Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > VW パサート TSIハイライン

VW パサート TSIハイライン新車試乗記(第766回)

Volkswagen Passat TSI Highline

(1.4L 直4ターボ・7速DCT・414万円)

フォルクスワーゲン パサート TSIハイラインの写真「MQB」で全面チェンジ!
欧州COTY受賞のワケに迫る!

2015年08月07日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

パサート キャラクター&開発コンセプト

新モジュラー戦略「MQB」を全面採用

新型パサート ヴァリアント TSI R-ラインの画像
新型パサート ヴァリアント TSI R-ライン
(photo:VGJ)

欧州では2014年に、日本では2015年7月16日に発売された新型「パサート / パサート ヴァリアント」(B8型)は、1973年にデビューした初代から数えて8代目となるモデル。ゴルフの上に位置する、VWの主力中型セダンおよびステーションワゴンだ。

過去42年間の累計世界販売台数は、派生モデルを含めると約2200万台、2013年の1年間だけでも110万台に及ぶというパサート。その基本メカニズムは長年、エンジン縦置きのアウディ 80やA4と近い関係にあったが、6代目以降はゴルフと同じエンジン横置きベースに変更されている。

 
欧州カー・オブ・ザ・イヤー2015受賞時の新型パサートの写真
新型パサートは欧州カー・オブ・ザ・イヤー2015を受賞した
(photo:VGJ)

さらに今回の8代目では、7代目ゴルフ(ゴルフ7)に続いて、VWグループの新モジュラー戦略「MQB」に基づく全面新設計になった。今回導入された日本仕様の1.4L TSI エンジンも最新版のMQBユニットに変更され、JC08モード燃費20.4km/Lを達成している。

また、スタート価格を329万円としながら、プリクラッシュブレーキシステムや全車速追従機能付ACC(アダプティブ クルーズ コントロール)といった先進安全装備を全車標準としている。

 
【過去の新車試乗記】
 

価格帯&グレード展開

ひとまず1.4 TSIのみで、329万円からスタート

パサート TSIトレンドラインの画像
パサート TSI トレンドライン
(photo:VGJ)

欧州ではガソリンターボの1.4L(125ps・200Nm、150ps・250Nm)、1.8L(180ps・250Nm)、2.0L(220ps・350Nm、280ps・350Nm)、そしてディーゼルターボの1.6L(120ps・250Nm)、2.0L(150ps・340Nm、190ps・400Nm、240ps・500Nm)があり、さらに2015年内には1.4ガソリンターボのプラグインハイブリッド車「パサート GTE」が発売される予定。

一方、今回導入された日本仕様は、ガソリンターボ(150ps、250Nm)の1.4 TSI モデルのみ。全て7速DSG、FF(前輪駆動)の右ハンドルで、Start/Stopシステム(アイドリングストップ機能)を標準装備する。

なお、2016年にはパサートのディーゼル車(TDI モデル)も導入されるようだ。

先進安全装備は全車標準

パサート TSIコンフォートラインの画像
中間グレードのパサート TSI コンフォートライン
(photo:VGJ)

ひとまず日本仕様は、セダンとヴァリアント、共に4グレード構成。グレード間の違いは、主に快適装備の有無(スマートエントリー&スタートシステム、LEDヘッドランプ、工場装着ナビ“Discover Pro” など)、ファブリックシートかレザーシートか、タイヤ&ホイール(16、17、18インチ、オプションで19インチ)といった違いになる。

一方で、先進安全装備は全車標準。つまり329万円のTSI トレンドラインでも、プリクラッシュブレーキシステムや全車速追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC)は最初から付いている。ただしトレンドラインだと、“Discover Pro” 、LEDヘッドライト、スマートエントリー&スタートシステムは装着不可で、ホイールは16インチスチール製になる。

セダンとヴァリアントの価格差は19万9000円。ラインナップと価格は以下のとおり。

 
パサート TSIハイラインの画像
装備充実のパサート TSI ハイライン
(photo:VGJ)
■パサート
  • TSI トレンドライン  329万円
  • TSI コンフォートライン 359万円
  • TSI ハイライン    414万円
  • TSI R-ライン     460万9800円
 
パサートヴァリアント TSI R-ラインの画像
トップグレードのパサート ヴァリアント TSI R-ライン
(photo:VGJ)
■パサート ヴァリアント
  • TSI トレンドライン  348万9900円
  • TSI コンフォートライン 378万9900円
  • TSI ハイライン    433万9900円
  • TSI R-ライン     480万9700円
 

パッケージング&スタイル

突き抜けたシンプルさ

右前方から撮影されたフォルクスワーゲン パサート TSIハイラインの写真

まったく派手さがなく、水平基調のシンプルなライン、ロー&ワイドのプロポーション、精緻な品質感といったところが外観の見どころ。これを地味と捉えるか、いかにもVWらしく実直とするかが評価の分かれ目だが、方向性そのものはミドルクラスセダンの新たな欧州スタンダードなのかも。

 

ボディサイズ(セダン/ヴァリアント)は、全長4785/4775mm×全幅1830mm。セダンの全長は、先代とほぼ同じだが、ヴァリアントはセダンより10mm、先代ヴァリアントより5mm短くなった。つまりセダンの方がワゴンより10mm長い(ちなみにアテンザだとセダンの方がワゴンより60mmも長い)。ホイールベースは先代より80mm伸びたが、その分だけ前後オーバーハングはカットされている。横から見るとグリーンハウス(ウインドウ部分)が小さく、クーペのようにスタイリッシュ。

 
正面から撮影されたフォルクスワーゲン パサート TSIハイラインの写真
側面から撮影されたフォルクスワーゲン パサート TSIハイラインの写真
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
VW ゴルフ ヴァリアント(2014~) 4575~4580 1800 1475~1485 2635 5.2
新型(B8)VW パサート セダン/ヴァリアント (2015~) 4785/4775 1830 1465~1470
/1485~1510
2790 5.4
先代(B7) VW パサート セダン/ヴァリアント(2011~2015) 4785 1820 1490
/1515~1530
2710 5.3
スバル レガシィ B4(NB型)/アウトバック (BS型)(2014~) 4795/4815 1840 1500/1605 2750/2745 5.6/5.5
マツダ アテンザ セダン/ワゴン (2013~) 4860~4865
/4800~4805
1840 1450/1480 2830/2750 5.6/5.5
 

インテリア&ラゲッジスペース

装備満載。スイッチも増えた

フォルクスワーゲン パサート TSIハイラインの前部座席の写真
試乗車は上から2番目の「ハイライン」で、VW純正インフォテイメントシステム“Discover Pro”を標準装備する

インパネもセオリー通りエクステリアに呼応して、徹底的に水平基調でデザインされている。ダッシュボードのエアコン吹き出し口を端から端までスリット状にしているにもその一つ。ダッシュ中央のアナログ時計、ウッドパネル(ハイライン専用)などが、VWの上級セダンとして高級感を訴える。時計一つとってもシンプルなデザインで好ましい。

 
フォルクスワーゲン パサート TSIハイラインに搭載されたアナログ時計の写真
アナログ時計を装備。シンプルで見やすいが、メーター内のデジタルメーターの方をつい見てしまう
フォルクスワーゲン パサート TSIハイラインのシフトレバーの写真
パーキングブレーキはもちろん電動。シフトレバー左側の走行モード切替ボタンやアイドリングストップ オン/オフボタンは死角になってしまう
 

室内の広さは相変わらず

側面から撮影されたフォルクスワーゲン パサート TSIハイラインの運転席の写真
「ハイライン」はナパレザーの運転席/助手席パワーシートを標準装備。ベンチレーション機能付で、運転席にはシートマッサージ機能も備わる

ホイールベースが80mm伸びて、室内長は33mmアップ。先代でも室内の広さは定評があったので、もはや後席でも不満は皆無。ゴルフ7がいくら高級になっても、後席の居住性ではパサートに敵わない。身長170cm程度なら足を余裕で伸ばせる。

計9個のエアバッグは全車標準で、危険を感知すると、衝突前にシートベルトの引き上げなどを行う「プロアクティブ・オキュパント・プロテクション」も備わる。ちなみに助手席エアバッグのインフレーターは国内初認可となる水素を使ったもので、収蔵ガスの主成分が水素と酸素とアルゴンガスとなり、エアバッグが展開しても水蒸気しか発生しないという。

 
フォルクスワーゲン パサート TSIハイラインのエアコンの写真
パサートでは初採用の「3ゾーンフルオートエアコンディショナー」はコンフォートライン以上に標準装備
フォルクスワーゲン パサート TSIハイラインの後部座席の写真
後席の広さ、特にフットルームの広さは文句なし。サイドウインドウのブラインドはないが、ハイラインとR-ラインにはリア電動ブラインドが付く
 

トランクはさらに広くなって、もはや無敵

フォルクスワーゲン パサート TSIハイラインの後部座席を倒した状態の写真

トランク容量はセダンが586L(先代比+21L)、ヴァリアントが650L(先代比+47L)、拡大時1780Lと恐ろしく巨大。ライバル車よりだいたい一割か二割大きい。VWの言葉には「ミドルサイズクラスではトップの値であり」「アッパーミドルクラスのクルマと比べても引けを取りません」とあるが、それが謙遜に聞こえるほど、クラス破りの広さを誇る。

ハイラインとR-ラインのテールゲートは電動で、特にハイラインの方にはスマートキーを持った状態でバンパー下部のセンサーを足で反応させると自動で開く「イージーオープン」機能が付く。

 
フォルクスワーゲン パサート TSIハイラインの荷室の写真
後席の背もたれはトランク側からレバー操作によりワンタッチで倒せる
フォルクスワーゲン パサート TSIハイラインのトランク床下の写真
モビリティタイヤを標準で履くため(トレンドラインを除く)、トランク床下にはスペアタイヤもパンク修理キットもない
 

基本性能&ドライブフィール

低回転では温厚。回すとシャープに変身

フォルクスワーゲン パサート TSIハイラインのエンジンルームの写真

試乗したのは上から2番目のグレード「TSI ハイライン」(414万円)。と言っても、パワートレインは全車同じで、1.4ターボと7速DSGの組み合わせだ。

その1.4L直噴ターボエンジンは、字面だけ見れば先代パサートのエンジン(EA111型)と同じだが、実際にはアルミ製クランクケースを持つ新世代「MQB」ユニット(EA211型)。最高出力は、先代より28ps増えて110kW(150ps)になり、最大トルクは一気に50Nm増えて250Nm(25.5kgm)を発揮する。

 
1.4TSIエンジンの性能曲線図
1.4 TSIエンジンの性能曲線
(photo:VGJ)

出足は期待したほど鋭くなく、むしろオットリしていて、ちょっと拍子抜け。これは燃費重視のECOモードだけでなく(メーターには使用中のギアに合わせてE1、E2、E3……と表示される)、通常のDレンジ(D1、D2、D3……と表示)でも変わらない。スポーツモード(S1、S2、S3……)にすると回転をかなり引っ張る方向に変化し、少々落ち着きがなくなる。

そんなわけで、もっぱらDか、ECOで走ることになる。信号で止まれば、外気温37度Cの炎天下でも、ほぼ確実にアイドリングストップ。走りだせば、VW自慢の7速DSGが次々にシフトアップし、低回転を律儀にキープする。

 
フォルクスワーゲン パサート TSIハイラインのメーターの写真
2シリンダーモードにはかなり頻繁に入る(写真)。余談ながら37.0Cとある外気温に注目

ちなみに、この新世代1.4ターボエンジンは、ゴルフ7のTSI ハイラインやポロ ブルーGTのものと基本的には同じで、低負荷時に4気筒のうち2気筒を休止させて燃費を稼ぐ「アクティブシリンダーマネジメント(ACT)」を備えている。車速130km/h以下で走行中、1400~4000rpmで作動するもので、作動中にはメーター内に「2シリンダーモード」とカタカナで表示される。それを見て、注意深く観察すれば、4気筒稼働時に比べて若干エンジンがゴロゴロ言ってるかなぁ、などと思ったりもするが、それも気のせいかと思い直すレベル。で、その時はさすが、2気筒分の燃料噴射が止まっているおかげで、瞬間燃費計の数値が4気筒稼働時の倍くらいに跳ね上がるように見える。VWによると、ACTによる燃料消費の削減は、100km走行あたり0.5L以上とのこと。

シャシー性能を愛でるべし

フォルクスワーゲン パサート TSIハイラインのタイヤの写真
試乗車のタイヤは215/55R17のコンチプレミアムコンタクト5。乗り心地やロードノイズなど、とても印象のいいタイヤ

新型パサートで愛でるべきは、やはりシャシー性能。このクラスのセダンで乗り心地がいいのは当たり前かもしれないが、路面を滑るように、フラットに、細かい凹凸を飲み込んで走る様子は、身も蓋もない言い方をすれば、同じMQBプラットフォームのゴルフ7(特にハイラインやGTI)をそのまま上級にシフトした感じだが、直進安定性の高さ、静粛性の高さなどを含めて文句がない。

ちなみにタイヤは、ベースグレードのトレンドラインを除いて、パンクしてもしばらく走行できるモビリティタイヤを標準で履くが、タイヤの硬さを感じるようなことはまったくなかった。

ワインディングでも徹底的に安定して走り、それでいてよく曲がる。少し負荷をかけてもESPに頼らず、シャシー性能だけで平然と走り切る。ちなみに試乗後の洗車で気付いたのはリアブレーキのダストの少なさ。一時期のドイツ車はフロントだけでなく、リアホイールも真っ黒になったものだが、パサートのリアはほとんどきれいなままだった。

 
フォルクスワーゲン パサート TSIハイラインのメーターの写真
100km/h巡航時の様子。

100km/h巡航時のエンジン回転数はメーター読みで約1750rpm(1800rpm弱)。高速域でもロードノイズ、風切り音ともに低く、まったく不満がなかった。ちなみに最高速(欧州仕様のメーカー発表値)は、1.4 TSI(150ps、250Nm)が220km/h。意外にトップスピードが伸びるのは空力がいいせいだろうか。さらに、ガソリン最強モデルの2.0 TSI 4MOTION(280ps、350Nm)は250km/h、ディーゼル最強モデルの2.0 BITDI SCR 4MOTION(240ps、500Nm)は240km/h。

ほぼ半自動で高速巡航く

新型パサートの大きなセールスポイントは、数々の先進安全装備。主なところでは、

プリクラッシュブレーキシステム(Front Assist)……ミリ波レーダーと単眼カメラを併用し、全車速域で自動ブレーキにより衝突回避・被害軽減を行う。30km/h未満なら歩行者まで検知して自動ブレーキを作動させる。

アダプティブクルーズコントロール(ACC)……全車速追従機能付ACCの最新型で、停止後の再発進まで自動で行う。

レーンキープアシストシステム(Lane Assist)……単眼カメラにより車線を読み取り、ステアリング操作をサポート。車線逸脱を検知するとステアリング補正を行い、ドライバーに警告を行う。

レーンチェンジアシストシステム(Side Assist Plus)……10km/h以上の走行時に、後方から接近車両を検知し、それに気付かないままドライバーが車線変更を行うと警告を行うと共に、ステアリング制御で接触回避を図る。

などなどで、VWでは、これらをまとめて「全方位アドバンスド・セーフティ」と呼んでいる。

 

Youtube>欧州仕様のパサートにある「Emergency Assist」の機能説明(独語ナレーション)

今回、特に感心したのが、全車速追従機能付ACCに加えて、車線維持のための操舵アシスト。高速道路であれば、ステアリングに軽く手を添えているだけで、先行車と車線に沿ってアクセル/ブレーキおよびステアリングが自動的に制御され、ほとんど半自動で走り続けてくれた。手綱を握っていれば、あとは馬がちゃんと道に沿って走ってくれる、という感覚に近い。

実は、欧州仕様のパサートには、世界初の装備として「エマージェンシー アシスト(Emergency Assist)」なる装備が採用されている。これは運転中、ドライバーが体調の急変や発作などにより、運転ができなくなった場合、何度かの強い警告を行った後、路上でハザードを点灯させながら自動的に停車させる機能のこと。それに比べれば、この程度の半自動運転はもはや難しくないということだろう。

試乗燃費は9.8~16.3km/L。JC08モードは20.4km/L

フォルクスワーゲン パサート TSIハイラインの給油中の写真

今回はトータルで約260kmを試乗。参考ながら試乗燃費は、いつものように一般道と高速道路を走った区間(約80km)が9.8km/L。また、一般道を大人しく走った区間(約30km)が13.3km/L。高速道路をECOモードにして走った区間(約90km)が16.3km/L。トータル燃費(撮影区間を含む)は12.2km/Lだった。燃費性能は、このクラスのセダンとしては十分だと思う。

JC08モード燃費は全車20.4km/L。ちなみにパサートの車重は1460kgだが、ゴルフ7 TSI ハイライン(車重1320kg)は19.9km/L、ポロ ブルーGT(車重1200kg)は21.5km/L。先代パサートは17.6km/L(セダン/ヴァリアント共通)だったので、額面上は1割5分ほど良くなっている。

指定燃料はプレミアムで、燃料タンク容量は70Lだった先代から一気に59Lに縮小と、こちらも1割5分ほどダウンサイジングされている。実用燃費が伸びた分、航続距離は先代と同等、ということだろう。

 

ここがイイ:装備充実、乗り心地の良さ

フォルクスワーゲン パサート TSIハイラインの写真

試乗したハイラインの車両価格は414万円だが、この状態で先進安全装備のほか、シートベンチレーション機能付の電動レザーシート、運転席マッサージ機能、最新のインフォテイメントシステムが備わり、それでいて良い乗り心地と高い静粛性を誇るボディ、ダウンサイジング直噴ターボ、7速DCTを備えている。“高級車”として考えるとパワーの出方に癖があるのは否めないが、これ以上のパワーは少なくとも日本では無用だし、こんな普通のセダンが走って気持ちいイイのもすごい話。30年前の質実と今の質実では内容が異なるだろうが、今どきの質実(先進安全装備や燃費性能)を追求したクルマである点で、いかにもVWの最新モデルらしい。欧州カー・オブ・ザ・イヤー受賞の理由もそのあたりだろう。そして繰り返しになるが、これだけの内容で日本車に対抗できる価格設定が何より素晴らしい。ごきげんなフォルクスワーゲンだ。

 
新型パサートのペダルの写真
新型パサートのペダル。ゴルフ7にも同様の右足フットレスト?がある

細かいところではアクセルペダルの右に、右足を置けるフットレスト状のものがあるのもよかった。ACCを使った時に右足をどこに置くか。床に置くとブレーキがとっさに踏めないが、アクセルの右側に右足用フットレストがあればかなり助かる。多くのクルマはACCがあってもこれがない。同じMQBプラットフォームのゴルフ7も同様の形状だが、右ハンドル車ゆえにたまたま生じたものか(左ハンドル車はどうなっているのだろう?)。いずれにしろ、ACC装着車に右足フットレストは必需品だと思う。

ここがダメ:少々ピーキーなエンジン特性

フォルクスワーゲン パサート TSIハイラインのバックライトの写真

スペック上は最大トルクの250Nmを1500rpmから3500rpmという低回転域で発揮するエンジンだが、実際の感覚では、3000rpmくらいまでかなりオットリしていて、加速しないなと思って1速落とすと、ガイーンと吹け上がる、という感じ。あるいはスポーツモードやパドルシフトを駆使して活発に走ろうとすると、レスポンスが良すぎて若干ギクシャクすることもある。ピークパワーはこのくらい(150ps)でいいから、もっとフラットでトルクフルなエンジンが欲しい。例えば、最新のクリーンディーゼルエンジンの登場などを期待してしまう。

先進安全装備はてんこ盛りで、最先端とも言えるが、これだけの運転支援システムが揃っていると、ヘッドライトのハイ/ロー自動切替機能(いわゆるオートマチックハイビーム)が欲しくなる。高速道路上では流れに沿って加減速やステアリング操作が半自動で行われるのに、夜間に限ってはハイビームとロービームをこまめに手動で切り替える必要があるのは妙な感じだった。安全のため、そして先行車や対向車にうっかり迷惑をかけないためにも、ヘッドライトのハイ/ロー自動切替機能は欲しいと思ってしまった。

総合評価:「クルマ」 vs. 「乗り物」

ゴキゲンワーゲンと Das Auto

フォルクスワーゲン パサート TSIハイラインの写真

現在、個人的にザ・ビートル カブリオレで♫ゴキゲンワーゲン♫な生活を送っているので、パサートに関してはちょっと意見にフィルターがかかっているかもしれないことをご容赦願いたい。さて、若いころ(1970年代)は、クラシックビートルをみんな「ワーゲン」と呼んでいたものだ。「何乗ってるの?」「今はワーゲン。今度はミニクーパーが欲しいな」なんて会話。この場合、ワーゲンはもちろんゴルフじゃない。ゴルフはゴルフ。ただ、ワーゲンのゴルフと呼ぶこともけっこうあったわけだが。メルセデス・ベンツではなくベンツ、BMWじゃなくてベンベ、フォルクスワーゲンではなくワーゲンと、気軽に呼んでいたわけだ。

「フォルクスワーゲン」とは、言うまでもなく国民車という意味のドイツ語で、今では世界一の販売台数を誇るグループ会社の名でもある。やはりメーカーとしては、どこの国でもフォルクスワーゲンと呼んでもらいたい、というのが偽らざる気持ちだろう。ましてブランドスローガンに「Volkswagen. Das Auto.」、フォルクスワーゲンこそ真のクルマである、を掲げるメーカーだ。ゴキゲンワーゲンという軽いノリじゃなくて、Das Auto. (英語で言えば、The Car)は、ドイツらしいガチガチの理詰めな宣言なのだろう。それゆえ昨今のゴキゲンワーゲンという日本でのキャンペーンには、個人的にはちょっと違和感を持ってしまう。ドイツ本国でもそう感じているのでは。ま、今やVWの中での異端児であり、いわゆるパイクカーでもあるビートルなら、ゴキゲンワーゲンというノリでもいいのだが。

 

YouTube>Volkswagen TVCM パサート 「ドラキュラ篇」(60秒)

さて、パサートはゴキゲンワーゲンという軽さの対局にあるクルマのはずだ。まあその見事なまでの質実剛健さは、ガチガチのワーゲン、じゃなくて、フォルクスワーゲンそのものと言えるカタブツぶり。その意味では、大量に今流されているパサートのCM(ドラキュラ編)には、何か違うなあという感があるのだが。パサートはきらびやかなプレミアム感などクルマの本質に関係ないと言い切るかのごとく、目立たないクルマだ。これではCクラスや3シリーズにはとても対抗できないのではと心配になる。デザインもフロントまわりがなかなかシャープにできているのに、リアはトランク容量を確保するためか、やや厚みを感じさせる。このあたりもカタチより実を取っているように見える。

新型ヴァリアントのディーゼルにも期待

フォルクスワーゲン パサート TSIハイラインの写真

しかし逆に言えば、これほどセダンの本質をついたクルマはない。室内は十分に広いし、インテリアも十分に上質。本文にある通り、豊富な先進安全装備が標準だし、これだけのセダンが実用燃費で10km/L以上走ってしまうのも素晴らしい。1.4 TSIエンジンの出足のトロさが気になる人もいると思うが、それも燃費とトレードオフならまあ致し方ないところ。実際には、走りだしてしまえばパワー感に不足はないし、乗り心地は絶妙で、ものすごく気持ちがいい。地に足がついた状態で、サスペンションがしなやかに動き、それが人の快感中枢に直結しているという感覚。これこそがビートルにもゴルフにも共通な、VWの特徴だろう。

海外でのパサートのグレード設定を見ると、ドイツ本国ではディーゼルとガソリンが半々くらい、イギリスではほとんどディーゼルという感じだろうか。1.4ガソリンターボのセダンに乗っただけで、欧州イヤーカーである新型パサートの評価を下してはいけないということだろう。目下の日本仕様は、やや燃費志向のガソリンエンジン搭載車であるし、またこのクルマの大きな魅力はやはりワゴンのヴァリアントにあるだろう。先代パサートの場合も、日本では7~8割がヴァリアントだったらしいが、新型ヴァリアントのクリーンディーゼル車ならば、乗る前から欲しくなりそうなほど期待が膨らむ。

 
フォルクスワーゲン パサート TSIハイラインの写真

2014年4月から2015年3月までの14年度世界販売台数では、トヨタを抑えてVWグループがついに世界の首位に躍り出た(グループ12ブランドの合計)。販売絶好調のVWだが、世界市場での動向は面白い。日経Automotive(2015年7月号)によると、販売シェアは欧州(VW:22%、トヨタ:5%)、中国(16%、5%)、南米(14%、7%)では圧倒的にVWが強く、逆に北米(5%、14%)、南アジア(3%、21%)、中東アフリカ(4%、16%)ではトヨタが圧倒的に強いようだ。

つまり、これまで両社は市場を住み分けて直接ぶつかることなく1位、2位を争ってきた。大衆車メーカーという点で両社の類似点は多い。各地域の「プレミアム」ではなく、「実用的な足」となるクルマを作っている。しかし今後はそれぞれが得意とする市場でガチンコ勝負が始まりそうだ。当然ながらトヨタが圧倒的なシェアを誇る日本でも、新型パサートの装備と価格は驚異的なバリュー・フォー・マネーを誇る。何しろ新型パサートと似たようなサイズ、同等の先進安全装備、燃費(JC08モード:23.4km/L)を備えたトヨタ カムリハイブリッド “レザーパッケージ” は401万4655円なのだから。


フォルクスワーゲン パサート TSIハイラインの写真

今後はVWもハイブリッド車、特にプラグイン・ハイブリッド車をどんどん投入してくるという。そして北米やアジアを狙うという。トヨタも負けじと、VWが強い中国市場をハイブリッドで攻めていく。クルマづくりのモジュール化を強力に推し進めるVWと、同じくモジュール化を進めながらも現地現物的なところを残すトヨタ。VWは現時点では投資額が大きく、販売台数でトップになっても利益はトヨタより少ないという。

クルマそのものでは現在のところダウンサイジングターボ vs. ハイブリッド、DCT vs. CVTというあたりに両社の大きな違いが見えるが、乗ってみて一番思うのは、「クルマ(Das Auto)」であることを頑なに維持しようとしているVWに対して、トヨタは便利で快適な「乗り物」を作っている感があることだ。やがてクルマが自動運転の時代になった時、クルマはクルマのままなのか、あるいは別の「乗り物」になるのか、というあたりが興味深いが、それによって両社の勝敗が決まるのかもしれない。

試乗車スペック
フォルクスワーゲン パサート TSI ハイライン
(1.4L 直4ターボ・7速DCT・414万円)

●初年度登録:2015年5月 ●形式:DBA-3CCZE
●全長4785mm×全幅1830mm×全高1470mm
●ホイールベース:2790mm
●最低地上高:130mm ●最小回転半径:5.4m
●車重(車検証記載値):1460kg(840+620)
●乗車定員:5名

●エンジン型式:CZE
●排気量・エンジン種類:1394cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴・ターボ・横置
●ボア×ストローク:74.5×80.0mm
●圧縮比:10.0
●カムシャフト駆動:-
●最高出力:110kW(150ps)/5000-6000rpm
●最大トルク:250Nm (25.5kgm)/1500-3500rpm
●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/59L

●トランスミッション:7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)
●JC08モード燃費:20.4km/L

●駆動方式:FF(前輪駆動)
●サスペンション形式(前):マクファーソンストラット+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):4リンク+コイルスプリング
●タイヤ:215/55R17(Continental ContiPremiumContact5)

●試乗車価格(概算):431万6400円 ※オプション:LEDヘッドライトパッケージ 16万2000円、フロアマット 1万4400円
●ボディカラー:タングステンシルバーメタリック

●試乗距離:約250km ●試乗日:2015年8月
●車両協力:フォルクスワーゲン本山・小牧

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 
フォルクスワーゲン 本山

最近の試乗記一覧