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三菱 アウトランダー PHEV新車試乗記(第707回)

Mitsubishi Outlander PHEV

(2.0L 直4+2モーター・4WD・332万4000円~)

ウチで充電、出先で充電、
走行中はエンジンで充電、
電動車の未来を実体験する!

2013年09月21日

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キャラクター&開発コンセプト

SUVでは世界初の量産プラグインハイブリッド


2009年の東京モーターショーで発表されたPHEVのコンセプトカー「PX-MiEV」

三菱の「アウトランダー PHEV」は、2代目アウトランダー(2012年10月発売)のプラグインハイブリッド車。ガソリン車の発売より2ヶ月遅れの12月26日に発表、1月24日に発売された。

PHEVという名が意味するところは、平たく言えば「自分で発電する電気自動車」(三菱)。メカニズム的には、前後2基のモーターとリチウムイオン電池で走るEVに、主に発電機として稼働する2リッター直4エンジンを搭載したもの。三菱自身は「EV派生型の『プラグインハイブリッドEVシステム』」と呼んでいる。

 

2011年に発表されたコンセプトカー「PX-MiEV II」。なぜか前作の方が量産車に近い

エンジンを発電機として使用する点では、いわゆるレンジエクステンダー型のEVであり、またエンジンで発電し、主にモーターで駆動するという点ではシリーズハイブリッド車でもある。先行例ではシボレー ボルト(日本未導入)が有名だが、メカニズム的には、アウトランダーPHEVの5ヶ月後に発売されたホンダのアコード ハイブリッド(2013年6月発売)によく似ている。

EV走行可能距離は60.2km。ハイブリッド走行時の燃費は18.0km/L


市販されたアウトランダー PHEV
(photo:三菱自動車)

アウトランダー PHEVとアコード ハイブリッドが搭載するリチウムイオン電池は、いずれもGSユアサが51%を出資する合弁会社によるもので、三菱がリチウムエナジージャパン社製(滋賀県栗東市)、ホンダがブルーエナジー社製(京都府福知山市)。アコード ハイブリッドと大きく異なる点は、SUVタイプであること、フロントに加えてリアにもモーターを積む「ツインモーター4WD」であること、そして全車プラグイン仕様であることだ。

なお、充電時間は200Vで約4時間、急速充電では約30分(約80%)。EV走行可能距離はJC08モードで60.2km。JC08モード燃費は、外部充電なしのハイブリッド走行のみで18.0km/L、EV走行とハイブリッド走行の複合で67.0km/Lとなっている。

電池パックのリコールが発生。8月には生産再開


駆動用リチウムイオンバッテリーはi-MiEVやMINICAB-MiEV(16.0kWh仕様車)の電池がベースで、総電圧は300V、総電力量は12kWh。モーターはフロントとリアに1基ずつ搭載する

アウトランダーの生産は岡崎工場(愛知県岡崎市)。当初の販売目標はガソリン車が月間1000台、PHEVは2012年度に4000台とされたが、3月にバッテリーパックの不具合が発見されたことで、生産はいったんストップ。6月にリコールの届け出があり、改修作業が優先して行われたため、生産の再開は8月下旬となった。バックオーダーは8月の時点で、欧州市場への輸出分も含めて1万8000台まで膨らんでいるとのこと。

■外部リンク
・三菱自動車HP>駆動用電池に関するリコール届出と生産再開の見通しについて

価格帯&グレード展開

332万4000円~429万7000円。ただしエコカー免税や補助金あり


こちらはガソリン車のアウトランダー
(photo:三菱自動車)

ガソリン車は全車7人乗りで、FFもあるが、PHEVは全車5人乗りの4WD。価格はベースグレード「E」(受注生産)の332万4000円からだが、販売主力はミリ波レーダーによる追突軽減ブレーキといった先進安全技術「e-Assist(イーアシスト)」を標準装備した上級グレードになる。

なお、ガソリン車(2リッターないし2.4リッター直4)の価格は、FFの242万7000円から、G ナビパッケージの310万円まで。同等の装備で比べた場合、PHEVはガソリン車より約90万円高いが、PHEVはエコカー減税が100%となるほか(ガソリン車は50%)、エコカー補助金が最大43万円(保有期間などの諸条件あり)あり、実際の差は40万円程度に詰まる。

 

■E(受注生産)    332万4000円
■G          356万9000円 ※HIDヘッドライト、アルミホイール等を標準装備
■G Safety Package   366万4000円 ※e-Assistを標準装備
■G Navi Package    397万8000円 ※SDナビ(サイド&リアビューカメラ付)等を標準装備 ★今回の試乗車

■G Premium Package  429万7000円 ※本革シートやロックフォードフォズゲート プレミアムサウンドシステムを標準装備

 

パッケージング&スタイル

落ち着いたデザインに変身

ボディサイズは先代と大差ない新型だが(全長が15mm長くなっただけ)、デザインは大きく変わった。先代はホイールアーチがオーバーフェンダー風に張り出すなど、かなりスポーティだったが、新型はどちらかと言うと柔和で、SUVというよりステーションワゴンやミニバン風の乗用車っぽいデザインになった。空力性能も強化され、Cd値は0.33に向上したとのこと。

 

なお、最低地上高はSUVらしく190mm確保されているが、エグゾーストパイプが床下の駆動用バッテリーを迂回するため、右サイドシルの裏側を走っており、過信は禁物。

ガソリン車との主な違いは、フロントグリルのデザイン、クリアレンズを使用したLEDリアコンビランプ、前後バンパースポイラーやサイドスカート部のボディ同色化、専用デザインのホイールなど。ボディカラーはガソリン車の6色に対して4色で、写真のテクニカルシルバーメタリックのみPHEV専用色になる。

 
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
スバル XV ハイブリッド(2013-) 4450 1780 1550 2640 5.3
マツダ CX-5(2012-) 4540 1840 1705 2700 5.5
スバル フォレスター(2012-) 4595 1795 1695 2640 5.3
三菱 アウトランダー PHEV(2013-) 4655 1800 1680 2670 5.3
レクサス RX450h(2009-) 4770 1885 1690 2740 5.7
トヨタ クラウン ハイブリッド(2012-) 4895 1800 1450-1460 2850 5.2
ホンダ アコード ハイブリッド(2013-) 4915 1850 1465 2775 5.7
 

インテリア&ラゲッジスペース

パワーメーターや専用シフトセレクターを採用


回転計の代わりにパワーメーターが備わるPHEVのインパネ。シフトセレクターも専用品

インパネは基本的にはガソリン車と同じで、運転席正面のメータークラスターとセンターコンソール上部が一体感を持った、いわゆるドライバーオリエンテッドなデザイン。PHEVの場合は、シフトセレクターがガソリン車のゲート式に代えて、ジョイスティックタイプ(プリウスのようにレバーが中立に戻る)になるほか、タコメーターの代わりにパワーメーターが装備される。また、加飾パネルはPHEV専用のクリスタルファイバー調になるほか、シート生地は合成皮革とファブリックのコンビになる(最上級グレードは本革仕様)。

 

左にパワーメーターを装備。中央には燃費情報や簡単なエネルギーフロー画面などを表示できる

オプションの高精細カラー液晶ディスプレイにも燃費履歴など各種情報表示が可能

PHEV専用の電制セレクター。Pはセレクター前方(少し押しにくい)。左にあるのはツインモーター4WDの擬似ロックモード
 

バッテリーはキャビン床下に搭載


ハイブリッド専用の合皮/ファブリックコンビシートを採用

パッケージング面でガソリン車との最大の違いは、ガソリン車の7人乗りに対して、5人乗りになること。これは駆動用のリチウムイオンバッテリーを(荷室ではなく)キャビンの床下、だいたい前席の足元から後席のひざの直下くらいまでのフロアに搭載し、後軸の後ろにリアモーターを置いているから(リアモーターがなければ7人乗りも可能だったように見えるが)。5人乗車時の居住性やラゲッジスペースは、ガソリン車と同等とのこと。

荷室に関しては、先代アウトランダーがSUVらしく後席をタンブル(座面を前方に跳ね上げるようにして畳む方法)で格納していたのに対して、シングルフォールディングもしくはダブルフォールディングで格納できるようになった。シングルの場合は背もたれを倒すだけなので簡単だが、やや斜めになる。ダブルの場合は座面を引き上げる手間が増えるが、フラットに畳むことが可能。

 

写真はダブルフォールディングで畳んだ状態。ヘッドレストを抜く必要がないので、特に面倒ではない

床下にはAC200V 普通充電用ケーブルが入る。スペアタイヤはなく、パンク修理キット(写真左上)を搭載

PHEVの場合、後席のスライド機構は省かれているが、リクライニングは可能。床は駆動用バッテリーで少し盛り上がっているが、全く気にならない
 

基本性能&ドライブフィール

【EV走行モード】パワフルかつレスポンシブ


エンジン(写真左)はMIVEC付の2リッター直4の4B11型。80km/h以下では発電、それ以上では駆動を行う。目立っている右の銀色はパワードライブユニット(PDU)

試乗したのは、e-Assistやナビゲーションシステムを標準装備した「G ナビパッケージ」(397万8000円)。

駆動用バッテリーの状態が満充電なら、基本的にエンジンは掛からず、EVとして走りだす(寒い時はヒーターを動かすためにエンジンが掛かるらしいが、オプションで電気温水式ヒーターも装着可)。

走りは当然ながらまさにEVそのもの。リーフやi-MiEVとは、ボディの大きさも、重さも、目線の高さも違うが、強力なトルクで力強く、静かに走りだすところは同じ。i-MiEV用がベースというモーターは前後に一つずつあり、フロントは82psと14.0kgmを、リアは82psと19.9kgmを発揮。カタログに表記はないが、単純に2つを合わせるとモーターだけの最高出力は164ps、最大トルクは33.9kgmになる。

 

EV走行モード。バッテリーの電力を使って、モーターで走行する

車重はオプションが追加された試乗車で1830kgあるが、これだけトルクがあればパワーは十分。特にアクセルを急に踏み込んだ時の、フワッとトルクが湧き上がる感じがいい。エンジンみたいに「吸って、燃やして」みたいなタイムラグがなく、もちろんパワーバンドを意識することもない。

ちなみに、同じような仕組みのアコード ハイブリッドは、モーター単体で169psと31.3kgmを発揮。車重は普通のハイブリッドで約1630kg、プラグインで1740kgだから、若干アコードの方が軽い。ただ、プラグインではないアコードは、エンジン音が加速時にかなり目立つため(もちろん発電するため)、エンジンで走っている感が強い。このあたりはプラグインと非プラグインの差も大きいか。

 

これはエンジンで発電し、モーターで駆動する「シリーズ走行モード」の図

こんな風にEV走行が楽しめる距離(充電電力使用時走行距離)は、JC08モードで60.2kmとのこと。もちろん、これはあくまでもモード数値で、少なくとも今回は30~35kmくらいでエンジンが補充電のために掛かることが多くなった。なお、プリウス PHVでは同じくJC08モードで24.4~26.4km、アコードのプラグインハイブリッドは37.6kmに留まる。

また、ピュアEVと違ってアウトランダーPHEVがいいのは、EV走行可能距離を「使いきれる」こと。これは言うまでもなく、バッテリーが尽きた後でもエンジンで発電して走行できるからだ。これがどれほど重要かは、EVでバッテリー切れの恐怖を味わったことがある人なら、よく分かるだろう。

【シリーズ走行モード】および【パラレル走行モード】


シリーズ走行モード。エンジンで発電し、その電力でモーター走行する

バッテリーの電力量が減ってきた時や、力強い加速が必要な時は、エンジンを発電のため動かし、その電力とバッテリー電力の両方で走るようになる。三菱ではこれを「シリーズ走行モード」(右図)と呼ぶ。その名の通り、基本的にはシリーズハイブリッド車と同じ状態で、アウトランダーPHEVの場合も、長距離を無充電で走る場合はこの走行モードが主になる。

 

パラレル走行モード。主にエンジンで駆動し、加速時などにモーターがアシストする

また、モーター駆動だと効率が著しく落ちる高速域では、三菱が言うところの「パラレル走行モード」(右図)に入る。アコードハイブリッド同様、だいたい80km/h以上になるとエンジンと前輪をクラッチで直結して、118psを発揮するエンジンで駆動。モーターは加速時などにアシストする脇役に回る。

アコード同様、一段しかないギア比は、一般的な4速や5速に相当する。となると加速はかったるいかと思いきや、これがモーターアシストがあるため、けっこう速い。バッテリー残量が残りわずかな時でも、けっこうパワフルに加速してくれる。最高速は試していないが、160km/hオーバーは確実と思える。

あと、固定ギアということで、エンジンがCVTみたいに唸らないのも良いところ。ただ、法定速度を超える領域になると、ゴーというロードノイズ風の音が大きくなる。

電力を温存する「セーブモード」や充電を行う「チャージモード」も選べる


左のスイッチがチャージモード、右がセーブモード

面白いのは、バッテリー電力を温存しておく「バッテリーセーブモード」と、エンジンによる発電でバッテリー電力を増やせる「バッテリーチャージモード」を備えていることだ。

セーブモードの場合、満充電でもあえてバッテリー電力には手を付けず、ここぞという時に通常モード(すなわちEV走行モード)に戻して走る、という乗り方ができる。実際に試したところ、まったくバッテリーが減らないわけではないが、8~9割くらいは維持してくれる感じ。その方が、走行中のエネルギー効率がいいからだろう。

また、チャージモードを使えば、バッテリーをほぼ使い切った後でも、じわじわと電力を貯めることができる。実際に走行中に試してみると、ほぼエンジン掛けっぱなしで、少しずつ電気を貯めてゆき、やはり8~9割くらいまで充電できた。

このチャージモードは停車中でも有効で、約40分くらいエンジンを掛けておけば約80%まで充電可能とのこと。満充電までに使うガソリンは4リッターくらいのようだ。

こうやって満充電にすれば、再びまとまった距離をEV走行できるほか、自立移動が可能な給電設備として使うことができる。三菱によると、バッテリーによる供給電力(12kW)は、一般家庭の電力消費量の約1日分で、エンジンによる発電を含めると最大で約10日分になるという。

低重心&マスの集中ゆえ、操縦安定性も良好

パワートレインの話が長くなったが、アウトランダーPHEVはクルマの基本性能の一つであるシャシー性能も高い。キャビン床下に搭載された駆動用バッテリー(約200kgもある)は、船のバラストのような役目を果たし、コーナリング時やブレーキング時の姿勢変化がウソのように少ない。ハイブリッド車の多くは、ボディの前端と後端に重量物が偏り、じろべえみたいな重量配分(クルマの運動性を大きく損なう)になることが多いが、それとは正反対。ちなみにアウトランダーPHEVは、単純な意味での前後重量バランスも良く、車検証数値によると55:45(前軸1000kg+後軸830kg)になっている。

もちろん、操縦安定性には、ツインモーター4WDによる恩恵もかなり大きいはず。前輪がホイールスピンすることはなく、トルクステアも皆無。また、コーナーではモーターならではのESPのレスポンスの速さも体感できる。なお、後輪は100%モーター駆動なので、いわゆるプロペラシャフトはない。

ちなみにステアリングに備わるパドルは変速ではなく(なにしろモーター駆動でも、エンジン駆動でもギアは一段しかない)、回生ブレーキの強弱を6段階に調節できる「パドル式回生レベルセレクター」になっている。減速時などに2個のモーターで無駄なく回生してくれる(回生量が多い)点も、アウトランダー PHEVのいいところ。

 
    エンジン モーター システム
出力(ps)
車重
(kg)
JC08
モード
燃費(km/L)
【PHV複合】
EV航続距離(km)
最高出力(ps) 最大トルク(kgm) 最高出力(ps) 最大トルク(kgm)
トヨタ プリウス(2009-) 99 14.5 82 21.1 136 1310~1400 30.4~32.6
トヨタ プリウス PHV(2012-) 99 14.5 82 21.1 136 1400~1440 30.8~31.6
【57.2~61.0】
24.4~26.4
トヨタ クラウン ハイブリッド(2012-) 178 22.5 143 30.6 220 1630~1680 23.2
三菱 アウトランダー PHEV 118 19.0 82+82 14.0+19.9 1770~1820 18.6【67.0】 60.2
ホンダ アコード ハイブリッド(2013-) 143 16.8 169 31.3 199 1620~1640 30.0
ホンダ アコード プラグイン ハイブリッド(2013-) 143 16.8 169 31.3 199 1740 29.0【70.4】 37.6
レクサス RX450h AWD(2009-) 249 32.3 167+68 34.2+14.2 299 2100~2130 16.4~16.8
 

JC08モード燃費は18.6~67.0km/L。試乗燃費は12.5~15.2km/L


指定燃料はレギュラー。燃料タンク容量は45リッターしかないので、実質的な航続距離は、満充電で走りだしたとしてもおそらく600km程度

JC08モード燃費は、ハイブリッド燃費、つまりプラグイン(外部からの充電)なしで、普通のハイブリッド車として計測したものが18.6km/L。また、プラグインハイブリッド燃費、すなわち基準に沿って、平日はプラグインによる充電で走り(ガソリン消費は基本ゼロ)、週末の長距離ドライブではエンジンも使って走る、というパターンを再現したモードで67.0km/Lをうたっている。

そして今回は、トータルで220kmを試乗。試乗燃費は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(計90km)では15.2km/Lだった。ただし、これはEV走行した序盤の約35km(ガソリン消費はほぼゼロ)を含めた上での結果で、それを除いた後半だけの燃費に限れば、計算上は10km/L弱ということになる。

また、主にハイブリッド走行モード(エンジンで発電した電気で走る)で、一般道を大人しく走った区間(約80km)は12.5km/L。220kmトータルでの燃費(満タン法で計測)は13.1km/Lだった。外部からの充電は試乗直前の1回のみだったので、途中で「プラグイン」すれば、当然もっと良かったと思う。

ここがイイ

問題なく実用になるEVであり、発電機にもなること

ハイブリッドと称するものの、実際には国内初のレンジエクステンダー型「EV」であり、その意味で初めて問題なく実用になるEVでもあること。電気がなくなるまでの実質30kmほどは、まさにEVそのもの。無くなっても走れるので、航続距離や充電ポイントのことを心配せず、普通に乗れて、なおかつEVならではの未来的な走行感覚を味わえる。それでいて室内は広く、荷室も広く、いわゆるクルマとしてガソリン車になんら遜色がない。自宅ガレージに200Vの給電施設はほぼ必須といえるが、それさえ問題なければ普通のクルマとして乗れると思う。

単なるEVと違って、発電機(エンジン)を積んでいること。自ら電気を作れることで、その用途はEVとは比較にならないほど広がる。発電機があることで走行距離を伸ばせるのはもちろん、電源車としての役目も果たせる。つまり電気を、使ったり、作ったり、溜めたりと、自在に操ることができるわけだ。昔から普通の自動車にもサブバッテリーを搭載してほしいと書いてきたが、その理想形がここにある。

走破性の高いSUVは、本質的な意味でスーパーカーだとやはり昔から書いてきたが、そういうクルマが電動化されたことで、理想的な乗り物にまた一歩近づいたこと。前輪と後輪にモーターがあることで回生能力も高い。電気的なものだが、デフロック機能だってある。SUVの割にボディサイズもそう大きくないので、日常的に乗りやすいのもいい。

ミリ波レーダーによる衝突被害軽減ブレーキシステム(FCM)やレーダークルーズコントロールシステム(ACC)をセットにした「e-Assist」が実質10万円弱で設定されていること。無線LANを使ってスマホでエアコンなどを操作できる「三菱リモートコントロール」は、名前はダサいし、やれることがまだまだ限られているが、試みとして高く評価したい。

ここがダメ

急速充電機能やAC電源がオプションであること


約4時間で満充電できるAC200Vの普通充電コネクター(左)と、オプションの急速充電口(共通規格のCHAdeMO:チャデモ)

EV走行可能距離がJC08モードで60.2kmとされたのは、一般ドライバーの約90%は1日の平均走行距離が60km以下だから、らしい。実際にも50km程度はEVで走るようだが(もちろん走り方やエアコンの使用状況などによって大きく異なるはず)、諸事情を了解した上で、さらなるEV航続距離の延長を望む。こればかりはどれだけ伸びてもいいのだから。

バッテリー性能が現状のレベルであれば、30分で80%まで充電できる急速充電は不可避だと思うが、その急速充電機能がオプション(7万3500円)であること。これは絶対に標準装備すべき。また車両価格との兼ね合いだと思うが、100VのAC電源がオプション(8万4000円)なのも残念。このクルマのコンセプトから考えると、共に標準装備すべきだろう。メーカーオプションのナビを装着しないと、フェンダーにサブミラーが装着されるのも残念なところ。このナビと三菱リモートコントロールなどをセットにしたナビパッケージは22万5750円。こうして欲しい物(というより本来あるべきもの)を追加していくと、どんどん高くなってしまう。

メーカーオプションのナビパッケージ付の場合、目的地案内を行うと、交差点などでメーター内のディスプレイに矢印案内が出るのだが、そうすると平均燃費計やエネルギーフロー画面が見えなくなってしまう。スイッチで矢印表示をキャンセルできるようにするなど改善を望みたい。また、ボタンタッチの反応がワンテンポ遅れる感じがするのも残念。

車線逸脱警報システム(LDW)は、どういうわけか頻繁に作動し、途中で警告がうるさくて切ってしまった。たぶんボディがワイドな分、右側に寄って運転しがちだったからだと思うが、少し敏感過ぎる印象。

シート自体は悪くないが、視点を合わせるとフットレストやペダル、床までが遠く、何となく落ち着かない。調整すれば何とななるが、基本的に大柄な体格が想定されている感じ。

スタイリングには残念ながら魅力がない。この未来的なクルマらしい、スペシャルなデザインのボディだったら、もっともっと話題になると思うのだが。

総合評価

どこまでも走れるEVに乗りたい

最近、日産リーフの中古車がけっこう手の届きそうな価格で並んでいる。考えてみれば、登場してもう2年以上たっているのだ。通勤などのチョイ乗り用に、中古でちょっと欲しいな、なんて思ってしまう。実質100km程度は走れるのだし。

が、リーフに試乗した時、山中のワインディングで電池残量に焦ったことを思い起こして我に返ると、マンションだから自宅充電はできないし、賃貸オフィスだから駐車場を200Vにはできないし、近所にある充電スポットは急速じゃないし、とハードルはいまだ高いままであることに気がつき、萎えてしまった。たとえ100km走れても、電池切れの心配は常に付いて回るから、いくら充電スポットが増えたとはいえ、最低でも毎日安定して充電できる場所を持っていないと所有は難しそうだ。そういえばリーフ以降、他社からのEVは登場していない。21世紀になって10年以上たっているのに、まだ20世紀のクルマばかりが走っている世の中は、どうにかならないものかなあ、などと憂えてみる。

「そんなことはない、こんなにたくさんハイブリッド車が走っているじゃないか」という声もあるだろう。確かに。未来のクルマとしてプリウスが登場して早15年、当時思っていた未来は確かに来たのかも。しかし昨今のトヨタハイブリッド車には、さすがにちょっと食傷気味だ。金太郎飴的な乗り味ゆえ、極端に言えばクラウンもカローラも、ハイブリッド車なら同じに思えてしまう。ということで、もっと未来感覚の乗り物に乗りたいという思いが強くなる。どこまでも走れるEVに乗りたいのだ。

トヨタ方式のハイブリッド車の、あの走行感覚ではない

プリウス登場以前の1990年後半、ニッケル水素バッテリーを大量に腹に抱えた初代RAV4のEVに試乗した時には、まるで電車のような加速感に、これぞ未来のクルマだと感動したもの。電気がどのように作られ、供給されるかは大きな課題だが、やっぱりこれからのクルマは電気で、つまりモーターで動くようになるだろうと思い、モーターデイズというサイトもオープンしたわけだ。それから15年、ハイブリッド車は確かに未来ではなく日常になったが、実用的なピュアEVは、そして燃料電池自動車は、いまだ未来のままだ。

しかし、先日試乗したアコード ハイブリッドや今回のアウトランダーPHEVは、乗った感覚が相当にEVっぽい。特に今回のアウトランダーPHEVは電池だけで走る距離が長く、電池切れ後も「自分で発電する電気自動車」を謳うだけあって、乗っている感じはほとんどEVのものだ。電池だけの実質航続距離はプリウスのPHVにくらべて倍ほどあるから、往復20~30km程度の通勤なら、十分EVとして使える。プラグインによる充電に関しては、今後はコンビニに急速充電器の普及が進みそうだから(「愛知のコンビニにEV急速充電器21台設置へ」)、近所のコンビニに設置されたら、これはもう買うことを考えてもいいだろう。

純粋なEVだと、いつも充電することばかり考えないといけないが、このクルマなら全く気にしなくていい。電池が減れば発電機に切り替わるだけ。発電機(エンジン)で走った場合の燃費は、4WDのSUVながら12~13km/L程度はいく。昨今のハイブリッド車の燃費として考えると、あまり良くないように思えるが、このクラスのガソリンSUVと比較すれば、まあ十分なのでは。

で、充電ポイントを見つけたら、すかさず急速充電して、またEVに復帰。EVで走ることがこのクルマの原則。つまりハイブリッド車というより、電池切れを心配しなくていいEVだ。トータルの燃費性能ではもっと優れたハイブリッド車があるが、このクルマにはそんなことは関係ないと思う。アウトランダーPHEVでは、たとえエンジンが回っていても、ずっとEV的なモーター感覚が持続する。エンジンとモーターが連動して動くトヨタ方式のハイブリッド車の、あの走行感覚ではないのだ。

しかも、そうした電気を自分で操れるのも素晴らしい。バッテリーセーブモードにしたり、チャージモードにしたり、パドルで回生レベルを変えたり。いろいろイジれる電気自動車というのは、ガソリン車とは違う運転の楽しみをもたらしてくれる。未来のクルマはこうやって遊ぶんだなというプロトタイプだと思う。

ぜひSUV以外のボディタイプを

ということで、アウトランダーPHEVは、こりゃ案外売れてるのもよく分かる、という素晴らしい内容のクルマだった。実際、欲しいと思う。が、個人的に、買うぞとまでいかない最大の理由は、このクルマがSUVであることだ。SUVはセダンより人気があるし、電池の搭載を考えると、SUVが理想的なボディスタイルであることは、RAV4 EVと同様でもあり、それは理解できる。でなければ、このEV航続距離(60.2km)も達成できなかっただろう。プリウス PHV(同24.4~26.4km)やアコード PHV(同37.6km)のボディでは、電池の搭載には限界がある(もちろん、ピュアEVのテスラ モデルSのような例外はあるが)。

とはいえ、SUVを好まない人もいるわけで、コンパクトなボディでこの性能が欲しいと、ないものねだりをしたくなる。あるいはいっそミニバンにでもしてもらえないだろうか。デリカ D:5のPHEVなんて個人的にも欲しいかも。大容量のバッテリーがあるから、ライトキャンパーとしても使いやすいだろう。道の駅ごとに充電しながらドライブし、キャンプ場ではたっぷり電気が使えるなんて、想像するだに楽しそうだ。実際、今のD:5は先代アウトランダーがベースだが、次期D:5がこの新型のプラットフォームをベースにすれば、それも十分に可能性がある。

 

(photo:三菱自動車)

また、ご存知の通りEVはスマートグリッドの一部としても期待されている。大量にEVが走りだせば、余剰の電気を蓄えて、さらにそれを移動させることが可能であり、社会全体で見ればクルマが大きな電気インフラとなるだろう。そこまではまだ長い道のりだと思うが、もし未来が明るいものになると考えた場合、それは実現せねばならない課題だと思う。三菱自動車は経営的にはいまだ様々な問題を抱えているが、ことEVに関しては完全に他を一歩リードしていると思う。ライバルのプリウス PHVよりEVらしいし、アコード PHVはまだ一般には市販されていないのだから、このクルマこそ今、日本で一番実用的な量産「EV」だと思う。となれば、このまま車高を下げて、ステーションワゴンくらいにはならないものか、などと勝手に思ってしまう。そうしたら近所のコンビニに充電ポイントがなくても買ってしまいそうだ。

試乗車スペック
三菱 アウトランダー PHEV G Navi Package
(2.0L 直4+2モーター・4WD・397万8000円)

●初年度登録:2013年1月●形式:DLA-GG2W ●全長4655mm×全幅1800mm×全高1680mm ●ホイールベース:2670mm ●最小回転半径:5.3m ●車重(車検証記載値):1830kg(1000+830) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:4B11(MIVEC) ●排気量・エンジン種類:1998cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・縦置 ●ボア×ストローク:86.0×86.0mm ●圧縮比:10.5 ●最高出力:87kW(118ps)/4500rpm ●最大トルク:186Nm (19.0kgm)/4500rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/45L

●モーター形式:前 S61、後 Y61 ●モーター種類:永久磁石式同期モーター ●定格電圧:-V ●最高出力:前 60kW(82ps)/-rpm、後 60kW(82ps)/-rpm ●最大トルク:前 137Nm(14.0kgm)/-rpm、後 195Nm(19.9kgm)/-rpm ●バッテリー:リチウムイオン電池

●システム最大出力:-kW(-ps)/-rpm ●システム最大トルク:-kgm(-Nm)/-rpm ●10・15モード燃費:-km/L ●JC08モード燃費:67.0km/L(プラグインハイブリッド燃費)、18.6km/L(ハイブリッド燃費)

●駆動方式:ツインモーター4WD ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイル/後 マルチリンク+コイル ●タイヤ:225/55R18(Toyo A24) ●試乗車価格(概算):431万4000円 ※オプション:前席シートヒーター+三菱リモート・コントロール+電気温水式ヒーター 17万8500円、100V AC電源(1500W) 8万4000円、急速充電機能 7万3500円 ●ボディカラー:テクニカルシルバーメタリック ●試乗距離:約220km ●試乗日:2013年9月 ●車両協力:西尾張三菱自動車販売株式会社(サン・オートグループ)

 
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