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日産 スカイライン 350GT ハイブリッド タイプSP新車試乗記(第729回)

Nissan Skyline 350GT Hybrid Type SP

(3.5L V6+モーター・7速AT・541万5120円)

13代目はハイブリッド!
ステアリング・バイ・ワイヤー!
インフィニティのバッジをつけた
ハイテクなスカイラインを
どう受け止める?

2014年05月16日

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キャラクター&開発コンセプト

海外名はインフィニティ Q50


新型スカイライン 350GT HYBRID Type SP

2013年11月11日に発表、2014年2月に発売された新型「スカイライン」は、1957年デビューの初代から数えて13代目。

ご存知の通りスカイラインは、2001年発売の11代目(V35型)から海外ではインフィニティ G35と呼ばれるモデル(12代目のV36型ではG37に進化)。その後継モデルとして2013年夏に米国で発売されたのがインフィニティ Q50であり、その国内版が今回の新型スカイライン。内外装の一部バッジやハンドル位置を除いて、ほぼインフィニティのまま販売される。

全車ハイブリッドでスタート。世界初のステアリング・バイ・ワイヤーを採用


エンジンとミッションの間に乾式クラッチとモーターを配置。ミッション(7AT)は「トルコン抜き」で使う

Q50では、従来の3.7リッターV6ガソリンエンジン「VQ37VHR」等も継続されるほか、欧州向けにはダイムラー(メルセデス・ベンツ)製2.2リッター直4ディーゼルターボも用意される。

一方、国内向けスカイラインは、ひとまずハイブリッドのみ。フーガ ハイブリッドと同じ3.5リッターV6エンジン「VQ35HR」の1モーター・2クラッチ式ハイブリッドが搭載される。車両型式は「HV37」。

 

ダイレクト アダプティブ ステアリング(DAS)。ステアリングシャフトとギアボックスの間にはクラッチがあり、通常走行時にはこれが切り離される

もう一つ、大きな技術トピックは、市販車で世界初の“ステアリング・バイ・ワイヤー”技術「ダイレクト アダプティブ ステアリング(DAS)」を採用したこと。通常走行時、ステアリングと前輪は機械的に直結しておらず、電気信号によって操舵される。

生産は、シーマなど日産の高級車を主力とする栃木工場(栃木県河内郡上三川町)。米国に続いて欧州などにも輸出される。国内での月間販売目標は、先代の1000台から大幅に下方修正されて200台。

 
skyline_02fuga_hybrid_200.jpg
日産 フーガ ハイブリッド

■過去の新車試乗記
日産 フーガ ハイブリッド(2010年12月掲載)
日産 スカイライン クロスオーバー 370GT(2009年9月掲載)
日産 スカイライン 350GT Type SP(2007年1月掲載)

 

価格帯&グレード展開

ひとまずハイブリッドのみで462万4560円~


ボディカラーは全8色。写真はラディアント・レッド・パールメタリック

新型スカイラインはひとまず、3.5リッターV6エンジンのハイブリッドモデル「350GT ハイブリッド」のみでスタート。このパワートレイン自体は、現行フーガ ハイブリッドとほぼ同じものだ。

今回のニュースは、日産のハイブリッド車で初の4WDモデルが用意されたこと。前輪への駆動力はプロペラシャフトの途中から取り出され、電子制御トルクスプリット4WD「アテーサE-TS」により、適宜フロントに分配される。

 

内装色は全グレードでブラックとベージュ(写真)の2色を用意。タイプPとSPは本革シートになる

【FRモデル】
■350GT HYBRID       462万4560円
■350GT HYBRID Type P  500万2560円
■350GT HYBRID Type SP  541万5120円 ※今回の試乗車

【4WDモデル】
■350GT FOUR HYBRID      490万5360円
■350GT FOUR HYBRID Type P  528万3360円
■350GT FOUR HYBRID Type SP  569万5920円

V36型は2.5リッターを継続販売。307万5840円~


V36型スカイラインは、250のみ継続販売される

なお、純エンジン車については、先代V36型スカイラインの2.5リッターV6モデルが継続販売される。「250GT」「250 Type S」「250GT FOUR」の3グレードで、価格は307万5840円~358万9920円(以下、全て消費税8%込み)。

なお、ルノー日産とダイムラーの間では各種ガソリンエンジンの共同開発が進んでおり、Q50にも2リッター直4ターボが搭載される予定。

 

パッケージング&スタイル

外観はほぼインフィニティ Q50


ヘッドライトやフォグランプなど燈火類は全てLED

外観でまず思うのが、やはりフロントのバッジまでインフィニティ Q50と同じになったことだろう。Q50と異なるのは、リアにインフィニティおよびQ50のバッジがなく、「SKYLINE」と入ることくらい。ここまで一緒なら、いっそリアも一緒で良かったのでは、という気もする。

あと、外観で印象的なのは、ボディパネルの質感がえらく高いこと。塗装は水研ぎ工程こそないものの、シーマと同じ栃木工場の職人が手がけているという。デザインに関しては、ちょっとBMW風でもあり、レクサスGS風でもあり、ジャガーXF風でもあり、先回試乗したマセラティ ギブリ風(リアフェンダー)でもあるが、暗いところで見たら一瞬、直6最後のR34型スカイラインの面影がよぎった。

全幅は50mmアップ。サイズ的にはGSが近い


ボディカラーは全8色で、試乗車はテーマカラーのHAGANEブルー

ボディサイズは全長4800mm×全幅1820mm×全高1440mm。先代より全幅は50mmほどワイドになったが、ホイールベースは変わらず2850mm。BMWのアクティブハイブリッド3やレクサス IS300hより一回り大きく、むしろGSハイブリッド(300h/450h)に近い。

なお、Cd値(空気抵抗係数)は0.26を達成。ボディ底面のフラット化などにより、前後ゼロリフトを実現したとのこと。

 

タイプSPはフロントバンパーが専用デザインになる

リアには日産のバッジも、インフィニティのバッジもない。ガーニッシュにSKYLINEと入る

ネガティブからポジティブに変化するショルダーラインがポイント
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
BMW アクティブハイブリッド 3 (2012~) 4625 1800 1440 2810 5.4
レクサス IS300h(2013~) 4665 1810 1430 2800 5.2
レクサス HS250h(2013~) 4710 1785 1495 2700 5.6
日産 スカイライン セダン V36型 (2006-) 4755~4780 1770 1450~1465 2850 5.4~5.5
日産 スカイライン ハイブリッド(2014~) 4800 1820 1440 2850 5.6
レクサス GS300h/450h (2012~) 4850 1840 1455 2850 5.1~5.3
トヨタ クラウン ハイブリッド(2012~) 4895 1800 1450-1460 2850 5.2
ホンダ アコード ハイブリッド(2013~) 4915 1850 1465 2775 5.7
BMW アクティブハイブリッド 5(2012~) 4915~4920 1860 1475 2970 5.7
日産 フーガ ハイブリッド(2010~) 4945 1845 1500~1510 2900 5.6
 

インテリア&ラゲッジスペース

内装もほぼQ50を踏襲


スイッチ類はドライバーが姿勢を変えずに操作できる650mmの範囲内に集中して配置

室内で真っ先に目に入るのが、ステアリングセンターパッドのインフィニティマーク。右ハンドルである点や、国内専用の180km/hメーターを除けば、内装もほぼインフィニティ Q50のままに見える。デザイン的にも、国内向けセダンにありがちなコンサバ感はなく、男性的で囲まれ感が強い。

 

センターコンソールには8インチ&7インチのツインディスプレイを装備

見どころは、センターコンソールのツインディスプレイ。上部にはナビやテレビなどを映す8インチタッチパネルを、下部には空調やオーディオ操作パネル等を表示する7インチタッチパネルを装備。8インチの方は、マルチファンクションスイッチでの遠隔操作に加えて、スマホ風の操作も可能。また、空調とオーディオに関してはリアルなスイッチも残されてる。

 

着座感は割とタイトだが、シートのホールド性は特に高くない。先代に比べて肩まわりは20mm広いとのこと

左は走行モード選択用の「ドライブモード セレクタースイッチ」、右はナビ等を操作する「マルチファンクションスイッチ」

マグネシウム製のパドルシフトはコラム固定式で、タイプSPに標準装備
 

トランク容量は400L。ゴルフバッグはギリギリ4セット積めるようだ。トランクスルーは不可

全車ランフラットタイヤなので、スペアタイヤやパンク修理キットはない

後席の座り心地は良好。ホイールベースは先代と同じだが、足もとは少し広くなった。窓は全開する
 

基本性能&ドライブフィール

世界最速のハイブリッド。システム出力は364ps

試乗したのは最上級グレードの「タイプSP」(FR)。価格は541万5120円。

パワートレインは2010年のフーガ ハイブリッドに続いて、旗艦セダンの4代目シーマにも搭載された3.5リッターV6のハイブリッド。日産言うところの1モーター2クラッチ方式ハイブリッドシステム「インテリジェントデュアルクラッチコントロール」。

細かいことを言うと、フーガ ハイブリッドは昨夏のマイナーチェンジで、モーターのトルクアップに伴い、システム出力が若干向上していて(360ps→364ps)、これがほぼそのまま新型スカイラインに搭載されている。

 

構造的には、306psと35.7kgmを発揮する自然吸気3.5リッターV6エンジンと、68psと29.6kgmを発揮するモーター(駆動と発電を行う)があり、その間に電子制御の乾式単板クラッチを挟んで、状況に応じてエンジンとモーターを断続するというもの。

その後方には、トルクコンバーターを省いた7速AT(もともとクラッチを内蔵していて、これが第2のクラッチ)があり、そこからプロペラシャフトが伸びて後輪を駆動する。駆動用バッテリーは、フーガ&シーマハイブリッド同様、高効率のリチウムイオン電池になる。

 

駆動力は、エンジン→乾式クラッチ→モーター→7速AT→プロペラシャフトという順で伝わる

車重はFRモデルで1760~1800kgと、フーガハイブリッド(1820~1870kg)より大人1人分軽く、シーマ(1930~1950kg)より3人分軽い。パワーウェイトレシオは一連の日産FRハイブリッド車で初の5kg/ps切り(4.95kg/ps)。0-100km/h加速は4.9秒で、3リッターV6のパナメーラ S E-ハイブリッド(5.5秒)より速く、ケイマンSのPDK(4.7~4.9秒)並みのダッシュ力を誇る。

実際のところ、アクセルを踏んだ瞬間は思ったほどガツンと来ないが、いったん加速体制に入ると火がついたように速い速い。まったく淀みなくグングン速度計の針が右に傾いてゆく。エンジンはVQだが、V6独特のドゥルドゥル感はなく、かすかにクォーンという音を響かせる。車内で聞こえるエンジンサウンドに関しては、オーディオスピーカーを使った「アクティブノイズコントロール」で快音成分を強調しているらしい。

乗り心地も超スムーズ

ボディサイズはクラウンより100mmほど短いが、最小回転半径は5.6メートルと大きめで(クラウンは5.2メートルしかない)、取り回しは可も不可もなく、というレベル。先代にあった電子制御の4輪操舵システム(4WAS)は廃止されている。ただ、日産FRモデル独特のタイト感は相変わらずで、いったん運転席に座ると、ボディの大きさをあまり感じない。

プラットフォームは現行フーガのホイールベース短縮版で、先代V36より剛性アップと軽量化を実現。特にフロント部の剛性強化によって、操舵初期の車体変形を抑制し、操縦性を向上させたという。リアサスペンションは完全新開発で、ダンパーとスプリングが同軸配置になった。

また、最近よく聞くのがアルミホイールの剛性アップによる操縦性や乗り心地の改善だが、新型スカイラインでもスポーク部の剛性強化によって、ロードノイズや振動の遮断性を向上させたという。また、低回転走行時にエンジンから発生するこもり音を、オーディオスピーカーから出す逆位相の制御音で消音する「アクティブノイズコントロール」も採用されている。

 

リアサスペンションは新開発で、ダンパーとスプリングが同軸配置になった。アームはアルミ製

まあ実際のところは、個々の技術がどの程度効いているかは、レス状態と比べられないので分からないが、静粛性はエンジン音、ロードノイズ、風切り音、すべての点で文句ない。このあたりはさすが、世界でドイツ御三家と戦う日本車。

また、乗り心地もまったく問題なし。タイヤは全車ランフラットで、空気が完全に抜けた状態でも、80km/hで150km走行できるという。試乗したタイプSPは、下位グレードに標準の17インチではなく、19インチ(245/40RF19)を履いていた。電子制御ダンパーなど無くてもOKなのは、やはりシャシー全体がいいからだろう。

世界初のステアリング・バイ・ワイヤーを採用

一番の関心事は、やはり世界初のステアリング・バイ・ワイヤー「ダイレクトアダブティブステアリング(DAS)」ではないかと思う。ステアリングシャフトは念のため残されているが、イグニッションをオンにすれば、ステアリングシャフトに内蔵されるクラッチで機械的な接続を解除。これにより通常時は、電子信号のみが前輪に伝えられ、完全に電動で操舵される。目的は「応答遅れのないシャープなハンドリング」や「高い直進安定性」だ。

肝心の印象はというと、スタンダードモードなら、まったく違和感はなく、ごく自然。ただし、よく観察すると、凸凹や轍(わだち)だらけの道でもハンドルが取られたり、嫌なキックバックが出たりしないことが分かる。これはハンドルが前輪に直接つながっていない上に、微妙な修正舵が瞬時に自動的に行われているからだと考えられる。

一方で、良くも悪くもDASをはっきり体感できるのは、スポーツモードを選択した時。ステアリングレスポンスは超クイックというか、超ビンカンになり、ハンドルを切った瞬間にピクッと反応、ズワッと前輪が切れる。例えるなら、マグネットコーティングしたガンダムみたいな感じ?

というわけで、これは斬新と言えば斬新だが、実際にはあまりにも反応がいいため、ステアリング操作に気を使う。特に困るのはワインディングを走る時で、速い操舵に対してVDCのブレーキ制御が敏感に介入してくるので、かえって走りがギクシャクしてしまう。高速コーナーではいざ知らず、少なくとも日本の狭い山道ではスタンダードモードの方が断然走りやすい。

 

「アクティブレーンコントロール」のイメージ図。ステア・バイ・ワイヤならでのアクティブな操舵支援が可能

また、このDASの機能を利用して、車線(白線)に対する車両の向きをデジタルカメラで読み取り、70km/h以上でタイヤの角度と操舵反力を微調整する世界初の技術「アクティブレーンコントロール」も全グレードに採用。これまであったレーンキープシステムより、よりアクティブに(能動的に)操舵する。ただ、今回の試乗では、制御をはっきり体感することはなかった。

なお、ヘッドライトはハイ/ロー共にフルLEDで、流行りのハイビームアシスト(ハイとローの自動切り替え)も装備。ヘッドライト関係の最新技術を全部載せしたもので、実際のところ配光は常に適切に行われ、夜間走行はとても楽だった。

安全性能に関しては、ボディ主要骨格に世界初となる1.2GPa級の高成形性超高張力鋼板を採用。全車6エアバッグを標準装備し、世界最高水準の衝突安全性能を実現したとのこと。また、タイプPとSPではミリ波レーダーを搭載し、約60km/hでも衝突回避が可能なエマージェンシーブレーキを装備している。

試乗燃費は9.6~13.5km/L。JC008モード燃費はGS450hと互角

今回はトータルで約250kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が9.6km/L。また、一般道を大人しく走った区間(約30km×2回)が2回とも13.5km/L。区間は短いが、高速道路をインテリジェントクルーズコントロール(114km/hまで設定可能)を使って流した区間が約14km/Lだった。実用燃費は、ライバルのV6エンジン・ハイブリッド車と大差ないと思う。

JC08モード燃費は、FRモデルで17.8~18.4km/L、4WDで16.8~17.0km/L。指定燃料はプレミアムで、タンク容量は70リッター。

 
    エンジン モーター システム
出力(ps)
JC08
モード
燃費(km/L)
最高出力(ps) 最大トルク(kgm) 最高出力(ps) 最大トルク(kgm)
ホンダ アコード ハイブリッド(2013~) 143 16.8 169 31.3 199 30.0
トヨタ クラウン ハイブリッド(2012~)
レクサス IS 300h(2013~)
レクサス GS300h(2013~)
178 22.5 143 30.6 220 21.4~23.2
アウディ A6 ハイブリッド(2012~) 211 35.7 54 21.4 245 13.8
BMW
アクティブハイブリッド 3(2012~)
306 40.8 54 21.4 340 16.5
BMW
アクティブハイブリッド 5(2012~)
306 40.8 54 21.4 340 13.6
レクサス GS450h(2012~) 295 36.3 200 28.0 348 18.2
日産 スカイライン(2014~)
※モード燃費はFRモデルの数値
306 35.7 68 29.6 364 17.8~18.4
日産 フーガ ハイブリッド(2010~)
※スペックは2013年7月のMC以降
306 35.7 68 27.5 364 17.8~18.0
 

ここがイイ

盛りだくさんの最新技術。良くなった燃費

いろんな最新技術が盛り込まれているが、そんなことを気にせず走らせれば、とても快適で、速くて、燃費もよくて、実用性もそこそこ高い高級セダンになっていること。先代スカイライン 370GTのセダン、そして特にクーペはすごくいいクルマだった印象があるが、実用燃費はそれなりだった。新型ではその唯一の弱点がなくなったわけで、性能面では本当に死角がなくなった。

本文にあるとおり、それら最新技術は今後のクルマを示唆する重要なものが多い。日本専用車ではなく、世界に向けて売りだされるクルマに対して、意欲的に新技術が投入されたことの意味というか、意義は大きい。

ここがダメ

スポーツモード時のDAS。価格。足踏み式パーキングブレーキ

DASについては本文でも触れたように、また、あちこちでも書かれているように、スポーツモードでの設定は過激過ぎ。初物ゆえ、あえて違いを分かりやすくしたようだが、もう少しマイルドな設定の方が良かった。

パドルシフトはタイプSPに標準装備されるが、変速レスポンスがいまいち遅い上、自動シフトアップもしなくなるため使いにくい。マニュアルシフトしなくても十分に速いので、パドルシフトは特に必要ではなく、その点ではタイプPで十分。

燃費は従来モデルの2倍くらい良くなったが、車両価格は100万から150万円ほど高くなり、試乗したトップグレードでは約540万円と、すっかり高級車になってしまった。同等性能のGS450h(724万1143円~)より安いとはいえ、「スカイライン」としてはあまりに高いかも。これが「インフィニティ G50」だとすれば、また受け止め方が違うのかもしれないが……。

 

超ハイテク&ハイブリッド車となった新型スカイラインだが、パーキングブレーキはなぜか足踏み式。理由はいろいろあるだろうが、今やゴルフですら電動パーキングブレーキ。この超ハイテクなスカイラインであれば、やはり当然、電動化(つまり自動化)して欲しかった。だからといって、すごく不便なわけではないが、上位グレードに装備されるインテリジェントクルーズコントロールも、電動パーキングブレーキがないため、停車時には制御がいったん切れてしまう。

左ハンドル車をメインに開発したせいか、右ハンドル車の左足スペースはやや狭め。気にならないといえば気にならないのだが。

総合評価

「スカイライン」というブランド

世の中、ブランド論はいまだ盛んで、伝統的な高級ブランドというものには、大きな価値があるようだ。その価値は実際の機能とは別の、付加価値とも言うべきもの。時計で1万円も出せば、電波ソーラーで、そこそこかっこいい物が買えて、機能的には十分以上なのだが、時間の正確さではその1万円時計にかなわないブランドウオッチに、何十万円ものお金を出す皆さんがたくさん存在する。機能ではなく、その歴史とかデザインとか、要するに伝統あるブランドというものに、価格に見合うものがあるということだろう。

日本の製品はそのあたりがどうも不得手なようで、ブランドに関してはいまだ弱いままのように見受けられる。ユニクロだって一つのブランドだが、それは高級とはまた違う意味でのブランドで、最近はあのソニーだってそんな感じになっちゃっているのではないか。

そしてクルマの場合はどうだろうか。日本のクルマにブランド力はあるのだろうか。ユニクロ的なブランド価値はあっても、高級ブランドと呼ぶのはなかなか難しいというのが、やはり実態では。レクサスが頑張っているが、まだまだというのが衆目の一致するところではないかと。

 

そんな中、スカイラインというブランドというか車名には、なんだか少し他のクルマとは違う価値が、特に日本国内ではあるように見える。歴史とかデザインとか、まあ伝統というものが、日本車では珍しくあるように思える製品だ。ノスタルジックカーショーなどを見れば分かるように、強烈なスカイラインマニアという人もいるようだし、「スカイラインという名をつけた名車」はこれまで何台も生まれてきている。

そんな「スカイラインという名をつけたクルマ」がまた一台登場した、というのが今回の試乗車ということになる。でもこれ、実際にはインフィニティ Q50の日本仕様なわけだ。スカイラインというのは、あくまで日本で売るためのマスコットネームみたいなもの。脈々と続くスカイラインの伝統、などという文脈では捉え切れないクルマであることは間違いないだろう。

ただ、このクルマがスカイラインと名乗ったがゆえに、日本では注目を浴びていることは事実。こんなのはスカイラインじゃないとか、直6が懐かしいとか色々言う人もまわりに多く、いやこれこそが新しい今のスカイラインなのだから受け入れるべきだなんていう人もいたりして。いや、昔スカイラインに乗ってたし、同じ名前を名乗っているなら一度乗ってみるかなんて人もいるので、実際の売れ行きにもこの名前はかなり影響しそうだ。

今回のスカイラインは最新スマホ

まあ、スカイラインという名前に関してはそれくらいにしておいて、ではクルマとしてどうかという話だが、これがなかなか意欲的な、いや革新的なクルマであることは間違いない。特にステアリング・バイ・ワイアに関しては、ついに来たかという感じ。しかし初物ゆえの今一つ感は、特にスポーツモードで感じざるを得なかった。人間の感性の先を行くステアリング制御という感覚は、スポーティさを逆に削いでいるようにすら思えた。いや、ドライバーの能力が高ければ、あるいはサーキットのような非日常的な速度域であれば、素晴らしいのかもしれない。ただ、大した速度は出せない日本の高速道路、大した速度域ではないいつものワインディング、そして、大したことのないウデのドライバーにとっては、優秀すぎるその人工的なスポーティさについていけなかった。ノーマルモードだと違和感なく楽しめたので、ステアリング・バイ・ワイアの問題ではなく、スポーツモードの制御プログラムを頑張りすぎたというところか。車載ディスプレイ上で、ステアリング制御やエンジン・ミッション制御など別々に設定してパーソナルモードを作ることもできるので、そこで自分好みに作ればいいのかもしれない。こんなことが自在にできること自体、従来のクルマにはない画期的なものだろう。

 

何にしろ、自分でクルマのハンドリング(および、その他の走行制御プログラム)を手軽にセットできるクルマがついに登場したことは、クルマがロボット化する過程としては画期的なこととして、高く評価したい。ディスプレイをタッチしながら、チョイチョイチョイとチューニングできてしまうわけで、これぞ求めていた未来のクルマ像だと思う。むろんハイブリッドであることも重要で、そのおかげでこれだけ走るクルマでありながら、実燃費は10km/L近いわけだ。ただただ燃費重視のハイブリッド車ではない点でも評価したいところ。というようなことを、スカイラインという名前で世に注目してもらって広く知らしめられるとしたら、これはなかなか素晴らしいことでは。愛のスカイラインやケンメリしか知らないオジサンたちも一度試してみるべし。ただ、なんか難しくてよく分からないという人の方が多いような気もするが。黒電話からスマホに変えるようなものなのだから。

そう、黒電話とまで遡らずとも、ガラケーで特に世の中は問題ないようで、この先もガラケーは相当数が残るという予測もある。スマホじゃなくても問題なく生きていけるわけで、クルマもまあ、ここまでハイテクでなくてもいいのでは、という話にもなるだろう。しかし、いずれ一見ガラケーのようなスマホが出てくると思うし、同様にまるで旧車のようなハイテク車もでてくると思う。ただ今回のスカイラインは最新スマホのようなもの、なので、ちょっと抵抗のある人が多いかもしれない。

 

いずれにしてもこのスマホ、じゃなかったスカイラインの主戦場は、スマホ同様に日本ではなく世界だ。そしてそれを作っているのは、(またも炎上覚悟で)誤解を恐れず言えば、日本のメーカーとはなんだか言いづらくなってきた日産。むろん日産車の世界販売台数はルノー車の2倍もあるし(2013年は日産が510万台、ルノーが263万台)、対等な関係の企業連合ではあるが、実際には日産のほうが大きな企業だ。しかしゴーン氏が日産の経営を立て直した(と一般にはされている)ように、どうも最近の日産は、日本のメーカーというより世界のメーカーという感覚が強く感じられる。そしてこのQ50/スカイラインにも、いずれダイムラーとの技術提携によるエンジンが載せられるなど、自動車産業再編の波は凄まじい。トヨタとBMWの技術連携など、自動車業界こそグローバリゼーションの最先端。その渦中にあって、ルノー日産連合が創りだした最新のハイテクカーがインフィニティ Q50、日本名スカイラインであるということだろう。日本産業の全額出資会社として昭和9年(1934年)に出来た「日産自動車株式会社」は、ノスタルジーの彼方の話。スカイラインという名もそれと同じことというわけだ。ノスタルジーに生きる時代ではないことは分かっていても、ノスタルジーに浸りたいのもまた人間の悲しい性ということなのだが…。

 

試乗車スペック
日産 スカイライン 350GT ハイブリッド タイプSP
(3.5L V6+モーター・7速AT・541万5120円)

●初年度登録:2014年2月 ●形式:DAA-HV37 ●全長4800mm×全幅1820mm×全高1440mm ●ホイールベース:2850mm ●最小回転半径:5.6m ●車重(車検証記載値):1810kg(970+840) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:VQ35HR ●排気量・エンジン種類:3498cc・V型6気筒DOHC・4バルブ・縦置 ●ボア×ストローク:95.5×81.4mm ●圧縮比:10.6 ●最高出力:225kW(306ps)/6800rpm ●最大トルク:350Nm (35.7kgm)/5000rpm ●カムシャフト駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/70L

●モーター形式:HM34 ●モーター種類:交流同期電動機(永久磁石式同期型モーター) ●定格電圧:-V ●最高出力:50kW(68ps)/-rpm ●最大トルク:290Nm(29.6kgm)/-rpm

●バッテリー:リチウムイオン電池

●システム最大出力:268kW(364ps)/-rpm ●システム最大トルク:-Nm(-kgm)/-rpm ●JC08モード燃費:17.8km/L ※車重1770kg以上の場合。標準グレードの標準仕様は18.4km/L

●駆動方式:FR(後輪駆動) ●サスペンション形式:前 ダブルウイッシュボーン+コイルスプリング/後 マルチリンク+コイルスプリング ●タイヤ:245/40RF19(Dunlop SP Sport Maxx 050 DSST CTT)

●試乗車価格(概算):562万5720円 ※オプション:Bose サウンドシステム+ビジョンサポートパッケージ 21万0600円、エクセレントパッケージ 20万1408円、アンビエントLEDライトシステム 9万9576円、5 Years coat 6万5340円など ●ボディカラー:HAGANEブルー(M) ●試乗距離:約250km

●試乗日:2014年5月 ●車両協力:日産プリンス名古屋

 
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