&開発コンセプト

ミッドシップから「マジカル・リラックス」へ

1997年の東京モーターショーで出品された「UW-1」、99年に出品された「MR-Wagon」、そして今年2001年に出品された「MR-wagon」。それらの流れを汲んだ市販モデルが今回のMRワゴンだ。「MR」の名が示すように、コンセプトカーでは「ミッドシップエンジン・リアドライブ」を採用。フロントガラスを目一杯前進させ、より広い居住空間を確保する、という発想だった。・・・が、市販モデルはデザインこそモノフォルムを踏襲するものの、一般的なFFレイアウトに落ち着いた。ベースはワゴンRだ。

で、MRの語源は以前の「ミッドシップ・リアドライブ」から「マジカル・リラックス」に一新(ちょっと強引)。乗る人みんなの心地よさを優先したパッケージングがセールスポイントとなっている。エンジンはNAとターボの2本立てで、それぞれに4WDモデルが用意される。なお、日産がスズキよりOEM供給を受けて2002年より軽自動車市場に参入すると宣言しているが、そのときのベースはこのMRワゴンとなる。

価格帯&グレード展開

4グレード構成で、安い順に「E(97.8万円)」「X(113.5万円)」「Xナビパッケージ(127.5万円)」「ターボT(125.0万円)」。このうちターボ仕様は「ターボT」のみだ。4WDの価格はFFの11.2万円高。

「E」は軽の廉価版とはいえ、装備はなかなか充実しており、デュアルエアバッグ、エアコン、パワーウインドウ、前後シートのアームレスト、キーレスエントリーなどが標準装備される。「X」はドアハンドルがカラード化され、スモークガラス、6スピーカー&オーディオ、電動格納式ドアミラーを標準化。さらにカーナビを装備するのが「ナビパッケージ」だ。このモデルは他に、サブウーハー、オートエアコンも装備しており、価格は「X」の13万円高とリーズナブルに抑えられている。

「ターボT」は「X」の内容に加えて、アルミホイール、ルーフエンドスポイラー、マフラーカッター、ABS、オートエアコンが標準装備される。価格は「X」の11.5万円高。もちろんエンジンもパワーアップしているので、割安感がある。スズキとしても、「ターボT」を主力として展開していくとのこと。

なお、ワゴンRの動向だが、11月から新たにお買い得モデル「N-1(4速ATで94.8万円)」を設定するなど、充実装備と巧みな価格設定でMRワゴンとの競合を避ける展開を図っている。他社でライバルと思われるのは目下好調の三菱ekワゴンとダイハツMAX。これらは全高を1550mmに抑えることで、立体駐車場の入庫をさかんにアピールしている。

パッケージング&スタイル

ワンモーションデザインを実現

ボディサイズは3395mm×全幅1475mm×全高1590mm。全高はワゴンRより90mmも低い。ワンモーションのスタイリングは、エンジンルームをギリギリに詰めたからこそ成し得たものだ。「どれも同じ」という感があったハイトワゴン軽市場に、一石を投じたスタイリングは評価に値する。衝突安全性に関しては、55km/hの前面・後面フルラップはもとより、64km/hのオフセット衝突もクリアしている。

マルチリフレクターのフロントランプはスモールランプとターンランプを一体化させたもの。リアランプは立体感のあるダブルレンズが採用されている他、スタイリングのアクセントとなるルーフアンテナは使い勝手を考慮した折りたたみ式だ。ボディカラーは専用の淡い黄色をはじめ、スズキとしては最も多彩な9色を設定。どのアングルから見ても、斬新かつ軽らしからぬ高い品質感を感じさせる。

惜しいのは、三菱ekワゴンやダイハツMAXが一般的な立体駐車場の制限ギリギリ1550mmにしたのに対して、MRワゴンの全高が1590mmあるところ。モノフォルムデザインを確立させるために、どうしても譲れなかったのだろう。それに軽の需要は都心部よりも郊外の方が圧倒的に高いわけだから、それほど問題にはならないかもしれない。

デザイン上で唯一悔やまれるのが、ターボ車のボンネットにあるエンジン冷却用の穴だろう。他のクルマならそれほど気にならなくても、MRワゴンの場合、全体がスッキリとまとまったデザインゆえに少々目立つ。

次世代軽のスタンダードを予感させる

横基調のインパネは上質感が強まり、なかなかいい感じに仕上がっている。中央上部にナビモニターが収まる2DINスペースがあり、メーターは簡易型オプティトロンのような青&白の盤面発光式。エンジンをかけると液晶式オド&トリップメーターから「Hello」の文字が浮き出て、ドライバーを迎えてくれる。オレンジ系の内装色も洒落ている。収納スペースは充実しており、中でもセンターコンソール部分の棚はアイデア賞ものだ。内装色はブルーとオレンジの2色ある。

室内長はワゴンRより100mmも長い1785mmで、同社の1BOX軽エブリイを65mmも上回る。座面高は乗降性を考慮して、ワゴンRと同じ635mmだ。天井こそ低くくなったが、むしろ「無駄がなくなった」と理解すべきだ。

ワゴンRより90mm後方にセットされた後席の快適性は間違いなくクラストップレベル。また後席のスライド&ワンタッチダブルフォールディング機構はクラス初の装備で、ひと昔前の5ナンバーセダン並の広さを確保している。

基本性能&ドライブフィール

NAは力不足、ターボでちょうどいい

エンジンはオールアルミ製の660cc直3DOHCエンジン「K6A」で、NA(54ps/6.4kg-m)とターボ(60ps/8.5kg-m)の2タイプが用意される。新開発のターボエンジンはワゴンRなどで展開されている低過給圧仕様「F6A」のSOHCと異なり、DOHCを採用。ミッションはコラム式の4速AT。10・15モード燃費はそれぞれ18.4km/L、16.8km/Lだ。

まず試乗したのはNAモデル。ワゴンRよりも全高を90mm低く抑えたことで、車重は軽くなっているだろうと思いきや、これが結構重くて840kg。ざっと、同エンジン&同装備のワゴンRより子供1人分(約30kg)重くなっている。走りへの影響は大きいようで、明らかな力不足を感じてしまう。街中でアクセルペダルを床まで踏みつけるシーンもチラホラで、感覚的には交通の流れにのるのがやっとという感じ。低いギアを多用することになるので、エンジン音も騒々しくなってしまう。「普段のアシとして乗るには過不足なし」ということにはなるのだが、それでも久々に「軽とは、まあ、こんなものだったけ」と実感。

一方、「ターボT」の加速は、NAの不満をきっちり解消してくれる。軽とは思えない力強い走りとまではいかないが、実用域でのトルク感は十分。80km/hあたりまでならストレスのない加速感が持続する。何よりレスポンスが良く、ターボラグがほとんどない。これは660ccターボとしては極めて稀なこと。アクセルペダルを踏み始めた時点から、リッターカー並のトルクが発生するので、非常に扱いやすい。よほど気にしない限り、ターボ車だとは思えないだろう。このエンジンは他車種へも今後順次搭載されていくとのこと。

良好な乗り心地。高速走行は今ひとつ

ハンドリングと乗り心地とのバランスもとてもいい。まず低重心フォルムが手伝って、ロールがワゴンRよりずっと小さい。ワゴンRにもロールを抑えたスポーティモデルが存在するが、そうしたモデルの場合、どうしても乗り心地がゴツゴツとしてしまう。対して、MRワゴンは乗り心地が犠牲になっておらず好印象。背が低いため、開発の重点を乗り心地のほうに置けたのだろう。

とはいえ、高速巡航はそれほど誉められる内容ではない。80km/hあたりからスピードの伸びが悪くなり、挙動もフラフラと定まらない。軽い電動パワステも緊張感を増幅させている要因の1つだ。近未来的なスタイリングとは裏腹に、風切り音もかなり気になる。エンジン音が聞こえないほど騒々しく感じた。ちなみに最高速度はNAが125km/h+、ターボが135km/h+といったところ。軽自動車に高速安定性を求めるのはちょっと贅沢かもしれないが、高速道路での80km/h制限がなくなった現在、やはり100km/hでの巡航は快適にこなして欲しいところだ。

ここがイイ

何といってもそのスタイリング。そしてそのスタイリングが生み出す快適な居住空間。スタイリッシュなワンボックスといった風情は、トヨタ・エスティマにも通じる未来感あふれるもの。ちょっと古くさい、いかにもミニバンといったカタチを売り物とする三菱車、デザインワークに走りすぎて失敗しているダイハツ車より圧倒的にいい。

リアシートがやや高く設定されており、足下の広さもあってたいへん快適だ。ヘッドレストは抜かなくても首折れ式に倒れ、バックレストをたたむだけでフラットな荷室ができるのも便利(座面はシートバックと連動して沈み込むし、スライドもする)。4人快適に乗れる空間とスタイリッシュなデザインを両立させたという点で、究極の軽だろう。

ここがダメ

NAの方は「軽」を感じてしまう走りを久々に実感。1人乗りでもそう感じるのだから、4人乗ったらもっときついだろう。軽の枠がある以上いたしかたないのだが、1リッタークラスのNAを載せたら、素晴らしいシティコミューターになると思う。以前から書いているとおり、軽の枠でこの手のクルマを作ること自体、すでにムリがあると思う。

コラムシフトのレバーに節度がなく、ポジション位置がはっきりしないのは残念。そして何より、シートと内装の共生地の柄が妙に古くさい。金華山模様とも違うが、仏壇の布をイメージさせる光沢のある生地は完全にNG。せっかくのモダンな内装デザインがまったく活きない。エリオの木の葉柄のシート生地もちょっと変だったが。

総合評価

ワゴンRでミニバン型軽に先鞭をつけたスズキが、それはもう古いとばかりに、21世紀型軽として自信を持って送り出した究極の軽だ。品質、走り(ターボの方)、そして空間には何も文句をつけるところはない。そして日産が自社ブランド軽としてこのクルマを選んだのも理解できるところ。日産の先鋭的なデザイナーが見ても、十分納得できるルックスだ。軽で何を買うかと問われれば、迷わずこのクルマをオススメする(もちろんターボの方)。

しかしここまでがんばったクルマだからこそ、フロントはセンター1座、リア2座といった大人3人が快適(もちろんドライバーが最も快適)といった斬新なインテリアを作ってみて欲しかった。MRワゴンの空間はたいへん広いが、それは4人で乗ったときの話。ふだん1人で乗っているときには、小さなクルマに大きな空間をムダに積んでいることになる。フロントセンターに普通車並の大型シートを置き、左右に大型物入れや折りたたみテーブルなどをセットすれば、実に快適なパーソナル空間ができるはず。もちろん後ろには2人乗せられるので、軽として考えれば、ほとんど実用上不便はないはずだ。

それはそうとしても、MRワゴンは、現行の軽としては極みまで上り詰めてしまった感がある。軽自動車はいつの間にか、本当に立派なクルマになってしまった。約40年前のスズキ・スズライトから見れば、MRワゴンを同じ軽自動車枠でとらえることには、完全にムリがある。こうなると、次はもう構造改革しかない。軽の規格変更というより、軽という枠の撤廃こそが真の都市型小型車誕生への布石となるはずだ。特に東京都などは通行税を取るばかりでなく、超小型車大優遇税制を施行すべきだろう。それで東京の街はかなり変わるはず。このMRワゴンやスマートKのようなモダンな小型車ばかりなら、街のオシャレさも損なわれることはないはずだ。

 

公式サイトhttp://www.suzuki.co.jp/dom4/lineup/mrwagon/index.html

 
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