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ホンダ N BOX G・Lパッケージ新車試乗記(第654回)

Honda N BOX G・L Package

(0.66リッター直3・CVT・134万円)

ホンダ渾身の新型軽は
新しい、次の、
日本の、ノリモノ、だったか?

2012年02月24日

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キャラクター&開発コンセプト

オール新開発のスーパートールワゴン


ホンダ N BOX (東京モーターショー市販予定車)

東京モーターショー初日の2011年11月30日に正式発表され、12月16日に発売された「N BOX(エヌ ボックス)」は、両側スライドドアを備えたトールタイプの新型軽乗用車。プラットフォームからパワートレインまで新開発した新ラインナップ「N」シリーズの第一弾となる。プレスリリースによれば「日本にベストな新しいのりもの」、あるいは「ミニバンの魅力をそのまま軽乗用車に凝縮した『ミニ・ミニバン』」を目指したクルマだ。

 

N BOXの「センタータンクレイアウト」。燃料タンクを前席の下に配置する
(photo:Honda)

具体的にはフィットでおなじみの「センタータンクレイアウト」を採用した新型プラットフォームで、ホンダの伝統である「M・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想」(人のためのスペースは最大、メカニズムは最小)を追求。また新開発の直列3気筒エンジンとCVTに、アイドリングストップシステムを組み合わせている。

ホンダの原点と「ジャパンベストスモール」


N BOX事前説明会で車両解説を行うN BOX開発責任者(LPL)の浅木泰昭氏。スクリーンに映っているのはN360の新聞広告で、「先ず客室(キャビン)から設計を始めました」とある

シリーズ名の「N」はホンダ初の量産軽乗用車「N360」(1967~71年)に由来するもの。ホンダ製スポーツカーの原点がS600/S800なら、量産車の原点がこのN360だ。今回の「N」にはさらに「Next、New、Nippon、Norimono」という意味も入っている。ちなみに広告を統括するクリエイティブ・ディレクターは、初代ステップワゴンやユニクロを手がけている佐藤可士和氏。

販売目標は月間1万2000台だが、発売後約1ヶ月(1月10日時点)の累計受注台数は、その約2.3倍の2万7000台超。また1月の軽乗用車販売ランキングでは、1位ミラ(1万9795台)、2位ワゴンR(1万2442台)、3位ムーヴ(1万2384台)、4位タント(1万1603台)に続く5位(9934台)につけている。


■ホンダ>プレスリリース>新型「N BOX」発売(2011年11月30日)
■ホンダ>プレスリリース>新型「N BOX」受注状況(2012年1月11日)

価格帯&グレード展開

「N BOX」と「N BOX カスタム」の2本立て


ボディカラーは全11色(N BOXが8色、同カスタムが7色)。パール塗装は3万1500円高。写真は一番人気の「プレミアムホワイト・パール」

ラインナップはスタンダードな「N BOX」、そしてエアロパーツやメッキパーツで精悍な「N BOX カスタム」の2本立て。両者共に10万~11万円高の「G・Lパッケージ」で、電動スライドドア(左側のみ。右側はオプション)、スライドドアイージークローザー(両側)、フルオートエアコン等が追加され、カスタムでは合わせて145/80R13&スチールホイールが155/65R14タイヤ&アルミホイールに格上げされる。

 

こちらはカスタム G。色はもうひとつの人気色「クリスタルブラック・パール」

またカスタムにはターボ車(G・ターボ パッケージ)も用意。こちらは電動スライドドア(両側になる)、クルーズコントロール、パドルシフト、165/55R15タイヤ&アルミホイールが標準になる。

全車にVSAやスマートキーを標準装備


全車標準の新型スマートキー。大きめのUSBメモリー?という感じで、かなり小さい

変速機は全車CVTで、スマートキー、タコメーター、VSA(ABS+トラクションコントロール+横滑り抑制)も全車標準。特にVSAは2014年10月から軽自動車にも義務化される新保安基準を先取りしたものになる。アイドリングストップもターボ車を除く全車に標準装備。価格が124万円〜178万円というモデルだけに、装備は理想的に充実している。

■G        FF:124万円、4WD:136万円
G・Lパッケージ  FF:134万円、4WD:146万円 ※今回の試乗車

■カスタム G    FF:144万円、4WD:156万円
■カスタム G・Lパッケージ  FF:155万円、4WD:167万円

■カスタム G・ターボパッケージ  FF:166万円、4WD:178万円

パッケージング&スタイル

ホンダにとっては初めてのクラス


試乗車はカスタムじゃない方の「N BOX」

今回のN BOXはタントやパレットと同じスーパートール型の両側スライドドア車。今まではライフやゼストで、5ドアタイプ(ライバル車はアルトやミラ)からトールタイプのヒンジドア車(同ワゴンRやムーヴ)までカバーしてきたホンダにとっては、初めて挑戦するクラスになる。ホンダにはバモスシリーズ(同エブリイやアトレー)もあるが、あちらはやはり商用バンのアクティがベースで、駆動方式もミッドシップの後輪駆動車ベースになる。

全高はステップワゴン並み

全高はステップワゴン(1815mm)に迫る1770mmもあるが、全体の印象はステップワゴンの縮小版というより、バモスをFF車で再構築した、みたいな感じ。ホンダの軽セミキャブオーバーと言えば、傑作「ライフ ステップバン」(1972~74年)もあるが、あのようなノホホンとした可愛らしさはない。ステップバンみたいに丸目ヘッドライトもありだったのでは、と思ってしまうのは年寄りだけか。

 

ホイールベースは軽のFF車では最長の2520mm。エンジンルームの短さに注目
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 室内長(mm)
ホンダ
バモス
3395 1475 1755 2420 1645
スズキ
パレット
3395 1475 1735 2400 2085
ダイハツ
タント
3395 1475 1750 2490 2160
ホンダ
N BOX
3395 1475 1770 2520 2180
ホンダ
ステップワゴン
4690 1695 1815 2855 3095
 

インテリア&ラゲッジスペース

見晴らしはステップワゴン並み。質感も負けていない


タコメーターやスマートキーは全車標準。ナビはディーラーオプション

視点の高さはステップワゴン並みで、見晴らしは良好。頭上空間が異様に広く、サンバイザーが遠いところにある感覚はタントやパレットと共通だが、内装デザインや質感はステップワゴンあたりに近い。インテリアに関してはまさにステップワゴンの縮小版といった感じで、ホンダが気合いを入れてこのクラスに挑んだことがうかがえる。

もちろんユーティリティも充実。ダッシュボードには棚とドンクホルダーがあり、グローブボックスにはティッシュボックスが入るなど当然ながらソツがない。スマートキーやエンジン始動ボタンを全車標準としたのも思い切ったところ。

「ピタ駐ミラー」で視界を確保


サイドビューサポートミラーは上下に二つ。下側に映っているのはドアミラーの鏡面部分に映った前輪周辺部分

目を引くのが、左のAピラーにある「サイドビューサポートミラー」。駐車する際、左サイドミラーでは左後輪のあたりしか確認できないが、これがあることで左前輪や左ドア真下あたりの死角も何となく見ることができ、路肩にピタッと寄せやすい。リアウインドウにはミニバンによくある広角ミラー(後方視角支援ミラー)があり、バックの時も安心。おかげでピタッと駐車できるから、これらはまとめて「ピタ駐ミラー」と呼ばれる。

センタータンクレイアウトが威力を発揮


オプションで両側電動も用意するスライドドア。開口幅は64センチとたっぷり

フィット譲りのセンタータンクレイアウトは、N BOXでも威力を発揮。シート使用時の空間はタントやパレットとほぼ互角で、十分過ぎるほど広いが、やはり後席をチップアップした時の、カタログの言葉を借りれば「横から積める『もうひとつの荷室』」には説得力あり。A型ベビーカーが折り畳まずに積める、というのが殺し文句。

 

フィットでおなじみのチップアップ状態。リアサイドウインドウは半分ほど開く

しかもN BOXの室内高はフィット(1290mm)をはるかに越えて、タント(1380mm)、バモスのハイルーフ仕様(1385mm)、ステップワゴン(1395mm)を上回る1400mm。小学4年生(平均身長135センチくらい)以下なら立てる高さだ。

後席で唯一の弱点は、前後スライドが出来ないこと。ドライバーと後席乗員で話をする場合、あるいは運転席から後席チャイルドシートの子供の世話をしたい場合でも、後席を前に寄せることは出来ない。

27インチの自転車が楽に入る


開口部地上高は480mmで、パレット(535mm)より低い

荷室には20リッターのポリタンクが4個積めるとのこと。Bセグメントのコンパクトカーと同等という感じで、もちろん軽自動車としては広い方だ。

後席をダイブダウン(座面ごと沈ませる)で前に畳めば、縦に細長い空間が現れる。荷室高は測る場所で異なるが、だいたい120センチ程度で、荷室幅はカタログ値で112センチ。カタログには27インチの自転車(全長180センチ、全高107センチ)が楽々入る、とある。パレットやタントとの比較では、奥行きや荷室高ではN BOXが一歩リードするが、幅(特に開口幅)に関してはややタイトかも、という感じ。

 

床下にはパンク修理キットと車載工具、そして収納スペースがある。

基本性能&ドライブフィール

力はあるが、回すとややノイジー


ノンターボの最高出力は43kW(58ps)/7300rpm、最大トルクは6.6kgm/3500rpm

試乗したのはカスタムじゃない方の「G・Lパッケージ」(134万円 ※オプション含まず)。エンジンは新開発の直3・DOHC・4バルブ「S07A」型で、ボア×ストロークは奇しくもスズキの新世代「R06A」と同じ64.0×68.2mm。またCVTも軽自動車用に新開発されている。

スマートキーは全車標準で、エンジン始動ボタンをオン!と思ったら、それは低燃費モード用の「ECON(イーコン)」ボタンだった。赤いエンジン始動ボタンはシフトレバーの横にあり、輸入車みたいに?左手で押すことになる。

一般道でユルユル走る限りは2000回転、80km/h巡航は2500回転くらいだが、気になるのは3000回転くらいからエンジン音やCVTの高周波ノイズが高まること。4000~5000回転ではかなり騒々しく、アクセル全開の6000~7000回転では盛大な“ホンダサウンド”になる。

 

100km/h巡航は3200~3300回転くらい。車重1トン弱の軽ノンターボ車としては低めだが、やはり加速時には回転数に応じて騒々しくなる。おかげで、なるべくアクセルを踏み込まないようにしよう、と心がける運転になる。燃費にはいいかも。

試乗し始めてすぐに気付くのが、減速時のエンブレが強めなこと。積極的にエンブレをかけて燃料噴射を止めるのは最近のクルマでは割と一般的だが、N BOXは今まで乗った中でもかなり強い方。まるで初代プリウスがエネルギー回生する時のようにグゥンとエンブレが掛かる。

グラグラ感は少なめ。ガタピシ感は皆無

天井が高く、頭上がスカスカした感じはタントやパレットと似ているが、しばらくすると慣れてくる。トールワゴン独特の妙な走行感覚はあるが、グラグラ感は思ったよりも少なめ。交差点などでステアリングをわざとラフに切っても、そんなにグラッとは来ない。電動パワステはクルクルと手応えなく回るタイプだが、これは慣れてくるとむしろ悪くない感じだ。

当たりがソフトで突き上げのない乗り心地は、短時間の試乗でもすぐに分かるところ。一方、舗装が荒れたところでは小刻みな上下動が止まらない。スムーズな路面とのギャップがそう感じさせるのかもしれないが、ちょっと気になるところ。

ただしボディがガタピシする感じがまったくない。テーラードブランクやホットスタンプを採用したインナーフレーム付の新設計ボディは、N BOXの見どころで、軽自動車でそこまでやるか、と言いたくなるもの。重心の高さや両側スライドドアなど、いろいろ厳しい要素がある中では表立って感じられないが、それでも軽ばなれした作りであることは伝わってくる。

VSAは全車標準だが、アンダーステアは強い


標準グレードの145/80R13(ヨコハマのBluEarth)

山道ではやはりライバル車同様、ペースはほどほどに抑える必要がある。最初のコーナーで自覚させられるのはアンダーステアが強烈なこと。長いホイールベースに押し出されるように、前輪はズルズルとアウト側に膨らんでいく。逆に言えば、そんなに風にアンダーステアが出るほど、リアは頑として安定している、とも言える。

ちなみにタイヤサイズは145/80R13(アルトエコと同サイズ)で、これが少々力不足な感じもするが、「カスタム」には155/65R14タイヤとスタビライザー(フロント)が装着されるので、日常的に山道を走ることが多い場合は、こちらの方がいいかも。

 

またN BOXで嬉しいのがVSAが全車標準であること。一番安い124万円のモデルにもつくわけだ。アンダーステアの軽減にかなり効いているのは確かで、さらに緊急回避などで生じやすいオーバーステアが抑制されると思えば、安心感が違う。

試乗燃費は14.7~22.0km/L

今回はトータルで約180kmを試乗。参考までに試乗燃費は、いつもの一般道と高速道路を走った区間(約90km)が14.7km/L。信号の多い一般道を低燃費を心がけて走った区間(約30km)が17.2km/L。さらの流れのいい一般道で同じく燃費運転した区間(約30km)が22.0km/Lだった。この車重の軽で普通に15~17km/Lで走ってしまう、という事実がすごい。10年前の軽ワゴン(4AT)なら、せいぜい10~12km/Lだ。

燃料タンク容量は35リッターなので(4WDは30リッター)、警告灯がつくまでの航続距離は400~450kmといったところか。

    JC08
モード
燃費(km/L)
10・15
モード
燃費(km/L)
アイドリング
ストップ機能
燃料タンク
容量(L)
車重(kg)
ホンダ バモス(3AT) 14.2 15.8 37 980~990
スズキ パレット 20.2 22.5 30 920~930
ホンダ N BOX 22.2 24.5 標準 35 930~940
ダイハツ タント 24.8 27.0 標準 36 920~930

※表内はすべて2012年2月現在の現行モデルで、2WD・ノンターボ車の標準的なグレード

ここがイイ

パッケージング。スタイリング。そしてVSA、スマートキー、ピタ駐ミラーの装備

「ミニステップワゴン」とも言うべきパッケージング、質感、装備。その点では軽ミニバンの理想像とも言えそうで、ショールームで実車を見て、子育て中のファミリーが即決してしまう光景が目に浮かぶ。ホンダは初代オデッセイといい、初代ステップワゴンといい、心をつかむ一発芸を持ったミニバン作りが得意だが、今回も確かにそういうクルマになっている。

スタイリングのまとまり。この手のパッケージングでは、デザイン的に破綻する部分が出そうなものだが、さすがホンダ、どの角度から見てもシンプルかつきれいにまとまっている。これなら女性ウケもいいのでは。ただカスタムの方は少し子供っぽく、オモチャっぽくなってしまっているのが残念。

VSA、スマートキーを全車標準としたこと。またカメラに比べれば原価の安い「ピタ駐ミラー」は、コストパフォーマンスに優れた安全装備。他社も研究して、多くのクルマで標準としてもらいたい。

ここがダメ

パワートレインからのノイズ。限界性能の低さ。シートリフターの不備。ホワイトメーターの視認性

エンジンおよびCVTのノイズ。いくらノンターボとはいえ、ほとんどの人がうるさいと思うはず。パワートレインが新開発だけに残念な部分。

試乗した145/80R13仕様(スタビライザー無し)は、街乗りでこそ不満ないが、高い速度域や山道ではもう一杯一杯。とても飛ばす気にはなれない。こういうクルマだから限界性能は重視していないと言うなら、それも見識だが、ならばこんなに高回転型のエンジンは要らないはず。ただこの点はカスタムの155/65R14仕様(フロントスタビライザー付)であればベターかもしれない。

 

メインユーザーが女性のはずだけに、運転席にシートリフターがないのはいただけない。パッケージング上、足もとが狭いのは仕方ないとしても、ならばシートリフター、出来ればチルトステアリングも付けて、ドラポジの自由度を高めたかったところ。

どうしたことか、スタンダードモデルのホワイトメーター(速度計)の昼間視認性がひどく悪い。緑色の透過照明が暗くて、ホワイト盤面に溶け込んでしまい、速度を示す数字が一瞬で判別できない。カスタムと同じブラックの盤面にするか、いっそデジタルの方が親切。

総合評価

初代ステップワゴンに勝るとも劣らない

まずはお詫びから。2000年式の初代ステップワゴン「モバイル」仕様をまだ使っている。ということで日本経済に貢献してないことを、お詫びしたいところだ。しかし初代ステップワゴンのパッケージングは、いまだに素晴らしいとしか言えないもの。「5ナンバー枠」に収まるサイズながら、室内は本当に広くて使い勝手が良く、多人数乗車でも、あるいは荷物の運搬でも、また室内を出先でオフィスのように使っても、とにかく便利。すでに12年落ちだから小傷に気を使うこともなく、まさに使い倒せている。5ナンバーサイズはやはり日本ではとても使いやすい。このパッケージングを15年も前に打ち出したホンダというメーカーは素晴らしい。とはいえ、操縦安定性や燃費は、今の水準ではとてもほめられたものではないが。

 

N BOX事前説明会で使われた軽市場の概況。ダイハツとスズキの2強構造が分かる

そんなホンダが「軽の枠」で作ったのがN BOXだ。初代ステップワゴンは5ナンバー枠、N BOXは軽の枠だが、規制の中で最大限の効率を求めるのは、規制だらけのF1で培ってきたホンダの伝統芸。N BOXも初代ステップワゴンに勝るとも劣らないパッケージングを実現している。

とはいえ今回のN BOXは、タントが登場してから8年も経ってからの登場。しかもここ10年ほどの間に、スズキやダイハツの軽はものすごい勢いで進化を遂げてきた。ホンダは今からそれを追おうというチャレンジャーの立場になっているのが残念なところ。N360の時代には他社に並ぶどころかリードする勢いだったと思うが、ここ最近の軽市場はそう簡単ではない。

 


ホンダ N360
(photo:Honda)

ホンダの場合、量産の4輪車では実質的に軽から始まり、どんどん上のクラスに進出していったことで羽ばたいたのだが、ここに来て、結局はコンパクトカーが主力のメーカーになってしまっている。こと日本市場ではフィット(とその派生モデル)オンリーとも言える有様。そして今年は軽に注力するという。その反面、新型NSXも出すというし、今ホンダのアイデンティティがどうなっているのか、ちょっとはっきりしないように感じられるのは我々だけではないだろう。他メーカーとの提携話も聞こえてこない中、N BOXのハードウエアをベースとして軽の新型車が次々に投入されることは歓迎しつつも、戸惑ってしまうのだ。大丈夫か、ホンダと。

何となくアシモを思わせる


東京モーターショーに展示されたコンセプトモデル「N CONCEPT_3」

話を戻すと、こうしたわけでN BOXはコンセプト的にはタントやパレットの後追いになるが、さすが最後発だけあって、またホンダがパテントを持つセンタータンクレイアウトを採用しただけあって、本文に書いたようにライバル車を超える部分が多いのは間違いないところ。27インチの自転車を楽々積めるというあたりは大した工夫だ。新車の3台に1台が軽という日本では、生活のツールとしての軽はどれだけ良くなってもかまわない。とはいえ軽の枠内では、パッケージング的にはほぼ究極だろうが。

そしてこういったコンセプトでありながら、スタイリングはさすがにホンダ。タントやパレットよりも生活感がなく、美しくまとまっている。特にボディカラーがホワイトの場合は、スモーク仕上げのウインドウエリアと相まって何となく「アシモ」を連想させるあたりがクール。インパネまわりも、シフトレバーがロボットの手のように見えるところがアシモっぽいし、ダッシュセンター最上部にナビモニターを配したところも昨今のクルマとしては素晴らしい。またミラーをたくさん使って死角を減らしたのも良いアイデア。こういったデザインと機能性の見事な融合はホンダならではだ。

 

東京モーターショーに出展されたN Concept_4

その一方でアクセルを踏み込めば、確かにホンダらしく元気に走るのだが、このクルマでそれは必要ないのでは、とも思ってしまう。調子に乗ってコーナへ入って行くと、すぐにVSAのお世話になってしまうというのはどうなのか。それゆえの全車標準化?なんて思ってしまう。ECONをオンにした時の大人しい走りだけで十分では。むろんカスタムもあるし、今後N360の現代版みたいなモデルが出てくることになれば、この動力性能にも意味があると思うが、素のN BOXにはちょっとミスマッチに思える。タイヤも走りに対してはプアだし。それより、もっとトルクを感じさせるチューニングにして、静かで滑らかな走りを実現して欲しいところだ。

これからの日本にふさわしい

最近はスズキ(日産やマツダにOEM供給)やダイハツ(トヨタやスバルにOEM供給)の軽が、軽自動車としては過剰なほど、いや異常なほど良くできているゆえ、どうも辛口になってしまうのだが、それでもN BOXのパッケージングやデザイン、そして燃費も考えると、これはこれで十分及第点だろう。高速道路を長距離走ったり、ワインディングを攻めたりすることは「ほぼない」類のクルマなのだから。

子育て主婦あたりが現在の想定ユーザーだが、この広さや乗りやすさを考えれば、これからは高齢者ドライバーの足にもよさそうだ。普段、高齢者ドライバーは夫婦2人で乗り、高速道路は使わず、10km程度の近距離を走ることが大半というアンケート調査もある。となると、この層が乗るクルマにはあまり過剰な走行性能は要らないことになる。それよりも日常の使い勝手だ。その点でN BOXはぴったり。また安全性を少しでも高めるという意味で、VSAの全車標準化も評価したい。これからの日本にふさわしいクルマがまた一台増えたことを、大いに歓迎したいと思う。

 

ところで、ナビを置くには最適の2DINエリアだが、スマートフォンなどが普及するこの先は、こうした低価格車だと高価な純正ナビをつける人が少なくなりそうだ。となると、せっかくのナビ位置も意義を失いかねない。ただ位置的にここは完璧なので、例えば7インチタブレットなどを装着できるキットをサードパーティーが開発してくれないだろうか。期待したいところだ。

試乗車スペック
ホンダ N BOX G・Lパッケージ
(0.66リッター直3・CVT・134万円)

●初年度登録:2011年12月●形式:DBA-JF1 ●全長3395mm×全幅1475mm×全高1770mm ●ホイールベース:2520mm ●最小回転半径:4.5m ●車重(車検証記載値):940kg(560+380)※オプション装着により+10kg ●乗車定員:4名

●エンジン型式:S07A ●排気量・エンジン種類:658cc・直列3気筒DOHC・4バルブ・横置 ●ボア×ストローク:64.0×68.2mm ●圧縮比:11.2 ●最高出力:43kW(58ps)/7300rpm ●最大トルク:65Nm (6.6kgm)/3500rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/35L ●10・15モード燃費:24.5km/L ●JC08モード燃費:22.2km/L

●駆動方式:FF(前輪駆動) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイル/後 車軸式+コイル ●タイヤ:145/80R13 (Yokohama BluEarth A34) ●試乗車価格:174万1100円  ※オプション:ナビ装着用スペシャルパッケージ+リア右側パワースライドドア 6万8250円、パール塗装 3万1500円、デュアルサイズメモリーナビコンボ+リアワイドカメラ 18万2050円、リア席モニター 6万8775円、ドアバイザー 1万9110円、フロアマット 1万5540円 など ●ボディカラー:プレミアムホワイトパール ●試乗距離:約180km ●試乗日:2012年2月 ●車両協力:株式会社ホンダカーズ東海

 
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