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スバル アウトバック 3.0R新車試乗記(第299回)

Subaru Outback 3.0R

(3.0リッター・5AT・300万円)


2003年12月27日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

海外では最初から「アウトバック」

2003年5月に発売された4代目レガシィに、5ヵ月ほど遅れて10月22日に追加されたアウトバックは、ツーリングワゴンをベースに最低地上高を上げてSUV的なスタイルと悪路走破性を与えたモデル。初めて登場した2代目レガシィでは「グランドワゴン」、3代目では「ランカスター」と呼ばれたモデルだが、実は海外では最初からアウトバック。ここに来てやっと名称が統一された形だ。なお「Outback」とは、オーストラリアの荒地、砂漠地帯のこと。

一種の企画モノに思えた初代アウトバックだが、北米では予想外に大ヒット。「クロスオーバービークル」の先駆けの一つとして、ボルボ(XC70)やアウディ(オールロードクワトロ)などの追随を生んだ画期的なモデルとなった。

スバルの命運を握る

4代目レガシィ・シリーズは2003年度の日本カー・オブ・ザ・イヤーをスバル車として初めて受賞。理由は「スバルという個性を重視したメーカーに相応しい水平対向エンジン」、「独創的な4輪駆動技術」、「日本車として、世界に誇れるユニークな内容」、「高い総合バランス」。販売に結びつくかどうかは別に、同社にとっては嬉しい勲章となった。

販売目標はレガシィ全体(B4含む)で月間6000台だが、新型は5月の発売以来、月平均で約7000台を販売している。レガシィはこの12月に国内販売累計100万台も達成。15年間の記録だから、一年あたり7万台ほどとなる。それからすれば月間6000台は妥当な数字だが、もう少し飛躍したいというのが本音だろう。本来なら裾野を広げるはずのインプレッサやフォレスターが伸び悩む中、レガシィは依然としてスバルの大黒柱。責任の重いモデルだ。

価格帯&グレード展開

3.0Rと2.5iの2種類

グレードは3.0リッター水平対向6気筒の「3.0R」(300万円)と2.5リッター水平対向4気筒の「2.5i」(255万円)。6気筒エンジンはツーリングワゴンやB4と同じ。2.5リッターはアウトバック専用となる。いずれも内外装はほぼ同じ。

ライバルは手堅いところでトヨタ・ハリアー(249~367万円)。「車高を上げたステーションワゴン」というコンセプトでは、日産ステージア・AR-X FOUR(365万円)が近い。輸入車ではボルボXC70(495~535万円)、そしてアウディ・オールロードクワトロ(599~820万円)など。

海外のアウトバックはバリエーションが豊富で、なんとセダンバージョンもある。位置付けも「スバル・アウトバック」と独立モデルとなる。だから国内向けアウトバックにも「レガシィ」の名を付けなかったのだろう。

パッケージング&スタイル

地上高50mmアップ

ボディサイズは全長4730mm×全幅1770mm×全高1545mmと、ツーリングワゴン(4680×1730×1470mm ※3.0R)より少しずつ大きい。特に目立つのは、最低地上高が150mmから200mmになった点。タイヤは215/45R17から215/55R17の「分厚い」オールシーズンに変更される。タイヤ半径で、2センチほど大きい寸法だ。

アウトバックには専用のフロント&リヤバンパー、オーバーフェンダー、サイドクラッディングなどが付き、普通のレガシィよりかなりワイド感がある。先代ではそうした樹脂パーツに後付け感があったが、今回は違和感なく溶け込んだ感じ。ラジエターグリルやボンネットも専用品となる。

方向性としては、オールロードクワトロやXC70のように、無塗装のオーバーフェンダーやバンパーでラフな感じを演出する路線もあったはずで、全幅もオールロードクワトロ(1850mm)、XC70(1860mm)に比べてぐっと狭く、ちょっと大人し過ぎる感はある。こうした控えめで都会的な雰囲気を良しとする意見もあるだろうが、もっと大人気なく、迫力を強調したバージョンも欲しいところ。海外にはアウトバックベースのピックアップトラック「BAJA(バハ)」というモデルもある。

乗降性と見晴らしの良さもポイント

室内は上質感を強調。試乗車は標準のファブリック仕様だが、オプションで「アイボリーレザーセレクション」なるベージュの革内装が3.0Rの場合はプラス10万円で用意される。シート高が上がったことで乗り降りもしやすく、座った時の目線もステーションワゴンとSUVの中間で、見晴らしにも優れる。

 

後席には、角度としてはわずかだが2段階のリクライニング機構が備わる。荷室拡大時は背もたれを倒すだけ。完全にフラットにはならないが、操作は簡単だ。北米では操作が面倒なダブルフォールディングは好まれない。

3.0Rの荷室には換気用のファンが備わるほか、リアゲートには半開き状態から電動でゲートを引き込むオートクロージャーが付く。またヘビーな積載に備えて、普通のツーリングワゴンには用意のないセルフレベライザー機構(積載量に応じて車体の姿勢を調整)もリアサスに標準装備している。

基本性能&ドライブフィール

6気筒を選ぶ理由

試乗したのは6気筒エンジンの「3.0R」。3.0リッターの自然吸気ボクサー6の滑らかさは、6気筒ではおそらく世界一と思われるもの。並みのV6は言うに及ばず、BMWの直列6気筒を越え、V8に匹敵するレベルだ。新型の水平対向4気筒ターボは素晴らしい完成度だが、あえて6気筒を選ぶ理由はそこにある。

絶対的にはそうとう速いクルマだが、パワー感はちょっと物足りない。250ps、31.0kgmで引っ張るボディは1520kg。ターボの2.0GT(AT車で260ps、35.0kgm、車重1460kg)に比べて、迫力で及ばないのは仕方ないが、あまりにもレッドゾーンまで抵抗なくスルッと回ってしまう。もう少し「サビ」の演出があってもいいところだ。

もう一つ気になるのは、3000~4000回転以下のトルクが薄い点。交差点を曲がってせっかちに加速するような時には、ちょっともたつくことがある。先代の6気筒であまり感じなかったこの現象は、低速トルクが弱いのに加えて、新しい5速ATがギアの選択で迷うせいか。アクセルを床まで踏むような走り方をしなければ気にならない。

ポルシェのワゴン?

振動の小ささ、滑らかさ、水平対向ならではの低重心「感」は、世界中どこを探してもこのエンジン以外では得られないはず。マニュアルモードを使って高回転をキープすれば、走りはそうとうスポーティだ。回した時の「クォーン」という快音は、水冷になったポルシェ911にちょっと似ている(音量自体は圧倒的に小さいが)。現行911(カレラ4、AT)が同じ1.5トンで3.6リッターであることを考えると、もう少し排気量があれば「ポルシェのスポーツワゴン」みたいになると思わせられる。

意外にも、乗り心地は先代ランカスターとはまったく異なり、ツーリングワゴン並みの安定性を確保するためか、先代で指摘が多かったノーズヘビー感をなくすためか、乗り心地はレガシィの2.0GTより固め。重心が高いので挙動自体はおっとりしており、ツーリングワゴンのようにキビキビとは走りにくい。一方、静粛性は高く、エンジン音に加えてロードノイズ等も小さいので、とにかく静かなクルマが欲しい人にはお勧めできる。

ワインディングではオールシーズンタイヤ(試乗車はヨコハマのジオランダー)のグリップを使い切りながら、2.0GT譲りの4WDシステム「VTD-AWD」が、4輪全てでアスファルトを蹴りながらグイグイ前に突き進む走りが感動的。VDC(電子制御デバイス)の効果もあるが、カウンターを切る必要はなく、ステアリングを切った方向にまっしぐらに加速する。タイヤのグリップが低い分、4WDの働きと重量バランスの良さがよく分かり、運転も楽しい。雪道での安心感、走行性能の高さはそうとうのものだろう。

ここがイイ

フラット6の滑らかさは何物にも代え難い。世界にポルシェとレガシィだけ。それだけでもこのクルマを買う価値はあるだろう。同時に、まったく4WDであることを意識させないという意味で秀逸な4WDシステムも素晴らしい。4WDモデルに力を入れているのはポルシェも同じで、フラットシックスと4WDの組み合わせが世界で最も高性能なコンビである、とポルシェファンでありスバリストでもある一部のファン(デイズにもいる)は声高らかに宣言するはず。また同ジャンルのクルマとして軽量な点もいいところだ。

ここがダメ

世界でポルシェとレガシィだけだというのに、オーラの出方がいまいち。カー・オブ・ザ・イヤーも取ったことだし、そこを何とかしなくては。そしてコストが許せばアウディ・オールロードクワトロやトゥアレグ、ハリアーのように高速安定性と乗り心地が両立できるエアサスが使いたかったはず。でもそれは許されないので、今回は(少なくとも日本仕様では)レガシィらしいスポーツ性が優先されたように思う。

となると理想は全幅を1800~1900mm程度に広げて安定性と見た目の押し出しを確保、3.5リッターのエンジンを載せて、エアサス仕様をオプションで用意。そうすればアウディもトゥアレグもカイエンV6も怖くないスーパーSUVが完成。そこまで突っ走って欲しいところだ。

総合評価

半年前に乗った2.0GTと比べると、アウトバックは別のクルマといってもいい。エンジンの違いはもちろん、もはやコンセプト的にもすっかり違うクルマだ。レガシィと言う名を前面に押し出していないあたりにもそれが見受けられるが、逆にレガシィといわない限り売れないというジレンマもあって、そこがスバルの苦しいところ。カー・オブ・ザ・イヤーを取ったクルマは売れないというジンクスもあり、ちょっと不安が残る。

アウトバックもハードウェアの良さに比べ、競合他車(輸入車を含む)ほど存在感がないという点では難しい部分がある。ブランド力はあるが、それを生かすデザインワーク、イメージ戦略が不足気味に思えてしまう。この点では同じ水平対向エンジンを積むポルシェのイメージ戦略を参考にすべきだろう。そのあたりを考えてか、先のモーターショーではグリルアイデンティティの統一が打ち出されているが、その第一弾であるR2のルックスへの評価は、かなり微妙なモノがある。「レガシィもいずれあのグリルになるのか、それなら今のうちに買っておこう」という声すら聞いてしまったのは、直近の販売的にはプラスか!?

レガシィが今年を代表する新型車であることは間違いないが、それは長年の成果の結晶である「完成型」としての評価だ。逆にプリウスやRX-8には新しさがあり「将来性」が評価されている。クルマを買う分には将来性より今の完成度が重要だから、それら2車よりレガシィは満足できるはずだが、おもしろみはイマイチ。しかしアウトバックはレガシィシリーズの中で「将来」の可能性が見られるモデルとなっている。カー・オブ・ザ・イヤーはアウトバックにこそ与えたい。

試乗車スペック
スバル アウトバック 3.0R
(3.0リッター・5AT・300万円)

●形式:UA-BPE●全長4730mm×全幅1770mm×全高1545mm●ホイールベース:2670mm●車重(車検証記載値):1520kg(F:900+R:620)●エンジン型式:EZ30●2999cc・DOHC・4バルブ・水平対向6気筒・縦置●250ps(184kW)/6600rpm、31.0kgm (304Nm)/4200rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/64L●10・15モード燃費:11.0km/L(※オプション装着のため車重1520kg以上の場合)●駆動方式:電子制御4WD●タイヤ:215/55R17(Yokohama Geolandar G900)●価格:300万円(試乗車:312.5万円 ※オプション:VDC、クルーズコントロール、 クリアビューパック、濃色ガラス) ●車両協力:名古屋スバル自動車株式会社

公式サイトhttp://www.subaru.co.jp/legacy/outback/index.html

 
 
 
 
 

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