キャラクター&開発コンセプト
94年10月にホンダが提案するクリエイティブムーバー第1段としてデビューした初代オデッセイは、旧アコードをベースに開発され、予想をはるかに上回る大ヒットとなった。「大勢で乗れて、乗用車ライクに使えるクルマ」という社会が求める新しい価値をいち早く具現化し、今や日本を代表する新しいファミリーカーへと成長し、発売から5年を経た現在では、ミニバンの代名詞と言われるまでになったのだ。
偉大なる大ヒット作の次のモデルというプレッシャーがのしかかるオデッセイのフルモデルチェンジ。初代が新しいファミリーカーの市場を切り開いたのに対し、新型となる2代目オデッセイは「日本一のファミリーカー」を目指したのだという。
初披露の場となったモーターショウですでに姿を見た人もいると思うが、内容的には完全なキープコンセプト。外観デザインもほとんど同じといってもよく、旧型で指摘された部分を中心に改善され、走り・スタイル・インテリア・安全・環境、その全てを「安心高性能」というコンセプトで満たし、21世紀のファミリーカー市場に挑む。
乗車定員およびエンジン構成は先代と同じで、6人乗りと7人乗り、2.42リッター直4と3リッターV6をラインナップ。それぞれにFFと4WDを用意する。
価格帯&グレード展開
V6モデルに待望の4WD登場、価格帯は212.5~334.5万円で売れ筋グレードは価格据え置き
直4モデルのグレードは、廉価順に「S(212.5万円)」「M(227.5万円)」「L(259.5万円)」の3タイプ。「S」「M」の価格は据え置きで、「L」は先代より5万円ほど高くなっているが、ナビが標準化されているだけに、実質的な値下げとも受け取れ、お買い得な価格設定としている(ただしナビはCDROM方式)。
一方、V6モデルは「VG(267.5万円)」「VZ(312.5万円)」の2タイプが用意される。両エンジンともそれぞれ6人乗りと7人乗りが同価格で選択できるのは大きな魅力。4WDは22~25万円高となる。アメリカ製のエンジンの生産が遅れ、発売は1月21日から。
主力グレードとなる「M」は「S」に対し、外装ではフロントスカート、ボディ同色ドアハンドル、プライバシーガラスが、内装では前席アームレスト、メッキドアハンドルなどが追加装備される。価格差14万円というのは見栄えの差によるものと考えていいだろう。
32万円プラスとなる「L」は「M」に対してさらにナビ、本革ステアリング、アルミホイール、ボディ同色モールディングなどが加わる。
V6モデルは「VG」が「M」に、「VZ」が「VZ」に準じた装備に加え、フォグランプ、ボディ同色サイドプロテクターが加わる。
ボディカラーは全7色。「L」「VG」「VZ」にはオプションで本革内装も用意される。
ライバルは三菱シャリオグランディス、マツダMPV、日産プレサージュおよびバサラ。
パッケージング&スタイル
変わったのはヘッドライトだけ? 全幅はわずかだがファミリーカーの限界を超えたか
ボディサイズは全長4770mm(旧型比で+5m)×全幅1795mm(+25mm)×全高1630mm(-30mm)、ホイールベース2830mm(±0mm)というもの。幅広く、背を低くして、より安定感を強調している。全幅の拡大分は+25mmとわずかとはいえ、1795mmという数値はユーザーからしてみればどう映るのだろうか? ファミリーカーの限界は超えてしまったのでは。
先代で完成され尽くしていたから敢えて手を加えなかった、という新型のスタイルは5年ぶりの新型車だというのに、街にすっかりと溶け込んでしまっている。信号待ちで先代オデッセイの隣に止まっても、ドライバーは気づかず、注目度はゼロ。ここまでのキープコンセプトというのも逆に大きな冒険か? とりあえずS-MX、H-RVに通じるヘッドライト下部の丸みをバンパーまでに埋め込ませた顔つきは、新しいホンダのアイデンティティとなりそうな予感、とでもいっておこう。
特に広々感は実感できないが、使い勝手はぐんと向上したインテリア
シートレイアウトは2列目にキャプテンタイプを採用する2-2-2の6名乗車と、ベンチタイプを採用する2-3-2の7名乗車。質感と広さ、それに使い勝手を向上させたインテリアで最も大きな変化となるのがインパネデザインだ。ナビをメーターナセルに埋め込み(ナビ非装着車はオーディオと小物トレイとなる)、ゲート式インパネシフトを採用するアヴァンシアと似た作りで、サイドブレーキは足踏み式に変更。ナビが見やすいのはマル。
2列目ベンチシートにも大型アームレストを採用するなど居心地は確実に良くなっている。特にウッドを配した質感の向上ぶりは特筆もの。逆に視覚的な広々感はさほど実感できない。室内寸法は20mm拡大されているようだが、シートクッションの厚みが増し、リアエアコンが天井に移行しているから、そう思えるのだろう。
そしてもうひとつ大きく変わったのが3列目シートだ。初代でその右横にあったスペアタイヤを荷室床下に配置することで、横幅が実に250mmも拡大しているのだ。また2列目シートの収納方法もダブルフォールディングから「イージーパック機構」というワンタッチで座面が跳ね上がる構造に変更されている。さらに前後スライドも可能となった。
先代で好評の3列目シートの床下収納はもちろん健在。しかも、ヘッドレストを外すことなく前に傾けるだけで収納できるようになっている。とにかく、先代の数少ない弱点は全て克服され、ほぼ理想型の仕上がりとなったわけだ。
細かなところで不満だったのは、インパネシフトの操作性というか、位置。かなり高い位置に有り、確かに従来のコラム式より使いやすくなっているし、+/-モードがあるのでマニュアル的な走りもできる。でもこの位置でシフトを楽しむというのは、手の動きにやや違和感がある。もう少し下にあった方が自然な感じ。慣れてしまえばいいのかもしれないが。
基本性能&ドライブフィール
エンジンは先代をリファイン
搭載される2タイプのエンジンは先代と同じで2.3リッター直4エンジンと3.0リッターV6で、どちらもLEV対応。それぞれのエンジンにFFとデュアルポンプ式の4WDが用意される。なお、3リッタークラスに4WDを設定するのはホンダとしては初となる。
直4モデルのスペックは最高出力150PS/5800rpm、最大トルク21.0kgm/4800rpmと先代よりもトルクが0.2kgmわずかにアップしただけ。V6モデルの最高出力210PS/5800rpm、最大トルク27.5kgm/5000rpmで、先代よりもパワーが10PS、トルクが0.5kgmアップしている。車両重量は平均で20kgほどだから、動力的にはさほど変わっていないという見方も。なお、ギアボックスは直4が4速AT、V6が5速ATの組み合わせで、どちらも+/-のシーケンシャルモードが付く。
足回りは先代の熟成型である4輪ダブルウィッシュボーン。トレッドを拡大(前+35mm、後+15mm)するとともに、ブレーキ容量のアップを前提としたタイヤのインチアップ化が図られ、全車標準で16インチの215/60サイズが奢られる。見るからに安定感のある足回りとなり、ブレーキも16インチにふさわしい大型になった。また、米国アコード(つまりアヴァンシア)をベースにほぼ専用ともいえる大幅な改良を行い、お約束のボディ剛性は曲げで84%、ねじれで26%向上している。
走りだした瞬間、圧倒的な進化が体感できる
試乗したのは直4のFFモデル。加速性能そのものは先代と大差ない感じだが、静かさと振動が低減され、先代とは比較にならない上質な走りとなっている。V6のような滑らかさはないが、他社の大排気量4気筒と比べると、V6並といってもいいほど。
ステアリングも中立付近に曖昧さを若干残したミニバンに適切なセッティングながら、ユラユラした不快な揺れはなく、また乗り心地も若干硬めながら段差による鋭い突き上げはお尻に伝わってこないので快適だ。同時にボディ剛性の高さも感じ取れる。もちろんパワーに非力さを覚えることはない。反面、アクセルがやや重くなったのか、吹け上がりの軽快感は先代ほどではなくなっているようだ。
マニュアル操作ができるシフトは4速なのでいまいち。もちろんあるにこしたことはないが、こうしたシーケンシャルタイプはやはり5速以上欲しい。
ほとんど乗用車感覚のハンドリングは素晴らしい。ただ、ミニバンがこれでいいのかという疑問は残る
そしてずば抜けた進化ぶりを見せるのがハンドリングだ。ロールらしいロールなどせず、コーナーを忠実に曲がってくれる。高剛性ボディ、しっかりしたサスと太いタイヤががっちりと路面をとらえており、安心して切り込んでいくことができる。スポーツセダン並といっても過言ではないほどで、これはもうとてもミニバンとよべるような代物ではない。他のミニバンの3割増のスピードでコーナーに入ってしまってもあっ気なくクリアでき、こんな大柄なクルマで限界域の挙動が楽しめるほど。これまで走りの評価が高かったプレサージュやグランディスが一気に色あせてしまう高次元の走りと断言しよう。
とはいえブレーキングを残しながら高速コーナーに進入すると、フロントが思ったより内側に入っていく、いわゆるオーバーステアのような挙動をみせることがあった。これは、はっきりいって曲がりすぎでは。そしてここまでロールが小さく、よく曲がると、飛ばしすぎるのではという疑問が残る。ファミリーカーならその限界の低さをわきまえ、ゆっくり安全に走ればいいと思う。こんな大きなクルマが多人数をのせてワインディングを走っていることを想像するとちょっとゾッとする。ファミリーカーならトロトロ走れ、というのは差別か?
そうはいっても、ここまで走りを極めてしまうというのは実にホンダらしい部分でもあり、まさに必然的な、正常進化ではある。オーナーにはおとなしく走ってもらうのを望むばかりだ。
ここがイイ
先代の弱点を克服した部分すべて。インパネにカーナビが入って見やすくなったし、エアコンは天井をダクトが通って各座席に風が送られるし、サードシートはとても広くなった。ヘッドレストを外さず床下収納できるサードシートもやっぱり便利。走りはむちゃくちゃに向上したし、エンジンも静か。高速巡航も150km/hで楽勝。総合的には完全に他車を圧倒する完成度となった。250kmを走って燃費は8.3km/lと良好(レギュラー仕様)。
ここがダメ
CD-ROMカーナビの使い勝手はいつもながら今一つ。またリモコンキーはキー一体型ではないのでとても不便。セカンドシートはできれば取り外し可能にして欲しかった(ラグレイトのように)。前席カップホルダーはテーブルタイプでなく独立したものが欲しい。
総合評価
ほとんど何も変わっていない外観スタイルには、やはりがっかりした人が多いのでは。先代で完成の域に達しているというのは確かなことであり、このクラスでこれ以上やりようがないのも分かるが、5年も経っているのだから、何か華やかな進歩が欲しかった。これはこれで近所の人にクルマの買い替えを悟られないというメリットはあるが。
成功作の後はキープコンセプトというホンダ伝統のモデルチェンジ姿勢なのだが、失敗したくないという保守的な姿勢を誰もが感じてしまうのは、ホンダにとってマイナスなのでは。オデッセイはホンダの屋台骨を支えるドル箱だけに、一定数をまちがいなく確保できる仕上がりというのがビジネス的には正解なのだが、ホンダは新しいジャンルのクルマの開拓や発想で成功を収めてきたメーカーだったはずであり、近年ではその代表がオデッセイであったはず。
オデッセイはさすがに新型であるだけに、その本質では現時点で最も優れたクルマであることは断言できる。素晴らしい走り、使い勝手のいい装備、そして手ごろな価格とバランスがとれている。しかしやはり消費者には分かりにくいのだ。「クルマ通」がミニバンを選ぶ時にはオデッセイになるだろう。しかし今やミニバン市場は傍目にはどんぐりの背比べであり、オデッセイ以外にも選択肢はたくさんある。さらにあのエスティマは、ハイブリッドという大技で挑んでくる。消費者は見てくれや便利そうな装備、そして価格でフラフラいってしまうもの…
特に走りはここまで素晴らしいものをミニバンユーザーは求めていないように思う。オデッセイに乗っていると「21世紀のミニバンは走りがテーマです」と言われているよう。しかし21世紀のミニバンに求められるのは、やはり他のミニバンとは明らかに違う提案だろう。それが何かは、たいへん難しいが、例えばサードシート同様の消えてしまうセカンドシートなんてものがついていたとしたら、かなりグッときたと思う。
公式サイト http://www.honda.co.jp/ODYSSEY/



