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三菱 パジェロ スーパーエクシード新車試乗記(第444回)

Mitsubishi Pajero Super Exceed

(3.8L・5AT・436万8000円)

1/4世紀を経て、
250万台が世界へ旅立った、
世界のパジェロが進む道は?

2006年12月16日

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キャラクター&開発コンセプト

メカニズムは踏襲、デザインは先々代に回帰

2006年10月4日に4代目となったパジェロ。1982年の登場以来、世界中で約250万台が販売された本格SUVであり、三菱を代表するモデルでもある。パリ・ダカールラリーなどの過酷なステージで証明された走破性や信頼性は、あえて説明するまでもないだろう。新型は先代の基本設計を踏襲しつつ、外観デザインを2代目(1991年~99年)風に回帰させたところがポイントだ。

8割が海外向け

国内の販売目標は月間700台。生産は従来通り岐阜県坂祝町の「パジェロ製造」が行なうが、その8割は海外へ輸出される。特に欧州(全体の1/3)、中近東・アジア(1/3)、オセアニア(1/6)などの各地域では、トヨタのランドクルーザーに匹敵するネームバリューが「パジェロ」にはある。ただしモンテロの名で投入されていた北米向けは今回から無くなり、アウトランダー(3リッターV6)とエンデバー(Endeavor、3.8リッターV6)が代わりを務めるようだ。

関連リンク
 ミツビシ・モーター・ノース・アメリカ(英語)
 パジェロ製造株式会社

価格帯&グレード展開

ショートとロングで、241万5000円~436万8000円M

従来通り、3ドア(5人乗り)のショートボディ(241万5000円~348万6000円)と5ドア(7人乗り)のロングボディ(262万5000円~436万8000円)がある。上級グレードは3.8リッターV6(6G75)+5AT、主力グレードは3リッターV6(6G72)+4ATだ。後者なら5MTも選べる。先代デビュー時にあったディーゼル仕様はない。

パッケージング&スタイル

基本骨格/パッケージングは変わらず

試乗したロングボディの外寸(先代比)は、全長4900mm(+130)×全幅1875mm(-20)×全高1870mm(+10)、ホイールベース 2780mm(同)。先代と基本骨格が同じなので、スリーサイズもほぼ同じ。全長が伸びたのは背面スペアタイヤ・カバー周辺のデザインが主な要因だ。ショートボディの方は、全長4385mm(+130)、ホイールベース 2545mm(同)と、ハッチバック車並みのサイズになる。

外観デザインは隔世遺伝

ポイントは何と言っても、2代目に先祖帰りした外観デザインだろう。フロントフェンダーの肩やボンネットの先端を角張らせ、ライトやグリルの意匠を変えたら、レンジローバーやメルセデス・ベンツのGクラス(ゲレンデヴァーゲン)に通じる、古典的な四駆らしさを得た。2トーンカラーもパジェロの専売特許ではないが、いかにも「パジェロらしい」と感じさせる。

機能美はあるが、機能性は?

パジェロらしく、センターコンソール上部にコンパス、高度計、気圧計、燃費、カレンダーなどの各種情報ディスプレイを配したインパネ。自然な質感の柾目(まさめ)のウッドを使うなど、妙にピカピカさせなかった点は好感が持てる。乗降性はサイドステップに足を掛ければ特に気にはならない。まあ慣れの問題でもある。

聞かせるロックフォード

試乗したスーパーエクシードは「ロックフォード(Rockford)」製オーディオ(最大860W、12スピーカー、5.1ch)を標準装備する(他の一部グレードでも21万5250円で選択可能)。ロックフォードはアウトランダーにも採用されていたブランドだが、パジェロのものは大人向けにアコースティックな味付けとしたタイプ。大音量でも余裕のある音を聞かせる。

高い床、低い座面

広さは十分なセカンドシートだが、難点は床が高いことだ。乗り降りがしにくい上に、座面高が足りないため、ちゃんとした姿勢で座りにくい。先代を踏襲した床下収納式サードシートも、足元の広さと高さが全く足りない。シート自体も完全に補助席レベルの簡素なものだ。ヘッドレストは立派だが、後方視界を妨げるので普段は外しておきたくなる。

先代同様、サードシートの収納は煩雑

7人乗車時の荷室は文字通りミニマムで、通常はサードシートを初代ホンダ・オデッセイのように反転し、床下に収納するのが前提だ。その手順は、

1.フロアボードを外し
2.ヘッドレストを抜いて、床下に収納、
3.2種類のレバーを順に引いて背もたれを倒し、
4.さらに別のレバーを引いて後席を反転、床下に収納。
5.シートの足を畳み、
6.フロアボードを戻す。

と、オデッセイよりずっと煩雑。着脱できるのも先代と同じだが、今やボタン一つで全てやってくれる高級ミニバンを思うと、古めかしさを感じてしまう。特にパジェロの場合は、サードシートの「シートとしての機能」が限定的なだけに、もうちょっと簡便にしたい。

基本性能&ドライブフィール

下手な5ナンバーより扱いやすい

試乗したのは最上級グレードの「スーパーエクシード」。シングルカムながら、MIVEC(マイベック:可変バルブタイミング&リフト機構)を新しく備えた3.8リッターV6(252ps、34.5kg-m)と5速ATを搭載する。主力の3リッター(178ps、26.6kg-m)+4ATに比べると、スペックだけ見れば排気量の差以上にパワフルであり、ATも1速多いなどワンランク上の仕様だ。

車重は2210kgと相応に重いが、エンジンは低回転から大排気量アメリカンV6のようにトルク感たっぷりで、動き出しは軽い。回さなければエンジン音も静かだ。

何よりイイのは、視界と見切りが抜群なことだ。ボンネットの端がしっかり見えるので、狭い道でもまったく不安がない。この点はランドローバーやゲレンデ(ヴァーゲン)にも通じるところだが、パジェロの場合は下手な5ナンバーセダンより扱いやすい、と感じさせる。最小回転半径は5.7メートルだが、感覚的にはもっと小さい。ショートなら最小回転半径は5.3メートルだ。例のヘッドレストさえ外してしまえば、バックモニターの備えもあって、後方視界にも不安がない。

ハイスピードは苦手

街乗りでは好印象のパジェロだが、少しスピードレンジが高くなると、不得意科目が見えてくる。まず気になるのが、早くも100km/hほどで種々のメカニカルノイズや風切り音が高まることだ。さらに速度を上げると、特にAピラー周辺で発生する風切り音が目立ち始める(デザイン上、仕方ないが)。また、省燃費走行用の「2Hモード」(FR状態)の直進安定性は鉄壁とは言えず、やはりパジェロのせっかくの4WD性能を生かす意味でも、また緊急回避などのマージンを考えても、「4Hモード」(前後トルク配分33:67をベースとしたフルタイム4WD)を選択したくなる。新型を開発するにあたって、時速200km/hでアウトバーンを走行したり、ニュルブルクリンクを走ったりしたようだが、それもおそらくは「4Hモード」が前提のテストだったはずだ。

まずまずの操縦性、物足りない制動力

舗装路のワインディングでも、ボディのゆったりした反応さえ飲みこんでしまえば、ごく普通のセダンが少々飛ばしたくらいのペースで走ることは可能だ。ブッシュを介したヌルヌルとした感覚こそあるが、先代から受け継いだビルトインフレームモノコックは、スポット増しや、より高強度の高張力鋼板、構造用接着剤の採用などによって、純モノコックボディに近い一体感を得ている。アルミ製ボンネット(これで-9kg)の貢献度はさておき、前後重量配分も49:51(1090kg:1120kg)と、むしろ後軸の方が重いくらいバランスがいい。

唯一注意したいのはブレーキだ。システム自体はフロントに大径17インチディスク+対向4ポッドキャリパーと立派なものだが、期待するほどガツンとは効いてくれない。特に100km/hくらいからの急制動では、思ったよリ制動距離が伸びてしまう。この2.2トン超のクルマを何回も止めた後でも、キャリパーの温度は手で直に触れるほど低い。要するに絶対的な効きを重視したものではないようだ。

実用燃費は5~6km/L

今回は実質2日間ほどで250kmを主に「2H」の状態で試乗。トータルの燃費は車載燃費計で5~6km/Lを行ったり来たりだった。郊外で交通の流れに乗る限りは、6km/L台も無理ではないが、ストップ&ゴーやアクセルを踏み込む機会が多いと、どうしても5km/L前後に落ちてしまう。なお、3リッター車の指定燃料はレギュラーだが、この3.8リッターの指定燃料はハイオク。荒野に備えて、タンク容量は88リッターと大きめだ。

ここがイイ

スタイリングも運転感覚も「これぞパジェロ」になった。このクルマはまさにクロカン四駆。手袋をはめていても使いやすいスイッチ類やシフトレバー、サイドウィンドウから体を乗り出しやすいよう窓側に寄せたシート位置など、快適性より機能性を強調した作りは「道具」そのもの。ボンネットの先まで見える見切りの良さ、Aピラーが細く、視界が広い点も素晴らしい。

何と言っても悪路走破性能の高さ。それから生じる、いざという時の安心感。氷点下40度の北欧から、アフリカの砂漠、オーストラリアの荒地まで、世界中の過酷なエリアを想定し、ある意味、軍用車以上の信頼性を求めて作られたクルマ。使い方さえ知っていれば、最高のサバイバルツール。これを国内価格にして250~400万円ほどで作ってしまうわけだから、世界中で売れるのは当然と言える。軟弱なSUVではない、オトコのクルマだ。

ここがダメ

たぶん、海外輸出を想定して意図的に行われているのだろうが、やはり電子制御化はもう少し推し進めて欲しいところ。今時インテリジェントキーの用意がないなど、使い勝手に直結するところで、古くさく感じてしまう。パーキングブレーキがハンドレバー式というのも同様。今やあのランドローバーのディスカバリー3だって、パーキングブレーキは電子制御だ。本格四駆性能と電子デバイスの融合は、少なくとも最上級グレードではチャレンジしてもらいたかった。

居住性の悪さ。サードシートは言うに及ばず、セカンドシートの居住性も褒められたものではない。シート下につま先が入らないゆえ足下が厳しい。サードシートもやはり付け足し程度で、これは根本的なパッケージングの問題といえそう。

高速走行性能の低さ。静粛性、「2H」モード時の直進安定性、ブレーキ性能(絶対的な制動力)など、いわゆる最近主流の「プレミアムSUV」には水を空けられている。価格帯や新型車ということで今風のSUVを想像した人には?という印象になるかもしれない。「バチャン」というドアの閉まり音も、もう少し高級感のあるものにしたい。

以上はクロカン四駆ではなくSUVを期待した場合の話だ。ついでに言えば、一番SUVっぽい装備であるところのオーディオのボリュームスイッチがヘッドユニット左側にあって手が届きにくく、かといってステアリングのオーディオスイッチが押しにくいのも気になった。

総合評価

パジェロ。30代以上のクルマ好きなら、一度はあこがれたことがあるのではないか。1990年代初頭のクロカンブームの頃、これに乗っていることは完全にステイタスだった。特に2色に塗り分けられたエクシードは、例え黒い煙を吐くディーゼル車であったとしても、いかにも高級なクルマに見えたものだ。乗ってみると、他のクルマを見下ろす視点の高さは優越感を駆り立てたし、まだ3リッタークラスのV6ガソリンが少なかっただけに、その力強い加速は「クロカンなのにこの走り!」と、これまた優越感をくすぐるものだった。もちろん当時は今よりもまだ、こうした四駆で走ることのできるオフロードがけっこう存在していたのだが、パジェロの多くはそんなところへ行くことはなく、街乗り高級四駆として君臨していた。そして多くのパジェロが副変速機を使うことなく、その生涯を閉じたものだ。とにかくこのクルマがあまりに売れすぎたために、その後三菱はなんだかおかしくなってしまったのではないか、とすら思う。

その後、パジェロはディーゼルエンジンのマイナスイメージの象徴となり、急速に求心力を失っていった。コンパクトカーの時代となった99年に登場した先代は、SUVテイストを前面に押し出したものの、その巨大さから日本では支持を得ることができず、さらに三菱は不祥事の影響もあって空白に近い5年間を迎える。当然パジェロも人々の「記憶の中のクルマ」に近い存在となってしまった。それでも世界に向けてパジェロは作り続けられ、02年には200万台の生産を達成している。輸出される名古屋港に行くと、左ハンドルのパジェロがモータープールに大量にストックされて出荷を待っている光景に出くわす。これをみるとパジェロは世界のオフロード地帯のためのクルマなのだ、と実感させられる。

このパジェロを作っているのが岐阜県坂祝町にあるパジェロ製造という会社だ。三菱自動車の100%子会社になったのはまだ新しく、03年3月のこと。95年にパジェロ製造と社名を変えるまでは東洋工機という会社名で、67年からジープを作り初めている。84年にはホンダ・シティカブリオレを生産したこともあるが、基本的には一貫してクロカン四駆を作り続けている会社だ。トヨタのランドクルーザーをアラコ(現在はトヨタ紡織と合併)が作ってきたように、昔からクロカン四駆は四駆専門会社が作るものだったのである。

そんなパジェロ製造が組み立てる新しいパジェロも、ひと言で言えばクロカン四駆だ。いわゆる今風のSUVではない。ちまたに数多ある高級SUVは、オフロード性能より「快適で速い」オンロード性能を競い合っているが、新型パジェロに関してはまったく方向性が違う。3.8リッターもあるのに加速はたいしたことなく、とても超高速巡航などしたいとは思えない。ワインディングでも四駆にしない限り安定感はないし、まして舗装路を走る楽しさを追求したものでもない。それでもごく普通の高速巡航なら十二分に快適だし、普通にワインディングを走りぬけられる。そして普通のクルマができないオフロードに分け入れるわけで、本格クロカン四駆としてはなんら不満がない。いわゆるこうした大型SUVが必要なオフロードなど日本にはほとんどないが、その本格オフロード性能こそがこのクルマを買うときの付加価値といえる。250km/hで走れる道がなくても高性能スポーツカーを買うのと同じこと。そしてその四駆性能は多分、国内外の四駆の中でも最強に近いものだろう。あのレンジローバーですらがオンロードSUVを目指す昨今、その姿勢は潔いと思う。

もっともそれは世界市場を見た上で導き出されたものだろう。特に北米での販売をやめたことが象徴的だ。北米ではもはや、この手の四駆は販売的に厳しい。日本でも月販200台そこそこ。であれば、それ以外の必要とされる地域で、本格オフロード性能を強調しようというのはマーケティングとしては正道といえる。成長著しい中国市場では合弁企業が狩豹(リーバオ)という車名で生産している。信頼性の低い中国製の四駆と比べれば、その性能は圧倒的なはず。ちょっと乗ってみれば新型パジェロがそういうクルマであることはすぐわかるはずだ。

スタイルを、売れた2代目パジェロのレプリカともいえるカタチにしたのは悪いことではない。ワケのわからない新しいカタチではなく、クロカン四駆というある意味古典的な、マニアックなクルマゆえ、伝統のカタチをキープするのはマーケティング的にも正しいし、マニアの心をくすぐるものだ。ニュービートル、ニューMINI、そしてポルシェの現行911(タイプ997)みたいなもの。四駆と言えばこのカタチ、パジェロと言えばこのスタイリングなのだ。

試乗車スペック
三菱 パジェロ スーパー エクシード
(3.8L・5AT・436万8000円)

●形式:CBA-V97W ●全長4900mm×全幅1875mm×全高1870mm●ホイールベース:2780mm●車重(車検証記載値):2210kg(F:1090+R:1120)●乗車定員:7 名●エンジン型式:6G75●3827cc・V型6気筒・SOHC・4バルブ・縦置●252ps(185 kW)/6000rpm、34.5 kg-m ( 338 Nm)/2750rpm ●カム駆動:タイミングベルト ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/88L●10・15モード燃費:7.6 km/L ●駆動方式:パートタイム4WD(スーパーセレクト4WD II)●タイヤ:265/60R18( DUNLOP AT20 GRANDTRECK )●試乗車価格:454万円( 含むオプション:付属品一式<フロアマット/エクシードバイザー/ボディコーティング> 13万円、3ウェイ2トーン塗装 4万2000円 ) ●試乗距離:約250km ●試乗日:2006年12月 ●車両協力:西尾張三菱自動車販売株式会社

公式サイト http://www.mitsubishi-motors.co.jp/pajero/index.html

 
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