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ランチア ムーザ 1.4 16V D.F.N.新車試乗記(第397回)

Lancia Musa 1.4 16V D.F.N.

(1.4リッター・5速セミAT・281万4000円)

ランチアが作れば
トールワゴンだって
こんなに美しくなる!

2005年12月24日

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キャラクター&開発コンセプト

ランチアの5ドアトールワゴン

1906 年創業のランチアは数々の名車を生み出してきたイタリアの老舗メーカー。日本ではストラトス、デルタ・インテグラーレといったラリーマシンのイメージが強いが、本来は独創的なメカニズムや上質な作り込みを備えた高級車が得意だ。60年代末にフィアット傘下に入ってからは、アルファロメオと共にグループのプレミアムブランドを担っている。

今回のムーザは、同社の2代目イプシロン(3ドアのみ)の5ドア版と言えるもの。小さな高級車として人気のイプシロンだが、5ドアトールワゴンのムーザでも上品な仕立ては変わらない。車名のMUSAとは映画「MUSA-武士-」とはもちろん関係なく、ラテン語のMUSA(芸術の女神、ミューズ)からだと思うが、バナナの学名(同じくMusa)でもある。日本では、長年イタリア車の輸入を手がけてきた「ガレーヂ伊太利屋」(本社:東京都)が主に輸入し、それを全国の販売協力店が取り扱う。

価格帯&グレード展開

スカイドーム標準で281万4000円

ガレーヂ伊太利屋が導入するモデルは、1.4リッターの5速セミAT「D.F.N」のみで、価格は281万4000円(2006年1月以降)。「スカイドーム」と呼ばれるダブルサンルーフやキーレスエントリー、15インチアルミホイールなどは全て標準装備。リアパーキングセンサー(5万2500円)とメタリック/マイカペイント(5万2500円)がオプションとなる。

パッケージング&スタイル

メカ的にはフィアットイデアのランチア版

ボディサイズ(カッコ内は現行イプシロン比)は、全長3980mm(+200)×全幅1690mm(-30)×全高1630mm(+100)。実のところ、成り立ちとしてはイプシロンの5ドア版と言うより、フィアットの5ドアトールワゴン「イデア」(日本未導入)のランチア版というのが正解だ。

ラジエイターのランチアグリルやヘッドライト形状などはイプシロンとよく似ているが、オーソドクスなスタイルのイプシロンに対して、ムーザはフロントウインドウが寝たいわゆるワンモーションスタイル。ウインドウ面積も広く、どこかユーモラスだ。

あふれるランチアテイスト

最大の見せ場であるインテリアはイタリアらしいセンスと上質感に溢れたもの。樹脂やスイッチの形状、縫製、レタリングなど、どうということない部分が見事にイタリアンで、大げさに言えばカッシーナの家具のように物欲をそそる。インナードアハンドルの、まっ平らな面に施したクロームメッキ仕上げなど、細かいところが大胆で凝っている。

イデアと同じセンターメーターの両脇のダッシュボード上面には、ふた付きの小物入れが備わる。試乗車のオーディオはBLAUPUNKTで、FMの周波数表示が日本のものとズレルのが何だが、機能自体は問題なく、音まで上品だ。エアコンは左右独立で調整可能。

スカイドームを標準装備

もう一つ嬉しくなるのがダブルサンルーフの「スカイドーム」。フロントは電動で開閉出来て、リアは固定だが、どちらにも光を適度に通すシェイドが備わる。最近は一枚物の大型ガラスサンルーフが流行りだが、スカイドームでシェイドを閉めた時の適度な薄暗さはランチアの落ち着いた雰囲気に合っている。

黒のカーペットで覆われた荷室はボディ形状に沿ったスクエアな形状で、320リッターの容量を誇る。リアシートをタンブルさせれば1420リッターまで拡大できるが、操作はけっこう重い。写真のように背もたれを倒すところまでなら簡単だ。

基本性能&ドライブフィール

ずっと運転していたい

本国では5MTもあるが、ガレーヂ伊太利屋が導入するムーザは基本的に「D.F.N.(Dolce Far Niente=無為の楽しみ)と呼ばれる5速セミAT。ハンドル位置は左だ。というと、運転するのを躊躇する人がいるかもしれないが、運転自体はとてもイージーだ。

ボディがコンパクトで目線が高いので、街中の混雑した道でも心理的にとても楽だ。ダッシュボードの「CITY」ボタンを押せば、パワステは据え切りでも小指で回せるほど軽い。プレミアム感も含めて、週末の買い物などに都心へ出かけて行く足には最適と言える。

1368cc のエンジン(95ps、13.0kg-m)に1280kgのボディは荷が重そうだが、運転するとスペックのことなどどうでもよくなる。必要にして十分なパワーで、ゆったりした加速はランチアのキャラクターにも合っている。遮音材を惜しんでいないせいだろう、静粛性は高く、乗り味もしっとりしている。なによりインテリアの雰囲気やシートが抜群にいいから、ずっと運転していたいほどだ。

のんびり走るときはEモード

変速機は基本的には現行パンダの「デュアロジック」と同じもの。シフトレバー横の「E」ボタンを押せば、変速プログラムがエコモードに入り、ポンポンとかなり早めにシフトアップする。50km/hで早くも5速に入るほどで、街中の緩い流れでは2000回転以下を積極的に使う。燃費の計測はしなかったがドライビングコンピューターの燃費計を見ながら走れば、まずまずの数字が出せそうだ。

一方、活発に走らせるなら、シフトレバーを前後させてマニュアルシフトすればよい。変速マナーは従来のセミAT同様で、詳しくはこちら(フィアットパンダ試乗記)などを参考に。操縦性は重心の高さやソフトな足回りから想像できるように、安定したアンダーステアと深いロールに終始する。このクルマの性格を考えれば、相応の設定だろう。

本国のカタログ値によると0-100km/hは11.5秒、0-1000mは33秒、最高速は175km/h(5MT、D.F.N.共通)とあるが、日本仕様はオプション装備が嵩んで100kgほど重いから、相応に割り引く必要がある。高速走行では直進安定性は十分だが、速度を上げるほどパワー的にも騒音的にも満足感は薄まっていく。むろん日本の高速巡航速度なら大きな不満はないが。

ここがイイ

インテリアの上質感を売り物としたこのクラスの5ドアトールワゴンは、特に日本車では見あたらない。トヨタのラウムみたいなクルマにこうした内装を載せると新たな需用がでてくる気もするが、トヨタヒエラルキーの中では無理だろう。となると小型で広くて、高級感のあるインテリアデザインを持つこのクルマの商品価値はたいへん高い。ランチアというブランド、クラシカルなグリル、イタリア物というの舶来感など、ハードウェアでなくソフトウェアで選べるクルマだ。

走りの方も特に問題ない。セミAT独自の違和感こそあるが、それもまた味の一つとして許容できるはずだ。この程度のサイズになると実用車として使える。4人乗る機会が多く、なおかつコンパクトで上質で、数が少なくて、所有する喜びもあるクルマが欲しいという人には喜ばれるはずだ。もちろん普段は奥さんが運転してもいい。

ここがダメ

スタイリングは特に見るべきものはないと思う。こうしたタイプのクルマがこんな感じになってしまうのは、パッケージングの効率を求めると致し方ないところか。ランチアグリルがあるため、個性という点ではなんとかキープされている。

セミATはこのクルマの味でもあるが、クルマの性格を考えればやはりごく普通の4ATが欲しい。パワーステアリングのシティモード切替も、わざわざスイッチを用意するまでもないと思う。適度な軽さのステアリングであれば、特に不都合はないはずだ。

本国のカタログではインパネ中央上部にナビがはめ込まれているが、試乗車ではオーディオがそこを占拠している。これをごっそり付け替えない限り、ナビの装着は難しそう。センターメーターなのでダッシュ上には置けないし。唯一の方法はステアリング奥にディスプレイを置くことか。このクルマを買う上では最大の関門になりそうだ。それからもう一つ、カップホルダーも日本の事情にあったものが欲しい。

総合評価

小さめの高級車を出すと、本来高額車を買うはずの人までがスモールカーへシフトしてしまい、大型高級車=高収益車が売れなくなってしまう。そんなジレンマで日本のメーカーは小さな高級車を作ることができない。先日登場した日産ブルーバードシルフィあたりはそのギリギリのラインを狙っているが、例えば過不足ない小型車であるノートあたりを高級車に仕立てるという展開はありえないだろう。

たとえもし仕立てたとしても、日産ノートでは弱い。そこでインフィニティN15なんて名前を付け、外観を大きく変え、ディーラーを含めたブランド展開を再構築したとすれば売れなくもないと思うが、その費用対効果はいかがなものか。しかしランチアの場合は、本国ではブランド展開がうまくいっているようで、前年比売上ではフィアット本体に比べて好調だという。実用車イデアとおしゃれなムーザのどちらが売れているかは資料がないが、ランチアブランドが一定の評価を受けていることは確かなようだ。上級車のテシス(THESIS)も街で見かけるとそのルックスにはすごく惹かれるものがある。アルファが売れているように、ランチアも売り方次第でそこそこ数が出るのではないか。

ランチアの場合、ランチアとして新車種を生み出すのではなく、フィアットの内外装を化粧直しして、別高級車としているわけで、こればかりは歴史あるブランドを持たない日本車ができないことだ。レクサスも当面大型車展開しかしないだろうし、間もなく始まるアキュラ、やがて始まるインフィニティにも小型車はないはず。小さな高級車に関しては、しばらくは輸入車の独壇場ということになる。

その意味で現状ではムーザにライバルは存在しない。カーナビの取付問題を除けば特に大きな弱点も見あたらないし、稀少車好き、うんちく好きがファミリーカーを求める上では最右翼のモデルだ。圧倒的な数が出るラクティスの対極のモデルといえる。サービス拠点の少なさが弱点だが、近くに販売店がある人ならぜひ。

試乗車スペック
ランチア ムーザ 1.4 16V D.F.N.
(1.4リッター・5速セミAT・281万4000円)

●形式:-●全長3980mm×全幅1690mm×全高1630mm●ホイールベース:2508mm●車重(車検証記載値):1280kg(F:740+R:540)●乗車定員:5名●エンジン型式:843A1●1368cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●95ps(70kW)/5800rpm、13.0kg-m (128Nm)/4500rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/47L●10・15モード燃費:-km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:195/60R15(GOOD YEAR EAGLE NCT5)●試乗車価格:286万6500円(オプション:メタリックペイント 5万2500円)●試乗距離:120km ●試乗日:2005年12月 ●車両協力:渡辺自動車 鶴舞ショールーム

公式サイトhttp://www.garage-italya.com/mu_top.html

 
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