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VW パサート ヴァリアント 2.0T新車試乗記(第418回)

Volkswagen Passat Variant 2.0T

(2.0Lターボ・6AT・381万円)

 
 

2006年06月10日

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キャラクター&開発コンセプト

トゥアレグに次ぐナンバー2

欧州では2005年3月(ヴァリアントは8月)、日本では06年4月に発売された新型パサートは、1973年デビューの初代から数えて6代目。歴代パサートはアウディ80とその後継車のA4をベースとしてきたが、新型のベースとなったのは、同じVWブランドのゴルフ。よってエンジンはアウディ流の縦置きから、ゴルフと同じ横置きになった。言わばメカ的にもゴルフ直系の上級車となったわけだが、一方でフェートン未導入の日本市場では依然VWのフラッグシップセダンであり、SUVのトゥアレグに次ぐナンバー2モデルだ。

なお、今回からパサート・ワゴンの名称は、ドイツ本国と同じ「パサート・ヴァリアント」に変更された。パサート(Passat)はドイツ語で貿易風、ヴァリアント(Variant)は英語のVariation、あるいはドイツ語のVarianteが由来。ただし今でも北米ではパサートワゴン、UKではパサートエステートを名乗っている。

価格帯&グレード展開

ヴァリアントは実質400万円前後

セダンとヴァリアントの2本立てで、エンジンは2リッター直4(150ps、6速AT)、2リッター直4ターボ(200ps、6速AT)、3.2リッターV6(250ps、4WD、6速DSG)の3種類。ゴルフと違って、2.0リッターターボはDSGではなく、トルコン式ATとなる。セダンの価格は319万~439万円。

一方のヴァリアントは「2.0」が335万円、ターボの「2.0T」が381万円。「V6 4モーション」は今秋導入の予定だ。注意したいのは「2.0T」の場合、レザーシートやウッドパネル、バイキセノンランプのセットオプション(34万6500円)が事実上のデフォルト装備であること。妙なことに、布シートの標準仕様の方が、受注生産オプションだからだ。

パッケージング&スタイル

ほぼクラウン並みの大きさ

セダン/ヴァリアント共通の全長4785mm×全幅1820mmは、現行ゴルフワゴン(1世代前のゴルフ4ベース)より385mm長く、現行ジェッタより220mm長い。ボディ幅も現行ゴルフ5より60mm、北米メインのジェッタより35mm拡がる。おおむねクラウン並みの大きさだが、後で触れるように実際の取り回しは悪くない。

 

VWの新世代デザインを採用したジェッタと、見た目の雰囲気は近い。しかし、ゴルフと共通パーツが多いジェッタに対して、パサートのそれはもちろん専用。メッキの使用部位や面積も多く、高級車らしく見えるように配慮されている。

 

ホイールベースは2710mm。ジェッタ/ゴルフより135mm延長され、室内スペースもサイズ相応に増している。Cd.値はセダンで0.281、ヴァリアントが0.297。

ボタンスタートや電動パーキングブレーキを採用

オプションのウッドパネルやレザーシート、パナソニック製のナビが付いたインテリア。質感は低くないが、樹脂パーツのチリ合わせが緻密過ぎて、逆に微妙な段差や透き間の目立ってしまった部分がある。明るい色のウッドパネルは全体の雰囲気の中でちょっと浮いた感じで、好みの分かれる部分だ。

 

ブロック型キーをスロットに差し込み、そのまま押し込んでスターターを回す「プレス&ドライブ」や、ジャガーXJやBMWの7シリーズ、アウディA6などと同様の電動パーキングブレーキ(ダッシュ右端のボタン)を採用。特に後者は指先でタッチするだけで確実に駐車ブレーキが掛かるし、運転席まわりに邪魔なレバーが無くなるなどいいことばかり。リリースを忘れて発進しても自動的に解除されるので、ブレーキパッドを焼いてしまうこともない。これから下位モデルに普及していきそうな装備だ。

とにかく広い後席と荷室

後席はフットルームも天井も広々しており、FR方式が多いミディアムクラスセダンより余裕がありそうだ。サイドウインドウには収納式のサンシェイドが備わる。

昔から物を積むことが得意なパサートだが、新型ヴァリアントは通常時で603リッター、最大で1731リッターと先代以上の大容量を確保。2メートル近い奥行き、約1メートルの荷室幅、そして何より出っ張りのない荷室形状がいい。セダンのトランクにいたっては、無敵の565リッターを誇る。

 

トランクスルーに加えて、ヴァリアントではもちろん後席も畳めるが、ダブルフォールディング式なのとヘッドレストの抜き取りが必要なのは面倒。また、これといった工夫やサプライズがないのも物足りない。とにかく積載性が第一という感じだ。

基本性能&ドライブフィール

回転域を問わない2リッター直噴ターボ

試乗したのは2リッター直4ターボ(200ps、28.6kg-m)の「2.0T」。ゴルフGTIではかなりヤンチャに感じられたエンジンだが、車重1580kgのパサートヴァリアントではちょうど頼もしく感じられる。なにしろタイヤが冷えた状態ではGTIと同じようにパワーバンドに入った瞬間、スキール音が上がるほど。それくらいトルクが厚い。また、最高出力を連続して発揮する5100~6000回転では、自然吸気のスポーツエンジンみたいな気持ちのいい炸裂感がある。それでいてターボラグもほとんどなく、どんな状況でも扱いやすい。

一般的な走行ではエンジン横置のFFっぽさも薄く、知らなければ「これもアウディA4ベースか」と思ってしまいそうだ。2.0Tの場合は一瞬「縦置き?」と思わせるエンジンカバーが付くから、オーナーでさえ気付かないかもしれない。というか、世間一般は横だろうが縦だろうが、気にもしないんだろうけど。

大きいのに小回りも効く

日常的な使い勝手については、前輪切れ角が大きいからだろう、ボディサイズの割に最小回転半径:5.3メートルとFR車のクラウン(5.2メートル)に迫る小ささ。全幅1820mmがすれ違い時に気にならないと言えばウソになるが、同1800mmのエスティマが使いこなされる昨今、大きなハンディにはならないだろう。電動パワステは据えきり時も軽くて楽だ。

乗り心地やボディのしっかり感といった点でも、先代パサートより大幅に進歩している。特に今回の「2.0T」は、15mmローダウンのサスペンションや、このところスポーティモデルに定番のポテンザRE050A(235/45R17)が備わり、適度に引き締まった乗り味。アウディA4やA6のような剛性感やシャープさはないが、乗り心地の点ではこちらの方がマイルド。日本の交通環境やクルマの性格には合っている。

それなりに大きなボディサイズをものともせず、ワインディングでは軽快な走り。パワー感がほどよく、アップダウンのある連続コーナーもまず不足がない。が、面白いというよりは、どこまでも優等生という感じ。高速巡航も同様でまじめに速い。

ここがイイ

ほとんどターボを感じさせない見事な過給と6ATとのマッチングの良さ。ドイツ的ガッチリ感というより、日本車的しなやかさのある乗り心地。オプション設定だが上質な革と木の室内。特にシートのデザインはカッコいい。

運転席ドアにある、折り畳み傘の収納スペース。水抜き穴があって濡れた傘も入れられる。やっと装備されたのが日本車ではなく、ドイツ車というのは皮肉だが。後席のドアに内蔵された手動ブラインドもたいして高い原価とは思えないので、すべてのクルマが装備していいものだと思う。

ついにミドルクラスまで降りてきた電動パーキングブレーキはとても便利。スロットイン・タイプのボックス型キーもサイズが大きめで、失くしたりすることが少なそう。Aピラーそのものは太いのだが、運転席からは角度的に細く見え、斜め前の視界がいい。

ここがダメ

「高級車は普通、布シートなんか選ばないですよ」と言わんばかりの仕様設定。「納期」だけを理由にウッドパネルやレザーシートを押し付けられたように感じる人が多いのでは。当初の輸入ロットは、この仕様になってしまったようだ。これはおそらく9月以降の07年モデルとの兼ね合いだろう。本国で売れなかった06モデルの高級仕様が日本へまわされたのかもしれないが、フォルクスワーゲン車を「質実」で買っていたユーザーは、そっぽを向くはず。

ゴルフGTIでは許せても、パサートでは気になる4気筒のノイズ。音質は不快ではないが、元気に走らせた時は静粛とは言いがたい。

シフトレバーで行うマニュアルモードの操作力が重めなところ。もう少し軽く、さらにクリック感のあるものがいい。

総合評価

その昔、アウディ100に原付でぶつかったことがある。今思えば相手の方が悪かったのだが、外車ということもあり、言い負けて高い修理代を払った。そのとき相手が言った台詞をいまだに覚えている。曰く「目立たない外車だからこのアウディを買ったのに」。外車の少なかった当時でも、目立ちたくて外車に乗るのではない、という人がいたわけだ。国産車とはちょっと違うが、ベンツのような威圧感がない外車として、当時アウディやゴルフが認められていた。しかし、ゴルフは別の意味で目立った存在でもあった。若者にとっては憧れでありステイタス車だったのだから。

このようにアウディはその昔、目立たない外車の代表だったのだが、最近のアウディにはかなり威圧感があり、かなり目立つ。特にシングルフレームグリルになってからは。こうなると目立たない外車(それも、そこそこ高級な)として存在価値が出てくるのがパサートだろう。カタログの1ページ目にも「ステイタスを語るのではない。威厳を誇示するのでもない。フォルクスワーゲンが考える新しいクルマの価値観。」とある。自他共に認めるパサートの売りは、そこにある。

と言うことを理解してパサートに試乗するのと理解せずに乗るのでは、クルマの印象が大きく異なる。

理解せずに乗ると、エクステリアは相当に地味な印象で、特に特徴がないのが残念に思える。窓枠を囲むメッキのモールやルーフレールの装飾も古典的だ。新しいワーゲン車のアイデンティティとなるワッペングリルも「ジミハデ」な印象で、主張はとしてはいまひとつ。言うなれば、心に「刺さる」カタチではない。インテリアはなかなかオシャレで高級。これはけっこう「刺さる」のだが、前述のようにオプションだ。走りも全く問題ないのだが、もっとスポーティで楽しいクルマはいっぱいあるし、「悪くないんだけどなあ」という印象になってしまう。

逆に理解して乗ると、「派手じゃない外観は営業から冠婚葬祭まで、どこにでも気にせずに乗っていけるなあ」とか、「ドイツ車らしい実用的でがっちりとした荷室は、実用車として申し分ないなあ」と好意的になれる。革とウッドのオプションインテリアはアウディ並みのクォリティで十二分な高級感があり、特にシートのややルーズなフィット感は、ガチガチのドイツ車という先入観を覆すもの。オプションで付いていたパナソニックのカーナビもひとまず不満のないものだ。走りも2.OTなら低速からの力強さ、ワインディングの安定感、高速での静粛性など、まず不満はない。大きな長所が見あたらない代わりに、まったく不満もない。ファミリーカーとして「かなり欲しいかも」となってくる。

価格もライバルと比べてかなり安い。ライバルより100万円は違うのではないか。でもこの価格差が目立ち度、知名度、ステイタスの差というもの。BMWを買ったといえばクルマ好きからは一目置かれるし、Cといえども「ベンツ」オーナーだ。パサートを買ってもそういう恩恵には預かれないと思う。そのかわり、エンスーというほどでもないが、特徴的なクルマが欲しい人、目立つのはまずいが他とは違うクルマが欲しい人、輸入車に乗りたいが金持ちに見えるのはまずいという人、ちょっとわかっている人だなと人から思われたい人、などにはいい選択だと思う。100万円安い分、そのお金を有効に使う手段を思いつける人のためのクルマだ。

 

ただ、虚飾を廃した質実剛健さを「新しいクルマの価値感」といわれるとちょっとピンとこない。どちらかというとそれは「昔からあるクルマの価値観の一つ」だろう。内装を中心とした既存のプレミアム感はこのパサートも有しているし、存在そのものにも日本では特に輸入車というプレミアム性がある。でも「他よりかなり目立たない」という価値のあるクルマが存在することは大いに歓迎すべき。日本市場においても昔からそういったニーズは確かに存在しているのだから。

試乗車スペック
フォルクスワーゲン パサート ヴァリアント 2.0T
(2.0Lターボ・6AT・381万円)

●形式:GH-3CAXX●全長4785mm×全幅1820mm×全高1515mm●ホイールベース:2710mm●車重(車検証記載値):1580kg(F:950+630)●乗車定員:5名●エンジン型式:BWA●1984cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・直噴ターボ・横置●200ps(147kW)/5100-6000rpm、28.6kg-m (280Nm)/1800-5000rpm●カム駆動:タイミングチェーン●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/70L●10・15モード燃費:10.4km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:235/45R17(Bridgestone Potenza RE050A)●試乗車価格:444万円(含むオプション:セットオプション<レザーシート+ウッドパネル+バイキセノンヘッドランプ> 34万6500円、HDDナビゲーションシステム 26万0401円、フロアマット 2万3100円)●試乗距離:約110km ●試乗日:2006年5月 ●車両協力:フォルクスワーゲン本山・小牧

公式サイト
http://www.volkswagen.co.jp/cars/passatvariant/main.html

 
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