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三菱 アウトランダー G新車試乗記(第393回)

Mitsubishi Outlander G

(2.4リッター・CVT・266万7000円)



2005年11月25日

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キャラクター&開発コンセプト

今後の三菱を占う新世代モデル

2005年10月17日に発売されたアウトランダーは、ミドルクラスのSUV。ランサーがベースだったエアトレックの後継車だが、車台とエンジンは新開発・新世代のブランニュー。よって、今後の三菱を占う重要なモデルとも言える。ビスカスカップリングによるフルタイム4WDだったエアトレックに対して、アウトランダーは2WD/4WDオート/4WDロックの3モードを任意で選ぶ電子制御4WDを採用。低ミュー路だけでなく、オンロードの走りも得意とする。5人乗りに加えて、このクラスのSUVでは稀な7人乗りも用意した。

メインは北米など海外市場

生産は溶接組立生産ラインを約10年ぶりに一新した水島工場(岡山県倉敷市)、新2.4リッターエンジンの生産は、やはり加工・組立ラインを新設した滋賀工場(滋賀県湖南市)で行う。販売目標の月間2000台は、1ヶ月後に発売された新型トヨタRAV4と変わらない。受注は立ち上がり2週間で5000台を達成したというが、最大の使命はやはり業績不振の主因となった北米市場での巻き返しだろう。

世界戦略車アウトランダーとして

旧エアトレックは北米や欧州、その他の地域で2005年11月現在も販売中だが、車名は「アウトランダー」を名乗る地域が多く、今後はこれが世界統一名となりそうだ。ちなみに欧州で人気のパジェロは、一部エリアで「ショーグン」、北米では「モンテロ」となる。同じくパジェロ・イオは欧州ではパジェロ・ピニンもしくはショーグン・ピニン(欧州向けはピニンファリーナ工場で生産されるため)と呼ばれている。

価格帯&グレード展開

235万2000円からスタート

パワートレインは2.4リッター・CVT・4WDの1種類のみで、ベーシックな「M」(235万2000円~)、装備が充実した「G」(264万6000円~)の2グレード構成。5人乗りと7人乗りが選べるが、価格差は2万1000円しかない。多くの場合、後者が選ばれるだろう。

パッケージング&スタイル

ライバルより200~300mm長い

ボディサイズは全長4640mm×全幅1800mm×全高1680mm。スペアタイヤを背負わずして、RAV4やCR-Vなどの競合車より200~300mm長い。これは3列シートと広い荷室を可能にするため、あるいはトヨタ・ハイランダー(クルーガー)といった1クラス上までカバーするため、もしくは北米重視のため、などの要件だろう。見た目の印象はコンパクトで、運転中も幅はともかく、長さはあまり感じない。

リアゲートは上下ニ分割式


今後の三菱デザインを示すであろうスタイリングは大げさな抑揚がなく、すっきりしたもの。2005年の「グッドデザイン賞」を受賞している。試乗車の「G」グレードは標準車より2インチ大きい18インチタイヤを履く。リアゲートはレンジローバーのような上下ニ分割式を採用。これによってバンパーの厚みが増し、精悍に見える。リアコンビランプはLED式。

マグネシウム製の固定式パドルシフト

外観同様、シンプルなデザインのインテリアは、大型バイクをイメージしたものという。「G」グレードは米国のロックフォード・フォズゲート社と共同開発した650W・9スピーカーのオーディオを標準装備。やはり「G」が装備するパドルシフトは、ステアリングと一緒に回らない固定式で、マグネシウム製となる。クッションはやや平板だが、欧州でも展開するモデルらしくシートはドイツ車風にしっかりしている。

良心的なサードシート

やはりクッションは平板だが、膝下や足元にゆとりがある後席。前席シートの下にも、足が余裕で入る。3人分のヘッドレストと3点式シートベルトを備え、シート形状も3人乗車に対応している。

床下にきれいに収納できるハンモック構造のサードシートは、完全にエマージェンシー用。たとえ子供でも、長時間の移動には耐えられないはず。逆に緊急用としては、ちゃんとヘッドレストが付き、3点式シートベルトが付くなど良心的で、よく出来ている。

レンジローバー要らずのリアゲート

上下2分割のテールゲートは普段は上だけ開ければよく、重い物も下を開ければ積みやすい。下側ゲートは200kgまでの静荷重に耐えるので、テーブルはもちろん、ベンチとしても使える。やや高さはあるが、幅が十分にあり水平なので座りやすい。SUVに多い横開き式と違って、アッパーゲートは雨よけになる。

5名乗車時の荷室容量は、セカンドシート最後端で774リッターと、下手なステーションワゴンを圧倒する。さらに荷室のリモートボタンを押して2列目をタンブルさせると(ワンタッチタンブル機構)、一気に1691リッターに拡大。マウンテンバイクが車輪をつけたまま立てて載る。ウイークポイントは、機構上シートの作りが頑強だったり、スプリングが強かったりするせいか、折り畳んだシートを元に戻すのに少々力が要ること。

基本性能&ドライブフィール

2.4リッター+CVTで胸のすく走り

試乗したのは225/55R18タイヤを履くGグレード。新開発の2.4リッター直4エンジン(170ps、23.0kg-m)はダイムラー・クライスラー時代に開発されたもので、基本設計はヒュンダイ・ソナタの2.4リッター(164ps、23.1kg-m)と共通だ。もちろんアウトランダーのユニットには三菱独自のノウハウが入り、さらに最新型のCVTと組み合わされたことで、胸のすく走りを見せる。特に低中回転のトルク感は印象的で、3000回転も回せば実用上はこと足りる。一世代前のCVTにあった滑り感や、回転を上げてから加速を待つ感覚は(今や当然ながら)無く、4ATが相手なら未練を感じることはない。

満点のパドルシフト

6速スポーツモードの出来もなかなかいい。特に、モーターデイズでいつも指摘している「パドル操作だけでマニュアルモードに移行」が実現されている点がいい。変速レスポンスは素早く、7速ではなく、あえて6速で割ったギアリングもエンジン特性に合っている。パドルを固定式とした点もいい。ポルシェの場合、しばらくパドル操作しないと自動的にDモードへ復帰するが、アウトランダーでは停止するか、シフトアップパドルを2秒以上長引きするとDへ復帰する。これはこれで使いやすい。マグネシウム製とした意味はよく分からないが、このパドルシフトには満点を付けたい。

エンジンを回すとミューンという(おそらくギア系の)音がするが、CVT特有の耳障りなベルトノイズは抑えられている。トルコンが組み込まれているが、坂道発進や坂道バックではややクリープが弱い。最近のCVT車やセミAT(クラッチレスマニュアル)車にあるヒルホルダー制御が欲しいところ。

ルーフはアルミ製

多くの人が試乗して感心すると思うのが、ボディの剛性感だ。これはスピードを出さなくても、走り出せばすぐに体感できる。18インチタイヤ(M+SのブリジストンDUELER)仕様だったせいもあるが、足回りは引き締まっており、ボディ自体もそれに負けずしっかりしている。サスペンションは前がストラット、後ろはトレーリングアームを基本としたマルチリンクで、ダンパーにはランエボ譲りの技術を使ったモノチューブ式を採用。ルーフも同じくランエボ譲りの技術でアルミ製ルーフがリベット止めされており(鉄とアルミは溶接が難しい)、これで-5kg。高い位置なのでその効果はボンネット軽量化の約3倍に及び、比較すれば体感できるほど大きいという。

アウトランダーの電子制御4WDとは

SUVでも2WDモデルを用意するのが当たり前の昨今、アウトランダーでは全車に2WD/4WDオート/4WDロックの3モードがダイアルで選べる電子制御4WDを採用した。ただし、今回の試乗では3日間ともオンロードで晴天という条件になり、ほとんど2WDモードで走ってしまった。

そもそもこの4WDシステムは、リアデフと一体化された電子制御多板クラッチによるもので、先代エアトレックのようなビスカス・カップリングを使ったフルタイム4WDとは異なる。4WDモード時の駆動配分は85:15~40:60で制御されるから、「滑った時だけ4WD」の通称スタンバイ4WDとも言いにくい。結局、一般的には電子制御4WDと、曖昧に呼ばれているわけだ。

アウトランダーの電子制御4WDがユニークなのは、まるでパートタイム4WDのように「2WDモード」や「4WDロックモード」を備える点だ。実際には2WDモードでもリアデフ付近まで伸びるドライブシャフトは回っており、燃費も4WDオートモード時に比べてほとんど差が無いという。脱出時に使うという4WDロックモードも、後輪への伝達率を高めるだけで、本当のデフロックではない。言うまでもなく、前後・左右LSD機能は、いわゆるESC(三菱いうところのASC)によって行う。クルマ任せではなくドライバ-がモードを選択できる、という点は面白いが、やや意図が理解しにくいものでもある。

いちおう、4WDオートで走ってはみたが、街中ではほとんど2WD時と体感上の差がない。若干、走行抵抗が大きそう、と思う程度。ワインディングを走ると、確かに後輪に駆動力が伝わるのが分かるが、率直なところ2WDで走った時の方が違和感なく走れたので、そういう意味で2WDモードはありかな、と思った(メーカーの意図とはずれるかもしれないが)。4WDモードは雨天の高速走行や悪路、雪道を走破する時こそ、ありがたみが出るものだろう。その際は、ぜひ4WDモードに切り替えるのを忘れずに。あるいは4WDモードに入れっぱなしにするかだ(世の中の多くの電子制御4WDがこれだ)。

100km/h巡航時のエンジン回転数は約2000回転。150km/hで3000回転と低く、静粛性・快適性も高い。気になったのは風切り音だけ。燃費は走り方によって大きく上下するが、街乗りで気を使って乗れば8km/Lは可能、雑にアクセルを踏み込めば5km/L台というところ。

ここがイイ

さすがシーケンシャルモードを日本で初めて採用した三菱。マニュアルモードやパドル操作のやりやすさは国産車随一。特にパドルのサイズや位置が絶妙で、ステアリングを切っているときでも使いやすい。パドルを使うとすぐマニュアルモードに移行するロジックは、ポルシェなど数社はもうとっくにやってるが、他メーカーもぜひこれに続いて欲しい。

ニ分割のリアゲート、巧妙に隠されたサードシート、たたむのはリアからボタン操作だけというセカンドシート、広い荷室といった積載性の高さは、このクルマのよくできているところ。SUVとしての使い勝手はとてもいい。

ここがダメ

ほとんど不満がないクルマゆえ、さらに改良してもらいたいポイントをまとめてみよう。まず、足が短い人はペダルにシートをあわせるとややハンドルが近くなってしまう。テレスコピックがぜひ欲しいところ。またシート前部後部の独立した上下調整がなく、ややお尻が落ち込んだ姿勢になるので、この調整もできるといい。ポジションが決まれば、より評価は高まるはず。

ライトをオートモードにしておくと夕暮れ時、ライトが点灯するまでにメーターが暗くて見えなくなってしまう。開発途中まで自発光式が前提ではなかったか、と思われるくらいだ。速度計と回転計の間のマルチインフォメーション画面はバックライト付き液晶で見やすいだけに、ここは残念なところ。昼間でも直射日光がメーターのベゼルに差し込むと、文字盤や針は影になってかなり見にくい。

今時、カーナビは標準化しておくべきだろう。特にこのクラスならリアカメラは必需品なのだから。同様にサイドカメラもあれば、ボンネット上の無骨なミラーをなくせるだろう。

シフトを普通に動かすと、DではなくDsに入ってしまう。ポジションに節度感が欲しい。また急坂で停止するとDレンジでも後ずさりする。エンジン音の迫力ある演出が欲しいところ。

総合評価

いや驚いた。今まで三菱車を乗った中では、出色の出来。その素晴らしい剛性感、低速から超高速までのスタビリティ、ハンドリング、さらには室内外のユーティリティなど、本当によくできている。これでSUVでなかったら欲しくなるほど。いや、SUVだから、より価値があるのだろうが、SUVに関心がない人にはこの良さが伝わらない。それが、このクルマの最大の弱点かもしれない。身近なところでは、SUVに向かう人より、SUVからセダンやミニバンに回帰する人の方が多いように感じるのだが、マーケティング的にはどちらなのだろう。

かつてパジェロを乗っていた人が、このクルマに乗ると、その素晴らしさに大感激するはず。まさに隔世の感。四駆なのに乗用車感覚で一切不満なしに乗れるという点で、もう一度この手のクルマに乗ってもいいかと思えるはず。ただ、パジェロにはあった一種のステイタス感みたいなものが、サイズ的にも、またブランド的にもないわけで、これは辛いところだ。いいクルマは出来たのだから、今後三菱車に乗らせるためにはブランドの再構築が再重点。道のりはまだ長そうだ。

ここまでいいクルマができたのは、作った三菱自身がよくなったせいなのか、ダイムラーとの提携が功を奏したのか、それとも今やどのメーカーも最新車であればこれくらいのものが作れるのか。乗った感じでは、かなりメルセデスの影響を感じた。ドイツ車的な「カッチリ」感があり、メルセデスの小型SUV(Mシリーズの下)として出してもいいかも、と思ったほど。エンジンもワールドワイドな展開を想定して作られたものだし、メルセデスとの提携がいい方向へ出た例だと思う。間もなく登場する軽自動車の「i(アイ)」にしても、何となくスマートの雰囲気がある。

そうして拡販を続けていく路線は現在重大な局面に来ている。今年前半は販売が落ち込んで営業赤字になったメルセデス・ベンツ部門。三菱を切り離し、ヒュンダイも手放すというダイムラー・クライスラーの苦境。最大の重荷はクライスラーかもと思う人は多いが、さすがにそれを切り離しはしないだろう。しかしシュレンプ会長が去ったあと、クライスラーを立て直したツェッチェ会長の舵取りがどうなっていくかはわからない。今後ベンツブランドは昔のベンツの作りに戻るのだろうか。過剰なまでの品質、シャシーはエンジンより速くという伝説の復活があるのだろうか。

しかし、最終的に商品となったこのクルマの出来は、三菱自動車が再生に向け総力をあげて取り組んだものと理解したい。今後は再び独立して進まなくてはならない三菱が、クルマにどういう個性を持たせていくかを見守りたい。まずは他社のクルマに乗るSUVファンに、このよくできたクルマをどうアピールするかが課題だろう。三菱セダンユーザーがSUVに乗り換えることに期待していては、このクルマは売れないと思う。販売面の再起こそがこのクルマの命運を握るカギだ。

試乗車スペック
三菱アウトランダー G
(2.4リッター・CVT・266万7000円)

●形式:DBA-CW5W●全長4640mm×全幅1800mm×全高1680mm●ホイールベース:2670mm●車重(車検証記載値):1620kg(F:890+R:730)●乗車定員:5名 ●エンジン型式:4B12●2359cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●170ps(125kW)/6000rpm、23.0kg-m (226Nm)/4100rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/60L●10・15モード燃費:11.6km/L●駆動方式:電子制御4WD●タイヤ:225/55R18(BRIDGESTONE DUELER H/T 684 II)●試乗車価格:266万7000円(オプション:なし)●試乗距離:120km ●試乗日:2005年11月 ●車両協力:中部三菱自動車販売株式会社

公式サイト http://www.mitsubishi-motors.co.jp/outlander/index.html

 
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