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新車試乗記 第335回 日産 ムラーノ 350XV FOUR Nissan Murano 350XV FOUR

(3.5リッター・CVT・375万9000円)


日時: 2004年09月24日

 

キャラクター&開発コンセプト

北米ですでに8万台

2004年9月2日に発売された「ムラーノ」は、ティアナやプレサージュと同じFF-Lプラットフォームを使った新型SUV(スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル)。北米では02年12月に発売され、すでに約8万台を販売したヒット車だ。日本では昨年の東京モーターショーで参考出品されたほか、発売に先行して予約注文をスタートするなど、事前の広告宣伝が盛んに行われた。

「SHIFT_design」

特徴は日産の新しいテーマ「SHIFT_design」(デザインをシフトする)を合い言葉にした斬新なデザイン、スポーティな操縦性や高い快適性など。SUVではあるが、本格的なオフロード走行は得意としない。販売目標は1000台/月。生産は北米向けと同じ九州工場で行われる。ちなみにライバル車のトヨタ・ハリアーの目標2500台/月で、こちらの生産拠点(国内向け)も同じ九州だ。

なお、日産はムラーノを皮切りに、本年度に新型を6車種投入という大攻勢をかける。メガーヌIIを思わせるハッチバック車「TIDA(ティーダ」(9月下旬)、VQ35DEを搭載するスポーティセダン「FUGA(フーガ)」(10月中旬)、小型セダン「TIIDA LATIO(ティーダ・ラティオ)」(10月下旬)、ミニバン「LAFESTA(ラフェスタ)」(12月上旬)、コンパクトカー「NOTE(ノート)」(05年1月)の予定だ。

価格帯&グレード展開

V6と直4の二本立て、285.6万円~

グレードは3種類。3.5リッターV6(VQ35DE)+エクストロニックCVT-M6(6速MTモード付き無段変速)の4WD車「350XV FOUR」(375万9000円)、そのFF車「350XV」(343万3500円)、そして日本専用の2.5リッター直列4気筒(QR25DE)+4速ATのFF車「250XL」(285万6000円)。

全3グレード中、オールモード4WD車は最上級の1グレードのみで、残りはFF車。あくまでもオンロード・メインのSUVということだ。

パッケージング&スタイル

カイエンと同サイズ

サイズは全長4770×全幅1880×全高1685(ルーフレール付は1705mm)と、特に横幅が大きい。ポルシェのカイエンとほぼ同サイズで、ハリアーよりも特に横幅が大きい。実際に見ても迫力あるが、リアスタイルは小型車のマーチと相似形で面白い。リアゲートはステージアと同じ樹脂製。

スタリングテーマは「躍動感ある彫刻」。デザイナーがサイズを気にせずに思う存分クレイを盛ったという感じで、日産デザインの本領発揮。2825mmのホイールベースはティアナより長く、プレサージュより短い。

ティアナとZを足して

ティアナに似た「ラグビーボールシェイプ」のダッシュボードに、Zのような独立メーターの組み合わせ。インテリアのあちこちは本物のアルミだが、レザーシートの風合いを含めて、質感は高くない。このクラスだともう少し本物の素材感が欲しいところ。ムラーノ専用のBOSEサウンドシステムを全車標準装備し、スペアタイヤの中に専用ウーハーが備わる。3.5リッター車はカーウイングス対応ナビも標準装備。夜になると、星座も表示。タッチパネルではないが、ボタンが大きくて操作もわかりやすく、音声操作も「まあまあ」というところ。

すれ違いなんてもう怖くない

大陸サイズの横幅だが、心配な見切りはプレサージュで先行したサイド・ブラインド・モニター(全車標準装備)で確保。高感度の近赤外線CCDカメラを左ドアミラー下部に内蔵し、車両左前付近の死角を解消する。リアにもカメラを装備し、さらに、左ドアミラー下に小さな「サイドアンダーミラー」を追加。これらによって、日本車に固有の左フェンダー上のサイドミラーを追放した。

実際の効果だが、先に装備しているプレサージュと同じでこれはもうすごく便利。このモニターさえあれば、幅広い車幅にも関わらず狭い道のすれ違いも怖くない。やがて、どれくらい左側に余裕があるかモニターを見なくても分かるという学習効果も期待できる。運転が巧くなる早道かもしれない。

クラストップの荷室幅

シートは完全にアメリカ人サイズで、小柄な人だと自分が子供になったかのように感じるかも。3列シートはなく、5人乗り。後席の感じはBMWのX3と良く似ている。

容量480リッターのラゲッジルームは、ゴルフバッグ(9インチ)を5セット積載可能、荷室幅はクラストップを謳う。後席の折り畳みは、背もたれとともに座面が沈み込むタイプで簡単だ。

基本性能&ドライブフィール

アメ車っぽくソフト

試乗したのは最上級グレードの「350XV FOUR」。期待通りVQ35DE(231ps、34.0kgm)特有のトルク感が濃厚で、乱暴に言ってしまえばドライブフィールは同じエンジンのティアナやスカイラインとよく似ている。車重が1790kg(試乗車)とティアナなどより300kgほど重いほか、低速トルク重視のせいか、あるいはCVTのせいか、パワーの出方は穏やか。遮音の効いた、低チューンのアメリカンV8、という感じだ。

足まわりもアメ車っぽくソフト。コーナリングの限界性能では失ったものも多いが、乗り心地はとてもいい。エンジンがパワフルなので「スポーツサスペンションが欲しい」とも思ったが、普通に乗るならこのセッティングで納得できる。静粛性も文句なしに高く、後席の居心地もまったく問題ない。

痛快なCVT-M6のマニュアルモード

じゃあ、ムラーノがまったくスポーティではないか、というとそんなことはなく、「エクストロニックCVT-M6」のマニュアルモードでは迫力の加速が楽しめる。オールモード4WDのトラクション性能を生かした低中速コーナーの脱出加速も、大げさに言えば某社の4WDターボのよう。FFベースでトルクステアが一瞬出るのも、限界が分かっていい。逆に、アンダーステアが大きく、コーナリング自体はそうとう苦手。つまり、350XV FOURは加速を楽しむに限る。逆にこれぐらいの方が、安全かもしれない。また350XV FOURにだけ装備されるVDC(横滑り防止装置)の介入がすごく自然なのがいい。重心が高いSUVは安定を保つため、唐突にパワーを絞ってしまうことが多いからだ。

もちろん、一番得意なのは高速道路で、追い越し加速も自由自在。ここでもマニュアルモードを使った走りが痛快だ。さらにCVTの良さは、速度が乗って負荷が減ったときには、エンジン回転がグンと引き下げられること。150㎞/hを越える速度域でもいったんスピードに乗れば、エンジンは2000回転そこそこ。エンジン音もロードノイズも小さく、おまけにアイポイントが高いため、速度が大変低く感じられる。むろんこういう時は燃費もいいはずだ。ただボディ形状のためか、セダン系と比べると風切り音はやや気になるレベルだ。

ここがイイ

フロント、リアともに独創的なボディデザインは秀逸。デザインの独創性と程良い演出で納得させられてしまうインテリアもいい。日産は、デザインこそがクルマが売れる最大の要因である、ことが分かっているメーカーだ。

国交省の指導? の壁を破るべく装備されたサイドブラインドモニター。日本仕様独自の装備だが、これを機に世界中の様々なクルマに装備して欲しい。オプションでサイドビューモニター(12万6000円)も用意されており、リアビューカメラと合わせれば全方向がモニターで見渡せる。大きなクルマにぜひ欲しいものが、きちんと用意された点で高評価だ。そのディスプレイ(カーナビ)がたいへん見やすい位置にあるのもいい。ちなみに10月1日からはカーウィングスが3年無料で使える。これは大英断だ。

ヘッドライト類のスイッチが一回ひねるとオートポジションなのは、国産車で最初ではないかと思う(ちょっと確認は取っていないのだが)。些細なことだが、このポジションなら違和感なくオートのままにしておける。一番奥にあるとライトスイッチを切り忘れたみたいで、心理的についオートを解除したくなってしまうのだ。

革シートなのにフンワカしており、前席はもちろん、後席でもまったりとしたムードになれる。当たりの柔らかい乗り心地と相まって、へたな高級セダンより快適。シート高が高いにも関わらず、サイドシルがじゃまにならないため、気軽に乗り降りできるのも良いし、よじ登る感じでないところも小柄な日本人にはありがたい。リアシートバックがバックドア側からワンタッチで倒せ、沈み込んでフラットな荷室になるのもよくできたところ。

ここがダメ

10・15モードは8.9km/Lとカタログにあるが、試乗車の燃費計は平均4.1km/Lを表示。もちろんハイオク。燃料タンクも82リッターとアメ車並み。大排気量アメリカンV8より燃費が良くてパワフル、とアメリカでは評価が高いものの、ガソリン価格高騰中の日本ではさて。

普通に走る分にはノーズも軽く向きを変え、このサイズとは思えない軽快なハンドリングだが、追い込むとあっけなく限界露呈。乗り心地とトレードオフであり、VDCもあるが。コーナリング中、センターコンソール物入れ(奥に深いが浅め)から置いてあった小物がペダルの方へ落ちてきた。そんな走り方を前提としていない? ごもっともだが……。

Aピラーと大型ミラーによる斜め前左右、リアクォーターウインドウの小ささによる斜め後方視界の悪さは、デザインとトレードオフか。斜め後方視界用の常時ビューモニタが早く開発されないだろうか。

総合評価

本来、大トルクのエンジンにこそCVTはマッチする。その点、日産のVQエンジンとCVT-M6は理想的な組み合わせで、ムラーノでも滑らか至極の走りを生み出している。CVTの低速でのギクシャク感、アクセルに対するリニア感の不足といったネガは全く顔を出さない。荒々しさを必要としない高級車には、最適なパワートレインだろう。つまり、ムラーノはSUVではなく、高級車がSUVのカッコをしていると考えると納得がいく。本格的四駆能力はなくとも、フルタイム四駆による安定感のある走りは、大パワー車を誰もが操るには必要不可欠なもの。ムラーノはひたすら快適で安全な「カッコいい」高級車だ。

このあたりは本格的なスポーツカーの911に対するフェアレディZ、まじめ一筋で作られたスーパー四駆カイエンに対するムラーノと言う図式だろうか。究極を求めてしまうポルシェと、スタイリングとコンセプトで大衆的なマシンを「安く」売る日産の企業姿勢の差だ。一般的に言えば、Zやムラーノの方がコストパフォーマンスが高く、こと日常域で乗るには満足度も高い。実際、カイエンより乗っていて快適で、便利。安いムラーノは、カイエンのような爆発的なパワーはなくても、満足度では高評価となるだろう。走り性能が過剰でない分、日本の道路事情ならかえって楽しめるほどだ。スタイリングだって、正直、カイエンよりいいと思う。2台を並べて置けば、クルマ知識の少ない人には、SUVという新しいカテゴリーゆえに、同じようなグレード感、価格感に見えるはずだ。

というわけで、乗る前は、割にイージーに作られたブーム便乗商品に見えたムラーノだったが、乗ってみると考え方が変わった。つまりムラーノは、SUVと言うより新しい高級車だと思ったのだ(考え方としては今更ではあるが)。セドグロからの乗り換えでも、この快適さなら満足でき、さらに新鮮さが味わえる。これは保守的なセダンユーザーがSUVに代替するための起爆剤になるかもしれない。ハリアーはまだそこまで行っていないが、ムラーノは本当に一般受けするかも。事実、クルマ業界でない知り合いの間でも、たいへん関心が高く、質問責めになった。ムラーノから日本でも北米並のSUV大ブームが始まるかもしれない。問題はガソリン価格だが。

試乗車スペック
日産 ムラーノ 350XV FOUR
(3.5リッター・CVT・375万9000円)

●形式:CBA-PNZ50●全長4770mm×全幅1880mm×全高1705mm●ホイールベース:2825mm●車重(車検証記載値):1790kg(F:1070+R:720)●乗車定員:5名●エンジン型式:VQ35DE●3498cc・DOHC・4バルブ・V型6気筒・横置●231ps(170kW)/5600rpm、34.0kgm (333Nm)/2800rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/82L●10・15モード燃費:8.9km/L●駆動方式:四輪駆動(フルタイム4WD)●タイヤ:225/65R18(DUNLOP GRAND TRECK ST20)●価格:375万9000円(試乗車:384万2500円 ※オプション:インテリジェントキー&イモビライザー 5万2000円、ルーフレール 3万1500円)●試乗距離:約140km

公式サイトhttp://www2.nissan.co.jp/MURANO/Z50/0506/CONCEPT/main2.html

 
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