新車試乗記 第104回 ダイハツ ネイキッド Daihatsu Naked

 

日時: 1999年12月24日

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  • 中根モータース
  • 駄知ダイハツ
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

ムーヴのパイクカー? レトロカー? 30代向きの「オトナのオモチャ」

ネイキッドが、コンセプトカーとして初めて姿を現したのは97年の東京モーターショー。99年のショーでは参考出品車として披露され、97年当時の「反響次第では市販化を考えている」という公約通り、ほぼそのままのコンセプトで発売に至ったわけだ。その間には軽の規格変更もあったから、多少ボディは拡大化されているものの、ほとんどコンセプトカーのままの姿となっている。

そのコンセプトとは、「自由自在にクリエイティブカー」。これはクルマ自体のベーシックな部分をしっかり押さえた上で、ユーザーが自分の手で、自分仕様に仕上げることを楽しめる、想像力をかき立てられるクルマになっているという意味。内外装にプラモデル感覚の、工作心をくすぐる仕掛けがなされているのだ。

ターゲットを30代の男性としているのもユニークなところ。軽は女性のものという既成概念を打ち破り、男にも売れる軽を作って、軽市場の拡大を狙いとしている。軽専業として生き残りを図るダイハツのチャレンジ商品だ。

価格帯&グレード展開

価格帯は同装備のムーヴより10万円安の91.9~119.9万円、ムーヴよりお得?

FFと4WDの2つの駆動方式にそれぞれNAエンジンとターボエンジンのどちらかのユニットを搭載した全4グレード。ギアボックスは全て4速ATと5速MTが用意される。全グレードの装備に違いはなく、助手席エアバッグ、キーレスエントリー、UVカットガラスなどをセットにしたGパッケージが5.5万円高でオプション設定される。ABSは3.5万円のオプション設定だ。ボディカラーは全6色で、内装色はボディカラーに合わせて2色が用意される。

ユーザーの使い方次第で自由自在にアレンジできる、というのがウリなだけに、外装品、内装品ともに豊富なオプションを用意しているのが特徴だ。

パッケージング&スタイル

ユーザーレベルでバンパー交換が可能、実用性に裏付けされた個性的デザイン

広い室内空間をとることができ、車体の見切りの良い箱型シルエットのサイズは、全長3395mm×全幅1475mm×1550mm。当然、軽自動車規格内で、立体駐車場へ入れることも配慮しているのが特徴。なお、ホイールベースはベースとなったムーヴと同じで2360mm。

骨太で素材感を表現したというデザインは、鉄チンホイールがよく似合う。前後ドアパネルのヒンジ、バンパーの取り付けボルトは剥き出しで、従来、クルマが金をかけてそれらを隠してきた進化の道を、敢えて引き返している。でもこれが古くさくなく、むしろ新鮮。一種のレトロ路線ではあるが、全体的にはレトロムードでないのがいい。

ドアの内側も一部が鉄板剥き出し。コストダウンを図っているように見えるが、現在では鉄板を剥き出しにする方が、プレスの精度とデザイン力が求められてむしろ高くつくらしい。ムーヴよりずっとコストがかかっているはずだし、数もそう多くは出ないため、ダイハツとしては、おいしいクルマではなさそうだ。

前後ドアは共通のものが使われているが、これはコンセプトカーの心意気を残すもの。ヒンジを外付けしたことで、ドア4枚がほぼ直角まで開き、乗り降り、荷物の出し入れをしやすくしている。実用性に裏付けされた個性的デザインといえよう。

またボルト締めの外板は互換性がよく、特に傷つけやすいバンパーは3分割にすることにより、修理費を抑えることができる。さらに両サイドだけ色を変えたりといったリクエストにも対応。それもドライバー一本でユーザー自身が簡単にできる。これが「手を加えたくなるような素材」たる所以なのだ。

鉄板剥き出しのインテリア。装備は普通だが、その位置が個性的

室内も外観同様、コンセプトカーのイメージがほぼ再現されている。直線と円だけで構成されたインパネは、ムーヴベースということを何一つ悟らせない。ただ、エアコンスペース以外に1DINスペースが4つあるセンターコンソール部はかなり下方へ追いやられているので、使い勝手は今一つ。ATシフトはフロア式で、横開きのハッチゲートを持つムーヴに対して、ネイキッドは跳ね上げ式というのも大きな違いだ。

パワーウインドウスイッチはフロントシート間に集中配置されており、後席乗員はそこに手を伸ばさなければならない。コストがより重要視される軽自動車には非常に合理的な設計といえるが、使い勝手はいいとは言えない。やはり普通にドアに有ったほうがいい。

リアシートが脱着可能。様々な引っ掛けワザが使える室内

室内のウリはまだある。まず、後席が2分割で脱着できる。これは軽自動車初。一脚あたり8kg程度と軽量で、外せば自転車(ママチャリ)も積載可能。取り外しはロックが一箇所だけなのでとても簡単だ。

荷室はスペアタイヤが荷室右サイドに縦置きされているが、低床化(ムーヴよりも80mm低い)した恩恵が十分実感できる広さがある。そして随所に設けられた黒いキャップで隠された穴を活用すれば、棚やフックで収納を工夫できる。天井部分には横に三本「突っ張り棒」を差し込める穴(バーエンドキャッチャー)も開いている。これは他車にも見習って欲しいところ。

またキーフリーシステムというものを国内で初めて採用している。これはキーを差し込まずにドアの解除&施錠からエンジンの始動&停止が行える電子カードキーで、これをポケットなどに携帯してクルマに近づくだけで、それらの機能を満たしてくれるという優れモノ。売れ行きを見定めてから、次はトヨタがこれを採用しそう。

基本性能&ドライブフィール

エンジンは660cc直3DOHCのNAとターボ。どちらもムーヴからの流用で最高出力&最大トルクは、前者が58馬力/7600rpm、6.5kgm/4000rpm、後者が64馬力/6400rpm、10.9kgm/3600rpmとなる。サスペンションは前がマクファーソンストラット、後ろがトレーリングアームとこれもムーヴと同じだが、バネレートの変更などの改良は施されている。

今時珍しいジャジャ馬な走り、素材剥き出し感とイメージ的には近いが

試乗したのはターボのFF、4AT車。ムーヴより若干軽い車重810kgに対して64馬力、10.9kgmというエンジンは相当な力強さを感じさせてくれる。市街地でも高速走行でも動力性能に不満は感じないはずだ。高速巡航は120km/hでも楽勝。まだまだ余裕の135km/hあたりで突然リミッターが効き、ちょっと驚いたほど。ただ、3000回転ぐらいから一気に強烈な加速体制に入るという、典型的なターボのクセが残っているので、ちょっと落ち着きがない。10・15モード燃費は16.8km/Lだが、実燃費はかなり悪化しそうだ。

ステアリングはグリップが細く、軽めで反応に曖昧さが残り、このジャジャ馬的なエンジンを組み合わせてしまうと、トルクステアもあって、時折、危険な感じさえしてしまった。乗り心地も硬めで、突き上げを常に伴うもので、乗り心地には上質感はあまり感じられない。コーナリングも腰高感が強く、セダン系の軽以下。走りまでボディイメージ同様のプリミティブなものとなってしまったような気がするのはちょっと残念。

そうはいってもこのクルマにスポーティな走りは誰も求めないだろう。街乗りからちょっと郊外レジャーに出かける時の足として、ターボによって力不足を感じないのはマル。便利な下駄クルマという軽の原点から考えれば、まったく不満のない走りといっていい。

ここがイイ

素材としてのクルマというコンセプトはいい。ヒマがあったらあちこちいじりながら楽しめそう。ミニバン型軽自動車ばかりになっている中、ちょっと個性を主張しているのは評価できるところ。

ここがダメ

走りはかなり雑な印象。ターボも64馬力もなくていいから低圧ターボ仕様とかができないものだろうか。このパワーと現在の足回りはミスマッチ。もっと硬める必要がある。それも自分でやるカスタムの範囲内ということか?

前後同じドアのため、右ドアに向かって左下の部分は大きく削られている。この部分にはボディがあるわけだが、下りるときにここに足があたり、ズボンの裏側が汚れる事を発見。

総合評価

モーターショーで見たコンセプトカーと何か印象が違うなと思っていたら、横幅が新規格に伴い、80mm広がっていた。リアスタイルもかなりワイドな印象になっており、その結果、全体的にはややシャープさに欠けるムードになっている。コンセプトカーは背が高く見える分、チョロQ的キュートさがあったが、市販車では妙に落ち着いてしまったのだ。

ここがクルマの難しいところで、コンセプトカーと市販車は当然違うものではあるが、市販車にいかに先鋭的な印象を残すかが勝負だろう。ネイキッドの場合、幅が広がったことで、それがマイナスに作用したように思えてならない。ここはちょっと残念。

軽自動車に男性を乗せることはこれからのクルマ社会にとって重要なことだ。コンパクトカーの時代と言っても、大半の男性は大きなクルマに乗っている。それは男性が他人の目を気にせず乗れる軽自動車、プライドを持って乗れる軽自動車がないからだ。ワゴンRが唯一それに近いが、数が多すぎるのが難点。その点、ネイキッドのコンセプトは悪くないと思う。

奥さんの乗るファミリーカーとしてミニバンが家にあるから、通勤にも使える経済的な軽を自分のクルマとして買ってもいい、という地方在住のオトーサンが選ぶにはネイキッドは適任。購入したらホームセンターでいろいろ買ってきて自分の部屋を作れるのもいい。何より、タバコを買いに行くには軽がいちばんなのだ。

現在、ユーザーが個性化する一方で、プラットフォームを減らしコストを抑えるクルマ作りが迫られているわけだが、簡単に内外装をユーザーレベルでカスタマイズできるというのは理にかなっており、ユーザー側としてもこれを望んでいたはず。メーカー側としても車両価格を限界まで落としてオプションで儲ける、という商売方法もあるわけだし、今後もっと広がっていっていいだろう。

クルマは素材として売られ、ファッションやライフスタイルの一部としてユーザーが自由に組みたてる、そんな時代がやってくることを予感させる、象徴的な一台だ。

 

公式サイトhttp://www.daihatsu.co.jp/naked/

 
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